fullload エアードライヤー講座

メカのプロに基礎から学ぶ
トラックユーザーのための
メンテナンス講座
可変ノズル
排気ガス流
で正圧と負圧のサイクルが生じてし
が流れるところとそうでないところ
凸で変化している。つまり排気ガス
エンジンの排気ガスエネルギーで
吸気を圧縮し、エンジンに過給を行
まう。この圧力サイクルの周波数と
通常のターボ使用回転域では共振は
なうターボチャージャー。エンジン
起こり得ない。だが共振により羽根
は過給されることでトルクが高ま
っ て い る。
エンジンの回転数に関
係なく過給圧を変化させることがで
の振動が増幅されるとまずい。振動
羽根の固有振動数とが合致﹁共振﹂し
きるVGターボは、可変ノズルの開
に耐えることができなくなった羽根
た時、バーストは起きる。羽根の振
閉度合で排気ガスの流速を変化さ
に 羽 根 の バ ー ス ト が 起 こ る と﹁ ど か
り、小さい排気量でも大きなトルク
せ、ローター回転を制御している。
ん﹂という爆発音が聞こえるという。
動は共振することで増幅される。
エンジンが低回転域でもノズルを
閉じ気味にする事で低速トルクを稼
さ ら に シ ャ フ ト が 折 れ て し ま う と、
を発揮し、燃費も良くなる。最近で
ぎ、高回転になれば、ノズルを開き、
白煙を吹き、オイルが吐出されると
は過給圧を変化させることができる
ローター回転をコントロールしてい
羽 根 の 固 有 振 動 数 は、 羽 根 の 材
質、形状、厚み等で決まってくるが、
る。こうすることによってエンジン
いう。
VG︵可変ノズル︶
ターボが主流とな
の負荷条件に最適な過給を行なって
は粉々に砕け散ってしまう。走行中
いる。このノズルの制御が狂い、ロ
そもそもどうしてターボはオーバ
ーランしてしまったのだろう?
本題はここからだ。
オーバーランが発生しやすいの
は、エアシリンダー式VGターボと
ーターの回転が上がり過ぎた状態を
いうタイプ。エアシリンダー式VG
ポートはピストンのストローク量を
ートにエアを送るか決める。3つの
う だ い ﹂と い う 要 求 に 応 じ て ど の ポ
か ら の﹁ こ れ だ け の 過 給 を し て ち ょ
いる。エアバルブはエンジンCPU
こに電磁式エアバルブがつながって
3つのポート︵空気口︶
があって、こ
何をすればいいのか? エアシリン
ダー式VGターボのシリンダーには
を正常にしてやればいいのだ。では
っているが、その圧力はノズルの凹
ら流れてくる排気ガスの圧力がかか
通り羽根には可変ノズルのすき間か
を﹁固有振動数﹂
という。また先述の
それぞれの羽根がもつ振動数のこと
太さで音が変わるのと同じ︶
。この、
剛 性 に よ っ て 異 な る︵ ギ タ ー の 弦 が
動もしている。その振動数は羽根の
を受け、高速で回転するとともに振
タービンローターブレード︵羽根︶
は、可変ノズルを通過した排気ガス
か?
ン グ の 中 で は、 何 が 起 き て い る の
ならない。オーバーランを防ぐため
る場合にはトカゲの尻尾切りにしか
ブに水分や油分がすでに混入してい
復するが、もしエアドライヤやバル
いう。新品に交換すれば一時的に回
ンブリーでまるごと交換していると
非 分 解 ﹂ら し く、 故 障 し た ら ア ッ セ
う。 V G タ ー ボ は﹁ デ ィ ー ラ ー で は
Gターボにまで影響が及んでしま
エアを使用するエアシリンダー式V
エアが供給される状態になる。ブレ
だ。ということは可変ノズルの動作
ノズルが正常に動かなかったから
た。流速が上がりすぎたのは、可変
排気ガスの流速の上がりすぎだっ
VGターボの羽根をバーストさせ
る オ ー バ ー ラ ン が 発 生 し た 原 因 は、
りにこのタイプが多いという。
は1900年代∼2000年代あた
ムを持つ方式で、トラックの年式で
Gターボに多く採用されたメカニズ
し、そのストロークで可変ノズルの
アシリンダーの中のピストンを動か
ーボオーバーラン状態が続くと最終
的にはタービンホイールがバースト
ターボは、車両のシステムエアでエ
﹁ターボのオーバーラン﹂という。タ
う。一体、この時にタービンハウジ
︵破裂︶して、走行不能となってしま
決 め る た め の も の だ。 そ れ ぞ れ 3
万㎞を
には、まずエアドライヤの定期交換
ーキバルブ等、当然のこと、同じく
開け閉めを行なっている。初期のV
㎜、6㎜、 ㎜で、フルストローク
㎜になる法則がある。エアシリ
のストローク量を組み合わせて段階
感を感じているのならば、一度プロ
要だ。ただし事故につながるおそれ
推 奨 ︶を ば っ ち り と 行 な う こ と が 重
︵メーカーでは1年または
的に流速を変化させているのだ。
の診断を受けてみるのもいいかもし
東京都大田区のリビルドタ
ーボ屋さん。トラック&バ
スのほか乗用車や建設車両
のターボを扱う。限界まで
使われたターボや壊れたタ
ーボを多数取り扱ってきた
経験を活かし、ユーザーや
ディーラーへの注意喚起も
行なっている。
もあるので、現時点で何らかの違和
それぞれのピストンにシールが組
み込まれ、耐水グリスが封入されて
れない。
ルと混ざって固くなり、ピストンの
お問い合わせ
☎03-3758-3381
動作が狂い始めると、オーバーラン
一歩手前。エアシリンダーのピスト
ンがノズルを閉じ気味、すなわち流
速が速い状態でぴくりとも動かなく
なると、いつ共振点に達してバース
トしてもおかしくない。
システムエアは、エンジンのエア
コンプレッサーでつくられてエアタ
ンクに充填される。空気は圧縮する
と水が出るしエンジンオイルも混ざ
っているので、エアドライヤで水分
と油分をとっている。エアドライヤ
は、文字通りシステムエアを乾燥さ
せ、水分や油分を飛ばしてくれる部
品だ。地味な部品ではあるが、これ
が経年劣化にすると中の乾燥剤が劣
化して、水分や油分が残ったままの
TTSグループ
リスがぼろぼろになっていく。オイ
いる。だがエアの中に水分やオイル
ンダー式VGターボは、これら3つ
で
12
が混入すると、だんだんシールやグ
10
21
ディーゼルエンジンのポテンシャルを引
き 出 す V G タ ー ボ。 だ が オ ー バ ー ラ ン し
て し ま う と、 最 悪、 走 行 不 能 に な っ て し
ま う。 で は ど う す れ ば オ ー バ ー ラ ン を 防
げ る の か。 実 際 の 事 例 を 見 な が ら 対 策 方
法を教えていただいた
エアシリンダー式VGターボの
「オーバーラン」
を防ぐ
第1回
▲バーストしたタービンインペラ(羽根)
。シャフトからもげてしまって、
もう使い物にならない。排気側にあるためエンジンに物理的なダメージ
はないが、当然、交換修理となる。なおDPFなどに残骸が飛び散ってい
る場合は清掃もしなくてはならない
▲▶エアシリンダーの中で動くピストン。このピストンのス
トロークで可変ノズルの開け閉めが行なわれる。右の新しい
ピストンには白いグリスもしっかりと塗られているが、左の
古いピストンは真っ黒。グリスはオイルと相性が悪く、混ざ
るとぼろぼろになってしまう。ぼろぼろになったグリスは、
むしろピストンの動きを鈍くさせ、最終的には正常に動かな
くなる。だがエアドライヤの定期交換をきちんと行なう=日
常のメンテナンスをしっかりと行なうことでその危険は回避
できそうだ
▲排気ガスの流量が少ない低回転時は可変ノズルを閉じて流速を上げる
ことでタービンホイールの回転速度を上げる。いっぽうで排気ガスの流
量が多い高回転時は可変ノズルを開いて排気ガスの流れを邪魔せず効率
的に利用する。VGターボは、この可変ノズルによる排気ガスの流れの
制御によって、低速トルク不足の解消と燃費向上(ターボラグが少なく
なり有害物質も削減)
を両立させている
▲VGターボは、可変ノズルが動
くようになっている。写真は閉じ
た状態(すき間が狭い状態)
。低回
転時に排気ガスの流速を速くして
過給量を増やしている。この状態
のままエンジンの回転数が上がる
と、必要以上の過給が行なわれる
排気ガス流
【排気流量が少ない状態】
90
Vol.13 2014 Summer
91
可変ノズル
◀▲これがエアシリンダー。写真
はカットモデルだが、3つのネジ
穴がエアバルブのつながるポー
ト。一番奥の細くなっているノズ
ルからエアが供給される。エアが
入るとシリンダー内のピストンが
押し上がり、インナーシリンダー
を介してリンケージを動かす。リ
ンケージはその名の通り可変ノズ
ルにリンクしていて、ノズルの開
け閉めを行なう。ポートの組み合
わせを変えることで、段階的にノ
ズルの開閉を行なうのがエアシリ
ンダー式VGターボの特徴だ
【排気流量が大きい状態】
▲電磁式のエアバルブ。エンジン
CPUからの信号によりポートに
エアを送る
メンテナンスで
「ダウンタイム」を減らす !
可変ノズルの開閉度合で流速を変える