君のおかげで元郷中学校三年菊地剛史「夢や目標など、何かありますか？」こういう質問は、「なんとなく」で生きてきた僕には辛い質問です。小さい頃は、「これになりたい！」という明確な目標がありましたが、現実を見て、無理だと思いました。それでも当時の自分は未来の自分に思いをはせて、わくわくしていました。そんなわくわくする楽しい思いを笑顔で語ってくれたのは、僕の友人の一人でした。彼は、その幼き頃の童心を忘れず、とても生き生きとしていました。目標や夢があるからなのか、彼はいつも笑顔で、毎日を楽しんでいるように見えました。その当時の僕は、目標も何もなくただ淡々と日々を過ごしていました。だからなのでしょう。僕は明確な目標を持っている彼に、うらやましいという気持ちを持っていました。ある日、彼はいつものように、「何に憧れている」とか、「どうやったらなれるのか」とかを、目を輝かせながら語りました。しかし、その日の僕は、不運なことが重なって、気が立っていました。そして僕は、そのストレスの発散相手として、彼に「いつも夢について、あーだこーだ言ってるけどさ、本当に自分がなれると思ってんの？それとも、俺には夢があるっていう自慢？」と言ってしまいました。僕はその言葉を言った直後に後悔しました。でもあいつは何も悪いことはしていないと頭では分かってはいても、「ごめん」のひとことが出てきませんでした。彼は、ショックを受けて泣きそうな顔をしながら、「…すまん。お前がそう思ってるとは思わなかった。…これからはさ、違う話題にするよ。」そう言って、走り去っていきました。僕は後悔しながら、ただ立っていました。家に帰って、今までのことを父に話すと、「まず謝ってきな。お前だって自分が好きな物、バカにされたら嫌だろ？夢は変わるかもしれない。でも、持つこと自体に意味があるんだ。」そう言われて、はっとしました。このとき、父がそう言ってくれなかったら、自分は後悔したままで、「夢」とも真剣に向き合うことはなかったと思います。翌日、彼にしっかりと謝り、仲直りすることができました。彼の夢の話を聞かないようになると、また、彼の話を聞きたくなりました。そのときに、僕は、彼の話を聞きながら一緒に、未来の自分に思いをはせていたことに気がつきました。その頃から、僕は少しずつ自分の夢について考えることが多くなりました。「自分はこれが好き」そういえるものなどをさがすようになりました。そうやって夢について考える時間は、今までよりずっと充実したものになりました。今では彼が、自分の夢について語ってくれて、とても良かったと思います。彼が夢について何か言ってくれなければ、今まで以上に、仲良くなれなかったのでは、と思います。そして何よりその話題は、僕に「夢について」考える機会を与えてくれました。そのことについて、僕はとても彼に感謝しています。父のあのときの言葉も、僕が変わるきっかけの一つだったと思っています。「夢は持つこと自体に意味がある」そう言ってくれたおかげで、僕は自分の夢を見つけようという気持ちになりました。今でもまだ夢は見つかっていませんが、いつか彼と、夢を語りたいと思います。夢について考える機会のきっかけをくれた彼に、改めて感謝したいです。