平成27年度 司法・警察、経済産業、 環境予算について

平成27年度予算特集②
平成27年度司法・警察、経済産業、環境予算について
主計局主計官 冨安
特集
平成27年度
司法・警察、経済産業、
環境予算について
泰一郎
文中、
〔 〕書きの金額は、対26年度当初予算
の他の経費とも概ね26年度当初予算と同水準であ
比の増減を表す。
ったが、エネルギー対策特別会計への繰入が▲
Ⅰ 経済産業省予算
600億円減少したため、一般会計予算全体では26
1.概観
年度に比べ大きく減少した。エネルギー特会への
繰入額が大きく減少したのは、金融機関への利払
平成27年度予算では、経済産業省一般会計予算
いのための原子力損害賠償支援勘定への一般会計
として9,220億円〔▲587億円〕を計上しており、
からの繰入の減など、前年度計上していた事業の
そのうちエネルギー対策特別会計への繰入が
剥落等による減が▲600億円程度あったことによ
5,838億円〔▲600億円〕を占めている。また、東
るものである。
日本大震災復興特別会計において、経済産業省関
係で982億円〔+225億円〕を計上している。
一方、平成26年度補正予算一般会計においては、
「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」を
一般会計予算では、ロボット技術などのイノベ
実施すべく、①事業者や家庭のエネルギーコスト
ーション促進や海外展開支援などを通じた我が国
への耐性強化、②再生可能エネルギーの接続問題
の競争力強化に努めるとともに、革新的なものづ
への対応、③エネルギー安定供給の確保、④地域
くり・サービス産業の創出や地域の中小企業・小
の中小企業・小規模事業者の活性化、といった喫
規模事業者の活性化を図っている。エネルギー対
緊の課題に対応するための予算を中心に、5,896
策については、再生可能エネルギーの最大限の導
億円(財務省分を含めた経済産業省関係全体では
入を図りつつ、
「選択と集中」の考え方の下メリ
6,605億円)の歳出を追加している。
ハリの付いた予算としている。省エネルギー予算
については、エネルギー価格の変動に耐性のある
経済へと転換するべく、対策に万全を期すととも
に、規制的手法との組み合わせにより最大限の効
2.一般会計
(1)科学技術振興
一般会計予算の科学技術振興費は997億円〔▲7
果を発揮することを目指したものとなっている。
億円〕と、26年度とほぼ同水準となっており、そ
復興予算については、引き続き被災地域の産業復
の過半を国立研究開発法人産業技術総合研究所
興や雇用創出、福島における再生可能エネルギー
(産総研)などの運営費交付金が占める構造とな
の拠点整備などに取り組んでいる。
エネルギー対策特別会計への繰入を除く一般会
計予算は、科学技術振興費、中小企業対策費、そ
っている。
産総研及び国立研究開発法人新エネルギー・産
業技術総合開発機構(NEDO)については「橋渡し」
ファイナンス 2015.4
【経済産業省一般会計・復興特会(経済産業省関係)
】
特集
(単位:億円)
26年度
当初
①
項 目
27年度
要求
②
27年度
予算
③
対要求
③-②
科学技術振興費
1,004
1,208
997
▲211
中小企業対策費
1,111
1,295
1,111
その他
1,254
1,370
1,274
エネ特繰入以外
3,370
3,873
エネ特繰入
6,438
9,807
▲7
▲0.7%
▲183
+0
+0.0%
▲96
+19
+1.5%
3,383
▲491
+13
+0.4%
7,103
5,838
▲1,265
▲600
▲9.3%
10,976
9,220
▲1,756
▲587
▲6.0%
+225
+29.7%
一般会計(経産省計上) ※25補正追加
※26補正追加
4,490
757
復興特会(経産省関連)
対26年度当初
③-①
5,896
397
+事項要求
※25補正追加
982
※26補正追加
1,077
―
機能の強化を行っている。具体的には、まず、平
予算を政府全体で1,248億円(運営費交付金含み
成26年度補正予算において、NEDOが中堅・中小・
26年度比+2.7%増)措置しているが、そのうち
ベンチャー企業と橋渡し研究機関との共同研究に
経済産業省予算としては、科学技術振興費と中小
助成をすることで、革新的な技術シーズを事業化
企業対策費において、医療機器の研究開発支援な
に結び付ける機能を強化している。また、平成27
どに177億円(26年度比+4.7%増)を措置してい
年度予算では、産総研の運営費交付金(26年度
る。
608.3億円→27年度617.9億円)において、研究初
福島第一原発の廃炉・汚染水対策については、
期段階では大学等からの技術シーズの汲上げ、研
平成26年度補正予算において231.1億円を措置し
究後期段階では企業コミットメントを得た受託研
ている。この中で、冠水工法を中心とした燃料デ
究を基本とするなどの改革を行うこととしてい
ブリ・炉内構造物の取り出し技術や、冠水が困難
る。
な場合の気中での取り出しに向けた工法の開発、
ロボット研究開発・普及促進事業については、
汚染水の増大を早期に抑制するための凍土遮水壁
26年度の82.7億円から111.2億円へと大幅増(+
に係る追加的な技術開発などを行うこととしてい
34.4%)としている。具体的には、現場で求めら
る。
れる機能に絞った安価かつ使いやすいロボットの
開発研究を進めるとともに、ロボットが自律的に
(2)中小企業対策
学んでいくAIの研究環境整備など、未だ実現して
一般会計予算の中小企業対策費は1,111億円〔+
いない次世代の中核的な技術開発を産学官の連携
0億円〕と、26年度と同水準となっている(別途、
で実施することとしている。
財務省分721億円、厚生労働省分24億円を計上し、
医療分野の研究開発については、昨年、健康・
一般会計全体の中小企業対策費は1,856億円〔+
医療戦略推進本部で決定された「医療分野の研究
3億円〕
)
。平成26年度補正予算と一体で、中小企
開発に関する総合戦略」に基づき、国立研究開発
業・小規模事業者の革新の支援や、地域の中小企
法人日本医療研究開発機構(AMED)に集約する
業・小規模事業者の活性化に向けた施策を推進す
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ファイナンス 2015.4
平成27年度予算特集②
平成27年度司法・警察、経済産業、環境予算について
年度補正予算に671億円(別途、財務省分709億
としている。
円)
、平成27年度予算に338.7億円(同720.6億円)
第一に、中小企業・小規模事業者の革新の支援
を計上している。
として、平成26年度補正予算では、ものづくり・
その他、独立行政法人中小企業基盤整備機構の
サービスの革新に取り組む中小企業・小規模事業
運営、中小企業・小規模事業者への経営支援拠点
者による設備投資、試作品開発等を裾野広く支援
の整備、商店街支援・中心市街地活性化、消費税
するため、
ものづくり・商業・サービス革新事業(も
転嫁対策等のため、所要の予算を計上している。
のづくり・サービス補助金)1,020.4億円を計上
している。また、平成27年度予算においても、革
(3)その他
新的ものづくり産業創出連携促進事業128.7億円
上記のほか、日本企業の海外展開支援や対内直
及び商業・サービス競争力強化連携支援事業9.9億
接投資促進のため、独立行政法人日本貿易振興機
円により、研究機関等と連携して行う革新的なも
構(JETRO)の運営費交付金を積み増し(26年度
のづくり・サービスの開発等に向けた取組みを支
218.6億円→27年度237.8億円)ており、これによ
援することとしている。さらに、商工会・商工会
り、トップセールスの戦略的活用や有望な外国企
議所による経営指導、販路開拓支援等を通じて、
業を発掘・誘致するための産業スペシャリストの
小規模事業者の事業の持続的発展を支援するた
配置などを実施することとしている。その他、中
め、小規模事業者支援パッケージとして、平成26
小・小規模事業者海外展開戦略支援事業や世界の
年度 補 正 予 算 に252.2億円、平成27年度予算に
膨大なインフラ需要を積極的に取り込むためのイ
46.5億円を計上している。
ンフラシステム海外展開促進調査事業を実施する
第二に、地域の中小企業・小規模事業者の活性
化に向けて、ふるさと名物の開発・販路開拓、人
材の確保、創業・第二創業等を支援することとし
こととしている。
3.エネルギー対策特別会計
ている。具体的には、地域資源を活用した「ふる
エネルギー対策特別会計には、石油石炭税収を
さと名物」の開発・販路開拓等を支援するととも
財源とするエネルギー需給勘定、電源開発促進税
に、
「ふるさと名物」のブランド化等を行うため
収を財源とする電源開発促進勘定、原子力損害賠
のプロジェクトを支援するため、ふるさと名物応
償支援勘定の3つの勘定がある。平成27年度予算
援事業として、平成26年度補正予算に40億円、平
では、政府全体で見て、一般会計からエネルギー
成27年度予算に16.1億円を計上している。また、
需給勘定に5,382億円〔▲372億円〕
、電源開発促
地域内外の若者・女性等の多様な人材から、中小
進勘定に3,043億円〔▲79億円〕繰り入れている。
企業・小規模事業者が必要とする人材を発掘し、
なお、原子力損害賠償支援勘定については、平成
紹介・定着までを一貫して支援するため、中小企
27年度予算では一般会計からの繰入額は0億円
業・小規模事業者人材対策事業として、平成26年
〔▲225億円〕である。これは、平成27年度予算で
度補正予算に60.1億円、平成27年度予算に10億円
原子力損害賠償支援勘定の歳出には賠償金支払い
を計上している。さらに、女性・若者等の創業希
に必要となる資金の金融機関からの借入に係る利
望者や事業承継を契機として新分野に挑戦する第
子203億円を計上しているが、同勘定の歳入には
二創業者を支援するため、創業・第二創業促進補
既に平成26年度予算において積み立てた特会内の
助金として、平成26年度補正予算に50.4億円、平
資金(原子力損害賠償支援資金)から財源を受け
成27年度予算に7.6億円を計上している。
入れることとしたためである。
第三に、中小企業の資金繰り支援に向けた日本
こうした繰入の結果、石油石炭税収6,280億円
政策金融公庫の財務基盤の強化等のため、平成26
のうち898億円、電源開発促進税収3,230億円のう
ファイナンス 2015.4
11
特集
るとともに、資金繰り対策等にも万全を期すこと
特集
ち187億円を一般会計に留保したかたちとなって
ルギー需給構造高度化対策」と、石油製品の流通
いる。
や資源開発、石油備蓄などを行う「燃料安定供給
また、一般会計からの繰入のほか、前年度剰余
対策」とで構成されており、平成27年度の経済産
金や資金からの受入といった財源をあわせた特会
業省予算では、それぞれ3,207億円〔▲518億円〕
、
出 口 ベ ー ス の 歳 出 は、 エ ネ ル ギ ー 需 給 勘 定 が
2,766億円〔▲71億円〕を計上している。
7,097億円〔▲581億円〕
、電源開発促進勘定が
3,495億円〔▲141億円〕
、原子力損害賠償支援勘
①エネルギー需給構造高度化対策
定が203億円〔▲92億円〕となっている。
<再生可能エネルギー関連予算>
なお、経済産業省の平成26年度補正予算では、
再生可能エネルギーについては、
「エネルギー
エネルギーコスト対策を中心に3,284億円をエネ
基本計画」
(平成26年4月閣議決定)において、
ルギー対策特別会計に計上しているが、これらは
平成27年度までの3年間最大限の導入を図ること
全て、エネルギー需給勘定からの支出であり、財
となっており、引き続き積極的な導入支援を行う
源は全て一般会計から同勘定への繰入としてい
こととしている。
る。
特に、平成24年7月からスタートした固定価格
買取制度は、昨年、電力会社において、再生可能
(1)エネルギー需給勘定
(石油石炭税財源)
エネルギー事業者からの申込みに対する回答保留
を行う事態となっていたが、本制度の円滑な実施
エネルギー需給勘定の歳出は、再生可能エネル
のため、
「接続保留問題への緊急対応」として平
ギーや省エネルギー関連の施策を実施する「エネ
成26年度補正予算で744億円の事業費を計上した。
【平成27年度エネルギー対策特別会計予算の全体像】
エネルギー需給勘定
石油石炭税 6,280億円
一般会計留保
差額898億円
電源開発促進勘定
電源開発促進税 3,230億円
6,280億円
3,230億円
うち経産省分
5,020億円
うち経産省分
1,416億円
一般会計
うち経産省分
646億円
特会繰入
5,382億円
剰余金等
うち経産省分
4,374億円
1,716億円
うち経産省分
1,599億円
エネルギー需給勘定 7,097億円
一般会計留保
差額187億円
一般会計
うち経産省分
▲48億円
174
周辺地域
億円
整備資金
剰余金等
特会繰入
3,043億円
うち経産省分
1,464億円
279
億円
電源開発促進勘定 3,495億円
燃料安定供給対策
エネルギー需給
構造高度化対策
電源立地
対策
電源利用
対策
原子力安全
規制対策
経済産業省
2,766億円
経済産業省
3,207億円
経済産業省
1,619億円
文部科学省
953億円
環境省
458億円
環境省
1,125億円
文部科学省
146億円
経済産業省
170億円
内閣府
140億円
ファイナンス 2015.4
一般会計
原子力損害
賠償支援資金
202
億円
剰余金等
1
億円
うち経産省分
203億円
うち経産省分
325億円
環境省
8億円
12
原子力損害賠償
支援勘定
原子力損害賠償支援勘定
203億円
原子力損害賠償支援対策
経済産業省
203億円
平成27年度予算特集②
平成27年度司法・警察、経済産業、環境予算について
下げにつながるような技術実証を行うこととして
入可能量拡大の実証、②再エネ事業者の蓄電池設
いる。
特集
この中で、①系統への大型蓄電池の設置による受
置支援、③双方向通信出力制御技術の確立、④被
災地における再エネインフラ整備支援などを行う
〈省エネルギー関連予算〉
こととしている。また、同補正予算では、系統に
現在、電力料金は震災前に比べて家庭用の電気
接続しない地産地消型などの再生可能エネルギー
料金は約2割、 産業用では約3割上昇しており、
導入促進支援として238億円の予算を計上してい
今後も高止まる可能性がある。また、ガソリン価
る。なお、引き続き、電力多消費産業への賦課金
格の一時期の高騰は原油価格の下落によりおさま
減免制度の補てんも実施することとしており、平
ったものの、エネルギーコストの変動に対する耐
成27年度予算では、そのために456億円の予算〔+
性を強化していく必要がある。こうした状況を踏
166億円〕を計上している。
まえ事業部門、家庭部門、自動車関連などにおけ
固定価格買取制度については、買取総額が右肩
る省エネの取組みを加速することとしている。
上がりとなっており、今後も急速に増加していく
まず事業部門については、平成27年度予算にお
ことが見込まれている中、①認定容量と各電力会
いて、エネルギー使用合理化補助金を410億円〔26
社の接続可能容量との関係、②燃料価格の高騰や
年度と同額〕措置している。これにより、工場・
原発停止の影響による電気料金の引上げとの関
事業場における省エネ・電力ピーク対策のための
係、③財政が厳しい中で増え続ける電力多消費産
高効率設備・システムへの入替を促すこととする。
業への減免措置、などの課題があり、これらを十
また、同補助金や生産性向上設備投資促進税制を
分に勘案し、買取価格や減免措置について、国民
利用しない(できない)中小事業者向けに、機器
負担が過大とならないよう見直していくことが不
単位(LED照明、 高効率ボイラー・空調、 断熱材等)
可欠である。
で最新モデルの省エネ設備導入を支援するための
再生可能エネルギーについては、その導入促進
に向けて最大限努力する一方で、財政制度等審議
会「 平 成27年 度 予 算 の 編 成 等 に 関 す る 建 議 」
(H26.12.25)において、
「総花的に導入補助や実
予算を、平成26年度補正予算において929.5億円
計上している。
家庭部門に対しては、平成26年度補正予算にお
いて、定置用リチウムイオン蓄電池導入支援(130
証実験が行われている」
「より選択と集中を行い、
億円)や、民生用燃料電池(エネファーム)導入
予算の重点配分を行っていくべき」と指摘された
支援(222億円)の補助金を計上している。上記
ことを踏まえ、例えばベースロード電源であり、
の補助金は未だ高価であるこれらの機器について
我が国に多くの資源が賦存している地熱発電関連
量産効果による価格低減を通じて自律的な市場の
予算については、開発調査事業(80億円)
、地元
確立を促すことを目指している。住宅については、
理解促進事業(28億円)
、環境アセスメント調査
平成26年度補正予算において、住宅・ビルの革新
早期化実証(20億円)などの必要な予算を拡充す
的省エネ技術導入促進として150億円を計上して
ることとした。一方、固定価格買取制度で既に導
おり、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの導入
入が進んでいる太陽光発電をさらに導入促進する
支援や、トップランナー基準を満たす建材(断熱
事業や、海洋エネルギーの技術開発の中でも実用
材や窓等)
、照明の導入支援等を行うこととして
化が困難と見込まれる事業等については極力スリ
いる。
ム化し、次世代の発電技術の開発等に特化するな
自動車関連では、クリーンエネルギー自動車等
ど、メリハリ付けを行っている。また、浮体式洋
導入促進対策を、平成26年度補正予算で100億円、
上風力など1kWあたりコストが高いために事業
平成27年度予算で200億円計上している。これは、
化が進まない発電方法については、よりコスト引
電気自動車(EV)や、プラグインハイブリッド
ファイナンス 2015.4
13
(PHV)
、燃料電池自動車(FCV)向けの購入補助
特集
金であり、実際の車体価格が目標価格に到達しな
い場合には補助金額を削減するなど、出口戦略と
セットで実施することとしている。
適切な出口戦略を同時に検討していくことが重要
であると考えられる。
こうした点を踏まえ、上述の省エネルギー関連
予算については、規制強化などの手法と組み合わ
また、こうしたクリーンエネルギー自動車の普
せた事業を重点的に措置することとしている。例
及に欠かせないインフラ整備として、FCV用水素
えば事業部門においては、平成26年より改正省エ
ステーション整備補助、EV用充電ステーションの
ネ法が施行されており、節電対策の実施状況など
整備補助に、平成26年度補正予算でそれぞれ95.9
について報告義務が課せられている。また、総合
億円、300億円を措置している。特に燃料電池自
資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギ
動車については、昨年12月に、日本で世界に先駆
ー分科会の省エネルギー小委員会では、昨年末に
けて一般向けに販売が開始されたばかりであり、
「これまでの議論の中間的整理」を発表し、その
そのステーションについても、
「エネルギー基本
中で、業務部門へのベンチマーク制度の導入や産
計画」における目標「2015年内に100カ所程度」
業部門のベンチマーク制度の対象拡大などが今後
を達成すべく、整備を加速することとしている。
の検討課題として提言されている。住宅について
その他、平成27年度予算では、エネルギー使用
も、平成27年4月より新省エネ基準(25年基準)
量やCO2排出削減に資する観点から自動車等の輸
の完全施行が予定されており、また、平成25年12
送機械の抜本的な軽量化につながる技術開発(革
月には断熱材、平成26年11月には窓ガラス、サッ
新的新構造材料等技術開発:42.6億円)や、電源
シが建材トップランナー制度の対象として追加さ
が切れても記憶している情報を失わない半導体を
れている。平成26年度補正予算及び平成27年度予
用い電力消費を最低限にまで抑える新たな情報処
算における省エネ関連施策は、こうした規制強化
理技術を開発する事業(ノーマリーオフコンピュ
の動きと連動して措置しているものである。
ーティング基盤技術開発:5.0億円)などを計上し
ている。
省エネ活動は家計や事業者自身のコスト削減に
②燃料安定供給対策
〈コンビナート事業再編・強靭化〉
もつながるものであり、本来、民間の自律的かつ
石油業界への産業競争力強化法第50条調査(事
持続的な活動として根付かせていくべきものであ
業再編の必要性の調査)の初適用(平成26年6月
る。こうしたことを踏まえれば、国の施策は、国
に結果公表)を踏まえ、業界の事業再編の支援を
全体のCO2削減目標を示すとともに、それに向け
行う。また、平成24年度補正予算で実施した「コ
た民間の自主的な取組みを促す方向(インセンテ
ンビナート総点検」の結果を踏まえ、コンビナー
ィブ付けをする方向)で講じられるべきものであ
トの強靭化支援を行うこととする。
り、補助金的手法は、自主的に省エネを行わない
具体的には、石油コンビナート事業再編・強靭
民間事業者を動かすものではなく、専ら補助金的
化等推進事業として平成26年度補正予算で95億円
手法に頼り続けることは厳しい財政状況の下では
を措置ししつつ、平成27年度予算で115億円を措
適当ではない。国は、①民間事業者自身の省エネ
置し、①複数製油所等の事業再編・統合運営によ
のインセンティブを見極め、真に国が関与するに
る設備最適化投資や、②製油所単位での残油処理
相応しい分野にターゲットを絞った必要最小限の
能力等に優れた次世代型製油所モデルの構築投
ものとするとともに、②今後の自律的・持続的な
資、③首都直下地震等に備え被害を最小化し早期
取組みにつなげていけるよう規制的手法と補助金
の石油供給機能回復に必要な製油所等の強靭化投
的手法を適切に組み合わせた「政策のベストミッ
資、などを支援し、石油コンビナート等の生産性
クス」を追求しつつ、③補助金的手法については
と危機対応力を向上させることとしている。
14
ファイナンス 2015.4
平成27年度予算特集②
平成27年度司法・警察、経済産業、環境予算について
〈石油製品流通対策〉
年度予算で125.4億円計上し、砂層型メタンハイ
ドレートの商業化実現に向けた技術の整備や、表
層型メタンハイドレートの資源量把握に向けた広
円を措置している。これにより、SS(サービスス
域調査、地質サンプル調査などを実施することと
テーション)の災害対応能力を強化するための地
している。
下タンクの入れ換え・大型化や、自家発電機導入、
SS過疎地における簡易計量器の設置などを支援す
〈燃料備蓄〉
る。また、平成26年度補正予算でも、SSの経営安
燃料備蓄については、引き続き国家備蓄石油・
定化の観点から、LED照明の導入などの運営コス
施設の管理に514.5億円、石油精製業者等が所有
ト削減につながる設備の更新・導入を支援する予
するタンクの借上げに284.5億円の予算を計上し
算(74.8億円)を措置している。
ている。また、国家備蓄、民間備蓄に次ぐ「第三
なお、石油製品品質確保事業は、石油製品が適
の備蓄」として産油国共同備蓄を推進することと
正な品質で安定的に供給されるよう、事前の通告
しており、平成27年度予算では、産油国石油安定
なしに全SSを訪問し、石油製品を抜き打ちで購入
供給基盤強化事業に41.5億円を計上している。こ
(試買)
、検査する事業であるが、
「秋のレビュー」
れにより、有事における我が国への優先供給を条
の結果を踏まえ、過去に不適合が確認されたSSな
件として、国内の民間原油タンクを産油国国営石
どを中心に、
対象SSのサンプル分析件数を現状(28
油会社に貸与するために必要な費用を補助するこ
万件)から半分程度(11.3万件)に縮小・重点化し、
ととしている。
予算をスリム化(26年度予算15億円から11.5億円
に減額)した。
また、流通経路などの要因によって本土と比べ
(2)電源開発促進勘定
(電源開発促進税財源)
て高い状態にある離島のガソリン小売価格を実質
経済産業省における電源開発促進勘定の歳出
的に引き下げるべく、平成27年度予算では、離島
は、発電設備の建設と運転を円滑にすることを目
ガソリン流通コスト支援事業30.5億円を計上して
的とする「電源立地対策」と、発電用施設の利用
いる。
促進と安全確保等を目的とする「電源利用対策」
とで構成されており、平成27年度では、それぞれ
〈資源開発〉
1,619億円〔▲72億円〕
、170億円〔▲9億円〕を
石油・天然ガスの安定的かつ安価な供給の確保
計上している。勘定全体では▲80億円の減少とな
に向けて、資源外交を積極的に展開するとともに、
っているが、これは、原発立地地域への交付金に
JOGMECを通じたリスクマネーの供給を強化する
ついて、地域の振興計画の終了などにより立地自
ことにより、我が国企業による石油・天然ガスの
治体からの申請額が減少したこと等を反映してい
権益獲得等を強力に推進し、供給源の多角化を進
るものである。
めることが必要である。そうした観点から、探鉱・
具体的には、まず電源立地地域対策交付金が
資産買収等出資事業出資金として、平成27年度予
912.2億円と、前年度に比べ▲74.4億円の減少と
算で485億円を計上しているが、緊要性の高い一
なっている。その一方、中間貯蔵施設整備のため
部の事業については、平成26年度補正予算で98億
に、原子力損害賠償・廃炉等支援機構に350億円
円を計上し、先行的に出資を行うこととしている。
の交付金を措置、
「中間貯蔵施設等に係る対応に
国内資源についても、我が国近海に多く賦存し
ついて」
(平成26年8月8日環境省、復興庁)を
ていると見込まれるメタンハイドレートの開発促
踏まえ、福島県に対する電源立地地域対策に係る
進事業に平成26年度補正予算で20億円、平成27
交付金の増額(+17億円)などを行うこととして
ファイナンス 2015.4
15
特集
石油製品の安定供給を確保するため、平成27年
度予算で地域エネルギー供給拠点整備事業33.9億
特集
いる。福島県に対しては、同交付金増額に加え、
電線等の導入に対する補助に37億円〔▲13億円〕
福島第一原発に係る大熊町、双葉町への立地交付
を措置するなど、それぞれ予算のスリム化を行い
金などを統合し「福島特定原子力施設地域振興交
つつ、
適切に計上している。また、
宮城県において、
付金」として92.9億円を計上している。また、原
インフラを制御するITシステム・セキュリティの
子力発電施設立地地域基盤整備支援事業につい
国際的な評価・認証機関を3年以内に確立させ、
て、平成27年度予算では23.0億円と、26年度の
地元企業とともに産学官連携のサイバーセキュリ
8.0億円に比べ+15億円の増額を行っている。
ティ国際拠点の整備を図る観点から、重要インフ
ラIT安全性検証拠点整備事業として、4.0億円〔▲
4.復興関係
1.2億円〕を計上している。
平成27年度は集中復興期間の最終年であること
や被災地復旧・復興の進捗を踏まえ、必要な予算
については引き続き十分な措置を行いつつ、可能
な限り効率化している。
Ⅱ 環境省予算
1.概観
平成27年度予算では、環境省一般会計予算とし
まず、被災地の産業復興・雇用創出に向けて、
て2,962億円〔▲81億円〕を計上しており、その
中小企業組合等共同施設等災害復旧事業、いわゆ
うちエネルギー対策特別会計への繰入(エネルギ
るグループ補助金を400億円〔+179.3億円〕
、
津波・
ー需給勘定)が1,008億円〔±0億円〕
、公共事業
原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金を
関係費が573億円〔+10億円〕
、原子力規制委員会
360億円〔+60億円〕
、それぞれ計上している。ま
関係(同電源開発促進勘定繰入等)で452億円〔▲
た、被災中小企業・小規模事業者の資金繰り・事
95億円〕となっている。また、東日本大震災復興
業再生支援として、
123.6億円〔+35.1億円〕
(別途、
特別会計において環境省関連で6,672億円を計上
財務省分108億円)を計上している。
している。
一方、福島再生可能エネルギー関係では、産総
平成27年度予算は、財政健全化の観点から一般
研が福島に整備している再生可能エネルギー研究
会計歳出を対前年で抑制する一方、老朽化が進行
拠点の機能強化のための費用として10.8億円〔▲
している一般廃棄物処理施設の適切な更新等の安
5.3億円〕
、原子力災害の被災地において、住民帰
全・安心な環境の確保、地球温暖化対策の更なる
還やふるさとの再建を目的とした再生可能エネル
推進、原子力災害からの福島復興の加速化等を着
ギー発電設備の導入、それに付帯する蓄電池や送
実に実施するための予算となっている。
【環境省一般会計・復興特会(環境省関係)
】
項 目
26年度
当初
①
(単位:億円)
27年度
要求
②
27年度
予算
③
対要求
③-②
対26年度当初
③-①
環境省 一般会計
3,043
3,659
2,962
▲697
▲81
▲2.7%
エネ特繰入
(エネ需勘定)
1,008
1,261
1,008
▲253
0
0.0%
公共事業関係費
563
783
573
▲210
+10
+1.7%
原子力規制委員会
547
521
452
▲69
▲95
▲17.4%
5,469
4,889
6,672
+1,783
+1,203
+22.0%
東日本大震災
復興特別会計
(注)原子力規制委員会は、原子力防災(内閣府計上分132億円)等を含め、一般会計+特別会計出口ベースでは、606億円(614億円、
▲1.2%)
。また、26年度補正においては、原子力防災(内閣府計上分90億円)等を含め、118億円を措置。
16
ファイナンス 2015.4
平成27年度予算特集②
平成27年度司法・警察、経済産業、環境予算について
2.一般会計
平成2年度以降にダイオキシン類対策のために
(1)先 端技術を用いた再エネ・省エネ
の加速化(エネルギー需給勘定)
整備し、現在老朽化が進行している一般廃棄物処
省エネ技術等の研究開発を加速化させるととも
理施設の適切な更新、大規模災害発生時における
に、水素等先端的な再生可能エネルギーの導入拡
廃棄物処理の対応拠点整備、拡大している鳥獣被
大や省エネ型ノンフロン型冷凍冷蔵機器の導入促
害への対応強化、海岸の環境保全等、安全・安心
進等を行うことにより、再エネ・省エネを一層推
な環境の確保のための施策を推進することとして
進することとしている。
いる。
具体的には、第一に、電子機器に組み込まれて
具体的には、第一に、廃棄物処理施設の整備を
いる各種デバイスを高効率化し、徹底したエネル
支援するため、循環型社会形成推進交付金(浄化
ギー消費量の削減を実現する技術開発・実証を行
槽分を除く)に355億円を計上し〔+12億円〕
、平
うため、未来のあるべき社会・ライフスタイルを
成26年度補正予算においても283億円を措置した。
創造する技術イノベーション事業として15億円
第二に、深刻な被害が生じているシカやイノシシ
〔+9億円〕を計上している。第二に、将来的に
等指定鳥獣について、都道府県による捕獲対策を
大幅なCO2排出削減に資する技術を社会に導入す
支援するため、指定管理鳥獣捕獲等事業として5
るため、民間の開発インセンティブが小さく、将
億円〔新規〕を計上した。第三に、地方公共団体
来の地球温暖化対策強化につながる技術開発・実
等が実施する海岸漂着物等及び漂流・海底ごみの
証事業を実施するため、CO2排出削減対策強化誘
回収・処理等を支援するため、海岸漂着物等地域
導型技術開発・実証事業として65億円〔+17億円〕
対策推進事業として4億円〔新規〕を計上した。
を計上している。第三に、地域の特性を活かした
(2)成長力強化・経済活性化への貢献
世界を惹きつける国立公園の創出・発信等に取
水素利活用システムを構築した上で、先進的かつ
低炭素な水素技術の実証やCO2削減効果の実証等
を行うため、再エネ等を活用した水素社会推進事
り組むとともに、循環産業等、我が国の環境関連
業として27億円〔新規〕を計上している。第四に、
企業の振興を進めることにより、成長力強化・経
温室効果が極めて小さい自然冷媒を使用した省エ
済活性化に貢献することとしている。具体的には、
ネ型ノンフロン冷凍冷蔵機器等の導入を促進する
例えば、自然環境の再生、修復や歩道、標識等の
ため、先進技術を利用した省エネ型自然冷媒機器
施設整備を行うため、自然公園等事業費を88億円
普及促進事業として64億円〔+13億円〕を計上し
〔+3億円〕計上しており、特に、富士山等訪日
外国人の増加が見込まれる国立公園におけるビジ
ターセンターやトイレの改修費用等として6億円
を計上した。また、産業廃棄物処理業のビジネス
市場の現状把握・将来見通しの分析、海外展開の
ている。
(2)行政改革推進会議「秋のレビュー」
を踏まえた見直し(エネルギー需
給勘定)
促進等の検討等を通じて、産業廃棄物処理業の振
上記のように、エネルギー需給勘定においては
興を支援するため、産業廃棄物処理業のグリーン
地球温暖化対策推進のために必要となる予算を確
成長・地域魅力創出促進支援事業として1億円〔新
保する一方、行政改革推進会議「秋のレビュー」
規〕を計上した。
における指摘を踏まえ、事業内容の見直しや所要
額の精査を行っている。具体的には、第一に、低
炭素価値向上に向けた社会システム構築支援事業
について、
「費用対効果の意識を持って事業を進
ファイナンス 2015.4
17
特集
(1)安全・安心な環境の確保
3.エネルギー対策特別会計
特集
めるべき」との指摘を踏まえ、要求された事業内
壌等の除染の実施に4,153億円〔+1,572億円〕
、
容のうち費用対効果の低いものを認めず、また一
旧警戒区域等の対策地域内廃棄物や汚染状態が基
部事業の支援対象の要件を厳格化しており、また、
準を超える指定廃棄物(8,000Bq/kg超)の処理の
執行実績を踏まえ予算額を縮減した結果、計上額
ため、放射性物質汚染廃棄物処理事業に1,337億
を73億円〔▲21億円〕としている。第二に、二国
円〔+7億円〕を計上しており、また、中間貯蔵
間クレジット制度(JCM)基盤整備事業について、
施設の詳細設計や施設整備、用地補償等に係る経
「地球温暖化対策全体の中での事業の位置づけが
費として758億円〔▲254億円、但し前年度予算
明確ではない」との指摘を踏まえ、所要額を精査
からの繰越予定額(450億円超)と合わせ、実質
した結果、計上額を27億円〔▲10億円〕としてい
的に1,200億円超の事業規模となる見込み〕を計
る。
上している。
なお、前述の「中間貯蔵施設等に係る対応につ
(3)原子力規制・防災対策の強化
(電源開発促進勘定)
いて」を踏まえ中間貯蔵施設の建設地域及び福島
県全域における生活再建・地域振興策としては、
通信機器や防護服等の整備、オフサイトセンタ
総額3,010億円の新規かつ追加的な支援措置を講
ーの整備等、自治体の原子力防災対策を支援する
じることとしているが、このうち、中間貯蔵施設
ため、原子力発電施設等緊急時安全対策交付金に
等に係る交付金(1,500億円、環境省)及び原子
122億円〔+1億円〕を計上するとともに、平成
力災害からの福島復興交付金(1,000億円、
復興庁)
26年度補正予算においても要援護者施設等の放射
は、平成26年度補正予算に計上している。
線防護対策等を実施するため90億円を計上してい
る。
4.復興関係
(1)除染・中間貯蔵施設の事業の加速化
(2)避 難指示解除準備区域等における
健康管理・健康不安対策等の強化
避難指示解除準備区域等において、健康管理・
復興の動きと連携した除染を推進するととも
健康不安対策を強化するため、個人の被ばく線量
に、除染により発生した土壌等を管理・保管する
の把握を丁寧に進め、リスクコミュニケーション
中間貯蔵施設について、早期の建設着手に取り組
等を推進する。また、福島県の県民健康調査をフ
むこととしている。
ォローアップするため、付随する調査研究等につ
予算としては、放射性物質により汚染された土
いて支援を行うこととしている。
【除染等に関する予算の推移】
23年度
予備費
除染
汚染廃棄
物処理
23年度
3次補正
18
24年度
当初
2,080
1,997
3,721
99
451
772
11
20
2,459
4,513
中間貯蔵
施設
合計
(単位:億円)
2,179
ファイナンス 2015.4
24年度
補正
25年度
当初
4,978
104
104
25年度
補正
27年度
当初
合計
(参考)
うち25年
度末まで
の執行額
2,582
4,153
20,314
9,222
971
1,330
1,337
5,065
435
146
1,012
758
1,947
29
4,924
6,248
27,327
9,687
6,095
804
26年度
当初
804
平成27年度予算特集②
平成27年度司法・警察、経済産業、環境予算について
体制の強化や犯罪捜査能力の向上に資する予算に
線量計を用いて外部被ばく線量を正確に把握し、
重点配分する観点から、テロ対策や大規模災害対
また、県民健康調査に付随する調査及び研究事業
策の推進87億円〔+24億円〕
、サイバー犯罪・サ
を支援するための経費として、放射線被ばくによ
イバー攻撃への対処22億円〔+0億円〕
、危険ド
る健康不安対策事業に6億円〔+6億円〕等の予
ラッグを含む薬物事犯対策や暴力団対策等の組織
算を計上している。
犯罪対策40億円〔▲4億円〕
(緊急性に鑑み、平
Ⅲ 司法・警察予算
成26年度補正予算で6億円措置)
、ストーカー・
1.概観
DV事案や特殊詐欺対策等の生活の安全を脅かす犯
罪対策の推進36億円〔▲3億円〕
、客観証拠重視
警察庁、法務省、裁判所は、都道府県警察、刑
の捜査のための基盤整備(DNA鑑定、司法解剖等
務所、地方入国管理局、地方裁判所等、全国にお
にかかる経費)109億円〔+5億円〕
、安全かつ快
ける司法警察活動の現場を支えており、これらの
適な交通の確保(交通安全施設整備にかかる補助
予算は、人件費を含めた義務的経費の割合が高く
金等)202億円〔▲7億円〕
、
警察基盤の充実強化(警
なっている。平成27年度予算は、安全・安心な社
察車両・航空機・船舶、警察施設整備)334億円〔+
会の実現に向けて、犯罪傾向に対応した捜査力の
15億円〕等を計上している。
強化、テロ対策、大規模災害対策、再犯防止対策、
出入国管理体制の強化等に重点的に配分してい
る。
2.警察庁
(1)一般会計
平 成27年 度 は、 警 察 庁 一 般 会 計 予 算 と し て
3,216億円〔+3億円〕を計上している。このうち、
(2)復興関係
東日本大震災復興特別会計には、福島第一原子
力発電所周辺地域における災害警備活動を実施す
るための経費、警察施設や交通安全施設の復旧等、
計20億円〔+8億円〕を計上している。
(3)定員
交通反則金収入を原資とする交付税及び譲与税配
定員については、サイバー空間の脅威への対処
付金特別会計の繰入金が673億円である。前年度
能力の強化、組織犯罪対策・テロ対策等の推進、
予算からの増加は、主に、平成28年度のサミット
生活の安全を脅かす犯罪対策等の推進等の必要性
開催に向けた警備事前準備経費の増加等を反映し
を踏まえ、警察庁職員(98人)について新規増員
ている。
を行うことにより、新規増、合理化減等をあわせ
警察庁予算(交付税特会繰入を除き2,542億円)
は、大別して次の3つの要素から構成されている。
た警察庁の定員は8,372人〔+13人〕となっている。
また、地方警察官については、ストーカー・DV等
(イ)人件費890億円(都道府県警察の職員のうち
の人身安全関連事案対策の強化、特殊詐欺対策の
警視正以上の階級にある警察官(一般職の国家公
強化及び我が国を取り巻く国際情勢の変化に対応
務員)及び警察庁職員)
、
(ロ)国費物件費966億
するための事態対処能力の強化の必要性を踏まえ
円(警察教養、警察通信、犯罪鑑識、警察用車両、
1,020人の増員を行うことにより、地方警察官の
航空機及び船舶並びに警備装備品に要する経費)
、
警 察 法 施 行 令 に よ る 定 員 基 準 は、 全 国 で25万
(ハ)都道府県警察に要する経費に対する補助金
3,100人となる(岩手県警察等に関する特例(警
686億円である。補助金のうち、成田国際空港警
察法施行令附則第29項)の定員360人(26年度
備隊にかかる人件費等を含めると、総人件費は
450人)を除く)
。
1,029億円となり、警察庁予算の約4割を占める。
主な重点分野を概観すると、我が国の危機管理
ファイナンス 2015.4
19
特集
具体的には、例えば、帰還地等において、個人
平成27年度予算特集②
平成27年度司法・警察、経済産業、環境予算について
3.法務省
特集
(1)一般会計
平 成27年 度 は、 法 務 省 一 般 会 計 予 算 と し て
7,375億円〔+76億円〕を計上している。予算の
7割近くを占める人件費は、平成26年度人事院勧
告を反映して増加し4,945億円〔+73億円〕とな
っている。
理化減等をあわせた法務省の定員は52,544人〔+
117人〕となっている。
4.裁判所
(1)一般会計
平 成27年 度 は、 裁 判 所 一 般 会 計 予 算 と し て
3,131億円〔+20億円〕を計上している。裁判官・
主な重点分野を概観すると、第一に、刑務所出
書記官等を含む裁判所職員の人件費は、予算の8
所者等の再犯防止対策に116億円〔+17億円〕計
割以上を占め、平成26年度人事院勧告を反映して
上し、出所者等の就労や住居の確保支援を中心に、
増加し2,628億円〔+29億円〕となっている。こ
施設内処遇(矯正)及び社会内処遇(保護観察)
の他、全国の裁判所において裁判を運営するため
の連携及び充実強化を図ることとしている。第二
に必要な経費150億円〔▲9億円〕
、裁判所施設の
に、訪日外国人旅行者の増加に対応できるよう、
整備に必要な経費140億円〔+0億円〕
、司法修習
出入国管理体制の強化に133億円〔+5億円〕計
生に対する貸与金51億円〔▲5億円〕等が含まれ
上し、出入国審査に必要な機器等の計画的な整備
る。
等を図ることとしている。この他、検察活動の充
実強化(取調べの録音・録画機器やデジタル鑑識
機器の整備等)17億円〔+5億円〕
、治安・テロ
(2)定員
定員については、複雑困難化する民事訴訟事件
対策の強化(公安調査庁)27億円〔▲1億円〕
、
の適正・迅速な処理に資する合議体による審理の
登記所備付地図整備事業の推進23億円〔+3億
促進、増加が続く成年後見関係事件を含む家庭事
円〕
、総合法律支援の充実強化として日本司法支
件の処理等のため、裁判官(32人)
、書記官(6人)
援センター(法テラス)が行う業務にかかる経費
等について新規増員を行うことにより、新規増、
309億円(国選弁護人確保業務、民事法律扶助業
合理化減等をあわせた裁判所の定員は25,736人
務等)
〔▲2億円〕
、矯正施設等の耐震化等の施設
整備費190億円〔▲2億円〕等の予算を計上して
いる。
(2)復興関係
東日本大震災復興特別会計には、登記事務処理
の適正・迅速な実施のための経費7億円、法テラ
スによる震災法律援助事業に要する経費4億円
等、計16億円〔▲23億円〕を計上している。
(3)定員
定員については、治安体制の強化に重点を置き、
検察官(10人)
、
検察事務官(127人)
、
矯正職員(240
人)
、保護観察官(15人)
、社会復帰調整官(10人)
、
地方入国管理官署職員(171人)
、公安調査庁職員
(27人)
、法務本省職員(9人)
、法務局職員(63人)
について新規増員を行うことにより、新規増、合
20
ファイナンス 2015.4
〔▲4人〕となっている。