地域医療を育てる会 「CLOVER(クローバー)」 第74号 た 、い わ ば 地 域 の 冷 蔵 庫 の ような便利なお店でした。 このお店があった地域は、 昭和 年代に新興住宅が できて人が増えた所です。 以来 年が経ち、住民は高 齢 に な り ま し た 。年 を 取 る と一人あたりの購買力が 減 り 、高 齢 化 地 域 で は 買 い 物をする人の数も減りま す 。そ ん な 時 に 、少 し 離 れ た場所に大型店がオープ ン 。品 揃 え も 多 く 価 格 も 安 い た め 、若 い 人 や 健 脚 な お 年寄りはそちらに買いに 出かけるようになります。 こ う し て 、近 く に あ っ た 小 規 模 の「 地 域 の 冷 蔵 庫 」は 閉店してしまいました。 40 食 —の砂漠 と —は フードデザート 50 ス ー パ ー が 閉 店 し て 、買 い物に行けない人が困っ そんな情報が菜 ている ― のはなに届きます。 中野先生 は「 フ ー ド デ ザ ー ト 」と い う言葉でいろいろと調べ て み ま し た( コ ラ ム ① 参 照)。 偏った食生活は低栄養 に 繋 が り ま す 。近 年 、日 本 の高齢者の間で低栄養問 題が深刻化しています。低 栄養状態に陥ると免疫力 が落ちるので感染症など への抵抗力が低くなり、肺 炎などになりやすくなり ます。また認知機能にも影 響が出るので、低栄養の方 は認知症になるリスクが 高くなるのです。このよう に自立した生活がますま す困難となり、介護の必要 性も高くなることが指摘 さ れ て い ま す 。ま た 、食 生 活の乱れが様々な生活習 慣病を悪化させ、命にかか わることもあるのです。 菜のはなのスタッフが 地域に出向いてみると、お 寺の住職さんからは「自力 ? … で移動できないお年寄 り が 、か な り 困 っ て い る 。宅 配 サ ー ビ ス の 品 物 はどれも価格が安くな い の で 、手 が 出 せ な い 人 も 多 い 」と い っ た 話 も 。 ご飯に塩をかけただけ の食事をする人もいる な ど 、こ の ま ま で は 地 域 の人々の健康状態が悪 化するのでは?とス タッフは危機感を持っ たそうです。 「これは単に一つのスー パーが閉店して不便に なったというレベルの 問 題 で は あ り ま せ ん 。買 い 物 に 行 け な い 人 は 、食 事のほかにも生活面で のサポートが必要な人 で も あ り ま す 。こ う い う 人が一人でも地域にい る の な ら 、地 域 と し て 何 か手を差し伸べなくて はならないと思います」 と中野先生。 近くにあるスーパーマーケットが閉店したら、遠くのお店に行きますか?自分で買い物に行けなく なったらどうしますか?食品を自由に買えなくなることは、 健康に直結する大問題です。 来年3月の くらしの講演会では、 この問題を取り上げます。 講師の中野智紀先生にインタビューをしました。 中野先生がお勤めの東 埼 玉 総 合 病 院 は 、埼 玉 県 北 東部の幸手市にあります。 お 隣 に は 杉 戸 町 が あ り 、こ の 2 つ の 市 町 の 住 民 と 、病 院とを結ぶのが院内にあ る 在 宅 診 療 連 携 拠 点「 菜 の は な 」で す 。今 回 は 、菜 の は な の 中 野 先 生 は じ め 、ス タッフの皆様にお話を伺 いました。 今 年 3 月 に 、杉 戸 町 に あ るスーパーマーケットが 閉 店 し ま し た 。小 さ い な が ら も 、郵 便 局 替 わ り で も あ り 、宅 急 便 の 窓 口 で も あ り、食料品も取りそろえ 地域の冷蔵庫が閉まるまで 中野智紀先生 −1− なじみの店が閉店! そ の 時 、あ な た の 健 康 は 発行 NPO法人地域医療を育てる会 代表 藤 本 晴 枝 http://iryou-sodateru.com/ 第 7 4 号 平 成 2 7 年 1 2 月 5 日 発 行 東 金 市 東 金 1 1 4 2 「 東 金 の 家 」内 T E L:0 9 0 − 7 6 3 4 − 7 1 7 5 地域医療を育てる会 「CLOVER(クローバー)」 第74号 とは、「地 域 でこう いう 問 題 があるそうだ」という情報を 市 民 に伝 えることだ け 。し かし、そ れも 「このことは誰 に伝 えた ら よ いか」「どこに 情 報 を届 け たら 効 果 的 か」 を菜 のはなのスタッフが知っ て いればこそ出来たのです。 菜のはなでは日ごろから地 域 の各 所 で「暮 ら し の保 健 室 」を 開 いて健 康 相 談 を し たり 、対 象 地 域 のお宅 を一 軒 ず つ訪 問 して暮 ら しや健 康に関する聞き取り調査を し たり す るなど、地 域 の情 報 を 積 極 的 に 集 めて いま す 。そ して、困 っている人 に は個別に電話連絡や訪問を したり専門機関に紹介した りすることで、地域の人々の 信 頼 を得 てきました。人 々 が「菜のはなに相談すれば何 とかなる」と思っているからこ そ、スーパー閉 店 のよう に一 見 医 療 とは関 係 がなさそう な情報も入っ てくるのですね。 さら に、問 題 によっては菜 のはなのスタッフから 地 域 の 市民に相談や依頼が出来る のも大きなポイントです。病 院 という 専 門 機 関 も 、地 域 の一 員 として助 け合 い・支 え 合いの輪の中に入っ ているのです。 くらしの講演会に いらっしゃい! 幸 手 市 、杉 戸 町 で起 き たことは、私 たち の地 域 で いつ起こってもおかしくない ことです 。いえ、も し かし たら す でに起 きていること かも しれません。その時 、 私 たちの地 域 ではだれが、 なにが出 来 るでしょう ? 「く らしの講 演 会 」では、 中 野 先 生 にフードデザー ト と健 康 、そ し て病 院 も 含 めた市 民 の取 り 組 みにつ いて詳しくお話しいただき ま す 。そ し て参 加 者 同 士 で話 し合 う 時 間 も 設 け ま す 。皆 さんも 、是 非 「自 分 のこと」とし てこの問 題 を 考えてみませんか? 平成二十八年三月六日 (日 )午 後 一 時 から 、東 金 市 ふれあ いセンターにてご 一緒しましょう! (コラム②参照) (藤本晴枝) 「くらしの講演会」 のご案内 なじみの店が閉店!その時、 あなたの健康は…? とき 平成 28 年 3 月 6 日 (日) 午後 1 時開会 ※午後 4 時終了予定 ところ 東金市ふれあいセンター 多目的室 基調講演 中野智紀先生 分科会 「行きつけのお店はどこですか?」 まとめ 申し込み ・ 問い合わせ (2 月 24 日まで) 東金市社会福祉協議会 電話 0475 (52) 5198 FAX (52) 8227 E メール [email protected] フードデザート (食の砂漠) フードデザート地域に住む人々の間では、 「低栄養」 な どの健康被害が拡大していることが危惧される。 イギリス やアメリカでは、 フードデザート地域における健康被害に 関するレポートがある。 しかし、 日本の多くの自治体では フードデザート問題を十分に認識していない。 フードデザートが深刻になる地域とは ・ 社会的弱者 (高齢者、 低所得者など) が集まって 住んでいる ・ 商店街の消失などにより、 買い物環境が悪化している ・ 家族 ・ 地域コミュニティの希薄化に伴い、 日常生活の中で助け合うことが出来ない 例) シャッター通りが増える地方都市の中心市街地、 農山漁村、 近所付き合いがない高齢化団地など −2− 主役は住民 菜のはな は、 後方支援 この窮 状 に対 して真 っ先 に動 いた のは、スーパーの あった地域の地区長さんで し た 。地 区 長 さ ん は、商 工 会 や 行 政 のほかに、地 域 にいる様 々 な人 に声 を かけ ます 。声 を かけ ら れ た 人 がま た ほかの人 に声 を かけ る中 で、市 民 主 催 でフードデザートのワーク ショップ(参 加 者 が自 主 的 に活 動 す る講 習 会 )を 開 くことになりました。 このワークショップを契 機 に、当 地 域 では住 民 の間 でいろいろな取 り 組 みが始 まっています 。その一 つが、 八 百 屋 さんの移 動 販 売 。 「自 分 の代 で店 じ ま い」と 思 っていた店 を息 子 さんが 継 いでく れることになった ご主人。息子さんがこの地 域 の窮 状 を 知 り 、「トラッ クで品 物 を 運 んで、移 動 販 売 を し た い」と言 いま す 。採 算 を 考 えれ ば二 の 足 を踏 む商 いです が、「息 子 がやる、といっていること を応援したい」と親子二代 で移 動 販 売 に踏 み切 り ま した。 ここで菜のはながしたこ コラム 2 コラム1
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