10.為替相場:円とユーロが下落し、ドル独歩高が続く見通し

グローバル時代の投資戦略
世界経済
10.為替相場:円とユーロが下落し、ドル独歩高が続く見通し
過剰流動性
 2012年暮れから加速したドル高円安の主因は、日銀による金融緩和と考えられますが、今後は、
予想される米国利上げ開始もドル高要因として加わり、ドル高円安の長期化が見込まれます。
 また、米国では2008年の金融危機以降は輸入鈍化で経常赤字が縮小、さらに海外からの対米証
券投資が増加し始め、借り入れに依存しなくとも経常赤字が活発な証券投資だけでファイナンスさ
れつつあることもドルを支えています。他方、日本の貿易赤字常態化が円安要因ともなっています。
市場の歪み
ドル高は2018年まで継続?「日銀金融緩和に伴う円安」と「米国利上げに伴うドル高」
(円/米ドル)
360
(%)
35
ドル円相場と米国FF金利
米国経済
320
30
米国
景気後退期
280
73年7月
240
欧州経済
200
ドル円相場
(左軸)
1年5ヵ月 78年11月
160
今後は
米利上げ
による
ドル高か?
1年3ヵ月
日銀緩和に
よる円安?
日本経済
99年11月
05年1月
120
10
95年4月
新興国
FF金利
(右軸)
72年2月
0
1970
1975
5ヵ月
7ヵ月
1980
1985
94年2月
99年6月
1年2ヵ月
1990
1995
2000
04年6月
2005
5
2015年9月
利上げ開始
と仮定
88年4月
77年8月
40
20
15
7ヵ月 88年11月
80
25
2010
2015
3.5%
FRB
長期目標
0
2020 (年)
各国経済
注)ドル円相場の直近値は2015年3月18日。利上げ開始は2015年6月16-17日または9月16-17日のFOMC(連邦公開市場委員会)と予想するが、
グラフは便宜上、9月開始、2会合毎に+0.25%ずつ利上げ、2018年に3.5%まで引き上げ終了すると仮定。出所)Thomson Reuters Datastream
 ドル高要因:米国経常赤字縮小と対米投資増加 - 円安要因:日本の貿易赤字化
米国:経常赤字と証券投資純流入
(円/米ドル)
35,000
4,000
リーマンショック
(2008年9月)
3,500
3,000
ドル円相場 と 日本貿易収支
(億円)
米国へ証券投資の資金純流入
(対内純投資-対外純投資)
30,000
円高、貿易黒字
25,000
円安、貿易赤字
ドル円相場 75.32円
(右軸)
円安
主要金融資産
(億ドル)
4,500
20,000
15,000
2,000
100
150
10,000
1,500
1,000
500
0
米国経常赤字
-500
5,000
200
0
日本貿易収支
(左軸)
-5,000
-10,000
▲6,387億円
(2015年2月)
-15,000
-1,000
-1,500
1990
1995
2000
2005
2010
2015 (年)
注)直近値は証券投資純流入、経常赤字とも2014年10-12月期。出所)Bloomberg
-20,000
250
赤字化
投資戦略
1,134
億ドル
2014年
10-12月
KOKUSAI Asset Management Co., Ltd.
為替相場
2,500
50
300
1972 1978 1984 1990 1996 2002 2008 2014 (年)
注)直近値はドル円は2015年3月19日、日本貿易収支は2015年2月。
日本貿易収支は季節調整済。
出所)財務省、Bloomberg
巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および
「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。
63
KOKUSAI Asset Management Co., Ltd.
世界経済
2015年のドル円相場は、1ドル115~135円レンジでの変動を想定
過剰流動性
 ドル円相場は、2011年10月のドル最安値1ドル75.32円で底入れ後、毎年1~2月に年間安値、12月
に年間高値をつけて上昇しています。過去のドル円相場の平均変動率17%をあてはめると、今年も
年間20円程度の振れ幅が想定され、1月安値1ドル115.86+振れ幅20=135円も年内にありえます。
 2015年も、日銀の金融緩和と米国の利上げ開始を想定したドル高が予想され、今年の目標は、1ド
ル130.57円(147.64⇒75.32円の76.4%戻し)や1ドル135.20円(2002年のドル高値)が考えられます。
ドル円相場
(円/米ドル)
130
124.14(6/22)
(円/米ドル)
130
120
(12/8)
120
115.86
(1/16)
年間のドル高値
112.21(1/2)
100
107.23
(11/26)
100
100.76(2/4)
90
86.79(12/31)
86.53(1/1)
87.14(12/17)
84.83(11/27)
80
76.03(2/1)
75.32(10/31)
2009
2010
新興国
80.22(11/1)
2008
日本経済
85.53(4/6)
年間のドル安値
2007
110
105.88
94.99(5/4)
80
年平均
101.45(4/6)
90
70
105.41
(12/30)
ドル円相場
欧州経済
110
米国経済
121.85
1ドル124.14円(2007年6月22日)から
1ドル75.32円(2011年10月31日)迄の
⇒全値戻しで1ドル124.14円が視野に
2011
2012
2013
2014
2015
70
(年)
各国経済
注)直近値は2015年3月12日。値表示はザラ場の高安値、( )内は各年の月日(月/日)。
出所)Bloomberg
年間20円程度の変動幅は想定内、2015年のドル円は1ドル115~135円で変動か?
ドル円相場の年間変動率と年間変動幅
(変動率:%)
年間変動幅
(高値-安値、左軸)
年間変動率
(右軸)
60
50
19.9%
30
10
1983
1987
1991
1995
1999
2003
2007
2011
2015(年)
(円/米ドル)
160
(円/米ドル)
160
147.64
(1998年8月11日)
150
上限
135.20
140
140
(2002年1月31日)
124.14 130.57円(76.4%戻し)
130
150
(2007年6月22日)
130
120
120
110
110
100
100
ドル円相場
90
90
1ドル147.64円(1998年8月11日)から
1ドル75.32円(2011年10月31日)迄の
76.4%戻し1ドル130.57円が次の目処
80
80
79.75
(1995年4月19日)
70
75.32
下限
70
(2011年10月31日)
60
1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 (年)
注) 年 間 変動 率 =年 間 変動 幅 ÷ 年間 平均 値 。1984・ 88 ・92 ・96・ 2000 ・
2004・2008・2012年は米国大統領選挙年。直近値は2014年。出所)Bloomberg
巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および
「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。
注)直近値は2015年3月12日。値表示はザラ場ベース。出所)Bloomberg
64
60
投資戦略
21円
20
32
30
28
26
24
22
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
為替相場
平均変動率
約17%
40
0
ドル円相場のフィボナッチ分析
主要金融資産
(変動幅:円)
70
市場の歪み
 2012年以降のドル高局面は、1~2月に年間のドル安値をつけ、その後上昇する傾向も
グローバル時代の投資戦略
世界経済
米国出口戦略と日欧の追加金融緩和という対照性は、ドル独歩高を示唆
過剰流動性
 米国は新たな資産買入れを終了する一方、日本は2015年に年間80兆円のマネタリーベース増加、
欧州も約1.5兆ユーロの資金供給(長期資金供給0.4兆と国債等買入れ1.1兆)を予定しています。
 おカネの発行残高を表すマネタリーベース(紙幣+貨幣+民間銀行が中銀に預ける当座預金残
高)は、米ドル需給は引き締まる一方、円とユーロの残高は増え通貨価値の希薄化が予想されま
す。ユーロ円相場は、緩和テンポで欧州が日本より速く、年初からユーロ安円高に反転しています。
市場の歪み
米国の金融緩和縮小と日欧の旺盛な追加金融緩和は、ドル独歩高を招く可能性も
(2000年初=100)
日米欧のマネタリーベース(2000年初=100)
700
2015年2月
3.86兆ドル
650
米国経済
600
2008年の金融危機で
米欧は大量に資金供給
550
500
米国
2015年末
約350兆円
日本
欧州経済
2008年9月
リーマン・ショック
450
400
2015年2月
285兆円
350
300
<米国予想の前提>
2016年から国債とMBSの
満期償還分の再投資停止、
償還分だけFRB資産は縮小
2016年
9月
2.81兆ユーロ
欧州
点線は当社予想
日本経済
2015年2月
1.27兆ユーロ
250
200
点線は当社予想
150
新興国
2012年7月
1.77兆ユーロ
点線は
日銀目標
100
<欧州予想の前提>
①ECB・ユーロ圏中銀による毎月€600億
の国債等・カバードボンド・ABS購入
②購入期間は2015年3月~2016年9月
③2016年6月までTLTRO継続
50
2000
2002
2004
2006
2008
2010
2012
2014
2016
2018
2020
2022
2024 (年)
各国経済
注)マネタリーベースは「銀行券+貨幣+市中銀行が中央銀行へ預ける当座預金残高」。日米欧のマネタリーベースは2000年初=100として当社経済調査部が指数化。
日本は2015年2月迄実績、2015年末は日本銀行目標値(年間約80兆円増)で点線は期間按分。米国の点線は、Seth B. Carpenter et al. “The Federal Reserve’s Balance Sheet
and Earnings: A primer and projections” FEDS 2013-01 Federal Reserve Board 及び2014年6月17-18日以降のFOMC議事録に基づき、当社経済調査部が一部修正推計。欧州
マネタリーベース予想は、ドラギECB総裁の2014年7月以降の会見内容に基づき、当社経済調査部が一部修正推計。マネタリーベースは季調済で実績直近は米国・日
本・欧州とも2015年2月。MBSは住宅ローン担保証券。欧州はユーロ圏。TLTROはTargeted Longer-term Refinancing Operations(貸出増加を条件に資金供給を行う新た
な資金供給手段)で2014年9・12月、2015年3・6・9・12月、2016年3・6月までの最長4年間の資金供給オペ。 出所)FRB、ECB、日銀、Thomson Reuters Datastream
欧州が日本を上回る量的緩和を始め、ユーロ円相場は昨年暮れからユーロ安円高に
主要金融資産
(円/ユーロ、円/ドル)
180
ユーロとドルの対円相場
169.96円
170
(2008年7月23日)
160
150
149.78円
ユーロ安
124.14円
130
ユーロ円
(2007年6月22日)
120
投資戦略
ドル円
110
100
ドル安
90
94.12円
80
(2012年7月24日)
75.32円
70
(2011年10月31日)
60
2000
2002
2004
2006
2008
2010
2012
注)為替の直近値は2015年3月12日。為替の値表示はザラ場の高安値。
2014
2016
2018
2020
2022
2024 (年)
出所)Thomson Reuters Datastream、Bloomberg
巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および
「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。
65
KOKUSAI Asset Management Co., Ltd.
為替相場
140
(2014年12月8日)
KOKUSAI Asset Management Co., Ltd.
世界経済
ユーロ安の3要因 : 「原油安・金融緩和・ギリシャ情勢」
過剰流動性
 原油安は、先進国への所得移転や、中東が原油輸出で受領した代金である米ドルの売り圧力が
弱まるので、「原油安=米ドル高」という傾向があります。米ドル高の裏返しで「原油安=ユーロ安」
という傾向も窺え、欧州中銀による金融緩和・ギリシャ情勢と合わせ、ユーロ安地合いが顕著です。
 2009~2011年のブラジルとオーストラリアへの投資ブームが一巡、両通貨の割高感は薄れました。
米ドル実質実効レートは長期平均にあり、米利上げ開始でドル独歩高が進む余地がありそうです。
(米ドル/バレル)
160
ドル実効レートと原油価格
ユーロドル相場
(1997年=100) (ドル/ユーロ)
90 1.70
ユーロ最高値
140
ドル名目実効レート
(右軸、逆目盛)
120
110
80
115
60
40
20
125
ドル安 原油高
1.30
1.20
1.1667
1999年初
1.1877
1.10
2010年6月7日
1.00
76.4%押し1.0071
0.90
130 0.80
ユーロ最安値
0.8228
※"押し"とはユーロの
最安値0.8228から
最高値1.6038迄の戻し
2000年10月26日
135 0.70
(年)
1999 2002 2005 2008
0
1999 2001 2003 2005 2007 2009 2011 2013 2015
注)ドル名目実効レートと原油価格の直近値は2015年3月12日。ユーロドルの値表示はザラ場の高安値で直近値は2015年3月12日。
2011
2014 (年)
出所)Bloomberg
実質実効為替レート(新興国通貨)
150
150
↑通貨高
トルコリラ
ブラジル
レアル
111.2
102.7
120
140
130
100
100
90
90
80
80
50
40
南アフリカランド 83.0
↓通貨安
(2015年2月)
1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014(年)
米ドル
ユーロ
99.9
96.4
89.2
70
60
円 68.3
(2015年2月)
↓通貨安
50
40
1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 (年)
注)実質実効為替レートは、データが1994年から開始しているため、1994年以降の平均=100として当社経済調査部が指数化。実質実効為替レートは主要貿易相
手61カ国通貨に対する為替相場を、当該国の物価指数で実質化したうえ、貿易金額ウェイトで加重平均。直近値は2015年2月値。 出所)国際決済銀行(BIS)
巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および
「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。
66
投資戦略
60
カナダドル
為替相場
110
インドネシアルピア 102.5
インドルピー 98.2
ニュージーランドドル 114.8
オーストラリアドル 108.2
120
110
70
↑通貨高
主要金融資産
140
130
実質実効為替レート(主要国通貨)
(1994年以降の平均=100)
各国経済
 ブラジルレアルとオーストラリアドルは割高感縮小-米ドルは平均並みで上値余地残す
(1994年以降の平均=100)
新興国
ドル高 原油安
1.2133
1.40
日本経済
120
半値押し
欧州経済
100
WTI原油先物
(左軸)
2008年7月15日
100 1.50
105
1.6038
米国経済
95 1.60
市場の歪み
 原油安はドル全面高の一因に - ユーロは原油安・金融緩和・ギリシャ情勢を受け急落