国債の海外IR及び国際会議について

資料④-1
国債の海外IR及び国際会議について
平成27年4月17日
海外IRの目的及び方針
海外IRの目的

海外投資家は、現在、国内流通市場において活発な取引を行っている。また、これまで国債は国内金
融機関を通じて安定的に消化されてきたが、急速な人口の高齢化に伴い家計貯蓄が伸び悩む等、国
債の国内における消化を支えてきた諸環境は今後変化していく可能性があり、海外保有比率も上昇し
ていく可能性がある。

こうした状況を踏まえて、引き続き国内での国債消化を重視しつつも、海外IRにおいては、海外投資家
の国債に対する正確な理解を促進しつつ、海外投資家の動向・ニーズを的確に把握するとともに、投資
家層の多様化により国債の安定消化を図る観点から実施。
海外IRの実施方針

国債管理政策に加えて、広く日本の経済政策や財政健全化の取組み等に関しても情報発信を強化。

海外中央銀行(外貨準備)、年金基金、生命保険など国債の安定的な保有が見込まれる投資家を重視。

欧米に加えて、アジア地域・新興国向けのIRを一層強化。

個別投資家との面談を通じて、投資家のニーズを踏まえた的確な情報提供・情報収集。セミナー方式や
ニュースレターの送信等の方法を適宜組みあわせ、費用対効果の高い海外IRを実施

海外投資家等から得られた情報について、関係部局で幅広く共有。

各国の国債管理当局や国際機関、海外中央銀行との関係強化。
(「国の債務管理の在り方に関する懇談会」議論の整理(平成26年6月18日)をまとめたもの)
2
海外投資家による国債保有割合
(%)
(兆円)
40
35
30
25
20
15
10
5
海外の国債保有額(右軸)
国債全体
31.9
31.1
28.3
28.6
28.928.8
28.1 31.5
31.6
28.0
26.8
95.5
25.4
89.8
86.1
86.5
23.8 23.4
83.7
82.6
81.7
78.3 81.8
79.0
82.0
77.0 76.7
21.4
84.1
19.5
67.9
19.0
19.1
21.4
18.7 17.5 63.3
17.8 17.0
67.8
18.9
15.8 16.1 58.1
61.9
50.3 60.1
55.0
14.0
45.7
55.6 52.3
33.5 39.639.142.2 42.3
59.2
52.1 56.6
49.3
55.2
34.7
46.4
9.7
8.6
32.5 33.6
8.5 8.3 8.7 9.1 8.6 8.5 8.4 8.1 8.5 8.4 8.5 8.9 9.3
12.3 7.4 8.0
11.3
7.5 8.4
6.9 7.0 6.8 6.4 6.0
6.6 6.4 7.1
7.8 7.6 8.57.8 11.5 11.25.9 7.6 6.5 7.7
6.0
5.6
5.1 5.5
5.5
4.6 4.3 4.4 4.4 5.2
6.3
5.3 5.2 5.6 6.0 5.8 5.6
5.1
5.0 4.9 4.6 4.2
4.1 3.9 3.8 3.9 4.3 4.2 4.7
3.9 3.7 3.8 3.9 3.8 4.1 4.5 4.5 4.3 4.1 4.4 4.5 4.5 4.4 4.2 4.1 4.1 4.1 4.1 4.8
30.2
国債(中長期債のみ)
140
120
短期債
100
80
60
40
20
0
05/06
05/09
05/12
06/03
06/06
06/09
06/12
07/03
07/06
07/09
07/12
08/03
08/06
08/09
08/12
09/03
09/06
09/09
09/12
10/03
10/06
10/09
10/12
11/03
11/06
11/09
11/12
12/03
12/06
12/09
12/12
13/03
13/06
13/09
13/12
14/03
14/06
14/09
14/12
0
36.3
(出所)日本銀行 「資金循環統計」
(参考)円債の地域別保有内訳
3
110
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
(兆円)
100.9
91.6
60.4
49.1
7.5
9.1
27.7
10.1
6.3
2.3
46.3
1.8
71.7
33.7
38.6
65.5
10.6
3.6
30.8
15.4
6.1
7.4
40.5
71.9
10.9
5.1
9.4
6.1
36.0
36.8
11.6
9.7
28.1
30.5
25.7
2011
2012
2013
79.5
10.6
4.5
96.9
13.9
27.0
11.9
9.2
4.6
7.5
6.5
9.0
7.7
10.4
6.9
9.9
8.7
11.9
20.2
2005
2006
2007
2008
2009
2010
(出所)財務省、日本銀行
JGB市場における海外投資家の最近の動向
海外投資家のプレゼンス
現物債市場
先物市場
(兆円)
全体
海外投資家
海外投資家の占める割合(右)
海外投資家の占める割合(短期債、右)
1,400
1,200
1,000
800
600
400
971
897
787
733 753 723
28%
23% 19% 21%
10%
737
24%
16%
21%
24%
15%
13%
200
202
171
0
96
30%
19%
125
156
145
2007 2008 2009 2010 2011 2012
(注)国庫短期証券を除き、債券ディーラー分を含まない。
(出所)日本証券業協会、大阪証券取引所
138
2013
3,000
50%
2,500
40%
2,000
30%
1,500
20%
1,000
10%
500
60%
全体
海外投資家
海外投資家の占める割合(右)
2,709
52%
50%
44%
2,128
40%
38%
35%
40%
38%
787
25%
17%
60%
(兆円)
40%
1,766 1,821 1,731
1,353 1,604 1,375
40%
30%
20%
16%
128
0%
2014 (暦年)
1,040
850
543
563
705
519
896
798
0
10%
0%
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014 (暦年)
月別売買高(短期債を除く)
海外投資家
超長期債
長期国債
中期国債
4
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
-5
-6
-7
10月 1月 4月 7月 10月 1月
2013 2014
2015
(出所)日本証券業協会
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
-5
-6
-7
都市銀行
10月 1月 4月 7月 10月 1月
2015
2013 2014
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
-5
-6
-7
信託銀行
10月 1月 4月 7月 10月 1月
2013 2014
2015
生保等
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
-5
-6
-7
10月 1月 4月 7月 10月 1月
2013 2014
2015
国債政策情報室設置(平成26年7月)
以降の取組み
① 海外IRは7回実施。21か国、30都市、112件訪問。各国中央銀
行、年金基金、生保、資産運用会社などを中心に面談を実施。
(北米)米国、カナダ
(欧州)英国、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、スイス、ノルウェー、デンマーク
(アジア大洋州)香港、シンガポール、タイ、マレーシア、豪州
(その他新興国)トルコ、ジョージア、メキシコ、ブラジル、チリ、ペルー
②
③
④
⑤
⑥
5
国内での面談等(来訪、訪問、ビデオ会議等)は51件。
うち在京各国中銀事務所等への訪問(計13回)、定期化(年2回)。
各種セミナーでの講演7件(国内5件、国外2件)。
新しい試みとしてビデオ会議による投資家面談。
ニュースレターによる情報発信の強化(毎月発行、英語情報
の迅速化)・マクロ経済等の情報も充実。
海外投資家の投資動向とIRの内容
IRを通じて得られた投資動向

IRで聴取した中では、全体的に、JGBはベンチマーク比でアンダーウェイトとするところが大多
数であったものの、一方で為替スワップを用いたJGB投資、円建てポートフォリオ維持、担保需
要等により一定程度の買いは継続。短期債中心であるものの、中長期でも買越し超が継続。
ただし、ボラティリティの動きなど最近の市場動向に関心。

中銀は、低金利下でもJGBへの投資を継続。

年金基金等によるJGBへの投資も一定程度継続。また現在保有していなくても金利次第で投
資を再開するとの意見は多く、全体として中長期的な視野でJGBに投資したい向きは多い。

物価連動債への関心を示す投資家は多い。

新興国においては、投資規制緩和などにより、海外への投資を拡大する動きあり。
海外IRにおける説明事項、主な質問・意見・関心事項等

国債管理政策だけでなく、経済政策、財政健全化の取組み等も幅広く説明。

先方の関心としては、発行計画・方針、国債市場動向に加えて、財政再建の取組み、日銀金
融緩和、アベノミクスの進捗状況など。

広範なテーマに渡って直接当局より説明を受けられる点が好評。
6
債務管理当局との情報交換
IR出張や国際会議、来訪を通じて13か国の債務管理当
局と市場動向や債務管理政策について意見交換。
またアジア新興国(タイ、ベトナム、ミャンマー)に対しては、
先方の要請に応じ、我が国の経験を紹介。市場育成、流
通市場の活性化、償還制度の整備などに関心。
主要国の債務管理政策について、昨年本懇談会でご報
告頂いた米・英・仏に加えて、ドイツ、イタリアについてまと
めると資料④-2のとおり。



7
国際会議について
債務管理政策に関する国際会議の一覧
目的
国際会議名
債務管理当局間の情報交換
OECD Working Party on Debt Management(先進国中心)
IMF Public Debt Management Forum
世銀 Government Borrowers Forum
ADB Regional Public Debt Management Forum(新興国中心)
外準運用担当者間での情報交換
ADB Regional Forum on Investment Management of Forex
Reserve
個人向け国債関係
International Retail Debt Management Conference
会議内容、先方からの要請などにより参加を判断。本事務年度はOECD Working
Party(14年11月)、世銀 Forum(14年12月)、ADB Regional Forum(14年11月)に参加。
外準運用担当者等が集うADB Regional Forumにおいては、日本の国債管理政策と
して発行計画や流動性対策等について発表。更に場外で個別バイ会談を設置する
ことによりIR活動に利用。
引き続き、情報交換やIR活動としての活用も念頭に、我が国として積極的に貢献で
きるよう参加していく。
•
•
•
8
最近の国際会議での主な論点(1)
低金利下での国債保有促進
運用サイドからは、期待リターンの低下や金利上昇によるダウンサ
イドリスクの抑制のため、通貨及びアセット分散の検討が課題となっ
ているとの意見。更に、先物やクレジットデリバティブを用いて超過
収益を狙うため、インハウス運用だけでなく外部運用会社への委託
を検討しているところもある模様。
また、金利低下が継続する中では、クーポン収入だけでなくキャピタ
ルゲインを加味してベンチマーク対比でのトータルリターンを重視し
た運用スタイルも定着。
これに対する発行サイドの対応としては、市場との対話、発行の柔
軟性の確保、商品の多様化(米国の2年変動利付債発行開始、英
国の人民元債・イスラム債の発行、各国外貨建て債の発行など)等
で市場のニーズに対応。ただし、新たな超長期年限(50年など)の発
行は需要やコストの問題等により現実的でないとする意見が多い。



9
最近の国際会議での主な論点(2)
規制強化の影響とその対応



規制強化の動きについては各国債務管理当局とも注目。
具体的には、米国におけるボルカー・ルール(※1)や、EU加盟国の
一部が検討している金融取引税(※2)に関心。
現状、各国債務管理当局からは、市場に特段の直接的な影響が出て
いるわけではないとのこと。もっとも、規制当局は必ずしも国債市場の
状況を十分に把握しているわけではないので、正確な情報を提供して
いくことが債務管理当局の役割であるとの考え方が共有されている。
(※1)2010年夏、米国で成立した金融規制改革法(ドッド・フランク法)による銀行の市場取引規制ルール。
銀行の自己勘定取引が規制されるが、2013年12月公表された最終規則においては、レポ取引等に
伴う金融商品の売買等は自己勘定に該当しないとされている他、引受業務関連等に加えて、外国
銀行や米銀の海外関係会社による外国ソブリン債取引は許容されるとしている。2015年7月から施
行される予定。
(※2)EU委員会で導入が検討されている、金融取引全般に対する課税。リーマンショック後に、金融機関の
投機的な取引を抑制するとともに金融機関に応分の負担を求めるべきであるという意見が高まり検
討開始。EU加盟国のうちドイツ、フランス、イタリア、スペイン等10か国程度が賛同。現在具体的な
内容が検討されているところ。
10
最近の国際会議での主な論点(3)
技術的・制度的な最近の話題について

アルゴリズム取引とそのメリット・デメリット




米国の国債市場及び国債先物市場における、超高速取引を
始めとするアルゴリズム取引が盛んになってきているところ、
そのメリット・デメリットに関心。具体的な事例に基づき検討が
進んでいる。
メリットとしては、コスト削減や取引の迅速化。
デメリットとしては、瞬間暴落のリスクや見せ玉による相場操
縦の危険性。
その他、人材育成・決済リスクを始めとするコスト管理及
びスワップ等を利用したリスク管理に関する情報交換等
11
今後の方向性 ― 海外IRの強化に向けて
情報提供・発信の強化
•
•
•
•
アジア・新興国向けIRの一層の
強化
•
•
長期安定保有者との関係強化
•
•
各国債務管理当局、国際機関
との連携強化
•
•
12
海外投資家の動向及び海外における日本の経済政策等に関す
る論調等の分析を踏まえ、IRの際に強調すべき点、国債管理政
策としてアピールすべき点等を明確にした説明を行う。
流通市場で影響力の大きい投資家に対しても幅広く正確な情報
提供を行う。
英語版ニュースレターの充実。
海外投資家の国内事務所訪問やビデオ会議等の新たな手段も
活用。
アジアにおける高い成長力を踏まえ、アジア地域向けのIRを更に
強化。
大きなポテンシャルを有する新興国の投資家との間にも、IRを通
じて、将来を見据えたネットワークを戦略的に構築。
外貨準備当局や年金基金など、長期安定保有が見込める海外
機関投資家を重視した、戦略的なIRを引き続き推進。
海外中央銀行及び在京事務所と定期的に意見交換を行い、関
係を強化。
IRや国際会議等で各国債務管理当局との情報交換を密に行い、
更なるリレーションを強化。
国際機関が主催するセミナー等で海外当局者、投資家向けプレ
ゼン等を積極的に実施するなど、国際機関との連携を強化。