付録 1.薬液注入工事

付録 1.薬液注入工事
1.一般事項
1. 薬液注入工事の実施に当たっては、国土交通省「薬液注入工法による建設工事の施工に関する暫定指針」
(以下「暫
定指針」という。
)に準拠する。
2. 薬液注入工法は土質に応じて薬剤や工法を適切に選択する必要があり、設計図書及び現場調査の結果に基づき、採
用する工法が適切であるか監督員と協議して決定する。
3. 事前調査及び現場注入試験の結果に基づき、注入施行計画を作成し、監督員に提出する。
2.注入責任技術者
1. 注入責任技術者として注入工事に関し発注者の定める資格(建設業法第 26 条の 1 項に規定する技術者と同等の者)
を有する熟達した技術者を選定し、経歴書を添えて監督員に提出する。
2. 注入責任技術者は、施行現場に常駐して注入工事の施工管理を行う。
3. 注入責任技術者は施行に先立ち、関係官公署に法令等で定められた届出をして許可を受ける。
3.事前調査
1. 土質調査
土質調査は、次のように実施する。ただし、別途に同様な調査を実施した場合には、これを利用することができる
が、不足又は不十分な部分は乙が補って調査する。
(1) 一般に施行面積 1,000 ㎡につき1箇所以上、各箇所間の距離は 100mを超えない範囲でボーリングを行い、各
層の試料を採取して、土の透水性、強さ等に関する物理的試験及び力学的試験による調査を行う。
(2) 河川の付近、旧河床等局部的に土質の変化が予測される箇所については、
(1)よりも密にボーリングを行う。
また、
(1)又は(2)によりボーリングを行った各地点の間は、必要に応じてサウンディング等によって補足
調査を行い、その間の変化を把握するように努める。岩盤については、監督員の指示する調査を行う。
2. 地下埋設物調査
地下埋設物調査は、注入工事現場及びその周辺の地下埋設物の位置、規格、構造及び老朽度について、関係諸機関
から資料を収集し、必要に応じて、試験堀等により現地の実態を確認する。
3. 地下水位等の調査
注入工事現場及びその周辺の井戸等について、次の調査を行う。調査範囲は、一般にローム層相当の地層について
は周囲 100m以内、砂礫層については周囲 150m以内とする。
井戸等の位置、深さ、構造、使用目的及び使用状況。
河川、湖沼、海域等の公共用水域及び飲用のための貯水池並びに養魚施設(以下「公共用水域等」という。
)の位置、
深さ、形状、構造、利用目的及び利用状況。
4. 植物、農作物等の調査
工事現場並びにその周辺の樹木、草木類及び農作物について、その種類、大小、利用目的、位置等を調査する。
4.現場注入試験
1. 注入工事に先立ち、使用する薬剤の適性、その配合決定に関する資料及び注入工法に関する資料を得るため現場注
入試験を行う。
2. 現場注入試験に先立ち、現場試験計画書を監督員に提出する。
現場注入試験は、注入箇所又はこれと同等の地盤で行い、次の測定結果を監督員に報告する。
(1) ゲルタイム
(2) 注入圧、注入量、注入時間、単位吐出量
(3) P-Q管理図
(4) 注入有効範囲(ボーリング、掘削による観測)
(5) ゲル化の状態(ボーリング、掘削による観測)
乙は、現場注入試験後、監督員の指示により、必要に応じて、次の試験を行い、その結果を監督員に報告する。
水質試験、土質試験、標準貫入試験、現場透水試験、一軸圧縮試験、間隙率、粘着力
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5.注入作業
1. 乙は、毎日の作業状況を注入日報により監督員に報告する。
2. 注入に先立ち、配合液を注入管から採取し、1日に2回以上又は配合の変わるごとに薬液を注入機ごとに採取し、
ゲル化の状況を確認する。
3. 注入箇所に近接して草木類及び農作物がある場合には、注入によりこれらの植生に悪影響を与えない。
4. 地下埋設物に近接して注入する場合には、当該埋設物に沿って薬液が流出しないよう、必要な措置を講ずるととも
に、薬液注入における異常発生(削孔時の抵抗増加、注入圧力の低下等)に十分注意する。
5. 注入作業は、連続的に施工するとともに注入圧、注入量、注入時間が適切であるよう常時監視し、注入剤が逸脱し
ないように努める。
また、周辺の地盤、井戸、河川、湖沼、養魚池等の変化を常時観測し、異常が認められたときは、直ちに作業を中
止し、その原因を調査して適切な対策を講ずる。
6. 各孔の注入終了に当たっては、管理図によって注入圧、注入量、注入時間を確認する。
7. 注入作業中は、管理図を用い、流量計、流量積算計、圧力計等を使用して適切な施工管理を行い、その記録紙を監
督員に提出する。ただし、小規模な注入については、施工計画書に基づき別の方法で測定することができる。
6.地下水等の水質監視
乙は、薬液注入による地下水及び公共用水域等の水質汚染を防止するため、監督員と打合せのうえ、次の要領で水質
汚濁の監視を行う。
1. 注入箇所及びその周辺の地形、地盤、地下水の流向等に応じて、注入箇所からおおむね 10m以内に数箇所、適当な
採水地点を設ける。採水は、状況に応じて観測井あるいは既存の井戸を利用して行う。
2. 公共用水域等については、当該水域の状況に応じ、監視の目的を達成するため、必要な箇所について選定する。
3. 観測井の設置に当たっては、ケーシング等を使用し、削孔して建込む。削孔に当たっては、清水を使用し、水質変
化をもたらすベントナイト等を使用しない。
観測井は、次の事項に留意して設置する。
(1) 観測井の位置は、監督員と協議して決める。
(2) 観測井は、一般に硬質塩化ビニル管を使用するものとし、地下水位以下の部分は、管の周囲に適切な孔を
設けたストレーナとする。
(3) 観測井のキャップは、ねじ加工取り付けとする。
(4) 測定終了後は、砂埋めとする。
(5) 観測井の上部を切断する場合は、道路管理者等と打ち合わせる。
4. 水質試験は、監督員の指示に基づき、次の基準により採水し、暫定指針定める検査項目及び検査方法で実施する。
(1) 薬液注入工事着手前
1回
検査項目:一般の井戸水試験に準ずる。
(2) 薬液注入工事中
毎日1回以上
検査項目: 暫定指針による。
(3) 薬液注入終了後
ア. 1 回目の検査項目は、
(1)と同じく一般の井戸水試験に準ずる。
イ. 2 週間を経過するまで毎日1回以上とする。ただし、状況に応じて調査回数を減じても監視の目的が十分に
達成される場合には、監督員と協議して週1回以上とすることができる。検査項目は(2)と同じく暫定指針
による。
ウ. 2 週間経過後半年を経過するまでの間は月 2 回とし、試験項目は(2)と同じく暫定指針による。現場にお
ける採水及び pH 測定の方法は、甲の基準による。
エ. 水質試験の測定値が水質基準に適合していない場合又はそのおそれがある場合には、直ちに工事を中止し、
監督員と協議して、適切な対策を講ずる。
7.薬液の保管
薬液は、流出、盗難等の事態が生じないよう厳正に保管する。
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8.排水残土及び残材の処理
1. 注入機器の洗浄水、薬液注入箇所からの湧水等の排出水を公共用水域へ排水する場合、その水質は、暫定指針の水
質基準に適合する。
2. 1.の排水に伴い、発生した泥土は、
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」
(昭和 45 年法律第 137 号)その他の法令
の定めるところに従い、適切に処分する。
3. 薬液を注入した地盤から発生する掘削残土の処分に当たっては、地下水及び公共用水域等を汚染することのないよ
う必要な措置を講ずる。
4. 残材は、毎日点検し、空容器及び使い残した注入剤は、メーカーに必ず返品する。
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