水後- 1 ノリの突然変異育種 技術の開発(シーズ 開発型

平成26年度農林水産技術総合センター 試験研究課題の外部評価結果
調書
No.
研究課題名
主なコメント
水後- ノリの突然変異育種 【評価の結論に至った理由・考え方】
1
技術の開発(シーズ ・遊離アミノ酸含量の多い色素変異株が分離されており、今後の
開発型)
発展が期待される。
・突然変異を起こし、その変異株を分離・作出できたことには独創
平均
性があり、先進性に富むと判断した。育種による品種確立までの
先進性
4.3
道筋が見えたことで発展性にも優れると考えた。
発展性
4.3
・環境の変化に伴うノリの数量の減少は深刻な問題である。それを
解決する技術として期待できると考えられる。ただ、説明、資料か
らは先進性について知ることはできなかった。
【アドバイス】
・今後、瀬戸内海の生態系を広く見据えて、ノリが生産物であると
ともに栄養塩の吸収を行う生物として捉え、瀬戸内海に面する各
府県とも連絡を取り合いながら瀬戸内海の健全性を探る総合的
な事業として展開してほしい。
・平成 25 年度の本県のノリ生産量は、13 億 2,670 万枚(前年 11
億 7,812 枚)、生産金額は 110 億 2,898 万円(前年 90 億 9,193
万円)、平均単価 8 円 30 銭(前年 7 円 70 銭)となった。漁期全体
では、色落ち被害のひどかった西播磨地区を除き、前年度を上
回る結果となった。生産現場では、海域によって栄養塩動向が
大きく異なるため、漁場にあった種苗を求めている。さらに総合
的なニーズとしては、味の良い高品質なノリ、色落ちしにくいノリ
の開発等、強い要望がある。この度の突然変異育種技術の開発
により、兵庫県ブランドとして高水温でもよく伸びる、栄養塩が低
下しても黒いノリが育つ品種開発に繋がることと、加えてよく伸び
て成長性がよく、「穴」「くもり」のない良質な製品になる種苗の開
発を期待したい。ノリの交雑育種や突然変異育種による新品種
が実現すれば、本県ノリ養殖業にとって非常に有意義なことで、
この技術の確立により、前述の品質の良い品種を早く開発してい
ただきたい。
1
平成26年度農林水産技術総合センター 試験研究課題の外部評価結果
農後- DNA マーカー等を利 【評価の結論に至った理由・考え方】
1
用した効率的な病害 ・ターゲットの抵抗性遺伝子をかなり絞り込めており、基礎研究とし
抵抗性黒大豆品種の
育成(シーズ開発型)
ての先進性・発展性は高いと考える。
・遺伝的背景の向上、高精度の DNA マーカー選定により、病害抵
抗性についての一連の課題の目標が達成されたことを評価す
平均
る。
先進性
4.3
・何がどのようにして病害虫に対して抵抗をもたらすのかがよく理
発展性
4.0
解できなかったが、病害虫の被害が大きいのなら必要性が高
い。ただし、遺伝子をその必要性が高いからといって、安易に操
作する風潮に対しては少し懸念を感じる。
【アドバイス】
・丹波黒は本県特産品であることから、この研究によって病害に起
因する損耗を著しく低下することができ生産者の利益を拡大する
ことができる。技術の普及を図ることが期待される。
・食味アンケートでも丹波黒と遜色ないとの結果が出ており、黒大
豆の安定性供給に役立つと思われる。病原抵抗性の高い黒大
豆を開発することで、大規模な病害発生時の危機管理に備える
ことができる。さらに、抵抗性遺伝子は黒大豆だけでなく、黄大
豆にも応用可能である。兵庫県ブランドとしての品種登録、認知
度向上、技術移転を進める必要があると思われる。
・兵庫県丹波黒振興協議会は、現状、既存の丹波黒優良3系統
に限定して振興しているため、丹波黒とは別に命名すれば良い
のではないか。
農後- 美方大納言小豆のブ ・播種適期の特定など、明らかにされた知見は、派手さはないもの
2
ラ ン ド化支援 の ため
の現場に於いて役立つ有意義なものである。技術の普及が望ま
の安定生産技術の確
れる。
立
・美方大納言小豆の安定生産技術の確立と、色の特色を活かした
6次産業化への取組みによるブランド化によって、生産者の利益
に繋がることを期待する。
農後- 野菜における有機農 ・様々な仮説検証、研究の結果、多くの生産者が容易に導入する
3
業発展のための合理
ことができる土壌消毒技術であると思われ、有機農業の発展に
的・効率的栽培技術
寄与する技術である。残根除去機については、様々な環境の生
の開発
産者に利用していただくことで、問題点を抽出することができ、技
術改善が可能である。カラシナすき込みによる土壌消毒技術は、
手軽に導入することができ、環境にも優しく感じられることから、
消費者の作物に対するイメージが良くなると思われる。
・熱水消毒、カラシナすき込みは一定の効果を示しているように思
われる。一方、残痕除去は、(さまざまな方法と組み合わせて用
いるにしても)もう少し効率を上げることが望まれる。
2
平成26年度農林水産技術総合センター 試験研究課題の外部評価結果
農後- 新規亜リン酸資材を ・レタスのブランド化や環境創造型農業を確立するうえにおいて有
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核としたレタス難防除
病害制御技術の開発
用な技術であり、技術の普及に努めていただきたい。
・レタスの環境創造型農業の推進を図るための技術である土壌
pH を上昇させない肥培管理、アブラナ科野菜との輪作により、ビ
ッグベイン病、べと病についても発病制御が可能となっている。
当該技術の普及により農薬の代替メニューとして消費者の安心
安全な食材へのニーズに対応することが可能であると思われる。
ただし、今回作製した新規亜リン酸資材はコストがかかるとのこと
である。低コストで導入可能な pH 降下型肥料の早期の開発が望
まれる。
農後- 昆虫の特性を利用し 【評価の結論に至った理由・考え方】
5
た施設微小害虫の物 ・害虫の色彩認識に視覚コントラストが関わっているという結論は
理的防除技術の開発
非常にユニークな発見であり、新規害虫防除技術開発につなが
(シーズ開発型)
ることが期待される。
・昆虫の行動と防除を関連させてとらえ、実際の防除技術を開発
平均
先進性
4.0
発展性
4.0
したことを先進性に優れる点として評価した。
・農業の害虫防除における最も基本的な技術開発の姿勢だと思
われ好感が持てるが、先進性や発展性は高くはない。
【アドバイス】
・昆虫の視認性の高い近紫外線域の視覚を利用した物理的防除
技術はユニークな発想による技術である。様々な試行錯誤の結
果であり、農薬の使用量低減に寄与する技術になる可能性が高
い。1~2年で製品化が可能になるとのことだが、技術移転により
様々な環境でのテストの結果、コストパフォーマンス、精度ともに
高い製品開発が可能になると思われる。
・どのくらいのストライプが適切か、今後の研究の展開を期待した
い。
農後- 土 壌 病 害 虫 診 断 技 【評価の結論に至った理由・考え方】
6
術 等 の 開 発 ( 土 壌 ・eDNA によって土壌の状態(潜在的な脅威)を推定・評価する技
eDNA 診断等を活用
術は先進性が高いと思われる。また、うまくいけば様々な分野で
した野菜類土壌病害
の応用が期待できる。
の診断システムの確 ・科学的には先進性が高く、また大きな可能性を秘めた課題と思
立)
われる。ただし、実際の応用技術に発展するには克服すべき課
(シーズ開発型)
題がかなり存在すると想像される。
・新規技術開発を試みているが、まだ検討・工夫の余地がかなりあ
平均
ると思われる。
先進性
3.7
【アドバイス】
発展性
4.0
・発病ポテンシャルを推定し防除技術の選択に活用する技術開発
は有用である。研究のさらなる発展に期待したい。
3
平成26年度農林水産技術総合センター 試験研究課題の外部評価結果
・土壌抽出 DNA データを用いた発生予測のための解析技術によ
り、土壌診断項目が明確化され、発生リスクポイントを数値化する
ことが可能になり、発生リスクに対する対応策が分かりやすくな
る。現在は研究段階であるが、更にデータを収集し、リスクレベル
や対応策の精度を上げることで、生産者の経験や勘だけでない
新たなノウハウ蓄積に役立つ可能性がある。
農後- 光による施設花き類 ・本技術の開発、普及によって花き類の生産者の利益に繋がるこ
7
病害の発病抑制技術
の開発
とが期待できる。本技術は、他の品目への応用が期待できる。
・防除効果が高く、現場ニーズの高いバラうどんこ病の発病抑制
技術として、光照射による生産システムを構築した。光は上から
照射するだけで効果があり、また、既存の蛍光灯を付け替えるだ
けで利用可能であり、他の作物にも応用できる点が評価できる。
利用する紫外光源については、従来品の半額で長寿命のものを
パナソニックと開発しており、技術普及が可能であると思われる。
林後- 地中探査用レーダを 【評価の結論に至った理由・考え方】
1
用いた樹木根の非破 ・レーダによる樹木根非破壊検出は、ユニークで応用可能性の高
壊的推定法の確立
(シーズ開発型)
い技術であると考える。
・学術的外部資金を得ていること、国際的な学術雑誌に論文発表
している点、またその研究内容も応用面に発展できる可能性をも
平均
っていることで先進性が極めて高いと判断した。
先進性
4.3
・このような地中探査技術の開発がまだ行われていないのなら、そ
発展性
4.0
れは先進的で画期的なことだと言える。しかし、この分野に人が
どのように取り組んでいるかを概観的に説明していただかない
と、評価が難しいところであった。
【アドバイス】
・近年、土石流災害が頻発するようになってきている。できるだけ
早く減災へ応用されることを望む。
・地中レーダによる樹木根の非破壊検査により、防災機能の定量
的評価が可能になる。土砂災害等の防災、減災には森林の役
割が大きく、レーダ探査による根系緊縛力を推定する手法を開
発することで、森林の現状把握が可能である。この手法により、
森林の現状を把握した上で森林整備を実施し、減災効果の高い
整備が可能になる。今後はこれらのデータを蓄積し、森林整備
に生かすことで、減災効果を検証することになる。災害が起こる
前に自然の力で減災可能な森林整備のノウハウは様々な環境、
実績データから精度の高い推測が可能になると思われる。これら
を開発し全国に広めることで兵庫県のブランド力向上に繋がる。
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