ポインター基底測定(Pointer basis measurement) 2015/4/14 ˆS を測定する方法を考える.簡単のために,AˆS は離散的かつ非縮退 系 S の初期状態 |ψ⟩S の下で物理量 A な固有値を持っているとする. ミクロ系 S に対する測定器系 D について考えよう.この測定器には実数値で測定結果の表示を行う一次 元のメーターが備わっているとし,初期の量子状態をメーターの位置 x ˆD のスペクトルを用いて次のように 表す. √ ϕ(x) = ⟨x|ϕ⟩D = 1 ϵ Θ( − |x|) ϵ 2 (1) ここで Θ は階段関数,ϵ は正の実数である.ϵ はメーター値の広がりを表しており,初期状態は x が中心か ら ±ϵ/2 の範囲に等確率で分布している状況を表している. 測定に当って対象系 S と測定器系 D の合成系を考えよう.合成系はそれぞれのヒルベルト空間のテンソル 積で表される.従って全体の初期状態は次のようになる. |Ψ0 ⟩ = |ψ⟩S |ϕ⟩D (2) 系 S と系 D の間には初期時刻 t = 0 から終時刻 t = T までの期間に次の相互作用が働き,それ以外では系 は相互作用をしないものとする. Vˆ = g(t)AˆS pˆD , suppg ⊂ [0, T ] (3) ここで pˆD は位置演算子 x ˆD の共役演算子,g(t) は相互作用の強さを表す c-number である. g(t) として期間中に一定の強さ g の相互作用が働く場合を考える. { g g(t) = 0 0≤t≤T otherwise (4) このとき相互作用中の V は t によらず一定であり,系の時間発展を次のように書くことができる, |Ψ(t)⟩ = e−iV t |Ψ0 ⟩ ˆ (5) 特に終時刻 T 以降の |Ψ(t)⟩ は常に一定であり,系 D を波動関数表示すると |Ψ(t); x⟩ = ⟨x|D e−i(gAS pˆD )T |Ψ0 ⟩ ˆ ˆ = e−gT AS ∂x |ψ⟩S ϕ(x) ˆ と表せる. ˆS を固有値分解 AˆS = ここで A ∑ an |n⟩ ⟨n| で書き,さらに 1 (6) ) ( exp AˆS = = ( )k ∞ AˆS ∑ k=0 ∞ ∑ k=0 = ∑ k! ∑ k ( n an |n⟩ ⟨n|) k! |n⟩ ⟨n| n = ∑ ∞ k ∑ (an ) k! k=0 |n⟩ ⟨n| ean n を用いると, ∑ |Ψ(t); x⟩ = ˆ |n⟩ ⟨n| e−gT an 1S ∂x |ψ⟩S ϕ(x) ˆ n ∑ = ⟨n|ψ⟩ |n⟩ ϕ(x − gT an ) n ∑ =: cn |n⟩ un (x) (7) n と書けることが分かる.すなわち測定から得られるメーターの中央値が各 n に対して x=gT an に変化する のである. ˆS の固有値が縮退していない場合を考えているので,gT を次の条件を満たすほど十分に大きくとれ 今は A ば,各 un (x) は異なる n に対して直交する. ˆ ⇒ gT min |an − am | > ϵ (8) n,m ∞ −∞ un (x)um (x)dx = δn,m (9) 従って系 D の測定値は各 n を完全に区別する.合成系の状態が un (x) |n⟩ の和で書かれていることから, 系 D の測定により n が判明すれば系 S の測定後の状態は |n⟩ であることが確定する.さらに系 D の測定値 が n を指定する確率は, ˆ pn = dx ⟨n| u∗n (x) |Ψ(t); x⟩ = |cn | = |⟨n|ψ⟩| 2 2 (10) ˆS を理想測定した結果 an を得る確率と一致している.このように となり,系 S が初期状態にあったとき A ˆS に対する理想測定の一種になっている. ポインター基底測定は系 S の物理量 A 2
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