シリーズ企画﹁一橋の女性たち﹂は、今年で年目を迎えた。今までご登場いただいた方はのべ人近く。 50 13 ときから、生徒に将来希望するキャリアを聞き、生徒はそれに関連する科目を選んで学びます。その頃、私はコンピュータに関心があり、将来はＩＴ関係の仕事をしたいと思っていました。ですから、文学で教育を受けられたワトソンさんが、一その前にまず定番の質問から。イギリスど、伺いたいことはたくさんあります。ークのネットワーク事情はどうなのかなネットワークを築かれたのか、ニューヨシステムですから、社会に出る前にもっと学は、専門の１∼２科目を集中して学ぶに詳しかったのです︵笑︶。イギリスの大らのほうが私よりイギリスの歴史や文学した。でも、日本人の友人と話すと、彼私が住んでいたのは、エミリー・ブロンテの﹃嵐が丘﹄で有名なヨークシャーでや歴史などはあまり学ばなかったのです。橋大学を選んだのはなぜですか？幅広く学びたいと思うようになりました。そこで、１∼２年は教養科目を広く学び、知人のいないニューヨークでどのように山下ワトソンさんは今、ニューヨークの証券会社で活躍されていますね。友人・広く教養を身につけたい。日本の経営を学びたいワーク、ライフ、ネットワーク軽食を楽しみながらくつろいで話そう、﹁参加者も質問ＯＫ﹂というフランクな公開対談は、和やかな雰囲気でスタートした。企業やマスコミ、家庭で活躍するＯＧ、マレーシアからの留学生、﹁先輩の話を聞きたい﹂という大学院と学部の学生など、多彩な顔ぶれの人が参加した。新スタイルでの最初のゲストは、ニューヨークでネットワーキングを実践するワトソン愛鈴さん︵１９９８年商学部卒︶。ネットワークを広げる場にしたい﹂という思いが重なり、今回は﹁エルメス﹂と連携した公開対談となった。その素敵な事実と、﹁一橋の女性たち﹂の牽引役、山下裕子商学研究科准教授の﹁﹃女性たち﹄をもっとオープンにして、回を重ねるにつれ、登場した女性たち同士、そしてその友人や先輩・後輩へとネットワークが自然に広がっていった。 12 ３∼４年で専門性を身につける日本の大外資系証券会社を経て、2008年三菱UFJモルガン・スタンレー証券に入社、第44回５年ワトソン私は東京生まれで小学校生まで日本で過ごし、その後イギリスの 1998年一橋大学商学部卒業。卒業後は、野村證券株式会社に入社、その後一橋の女性たち学校に入りました。イギリスでは中学のワトソン愛鈴（わとそん･あいりーん）載企画連 2013年11月からモルガン・スタンレーニューヨーク本社へ出向している。 50 ーク﹂という感じでした。家族も友だ学研究会に入りました。また、そのほか、イスしてくれました。日本の企業は新人企業は新卒のほうが入りやすいとアドバの趣味はコンサートやオペラなどの芸術ヨークは世界最大の金融市場ですし、私ちもいないわけですから。でも、ニュー外資系ならあとからでも入れるが、日本水泳部にも入部しました。イギリスにはに対し、礼儀作法や電話応対、メールの鑑賞です。これは公私ともにチャンスからうこと︵笑︶。ねらいをつけていた経済一橋大学に決めたのは、高校で学んだ部活がないので、皆で力を合わせて何か書き方など、きめ細かく指導してくれま学で学ぼうと思いました。の影響です。当時のイ Business Studies ギリスは大不況で、東北部のヨークシャをするクラブ活動に憧れていたのです。揃い。とても楽しく過ごせました。かったと思いました。はとても良い経験でした。調査部のあと方などにお会いして、お話しできたことワトソン私が最初に配属されたのは、株式調査部でした。企業の経営者や財務のかったからです。大学の先輩や後輩の皆さんにお伝えしたのネットワーキングについてぜひ、一橋私がこの対談をお受けしようワトソンと思ったのは、ニューヨークで働く人々山下会社ではどのようなお仕事に携わっていたのですか？は、投資銀行部門のドキュメンテーショ、日本の証券会社に就職山下卒業後はされたのですね。外資系企業は考えなかったのですか？私も能動的に道を開いてきたほうだと思いますが、ニューヨーカーたち、なか日本企業で社会人の基礎を学び、外資系証券会社へ業や日本人ですから、指導を受けてよー州などは失業率が％を超えていました。一方、日本はバブル景気の最後の時代。先生からトヨタやソニーの話を聴いを学びたい、て、日本の Business Studies そして、それには一橋大学が一番良い大学だと思い受験しました。入学当時、漢字は苦手だったと伺山下いましたが、授業やレポートなど、どう乗り切ったのですか？﹁講義ノートを取れないワトソン母ものでは？﹂と心配してくれました。私のどに伴う資料や契約書等を、国内外の弁ンチームに異動。株式公開や社債発行なワトソン私は３年生のときに﹁如水エル﹂に入りました。﹁如水エル﹂の先輩がール街は白人男性中心の社会です。法曹界でも大手法律事務所のパートナーの女性比率は％程度にすぎません。マイノリティの成功者たちは、実にさまざまなイベントを開き、ネットワーキングを通じて切磋琢磨目で海外へ出ている男性もいましたので、いるのです。大学の先生やその分野で成的にアドバイスをしています。頑張ってしながら、次の世代に積極なかなか機会が得られなくて悔しい思い功した経営者、弁護士、ＮＧＯの理事等トなどが活発に行われています。私もこを招いてのトークイベントや交流イベン２０１３年にやっと、ニューヨークで働くチャンスを掴むことができました。の１年で回ほど参加しました。このよ 40 作戦は、優秀な学生がいそうなサークルに入り、仲良くなってノートを貸してもでもマイノリティのアメリカ人はものすわりました。、外資系証券会山下その後社へ転職されたのですよね。海外勤務はご自身の希望だったのですか？ワトソンはい。新卒の頃から﹁ロンドンで働きたい、海外でチャレンジしたい﹂と、上司や人事にアピールしつづ 15 をしていました。けました。同期入社では２年ごくアクティブです。ウォ護士らと協力しながら作成する仕事に携ネットワーキングの重要性を伝えたいもしれない、と︵笑︶。山下裕子す。日本の証券会社のお客様は日本の企商学研究科准教授水泳部の女子部員は人で、個性的な人 ⁉ 率直に言うと、最初は﹁えっ、ニューヨ 51 10 17 ンターンの学生でも参加できる。なかにけでなくいろいろな人が参加します。イた。またトークイベントには、成功者だます。私はそれをきっかけに利用しましワトソン会社にはクラブのような、テーマを持ったコミッティがたくさんありどのように参加の機会を得たのですか？室に行き、斬新な髪型になったと聞いたではなくアフリカ系の人が経営する理容て知人の日本人男性がアジア系の理容室ている美容室に行くのが賢明です。かつークでは、自分と同じ人種の人が経営しりました。特に美容室の場合、ニューヨおすすめの医療機関や美容室、日本食のてただ話を聞くというだけではなく、イうなトークイベントの特徴は、聴衆としせ向上しようという考え方が浸透している、他者とつながってレバレッジを効かります。１人でできることは限られてい自己投資に力を注ぐニューヨークのキャリアウーマン思いました。に入ってよかったとニューヨークにきてい方々にお会いできました。改めて一橋ームパーティーに招待され、大勢の楽し出身ということだけで、素敵なお宅のホヨークといった大都市にいながら、一橋に呼んでいただくこともあります。ニューティーがあり、その他、ホームパーティー登録者がいます。年に２回、如水会のパー会ニューヨーク支部には２００人以上のの一橋大学出身者が活躍しており、如水ことがあります。ニューヨークには大勢お店などを教えてくださり、とても助かは中学生の子どもを連れて参加する人もいます。アメリカには Network Science ベントの前後にカクテルを片手に本人とるのですね。という学問領域があるし、 Social Capital 直接話ができるという、カジュアルであや Relationship Capital といった、人々の信頼関係や結びつきを重視する概念もありながらかなり贅沢なものです。ニュー山下緩やかな連携のほうが効くということもありますね。で次の世代にアドバイスをしてくれます。クターら︶が積極的にトークイベント等弁護士、投資銀行のマネージング・ディレ以外にも、市内の大学、企業主催のイベれることに心より感謝しています。それしている忙しい人々が機会をつくってくいたことがありません。ビジネスで成功す。人は１２００∼１５００人もいるそうで００∼３００人なのに対して、アメリカワトソンそうだと思います。ある統計によると、日本人の知人の数は平均で２したし、すごく刺激になりました。たとちのパワフルな生き方には感銘を受けまワトソンそうなんですよね。なかでも、第一線で活躍しているアメリカの女性たヨークでは成功者︵経営者、パートナーたとえば、大手法律事務所では、頻繁にントなどが頻繁に実施されているので、ア山下その道で成功した人の話を聞くと、インスパイアされるものがありますよね。トークイベントがあります。東京でも米ンテナを張ることで、ネットワークを築の世話役のえば、 Women s Committee 女性は、２週間に一度ペーパーを作成し、国系大手法律事務所と仕事をしていまし﹁こういう面白い話がありました﹂﹁このく機会は山ほどあるのです。プライベートでは如水会ニューヨーク支部のネットワークに大変お世話になりたが、トークイベントに招待されたこと山下知人もいなかったニューヨークで、ました。早く生活に慣れるよう、最初にはありません。また、そのような話も聞 52 事をしているのです。彼女の時間配分のながら、チャリティー関連のＮＧＯの理ます。それだけでなくフルタイムで働き企業の社内弁護士で５人のお子さんがい供をしてくれるのですが、彼女は、ある優先順位や時間配分をどのように考えてすが、アメリカのワーキング・マザーは、最近、日本でもワーク・ライフ・バ山下ランスが大きなテーマになりつつありまですね。の面では良いメンターを持つことが重要ワトソンのためには国内外 work smart のネットワークを活かすこと、キャリアはナニーに依頼するとに、子どもの送り迎え犬はドッグウォーカーリーニング店に依頼、洗濯はクリーナーかク１回クリーナーに頼む、オンライン、掃除は週は学校給食、買い物はを見ておくことは、キャリアにも人生にきました。でも、私は、若いうちに世界うとしたりする日本人は減っていると聞、食べ物もおいしワトソン治安が良くい日本を離れて留学したり、海外で働こジをお願いします。の締めくくりとして、後輩へのメッセーられることでもありますね。では、対談記事は参考になります﹂などと、情報提ノウハウは、すごく勉強になりました。もプラスになると思います。また語学力でも、彼女だけが例外ではありません。いった具合です。家事いるのですか。を磨くことで活躍の場が広がると思いま私が知っているだけでも、パワフルな女をアウトソースするこすから、代、代のうちに積極的に飛性エグゼクティブは彼女を含め３人いまとによってつくり出した時間を、キャリワトソン夜間のビジネススクールへの通学、セミナーへの参加など、仕事に関は低い傾向にあると思います。ニューヨ連した自己投資の優先順位が高く、家事したりするなど、子どもと過ごす時間に題をみてやったり一緒にスポーツ観戦をアアップのための勉強時間にしたり、宿いるので、積極的にいろいろな会合に参ヨークは世界中から優秀な人が集まってび出してほしいですね。ことにニュー 30 ークでは、家の掃除を依頼すると１回２ 20 のノウンレーの幹部からは work smart ハウなどを聞く機会があり勉強になりま自由に意見交換する場として誕生した非公式の団体です。ご興味のある方は、Facebook上の一橋大学OGの方は、どなたでも参加できます。「エルメス」のグループにアクセスしてください。 https://www.facebook.com/groups/425634644198594/ しい話題を見つける力が素晴らしく、ぐんと距離を縮めてしまう。そのネットワークの達人ワトソンさんが「スゴイ！」と思った、沢なのでは、と僻んでしまいそうになるけれど、マイノリティで NYのネットワーキング事情。裕福でタフで時間を買える人の贅ようと熱心なのだそうだ。ネットワークは、コネづくりのように苦労している人こそ、つながろう、自分の経験を若い人に伝えも思えるけれど、他者の世界へと自分を開いていくことで、自分を組み替えていく機会という奥深さを秘めている。外部化→ネットワーキング→賃金上昇……。ワーク、ライフ、それにしても、掃除の時給が45ドルとは！賃金上昇→家事ネットワークと、ホップ、ステップ、ジャンプ！賃金停滞→家事抱え込み→自分の殻に引きこもり→賃金停滞女性の賃金が安く、家事負担が重く、通勤負担も重い日本。 ……ネットワークが必要な人ほど余裕がなく、自分の殻に閉じないし、経済も浮上しない。この悪循環を、ポジティブに楽しの女性の会「エルメス」の立ち上げにも熱心に参加してくださワトソンさんのようなネットワーカーは、母校の宝だ。一橋り、世代を超えたつながりをつくってくれた。今回の帰国の折、ワトソンさんに会いたいという声が沸き起こり、その声に便乗しまっておくのは愚の骨頂。どんどん活躍して、その輝きで世させてもらい、公開とさせていただきました。宝を蔵に入れて界を変えてほしい。びらが舞う国立のキャンパスは、また新しい学生を迎える。一季節は春。袴姿の艶やかな女子学生たちを見送った、桜の花ネットワーキングをさまざまな角度から考えてみたいと思って橋大学が共学としての歩みを始めて70年。W70を記念して、います。（山下裕子）できる機会が多い。真剣に何かを学びたく明るく反転していけないものかしら。でも、積極的にアウトソースしているよ明るくなった。い後輩がニューヨークにきたら、私もサかつて、石原一子先輩を囲む会が国立で主催された。会場の山下アメリカのネットワーキングやワーキング・マザーの時間配分などは、私たレストランにワトソンさんの姿が見えた途端、室内がぱーっとうですね。たとえば、平日の食事は出前「ネットワーカーは母校の宝」ポートしたいと思います。公開対談を終えてちにも参考になりますし、また考えさせ 90 やデリのテイクアウト、子どものランチ 53 す。また、ソマリア出身のモルガン・スタ込められてしまうというジレンマ。節約ばかりでは自分も楽しくした。定席で話し込んでしまっている私たちの席をひらりひらりと訪れ、加することで面白い話やノウハウを吸収あっという間に皆と話をしてしまったではないか。相手にふさわ充てています。如水会関係の場で、若者の影は薄く数が少ないうえに隅のほ時間でドルと決して安くはないのです。うでひっそりとしていがちだ。そんななか、ワトソンさんは、固山下アメリカのエグゼクティブはみん「エルメス」は、一橋大学を卒業した女性たちがでしょう。なだな work hard work hard をしけでなく、どのように work smart たかがポイントなのですね。一橋の女性たち