中間期癌症例の比較読影による乳がん検診の考察

横浜医学,₆₅,₅₂₉-₅₃₆(₂₀₁₄)
症例報告
中間期癌症例の比較読影による乳がん検診の考察
―画像より測定した乳がんのダブリングタイムでの検討―
₁)
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須 田 嵩 ,石 田 卓 也 ,土 井 卓 子 ,外 山 理 恵 ,
₃)
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遠 藤 由 美 ,榮 裕 貴 ,酒 井 信 明 ,田 中 福 治 ,
₄)
₅)
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₆)
益 田 宗 孝 ,山 本 裕 司 ,山 本 隆 ,鈴 木 明 彦 公立高畠病院 乳腺外科, ₂ )湘南記念病院 乳腺外科,
公立高畠病院 放射線科, ₄ )横浜市立大学医学部 外科治療学,
₅)
神奈川県立足柄上病院, ₆ )山形大学医学部 第 ₁ 外科
₁)
₃)
要 旨:
〈目的〉中間期癌のデータを把握した上で,前回受診時の所見を見直すなどして,精度管理
及び検診現場にフィードバックすることは非常に重要なことである.平成₂₀年度の症例をベースに適
正なマンモグラフィ検診のあり方について検討した.
〈方法と対象〉読影医 ₂ 人及び放射線技師 ₄ 人
で前回検診時と今回のマンモグラフィを比較読影し所見の見直しをした.カテゴリーを再度分類し,
さらに,マンモグラフィよりダブリングタイムを計算した.₂₀年度の公立高畠病院での発見中間期乳
がん ₄ 例を対象とした.
〈結果〉検診のマンモグラフィを見直して,カテゴリーは ₁ で変化のなかっ
たものが ₂ 例,カテゴリーは ₃ とすべきであったものが ₂ 例あった.ダブリングタイムは,それぞれ
₁₁₇日・₁₇₃日・₁₆₆日・₇₀日であった.
〈考察〉発育速度の速いものもあれば遅いものもあったが ,検診
間隔が ₁ 年毎であった場合 ,₄ 症例のうち ₃ 症例は ,腫瘤径が ₁ ㎝前後と推定され発見可能であったと
推測された.発育速度の速い症例に対しては,隔年検診では不十分な可能性も考えられた.また,中
間期癌の検討からその結果をフィードバックし,読影医の能力を向上させることが大切と考えられた.
Key words:
中間期癌(interval cancers)
,比較読影(comparative reading)
,
ダブリングタイム(doubling time),発育速度分類(classification by growth rate)
,
検診間隔(screening interval)
緒 言
対象と方法
癌の検診受診者において,検診を受けてから次回の検
対象:平成₂₀年 ₄ 月から平成₂₁年 ₃ 月までの ₁ 年間に公
診受診期間までの間に自覚症状などの出現により医療機
立高畠病院で発見した乳がん₁₃例のうち,前回の検診結
関を受診し,癌と診断された場合は,中間期癌と扱われ
る.地域で発生した中間期癌症例を把握し,前回検診時
果で異常なしと判断された,いわゆる中間期癌の ₄ 症例
(₃₁%)を対象とした(表 ₁ ).
の所見の見直しを行い,マンモグラフィ読影の精度管理
を行い,検討結果を検診現場にフィードバックすること
方法:マンモグラフィ読影医 ₂ 名,放射線技師 ₄ 名で中
は重要なことである.今回,平成₂₀年 ₄ 月から平成₂₁年
間期癌と判断した ₄ 例の,乳がんと診断した画像と前回
₃ 月までの期間に,公立高畠病院で経験した中間期癌の
検診画像を比較読影し,前回のカテゴリー評価の見直し
症例を供覧し,前回検診時のマンモグラフィ所見を見直
を行った.次に,それぞれの画像から腫瘍径を計測し,
し,適正なマンモグラフィ検診のありかたについて検討
その変化から癌ダブリングタイム(腫瘍倍加時間) ₁ , ₂ )
した.
を求めた.また,これに基いて直径 ₁ ㎝の時期及び毎年
須田 嵩,山形県東置賜郡高畠町大字高畠₃₈₆(〒₉₉₂-₀₃₅₁)公立高畠病院 外科
(原稿受付 ₂₀₁₄年 ₆ 月₁₃日/改訂原稿受付 ₂₀₁₄年 ₇ 月₂₉日/受理 ₂₀₁₄年 ₇ 月₃₁日)
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