静岡県における産業創生の萌芽と今後の課題

静岡県における産業創生の萌芽と今後の課題
2015年4月
日本銀行静岡支店
1
静岡県経済の現状
▽業況判断D.I.(15/3月短観)
(業況判断、「良い」-「悪い」、%ポイント)
20
(予測)
10
0
▲ 10
▲ 20
静岡
▲ 30
全国
▲ 40
▲ 50
▲ 60
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
(年度)
(資料)日本銀行、日本銀行静岡支店
2
静岡県経済の現状
▽業況判断D.I.(15/3月短観)
(業況判断、規模別、「良い」-「悪い」、%ポイント)
50
(予測)
30
10
▲10
▲30
大企業
中堅企業
▲50
中小企業
▲70
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
(年度)
(資料)日本銀行静岡支店
3
製造業の空洞化(2007年-2013年の変化)
製造品出荷額(兆円)
事業所数(千所)
従業員数(千人)
(全製造業)
▲3.8
▲2.4
▲71.2
うち輸送用機械
▲1.5
▲0.3
▲16.4
うち電気機械
▲0.9
▲0.3
▲13.7
製造品出荷額(兆円)
事業所数(千所)
従業員数(千人)
(全規模)
▲3.8
▲2.4
▲71.2
大規模(300人~)
大規模(300人
)
▲2 3
▲2.3
▲0 1
▲0.1
▲27 3
▲27.3
中規模(30~299人)
▲1.2
▲0.3
▲21.7
小規模(4~29人)
小規模(4
29人)
▲0 4
▲0.4
▲2 1
▲2.1
▲22 2
▲22.2
(注)2013年については、速報ベース。業種別の電気機械については、「電気機械」「電子部品・デバイ
ス」「情報通信機器」の合計
ス」「情報通信機器」の合計。
(資料)静岡県
4
名目賃金・労働者数の推移
(名目賃金)
(労働者数)
(2007年=100)
(2007年=100、後方12か月移動平均)
104
101
102
100
静岡
100
静岡
99
全国
98
98
96
97
94
96
92
95
90
94
08
09
10
11
12
13
14
15
全国
07
08
09
(年)
(資料)厚生労働省、静岡県
10
11
12
13
14
(年)
(資料)総務省
5
労働人口の県外流出
(年齢別人口変化)
(人口流出入先)
(%、変化率、寄与度)
(人)
10 000
10,000
総数
流出超
8,000
0‐14歳
6 000
6,000
15‐24歳
4,000
全国
25 34歳
25‐34歳
2 000
2,000
静岡
0
35‐44歳
▲ 2,000
2 000
45‐54歳
▲ 4,000
55‐64歳
流入超
▲ 6,000
その他
愛知県
神奈川県
東京都
全体
65歳以上
▲ 8,000
▲ 3.0 ▲ 2.0 ▲ 1.0
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
07
08
09
10
11
12
13
14
(年)
(資料)総務省
(資料)総務省
6
有効求人倍率・雇用者所得の推移
(有効求人倍率)
(雇用者所得)
(倍)
(2007年=100、後方12か月移動平均)
14
1.4 106
104
1.2 102
静岡
1.0 100
全国
98
静岡
0.8 96
0.6 全国
94
92
0.4 90
0.2 88
07
08
09
10
11
12
(資料)厚生労働省、静岡労働局
13
14 15
(年)
08
09
10
11
(資料)厚生労働省、静岡県
12
13
14 15
(年)
7
リーマン・ショック後の構造変化
 製造業の空洞化
―― 輸出・生産・出荷が大幅に減少
―― つれて非製造業(運輸・倉庫・不動産等)も後退
 県内の全労働者の得る賃金総額(雇用者所得)の伸び悩み
―― 製造業から賃金水準の低い非製造業への雇用シフト
製造業から賃金水準の低い非製造業への雇用シフト
に伴う名目賃金の低迷(∵非製造業の低生産性)
―― 雇用機会の減少に伴う人口流出と、それに伴う総労働
者数の伸び悩み
 個人消費の伸び悩み
-- 雇用者所得の低迷が背景
雇用者所得 低迷 背景
8
中小製造業の自立化の動き
製
 系列大企業の下請けにあたる中小製造業の、系列大企
業から自立したかたちで収益を確保する動き
① 系列大企業とは独自に海外営業基盤を強化する動き
―― 進出した先で、従来の系列大企業以外の先とも取引を
構築・拡大
② 比較優位のある要素技術を活かした収益機会の拡大
―― 系列大企業以外の大企業のモデル開発等に初期段階
から ミ ト
からコミット
―― 従来とは全く異なる事業分野(航空宇宙産業、医療機械
産業等)へのチャレンジ
9
従来見過ごされがちであった地域資源の有効活用
 従来見過ごされがちであった地域資源(温暖な気候、自然の
名所 農水産物 温泉 歴史的建造物等)を活用する動き
名所、農水産物、温泉、歴史的建造物等)を活用する動き
① 歴史的価値を有する地域資源の活用
―― 徳川家康公顕彰400年事業等
② 観光を絡めたMICEへの取り組み強化
―― 東京五輪やラグビーWCの開催地、事前合宿地の誘致等
③ 地域一体となった観光客誘致への取り組み(伊豆地域)
地域 体とな た観光客誘致 の取り組み(伊豆地域)
④ 地場産業、鉄道、工場夜景といった地域資源の活用
⑤ 当地の魅力の対外的アピールの強化
―― 東南アジア地域に対する行政のトップセールス等
東南アジア地域に対する行政のトップセ ルス等
10
行政や地元金融機関等による産業創生の後押し
 「防災先進性」と「新産業の創出」をキーワードにした動き
防災先進性」と 新産業の創出」をキ ワ ドにした動き
① 防災先進県としてのアピールを強化
―― 津波リスクのない工業団地の提供(内陸フロンティア)
津波リスクのない工業団地の提供(内陸フ ンテ ア)
―― 県による10年間で総事業費4,200億円を投じる防災機能
強化
―― 「防災先進県」であることの情報発信の強化
② 新産業クラスタープロジェクトをビジネスとして具現化
③ 産業創生に欠かせない資金の供給体制を整備
産業創生に欠かせない資金の供給体制を整備・拡充
拡充
11
産業創生を本格化(点から面に)させるための課題
 産業創生の本格化には、「地元の中小・零細企業との取引拡大に繋がり、
雇用機会も創出されるような 新たな産業 育成が不可欠
雇用機会も創出されるような」新たな産業の育成が不可欠
 この実現のためには何が必要か?
(1)将来のビジネス・ニーズを踏まえ中小・零細企業を視野に入れた戦略づくり
① 将来的な社会のニーズや他地域との差別化を意識した、育成すべき
産業の見定め
② 地元の中小・零細企業でも参入イメージを共有しやすい戦略の策定
③ 当該戦略の分かり易い情報発信
該戦略
情報
(2)中小・零細企業の立場を踏まえた環境整備と実効的な支援
(2)中小
零細企業の立場を踏まえた環境整備と実効的な支援
① 規制対応等を容易化するための支援
② 新たな産業への参画を支える人材の確保・育成
12
新規工場設置の敷地面積当たり雇用予定者数
(2000年=100)
110
100
敷地面積当たり雇用予定者数
90
80
70
60
50
40
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
(年)
(注)電気業を除くベース。
(資料)経済産業省
13
将来のビジネス・ニーズを踏まえ
中小・零細企業を視野に入れた戦略づくり①
(1) 人手不足の解決に資するロボット産業
 約10年後には全国で労働人口が7百万人程度減少(人口動態)
―― 景気変動にかかわらず恒常的に人手が不足する分野
(運輸・医療・介護・警備・建設)が出てくる可能性
これを補うのがロボット産業(医療・介護ロボット、自動運転自動車、
介護ロボット、自動運転自動車、
 これを補うのがロボット産業(医療
無人ヘリコプター、無人建設機械等)
当地において自動車・電気機械産業で培った人的資本や
お
自動車 電気機械産業 培
人的資本や
―― 当地
企業間のネットワークが活かせる
―― こうした動きはIOT(Internet of Things)の流れにも即す
―― ファルマバレー、フォトンバレーの流れとも親和性あり
 これには、ICT(Information Communication Technology)等専門性の
高い技術者の育成と集積が課題
14
将来のビジネス・ニーズを踏まえ
中小・零細企業を視野に入れた戦略づくり②
(2) 地域資源を活かした「滞在者」「移住者」に対するサービス産業の集積
 東京五輪後には首都圏の超高齢化問題が本格化(人口動態)
 首都圏の高齢者予備軍の地方移住が、有用な解決策の一つ
―― 当地は、①アクセス面、②居住環境(気候、食べ物、医療、防災等)
の面で優位性
 豊かでゆとりのある老後生活を望む高齢者予備軍の受け入れは
豊かでゆとりのある老後生活を望む高齢者予備軍の受け入れは、様々な
様々な
サービス業(食、住宅、趣味、健康増進、医療介護等)の需要を喚起
―― 食・医療介護の需要喚起は、フーズ・サイエンスヒルズ、ファルマバ
レーの流れを加速させることにも繋がる
 当該層は本物志向が強いため、地元サービス業における付加価値の高い
取引の拡大や 高い生産性が求められる雇用機会の創出が期待できる
取引の拡大や、高い生産性が求められる雇用機会の創出が期待できる
 この実現には、規制緩和等を前提とした介護サービスの生産性向上が必要。
また、「静岡の住みやすさ」を首都圏へ情報発信する意味で、観光を強化し
、 静
住
す 」を首都圏 情報発信す
味 、観光を強
ていく意義もある
15
規制対応等を容易化するための支援
 産業創生の鍵を握る中小・零細企業からは、新たな産業への参入障
壁として以下のような指摘
・ 規制対応コスト(規制の理解の困難性、認可申請等)
・ 規制以外の対応コスト(必要な各種認証等の取得、外国語対応)
規制以外の対応コスト(必要な各種認証等の取得 外国語対応)

こうした参入障壁を少しでも引き下げるためには、中小・零細企業の
立場を踏まえ彼らにと て有用な支援となる仕組みづくりが不可欠
立場を踏まえ彼らにとって有用な支援となる仕組みづくりが不可欠
―― 各種相談窓口の充実、各分野の規制対応や外国語による申
請書類作成等に習熟した人材の短期派遣(後述)など
 県の予定する以下の取り組みが早期に実現し、中小・零細企業の新
たな参入の動きに結び付くことを期待
・ 「産業成長のための規制緩和推進会議」の設置
・ 認証取得など各種の企業活動をサポートする取り組み
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人材の確保・育成
 地元の中小・零細企業が新たな産業に参入していくためには
地元の中小 零細企業が新たな産業に参入していくためには、経
経
営、技術、管理に関わる人材を確保・育成することが必要不可欠
 こうした人材は特に中小・零細企業で不足しているのが実情。これ
う た人材は特 中
零細企業
足
る が実情 れ
を解消するためには、以下のような施策も有効と考えられる
① 関連する大企業の第一線で活躍してきたOBからなる「中小企
業支援人材バンク」の創設
② 当地各事業分野で活躍した経済人のネットワークの組成・活用
③ 中小・零細企業と大学との連携による技術開発支援や、その延
中小 零細企業と大学との連携による技術開発支援や、その延
長としての優秀な若手人材の中小・零細企業への就職斡旋
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静岡へのメッセージ
 当地は、製造業を起点とした産業空洞化と雇用機会の縮小、そ
れに伴う若年層を中心とした人口流出や雇用者所得の伸び悩
みといった、リーマン・ショック後の構造問題を抱える
⇒ 「課題先進県」
 他方、当地は、優れた技術力をもつ中小企業群の集積、大都市
圏へのアクセス面での優位性、自然資源・歴史文化資源の豊富
さを有する
⇒ 他地域と比較してなお高い潜在力
 「課題先進県」である当地が、こうした優位な潜在力を存分に活
かして、経済界、金融界、行政、学界等が一体となり地域をあげ
て産業創生を実現し 地方創生の先導役として 再び活力を取
て産業創生を実現し、地方創生の先導役として、再び活力を取
り戻すことに期待
静岡を産業創生のモデルケースに!
18
止