12/17 信金・信組セクターの相次ぐ破綻と安全網整備―信金中金の信用

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信金・信組セクターの相次ぐ破綻と安全網整備―信金中金の信用力は安定的
12 月 17 日の日経新聞は一面で信用金庫・信用組合の経営安定化策の概要を伝えた。来年 4 月から
のペイオフ解禁を前に、地方の小規模金融機関から大規模銀行や郵便貯金などへの個人預金の移
動がすでに見て取れるが、この傾向は今後も継続する可能性が高い。今年度に入り信金・信組の破綻
が相次いでおり、新聞報道によると今年 10 月から 11 月の 2 ヶ月間だけでも21 の信金・信組が破綻し
た。個々の信金・信組は規模が小さく、基本的に「ツー・ビッグ・トゥ・フェイル」の概念が働きにくいため
比較的早いペースで破綻処理が進む。現在は、破綻したこれらの機関には預金保険機構より資 金 贈
与が行われることで、預金者の全額保護がなされている。しかし一方で、地域住民や中小企業の預金
に支えられている信金・信組セクターの場合、小額預金者の漠然とした不安心理が預金流出に結び
つきやすく、預金全額保護の条項が失効後、一時的な流動性悪化に端を発した不必要な連鎖破綻は
充分想定されるため、それを防ぐのが今回報道された安定策の主目的であろう。
現在全国には 364 の信用金庫と250 を超す信用組合とがあり、ひとつひとつは規模が小さいが、総額
になるとかなり大きい。信組セクターの場合、全国から集められた預金残高は総額約 18 兆円、貸出金
残高 13 兆円程度。預金、貸出金ともに信組セクターは減少が続いている。一方、信金セクターは信組
よりはるかに規模が大きく、全国の預金残高総額 104 兆円、貸出金残高総額 65 兆円程度。経済悪化
で、地方の優良貸出機会は全般に減少していることに加え、貸出先の信用リスクが高まっており、中小
企業金融機関はどこも融資に積極的な姿勢を打ち出しにくくなっていると思われる。
こうした状況を反映して、信金セクターの中央銀行的存在である信金中央金庫のバランスシート(2001
年 9 月末時点の総資産 26.6兆円)には、個別の信金レベルで投融資にまわらなかった余剰資金が預
金として 20 兆円弱も流れ込み、その残高はこの半年で 2 兆円以上増加した。対する資産運用のほう
は、国や公益機関という低リスク貸出が増加傾向にあるが、それでも運用資産全体の 4 割に満たない
程度。同行のバランスシートのリスクプロファイルは流動性・信用リスクともに、大手都銀とはかなりの差
がある。
信金中金が発行する金融債残高は 4兆円程度で、資金全体の17%程度と金融債への依存度は低い。
個別地方信金の破綻が相次ぐ中、それが偶発債務として信金中金の信用力に悪影響を及ぼすので
はという懸念を抱く投資家もいるが、バランスシートの流動性が極めて高いことに加え、自己資本が厚
いことから同行の信用力は安定的とわれわれは見ている。格付け機関の評価も概して高く、ムーディ
ーズは財務格付け C+/シニア A1、見通しは安定的。S&P は最近大手邦銀の格付けの一律見直し
に入ったが、信金中金についてはシニア AA−を維持、見通しをネガティブに変更するにとどめた。現
在市場では IBJ 発行の金融債スプレッドが大きくワイドニングしているが、IBJ と信金中金とでは信用
要素が違うため信金中金の金融債が同様のトレンドを描く可能性はかなり低いと思われる。