「確定拠出年金法等改正案」国会提出に関する談話

2 0 1 5
年
4 月
8 日
「確定拠出年金法等改正案」国会提出に関する談話
ものづくり産業労働組合JAM
書 記 長
宮 本 礼 一
厚生年金基金の運用を委託されていたAIJ投資顧問会社の多額の年金資産消失事件によって
金融庁から業務停止処分を受けたことを契機に、それまでにも代行割れ問題を指摘されていた厚
生年金基金制度は、民主党政権時の辻泰弘厚生労働副大臣と津田やたろう厚生労働政務官が中心
となって、厚生年金基金制度の廃止を含めた議論が活発化することになった。
その結果、JAMも労働者代表の立場で参加した、厚生労働省社会保障政策審議会の中に設置
された「厚生年金基金制度に関する専門委員会」において、
「厚生年金基金制度の見直しに関する
意見」がまとめられ、2013 年6月に参議院において「厚生年金保険法等の一部を改正する法律」
の成立に至ったものである。
この法律改正の柱である「企業年金の普及・拡大」は、厚生年金基金制度廃止を踏まえて、中
小企業での厚生年金基金が果たしてきた役割・機能をどのように他の企業年金制度に継承させて
いくのかが重要な課題となる。加えて、厚生年金などの公的年金制度が果たしてきた役割が劣化
しつつあり、公的年金の補完のみならず、所得保障制度と位置づけられている中小企業での企業
年金制度の活用は重要な課題である。
他方、新しい企業型確定拠出年金制度は、事業主拠出に加えて、従業員個人による拠出も認め
ているが、大企業と賃金格差がある中小零細企業で働く労働者は、現在の生活を営むことが最優
先であり、低水準の月例賃金の中から将来受け取る年金のための掛金を拠出するためには、拠出
に対する所得控除の他に、補助金制度などの支援策の検討も必要である。
確定拠出年金制度の特徴は、事業主が負っている運用リスクを労働者に転嫁するものであり、
労働者自身が年金資産の運用方法を決定し、その結果責任を労働者自身に負わせる制度であるこ
とから、将来受け取れる年金額が不十分な水準になったとしても、加入者の自己責任となる。
労働者自身による運用リスクを限りなくゼロにし、十分な年金額を確保するためには、中小企
業事業主に対して、年金資産運用に関する資料提供を義務づけるとともに加入者に対する導入時
教育をはじめ、加入以降も継続的に資産運用教育の実施が担保されなければならない。
AIJ投資顧問会社での資産消失事件の反省に立ち、資産管理業務などの専門的能力や、運用
手数料などの評価も労使共通の重要な課題であり、導入に際しては労働組合として積極的に労使
協議をおこなわなければならない。