ヒラリズム 9の13 出雲 陽羅 義光 これは入沢康夫の詩だ。 【やつめさす 出雲 よせあつめ 縫い合わされた国 出雲 つくられた神がたり 出雲 借りものの まがいものの 出雲よ さみなしにあわれ】 この「あわれ」の解釈にはいろいろあって、文字通り「哀 れ」というものから下は「みっともない」上は「立派じゃな いか」まであり、そこが詩人の狙いでもあるんだろうが、実 際のところはわしにも解らない、今のところわしには一切関 係 な い 出 雲 が「 あ わ れ 」だ ろ う と「 あ わ れ に 非 ず 」だ ろ う と 、 どうでもいいんで、ここで云いたいのは、詩人は出雲を詠い な が ら 、小 説 を 語 っ て い る 気 が し て し ょ う が な い と い う こ と 。 出雲に関しては語る資格はまだない、勉強が足りない、小 説 に 関 し て は 語 る 資 格 は 疾 う に あ る 、誰 よ り も 勉 強 し て い る 、 そ れ で 云 う ん だ が 、小 説 こ そ 、こ の「 よ せ あ つ め 」 「縫い合わ された」 「つくられた」 「 か り も の の 」「 ま が い も の の 」 モ ノ で あり、さみなしに(虚しく)あわれなんである。 小説を書く際に必要なモノはなにか、ある人は「テーマ」 と 云 い 、あ る 人 は「 思 想 」と 云 い 、あ る 人 は「 素 材 」と 云 い 、 ある人は「魂」とか「精神」と云う、たしか「体力」と云っ た人もいた。 わしは二葉亭四迷が云った「技術」だと考えている、つま り、寄せ集める技術、縫い合わせる技術、作り上げる技術、 借 り る 技 術 、さ ら に 云 う な ら 、テ ー マ を 浮 き 上 が ら せ る 技 術 、 素材を上手く調理する技術、さらにさらに、小説に魂を籠め る技術。 だ か ら 、純 文 学 と か エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト と か の 区 別 な く 、 優れた作家は優れた技術者なのである。 たしかに技術は、先天的なものもあるが、鍛錬で上達する から、毎日毎日鍛錬していれば間違いなく上手くなる、逆に 少しさぼったりすると腕が鈍る。 わしの廻りでもよく書けない書けないとこぼす者がいるが、 それは当たり前で、毎日の鍛錬を怠っているから書けないん だ。 当たっているかはともかく、小説書くのは技術だと考えれ ば、苦労は要るが、気は楽になるだろうよ。
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