01 機械組立て 主査 榊原 充 先生 (高度職業能力開発促進センター) Mechanical Device Assembly 究極の精度感覚が要求される繊細な技能。 今年の競技課題は『プレスブレーキ』 という曲げ加工装置です。この課題で は、 アルミ板の2か所を直角に折り曲げて、 コの字形に加工します。装置は2つの ユニットA・Bからなり、 ユニットAに与えた回転運動を、 カムを介して直進運動に 変換し、ユニットBに取り付けたアルミ製ワークの位置決めを行います。そのの ち、 ユニットBでは、 パンチを下方に移動してワークに曲げ加工を行います。本装 置の複合動作にはPICマイコンを使っており、 ロータリーアクチュエータとエア シリンダを連携動作させています。装置の円滑な動作を保証するためには、装 第51回技能五輪 競技課題例 魅 力 立調整技能が必要です。7時間しかない競技時間の間に、会場で支給される8部 錬磨の手わざは、 技能者としての誇り。 品126面をヤスリで仕上げたのち、組立調整を繰り返し行い、 ワークの加工機能 暮らしや産業に必要なあらゆる機 を完璧にチェックしなければ課題の完成となりません。単品部品と組立品に求め 械を構成する金属部品。その加工・組 置を構成する個々の部品の絶妙な手仕上げ技能と、正確な測定技能と繊細な組 られる寸法精度と幾何精度 (直角度、平行度等) はすべて0.01mm以内です。組 立てを支えるこの職種は、社会にとっ 立調整時間を差し引くと、選手には1面当りの仕上げに平均3分弱の猛スピード て不可欠です。 しかもその技能は、 ど が要求されます。 しかも、0.01mmの許容差を実現するためには、その10分の1 んなに表面がきれいでも、 組み立てた の0.001mm (1ミクロン) 単位の加 部品が滑らかに動かなければ意味が 工技能も身につけていなければ対 ありません。加工した部品の精度は 応できません。このように、本装置 測定具で測りますが、 もっとも頼りに の 精 緻な動 作を実 現するために なるのは手の感覚のみ。たゆみない は、熟練した手仕上げ技能のみな 技能の錬磨による0.01mm以下の精 らず、精密測定を駆使しながらの繊 度感覚は、技能者としての誇りです。 細で慎重な組立調整技能が必須と なります。機械組立てはまさに究極 の精度感覚が要求される技能職種 第51回技能五輪 競技風景 といっても過言ではありません。 競 技 の ポ イ ン ト 感覚を研ぎ澄まし、0.01mm以下の精緻に挑む。 “ ものづくり ” は人の技能が原点 り、個々の部品寸法の狙いを定め、 であり、 それが失われつつある現在、 ミクロン単位の超高精度加工もすべ この機械組立て職種は、ものづくり て人の技で実現します。加工を終え の基本要素を数多く含んだ競技で た部品の寸法測定と確認をしながら す。図面から設計者の意図を読み取 組立て調整をし、動作させる。まさ この職種は企業の中ではトラブル にこの競技の真骨頂がこの部分にあ シューティングやメンテナンスの大切 20 The 52th National Skills Competition 将 来 性 ITが進んでも、 社会の求める極微の技能。 ります。わずか 7 時間弱の中での、 な役目を担っており、 この技能者がい 猛スピード、超高精度加工、組立て なければ機械が止まってしまいます。 そ をする選手の姿は華麗に光り輝き、 れはITが進むこれからの時代も同じ 人々に感動を与えます。また選手が で、社会を支える重要な職種といえま 作り上げた製品は “ これがヤスリ仕 す。最近は課題も生産現場に則した内 上げか ” と思わせるほど美しく、精 容に進化してきており、挑戦者が年々 度感あふれる製品に仕上がります。 増えているのは頼もしいかぎりです。
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