理科(物理)

平 成24年 度(前期日程)
入学者選抜学力検査問題
物
理
〔注意事項〕
1.監督者の指示があるまで,この冊子を開いてはいけません。
2.解答用紙
(!枚目だけでなく,",#枚目も)
に受験番号を"箇所とも必ず記入しなさ
い。
3.この冊子の問題は,!ページ分印刷したものからなっています。落丁・乱丁および印
刷の不鮮明な箇所などがあれば,手をあげて監督者に知らせなさい。
4.下書用紙およびこの冊子の白紙と余白は,適宜下書きに使用してもよろしい。
5.解答は,必ず別紙
「解答用紙」
の指定された場所
(問題番号に対応する解答欄)
に記入し
なさい。指定された場所以外や,裏面への解答は採点対象外です。また,解答欄に
は,特に要求されていなければ,途中の計算式などを書き込まず解答のみ記入しなさ
い。
6.解答用紙は,持ち帰ってはいけません。
7.この冊子および下書用紙は,持ち帰りなさい。
◇M4
(378―19)
%
宇宙空間中に浮かぶ質量 m の宇宙船を操作する。図$に示すように,宇宙船には$から'の
番号で区別される'つのロケットエンジンが備わっており,それぞれが独立に x 軸または y 軸
に平行な矢印の向きの推進力を宇宙船に与えられるようになっている。ただし,各エンジンの一
回の動作は一定時間 Δt に限られ,その間だけ,大きさ f の一定の推進力が生じる。宇宙船の
姿勢は常に一定であり,宇宙船の運動は x―y 面内の点の運動として表現できるとする。また,
エンジンの推進力以外の力は考えず,燃料の消費にともなう宇宙船の質量変化は無視する。
はじめに,宇宙船は図%のように座標の原点に静止していたとする。時刻 t =# から,エン
ジン$と%を同時に一回だけ動作させた。時間 Δt が経過した後はエンジン停止状態を保った。
! このエンジンの動作によって,宇宙船が受けた力積の大きさ !,および宇宙船になされた
仕事 " はいくらか。
" 時刻 t = Δt のときの宇宙船の原点からの距離 !,および時刻 t =&Δt のときの宇宙船の
原点からの距離 " を求めよ。
# 時刻 t =# から &Δt の範囲で,宇宙船の原点からの距離 L は,時刻 t に対してどのよう
に変化するか。L と t の関係を表すグラフを解答欄に描け。ただし,あらかじめ記入された
点 A が,時刻 t =&Δt のときの宇宙船の位置を表すように描くこと。
$ その後,いくつかのエンジンを同時に一回だけ動作させて宇宙船を静止させた。その結果,
宇宙船の原点からの距離は d となった。何番
(複数可)
のエンジン ! を,どの時刻 " から
動作させたか。
静止した宇宙船の位置に座標の原点をとりなおす。ここで,エンジンの動作を制御する装置が
故障し,ある時刻から以下のような異常な運転が始まったとする。ただし以下で,T は Δt よ
りも十分長い一定の時間とする。
! はじめに,エンジン$が一回動作し,その後 T の間全エンジンが停止状態になる.
" つづいて,エンジン%が一回動作し,その後 T の間全エンジンが停止状態になる.
# つづいて,エンジン&が一回動作し,その後 T の間全エンジンが停止状態になる.
$ つづいて,エンジン'が一回動作し,その後 T の間全エンジンが停止状態になる.
引きつづき,! に戻る.このようにして,! から $ までの動作をいつまでも繰り返す.
% 最初の ! から $ までの過程における宇宙船の軌道を図示してみよう。ただし,T が Δt
よりも十分大きいために,軌道は折れ線で表すことにする。解答欄の x―y 面内にあらかじめ
描かれた太線は ! の過程の軌道を表している。これに続けて," から $ の過程の軌道を
描け。
― 1 ―
◇M4
(378―20)
# 問い " の ! の過程でエンジンが停止している時間 T の間の宇宙船の速さはいくらか。
$ さらに T よりも十分長時間にわたって運動を追跡し続けたとき,宇宙船はある一定の平均
速度で原点から遠ざかっていくように見える。宇宙船が遠ざかっていく方向を,x―y 面内にお
ける x 軸の正方向から測った角度で答えよ。
(配点率 33%)
― 2 ―
◇M4
(378―21)
#
図は加速度センサー,すなわち加速度を電圧に変換して出力する装置の模式図を示している。
ばね定数 k の軽いばねの一端がケースに固定されており,他端に質量 m のおもりが取り付け
てある。おもりには厚さと質量が無視できる可動極板 X が取り付けてあり,ケースには固定極
板 A と B が取り付けてある。極板 A と X,および極板 X と B はそれぞれ平行板コンデン
サー !,および平行板コンデンサー " を構成している。各極板はいずれも面積が S であ
り,おもりおよびケースから電気的に絶縁されている。ケース内は真空であり,真空の誘電率は
ε0 とする。ここで,極板 A と極板 B の間隔を w とし,極板 A と極板 X の間隔を x とす
る( x < w )
。ばねが自然長であるときの x の値を d とする。
センサーを図のように水平に置いたとき,センサーに水平方向の加速度が加わると,センサー
内のおもりが慣性力とばねの復元力の釣り合う位置に変位する。加速度および力の向きは水平右
向きを正とする。
最初,センサーは水平に静止した状態で,ばねは自然長であったとする。
まず,極板 A と B の間に起電力 V0 の電池を接続した。以下の問い $ ∼ & に答えよ。
$ 極板 A と X の間,および極板 X と B の間の電場の大きさは等しい。その大きさを求め
よ。
% コンデンサー ! とコンデンサー " の合成容量を求めよ。
& コンデンサー ! に蓄えられている電気量を求めよ。
次に,ケースを固定した状態で,おもりを手で動かして変位させた。このときの極板 A と X
の間隔を x として以下の問い ' ∼ ) に答えよ。
' おもりがばねから受ける力を求めよ。
( コンデンサー ! の電気容量を求めよ。
) 極板 A と X の間の電位差を求めよ。
このあと極板 X を x = d の位置に戻し,静かにおもりから手を放した。次に,センサーに
加速度 a を与えたところ,おもりが変位して極板 X が移動した。以下の問い *,+ に答え
よ。
* 極板 A と X の間隔 x の値を求めよ。
+ 極板 A と X の間の電位差を求めよ。
― 3 ―
◇M4
(378―22)
この加速度センサーを用いると,問い ! の電位差を測定することで加速度 a を知ることが
できる。ここで
「加速度 a の変化量に対する問い ! の電位差の変化量の比率」
を加速度セン
サーの感度と考え,この感度を大きくするための工夫をしたい。次の問いに答えよ。
" おもりの質量 m,ばね定数 k,電池の起電力 V0,極板 A と B の間隔 w,ばねが自然長
のときの極板 A と X の間隔 d ,のそれぞれの値が感度に与える影響について,
# 値を大きくすると感度が大きくなる
$ 値を小さくすると感度が大きくなる
% 値を変えても感度は変わらない
のいずれであるかを,対応する解答欄に記号 #,$,% で答えよ。
(配点率 34%)
― 4 ―
◇M4
(378―23)
!
空気中を伝わる音速は温度によって変化する。温度 T
[℃]のときの音速 v は次式で与えら
れるとする。
aT )($℃ における音速 v0,および音速の温度係数 a は正の定数)
v = v(%+
0
以下の問いに答えよ。
! 音速 v,振動数 f,波長 λ の間の関係式を示せ。
" 図%のように,音波が温度 T1 の領域%から温度 T(
2 T2 > T1)の領域&に入射していると
する。音波は領域%および&の境界面に対して,矢印の方向に斜めに入射した。
! 領域&に入った後に音波が進む方向を解答欄の図に矢印で示せ。ただし,破線は領域%の
矢印を領域&まで延長した直線である。
" 領域&に入った後に,音波が ! の解答の方向に進む理由を答えよ。
# 図&のように,平面上で直線 L に対して対称の位置に置かれた&個の小さなスピーカーか
ら,振動数および振幅の等しい音波が連続的に出ているとする。直線 L 上の点 P にいる観
測者には,スピーカーから出る音波が強めあって音が大きく聞こえている。点 P から,直線
L に対して垂直な方向に観測者が動いていくと,音は一度小さくなってから大きくなってい
き,やがてある点を過ぎると再び小さくなる。この点を Q とする。
! このように音の強弱が起こるのは,波に特有な現象のためである。その現象は何という
か。
" 点 Q の位置は,この実験を行っている場所の温度が変化すると移動する。温度が高く
なったとき,距離 PQ は長くなるか,短くなるか,理由とともに答えよ。
# 点 Q の位置は,スピーカーから出る音波の振動数が変化した場合にも移動する。温度が
$℃ と T
[℃]で異なる振動数を用いて観測したところ,点 Q の位置が一致した。T
[℃]
のときの振動数は $℃ の時の振動数の何倍であったか。
$ 図'のように,温度調節ができる部屋にスピーカーとマイクが置かれている。スピーカーを
台車の上に固定してマイクに向かって動かし,ドップラー効果の実験をする。マイクは振動数
カウンター
(音波の振動数を測定する装置)
につながれているとする。音源の振動数を f ,振
動数カウンターで測定した振動数を F ,スピーカーの速さを W
( W < v )とする。
! F を f ,W ,v で表せ。
" f と W が一定であるとき,F は温度によって変化する。部屋の温度が T
[℃]のときの
F から f を引いた値を ΔF と書く。ΔF の温度依存性を表すグラフは,図(の % ∼ &
のうちどれか,記号で答えよ。
― 5 ―
◇M4
(378―24)
! f が一定であるならば,温度が変わっても,スピーカーの速さを調節することで,F が
一定であるようにできる。温度が "℃,スピーカーの速さ W = W0 のときの F を F0 と
する。温度が T
[℃]のときにも F = F0 であるためには,スピーカーの速さを W0 の何
倍にすればよいか。
(配点率 33%)
(以 上)
― 6 ―
◇M4
(378―25)