平成27年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞研究部門 受賞者 工学部 教授 冨田 浩史 工学部 特任准教授 菅野 江里子 業績名 失明者の視覚を回復するための遺伝子治療研究 業績内容: 網膜には役割の異なる様々な神経細胞が存在し、それらが連携してヒトの高度な視覚機能を作 り出しています。これらの神経細胞のうち、外界の光を最初に受容する細胞は視細胞であり、何 らかの原因で視細胞が障害されると、その他の神経細胞が残存したとしても失明に至ります。現 在の治療法は、視細胞変性の抑制が主であり、一旦失明に至ると視機能を再建する治療法は無く、 視覚機能の回復あるいは再建する治療法の開発が待ち望まれています。 冨田教授らは、緑藻類ボルボックスの光受容陽イオンチャネルタンパク質を改変することによ って、可視光領域に感受性を持つタンパク質を作製することに成功し、このタンパク質をコード する遺伝子を視細胞の変性により失明したラットの網膜神経節細胞に作らせることで、失明ラッ トの視覚機能を回復できることを示しました。これにより、変性症疾患の多岐にわたる遺伝子変 異に依らず治療が行えると考えられ、また、眼内注射で治療が完結するため、患者への負担の少 ない治療法へと発展する可能性があります。本成果は、高齢化社会の進行とともに増加する視覚 障がい者の失明後の視覚機能の再建に寄与することが期待されています。 主要特許:Patent No. US8,754,048 B2 「Light-Receiving Channel Rhodopsin having improved expression efficiency」 主要論文:「Restoration of the Majority of the Visual Spectrum by Using Modified Volvox Channelrhodopsin-1」Molecular Therapy 誌、p1434~1440、2014 年 5 月発表 この研究業績に関する問い合わせ先: 岩手大学工学部応用化学・生命工学科 冨田 浩史 岩手大学工学部応用化学・生命工学科 菅野 江里子 TEL&FAX: 019-621-6427 e-mail: [email protected] [email protected]
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