【市川レポート No.20】世界の株式市場を俯瞰する

情報提供資料
2015年2月27日
三井住友アセットマネジメント
シニアマネージャー 市川 雅浩
市川レポート(No.20)
世界の株式市場を俯瞰する(その1:金融環境編)
足元で主要株価指数が堅調に推移しています。これは世界的に金融環境が極めて緩和的な状態にあ
るなか、原油安の一服やギリシャ問題に対する過度な懸念の後退などで、投資家のリスク選好度が高
まったことが主な要因と思われます。ただ総じて株価の上昇ペースが速いため、やや戸惑う向きも実
際には多いようです。そこで今回は世界の株式市場を俯瞰し、各国・地域の強弱両材料を整理しなが
ら、今の相場をみる上での注意点を確認します。そしてそれらを踏まえて、主要株価指数の今後の見
通しについて考えてみたいと思います。
世界的な過剰流動性相場と株高の関係
まずは図表1をご覧下さい。これは主要株価指
【図表1:主要株価指数の年初来騰落率】
数の年初来騰落率を示したものですが、まさに
ドイツDAX指数
15.5
ロシアRTS指数
15.3
フランスCAC40指数
「世界同時株高」ともいえる様相を呈していま
す。この世界的な株高は「過剰流動性相場」が
14.9
ストックス欧州600指数
14.1
オーストラリアS&P/ASX200指数
強く関係していると思われます。過剰流動性と
9.2
東証株価指数
は経済活動に必要な適正量を大幅に上回って供
8.1
日経平均株価
7.7
フィリピン総合指数
7.4
南アフリカFTSE/JSEアフリカトップ40指数
7.3
タイSET指数
給された資金(流動性)のことで、過剰流動性
相場とはその余剰資金が市場に流れて資産価格
を押し上げている状態にある相場を指します。
6.4
英国FTSE100指数
5.8
香港ハンセン指数
5.5
ニュージーランドNZX50種グロス指数
5.3
インドセンセックス指数
この過剰流動性の発生は、金融危機後に主要
4.5
インドネシアジャカルタ総合指数
4.3
先進国の中央銀行が国債買い入れなどの非伝統
韓国総合指数
4.0
的金融政策を導入したことに起因します。リー
ブラジルボベスパ指数
3.5
FTSEブルサマレーシアKLCI指数
3.4
台湾加権指数
3.4
メキシコボルサ指数
マンショック後、米国を中心に金融システムの
機能は著しく低下しましたが、非伝統的金融政
2.9
S&P500種株価指数
策によって巨額の流動性が供給されると、その
2.5
ダウ工業株30種平均
2.2
中国上海A株指数
2.0
シンガポールST指数
機能は次第に回復しました。非伝統的金融政策
の効果については様々な議論が行われています
1.8
トルコイスタンブールナショナル100指数
が、少なくとも毀損した金融システムの機能を
0.2
0
10
20
(%)
回復させる効果は極めて大きいと思います。
(注) データは2015年2月26日までの年初来騰落率。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成
1
情報提供資料
また当局には、過剰流動性による資産効果(株価など資産価格の上昇で消費が拡大すること)で景
気を支援する狙いもあると思います。ただ長期
【図表2:ワールドダラーの推移】
にわたって非伝統的金融政策が継続・拡大され
(兆米ドル)
9.0
たため、世界中で極端なカネ余り状態となって
8.0
います。世界の金融市場に米ドルがどれだけ出
7.0
6.0
回っているのかを測るワールドダラーという指
5.0
標がありますが、昨年12月時点で約8兆米ドル
4.0
3.0
に達しています(図表2)。これだけ潤沢な流動
2.0
1.0
性があれば、株価を下支えるには十分で、実際
0.0
07
08
09
10
11
海外公的機関保有の米国債残高
12
13
14
米マネタリーベース
ダウ工業株30種平均の年間上昇率は、昨年まで
(年)
6年連続プラスとなっています。
(注) データ期間は2007年1月から2014年12月。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成
米利上げによる株式市場の混乱は回避される可能性
流動性相場が株高を支える大きな要素だとすれば、株高トレンドが転換する時期は、流動性相場の
縮小局面、すなわち主要中央銀行が非伝統的金融政策を終了する時点と推測されます。今年は米連邦
準備制度理事会(FRB)による利上げ開始が予想されているため、相場の流れが変わる可能性のある
大きなイベントを迎えることになります。ただ今回は米国で利上げが開始されても、世界の株式市場
の大きな混乱は回避できるのではないかとみています。その理由は、①FRBは極めて慎重なペースで
利上げを行うとみられること、②FRBは利上げ後もしばらく総資産残高を維持する見通しであること、
③日銀は異次元緩和を継続しており、欧州中央銀行(ECB)は3月から量的緩和を開始すること、こ
れらを勘案すると世界の流動性が急速に縮小する恐れは少ないと思われるからです。
先進国株も新興国株も割高な水準だが
株式市場を取り巻く緩和的な金融環境に大きな変化がないとすれば、今後の相場展開をどのように
考えればよいでしょうか。そこで次に先進国と新興国に分けて、足元の株価の動きを比較してみます。
図表3は先進国の株価指数と予想株価収益率(PER)の推移を示したものです。直近では株価の上昇
につれ予想PERも上昇していることが分かります。図表4は新興国の株価指数と予想PERの推移をみ
たものですが、こちらも株価の反発とともに予想PERが上昇しています。ここから言えることは、企
業の利益見通しが改善しない限り、先進国も新興国も株価は割高な水準あり、予想PERの比較では先
2
情報提供資料
進国株より新興国株が割安ということになります。ただこれはあくまでも全体感であるため、もう少
し個別の状況を把握する必要があると思います。そこで次回以降、米国、日本など主要国・地域に目
を向け、それぞれが抱える各種材料を整理しながら、株式市場の行方について考えて参ります。
【図表4:新興国株価指数と予想PER】
【図表3:先進国株価指数と予想PER】
(ポイント)
1,900
(ポイント)
1,250
(倍)
18
1,800
17
1,200
1,700
16
1,150
1,600
1,100
15
1,500
1,050
14
1,400
1,000
13
1,300
950
1,200
12
900
1,100
11
850
1,000
10
800
11
12
13
MSCI先進国株価指数(左軸)
14
15
(年)
同指数の予想PER(右軸)
11
12
13
MSCI新興国株価指数(左軸)
14
15
(年)
同指数の予想PER(右軸)
(注)データ期間は2011年1月7日から2015年2月20日。指数は米ドル建て。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成
(注) データ期間は2011年1月7日から2015年2月20日。指数は米ドル建て。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

(倍)
13
12.5
12
11.5
11
10.5
10
9.5
9
8.5
8
当資料は、情報提供を目的として、三井住友アセットマネジメントが作成したものであり、投資勧誘を目的として作成されたもの又は金融商品取引法に基づく開示書類では
ありません。

当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。

当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。

当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。

当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。

当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。本資料を投資の目的に使用したり、承認なく複製又は第三者への開示等を行うことを厳に禁じます。

この資料の内容は、当社が行う投資信託および投資顧問契約における運用指図、投資判断とは異なることがありますので、ご了解下さい。
三井住友アセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会
3