74号 12/5 なじみの店が閉店!その時、あなたの健康は

地域医療を育てる会 「CLOVER(クローバー)」 第74号
た 、い わ ば 地 域 の 冷 蔵 庫 の
ような便利なお店でした。
このお店があった地域は、
昭和 年代に新興住宅が
できて人が増えた所です。
以来 年が経ち、住民は高
齢 に な り ま し た 。年 を 取 る
と一人あたりの購買力が
減 り 、高 齢 化 地 域 で は 買 い
物をする人の数も減りま
す 。そ ん な 時 に 、少 し 離 れ
た場所に大型店がオープ
ン 。品 揃 え も 多 く 価 格 も 安
い た め 、若 い 人 や 健 脚 な お
年寄りはそちらに買いに
出かけるようになります。
こ う し て 、近 く に あ っ た 小
規 模 の「 地 域 の 冷 蔵 庫 」は
閉店してしまいました。
40
食
—の砂漠 と
—は
フードデザート
50
ス ー パ ー が 閉 店 し て 、買
い物に行けない人が困っ
そんな情報が菜
ている ―
のはなに届きます。
中野先生
は「 フ ー ド デ ザ ー ト 」と い
う言葉でいろいろと調べ
て み ま し た( コ ラ ム ① 参
照)。
偏った食生活は低栄養
に 繋 が り ま す 。近 年 、日 本
の高齢者の間で低栄養問
題が深刻化しています。低
栄養状態に陥ると免疫力
が落ちるので感染症など
への抵抗力が低くなり、肺
炎などになりやすくなり
ます。また認知機能にも影
響が出るので、低栄養の方
は認知症になるリスクが
高くなるのです。このよう
に自立した生活がますま
す困難となり、介護の必要
性も高くなることが指摘
さ れ て い ま す 。ま た 、食 生
活の乱れが様々な生活習
慣病を悪化させ、命にかか
わることもあるのです。
菜のはなのスタッフが
地域に出向いてみると、お
寺の住職さんからは「自力
?
…
で移動できないお年寄
り が 、か な り 困 っ て い
る 。宅 配 サ ー ビ ス の 品 物
はどれも価格が安くな
い の で 、手 が 出 せ な い 人
も 多 い 」と い っ た 話 も 。
ご飯に塩をかけただけ
の食事をする人もいる
な ど 、こ の ま ま で は 地 域
の人々の健康状態が悪
化するのでは?とス
タッフは危機感を持っ
たそうです。
「これは単に一つのスー
パーが閉店して不便に
なったというレベルの
問 題 で は あ り ま せ ん 。買
い 物 に 行 け な い 人 は 、食
事のほかにも生活面で
のサポートが必要な人
で も あ り ま す 。こ う い う
人が一人でも地域にい
る の な ら 、地 域 と し て 何
か手を差し伸べなくて
はならないと思います」
と中野先生。
近くにあるスーパーマーケットが閉店したら、遠くのお店に行きますか?自分で買い物に行けなく
なったらどうしますか?食品を自由に買えなくなることは、
健康に直結する大問題です。
来年3月の
くらしの講演会では、
この問題を取り上げます。
講師の中野智紀先生にインタビューをしました。
中野先生がお勤めの東
埼 玉 総 合 病 院 は 、埼 玉 県 北
東部の幸手市にあります。
お 隣 に は 杉 戸 町 が あ り 、こ
の 2 つ の 市 町 の 住 民 と 、病
院とを結ぶのが院内にあ
る 在 宅 診 療 連 携 拠 点「 菜 の
は な 」で す 。今 回 は 、菜 の は
な の 中 野 先 生 は じ め 、ス
タッフの皆様にお話を伺
いました。
今 年 3 月 に 、杉 戸 町 に あ
るスーパーマーケットが
閉 店 し ま し た 。小 さ い な が
ら も 、郵 便 局 替 わ り で も あ
り 、宅 急 便 の 窓 口 で も あ
り、食料品も取りそろえ
地域の冷蔵庫が閉まるまで
中野智紀先生
−1−
なじみの店が閉店!
そ の 時 、あ な た の 健 康 は
発行 NPO法人地域医療を育てる会
代表 藤 本 晴 枝
http://iryou-sodateru.com/
第 7 4 号 平 成 2 7 年 1 2 月 5 日 発 行
東 金 市 東 金 1 1 4 2 「 東 金 の 家 」内
T E L:0 9 0 − 7 6 3 4 − 7 1 7 5
地域医療を育てる会 「CLOVER(クローバー)」 第74号
とは、「地 域 でこう いう 問 題
があるそうだ」という情報を
市 民 に伝 えることだ け 。し
かし、そ れも 「このことは誰
に伝 えた ら よ いか」「どこに
情 報 を届 け たら 効 果 的 か」
を菜 のはなのスタッフが知っ
て
いればこそ出来たのです。
菜のはなでは日ごろから地
域 の各 所 で「暮 ら し の保 健
室 」を 開 いて健 康 相 談 を し
たり 、対 象 地 域 のお宅 を一
軒 ず つ訪 問 して暮 ら しや健
康に関する聞き取り調査を
し たり す るなど、地 域 の情
報 を 積 極 的 に 集 めて いま
す 。そ して、困 っている人 に
は個別に電話連絡や訪問を
したり専門機関に紹介した
りすることで、地域の人々の
信 頼 を得 てきました。人 々
が「菜のはなに相談すれば何
とかなる」と思っているからこ
そ、スーパー閉 店 のよう に一
見 医 療 とは関 係 がなさそう
な情報も入っ
てくるのですね。
さら に、問 題 によっては菜
のはなのスタッフから 地 域 の
市民に相談や依頼が出来る
のも大きなポイントです。病
院 という 専 門 機 関 も 、地 域
の一 員 として助 け合 い・支 え
合いの輪の中に入っ
ているのです。
くらしの講演会に
いらっしゃい!
幸 手 市 、杉 戸 町 で起 き
たことは、私 たち の地 域 で
いつ起こってもおかしくない
ことです 。いえ、も し かし
たら す でに起 きていること
かも しれません。その時 、
私 たちの地 域 ではだれが、
なにが出 来 るでしょう ? 「く らしの講 演 会 」では、
中 野 先 生 にフードデザー
ト と健 康 、そ し て病 院 も
含 めた市 民 の取 り 組 みにつ
いて詳しくお話しいただき
ま す 。そ し て参 加 者 同 士
で話 し合 う 時 間 も 設 け ま
す 。皆 さんも 、是 非 「自 分
のこと」とし てこの問 題 を
考えてみませんか?
平成二十八年三月六日
(日 )午 後 一 時 から 、東 金
市 ふれあ いセンターにてご
一緒しましょう!
(コラム②参照)
(藤本晴枝)
「くらしの講演会」 のご案内
なじみの店が閉店!その時、 あなたの健康は…?
とき 平成 28 年 3 月 6 日 (日) 午後 1 時開会
※午後 4 時終了予定
ところ 東金市ふれあいセンター 多目的室
基調講演 中野智紀先生 分科会 「行きつけのお店はどこですか?」
まとめ
申し込み ・ 問い合わせ (2 月 24 日まで)
東金市社会福祉協議会
電話 0475 (52) 5198 FAX (52) 8227
E メール [email protected]
フードデザート (食の砂漠)
フードデザート地域に住む人々の間では、 「低栄養」 な
どの健康被害が拡大していることが危惧される。 イギリス
やアメリカでは、 フードデザート地域における健康被害に
関するレポートがある。 しかし、 日本の多くの自治体では
フードデザート問題を十分に認識していない。
フードデザートが深刻になる地域とは
・ 社会的弱者 (高齢者、 低所得者など) が集まって
住んでいる
・ 商店街の消失などにより、 買い物環境が悪化している
・ 家族 ・ 地域コミュニティの希薄化に伴い、
日常生活の中で助け合うことが出来ない
例) シャッター通りが増える地方都市の中心市街地、
農山漁村、 近所付き合いがない高齢化団地など
−2−
主役は住民 菜のはな は、
後方支援
この窮 状 に対 して真 っ先
に動 いた のは、スーパーの
あった地域の地区長さんで
し た 。地 区 長 さ ん は、商
工 会 や 行 政 のほかに、地
域 にいる様 々 な人 に声 を
かけ ます 。声 を かけ ら れ
た 人 がま た ほかの人 に声
を かけ る中 で、市 民 主 催
でフードデザートのワーク
ショップ(参 加 者 が自 主 的
に活 動 す る講 習 会 )を 開
くことになりました。
このワークショップを契 機
に、当 地 域 では住 民 の間
でいろいろな取 り 組 みが始
まっています 。その一 つが、
八 百 屋 さんの移 動 販 売 。
「自 分 の代 で店 じ ま い」と
思 っていた店 を息 子 さんが
継 いでく れることになった
ご主人。息子さんがこの地
域 の窮 状 を 知 り 、「トラッ
クで品 物 を 運 んで、移 動
販 売 を し た い」と言 いま
す 。採 算 を 考 えれ ば二 の
足 を踏 む商 いです が、「息
子 がやる、といっていること
を応援したい」と親子二代
で移 動 販 売 に踏 み切 り ま
した。
ここで菜のはながしたこ
コラム 2
コラム1