自分の考えをもつための数学的コミュニケーション能力の育

実践のまとめ(第2学年
算数科)
長岡市立前川小学校
1
教諭
清水
賢志
研究テーマ
自分の考えをもつための数学的コミュニケーション能力の育成
2
研究テーマについて
(1) テーマ設定の意図
自分の考えをもつことを大切にしてほしいと考え、学習指導に日々取り組んでいる。しかし、自
分の考えをもつことを得意として発表に対しても積極的な児童もいれば、考えをもつことはできる
が伝えることを苦手としている児童、考えをもつこと自体が苦手な児童、様々な児童がいる。児童
一人一人が自分の考えをもち、自信をもつことができるように数学的コミュニケーションを大切に
したいと考え、今回研究をすすめることにした。
なぜ、児童は自分の考えをもてなかったり、自信がなかったりするのか考えた。まず、考えをも
てないのは、問題と向き合った時に理解が十分でないまま活動が進んでしまい、何をすればよいか
見通しがもてていないのではないかと考える。考えを表現できなければ、自信をもつことはできな
いであろう。その一方、自分の考えをもつことができたけれども自信がもてないのは、自分だけで
は考えに価値を見いだせないことが考えられる。
これを改善するために、数学的コミュニケーション能力を育成していく。まずは、問題場面の把
握と見通しを大切にした授業を組織すること、次に、自分の考えに自信をもつために数学的価値を
高めさせる視点をもたせること、そして、他者との交流を通して自分の考えに自信をもたせたり、
理解の深化を図ったりすることに取り組んでいく。これにより、自分の考えをもつ児童の姿が増え
ると供に、自分の考えの価値に気付き自信をもつことが期待される。
(2) テーマに迫るために
① 問題提示の工夫
空欄を作った問題、順番を意図的に変えた板書,誤答を提示すると児童がつぶやき始める。つぶ
やいている児童の声を黙って聞いている児童も小声で数字をつぶやいていたり、予想したりしてい
る姿が出てきた。つぶやく児童の声が、学級全体に問題に対する見通しや解決方法、既習事項との
違いを広げ、理解を深めると考える。そういった児童の言動も表現の1つとして大切にしていく。
児童が思わずつぶやいてしまう、考えてしまうような問題の提示を工夫していく。
② 自分の考えをもたせるための工夫
問題場面を読み取ることを苦手としている児童が、熱心に問題に取り組むことができるように具
体物の操作に取り組ませ、正しい読み取りができるようにしたい。これによって操作したことが自
分の考えになり、自信をもって発言することができると考える。
さらに、自分の考えを表現できない児童が、自分のつまずきや解決の手がかりに気付く時間とし
て 2 人のペアで考えの交流を行う。その時間では、「わたしは絵でかいてみたら分からないところ
が全員の人数なんだ。」「ぼくは図で書いてみたら足し算になると思ったんだ。」といった考えを伝
え合うことで、自分の考えに自信をもったり、新たな考えに気付いたりすることができると考える。
考えを交流する中で表現することや伝えることの良さに気付かせたい。
③ 自作ホワイトボード「マジックシート」の活用
自分の考えをもつ活動、考えを伝え合う活動の中で自作のホワイトボード「マジックシート」を
活用させる。「マジックシート」は、ペンで直接シートに書いたり消したりできるものである。方
眼紙で作成されているため、図や言葉、式を整理して書くことができる。テープを貼り付けること
で、テープ図を操作することもできるようにする。自分の考えを相手に説明しやすいように整理し
て書く姿や、掲示されたマジックシートから仲間と自分の考えの相違点を比較し仲間分けする姿が
出てくるように活用したい。これにより、発表された考えを練り上げたり、吟味したりすることが
できるようにしたい。
(3) 研究テーマにかかわる評価
問題場面を絵や図、数、言葉、記号を使って表現している児童が 80%以上。
(自作ホワイトボードへの記入、授業中の発表)
3
研究テーマについて
(1) 単元名
たし算とひき算
(2)単元の目標
加法と減法の相互関係について理解し、式や図を用いて説明できるようにする。
(3)単元の評価基準
数量の関係を絵や図で表し、関係をとらえやすくして式に表わそうとしている。【関心・意欲・態度】
数量の関係を言葉や数、式、図を用いて表現し、数量の関係を考えている。【数学的な考え方】
テープ図で数量の関係をとらえ、立式し、計算する。【技能】
テープ図を用いると数量の関係が分かることや、加法と減法の相互関係を理解している。【知識・理解】
(4) 単元の指導計画と評価計画
次
学習内容
学習活動
時数
主な評価規準と方法
第
たし算、ひき算を図
一
でかこう。
次
指導過程における
① 文章題の数量の関係を様々な図に表した
【考 】 様 々な 絵 や 図の 良 さ
ものを見て、それぞれの図のよいところ
を比較し、テープ図は全体、
を話し合う。
部分 の 関 係が 分 か りや す い
(4)
テープ図のよさを知
② 文章題を読んで、たずねていることは加
り、テープ図をかけ
法の場面か、減法の場面か、分かってい
るようになろう。
ることは何かを考える。
③ 問題場面をテープ図で表すことの良さを
実感し、テープ図に表す。
④ 問題場面をテープ図に表して立式し、既
習の筆算を用いて、答えを求める。
とい う こ とを 考 え てい る 。
(ノート、発言)
【技 】 問 題を 読 ん でテ ー プ
図に 表 し 、求 め る こと は 何
かを 考 え て立 式 す るこ と が
できる。(マジックシート)
⑤ 全体を求める問題場面をテープ図で表
し、問題を解決する。
⑥ 部分を求める問題場面をテープ図で表
し、問題を解決する。
⑦ 2つの量の大小関係を読み取り、テープ
【知】どちらが多いか(少な
い)かが読み取れるテープ
図の表し方を理解してい
る。(マジックシート)
図に表す。立式して筆算を用いて問題を
解決する。
テープ図をもとにし
第
⑧ 加法の表現になっている場面をテープ図
【知 】 問 題文 は 加 法で も 、
て、問題を解決しよ
に表す。テープ図に数を書き入れながら、 式 は 減 法 の 場 合 も あ る な
う。
減法の計算で答えを求める。(本時)
⑨ 減法の表現になっている場面をテープ図
二
ど、 問 題 文の 表 現 にか か わ
らず 、 テ ープ 図 を もと に 加
に表す。テープ図に数を書き入れながら、 法・ 減 法 を決 め る こと が 出
次
加法の計算で答えを求める。
(3)
⑩ 減法の表現になっている場面をテープ図
来ることを理解する。(ノー
ト、マジックシート)
に表す。テープ図に数を書き入れながら、
減数を減法の計算で答えを求める。
テープ図を使って、
⑪ たし算言葉、ひき算言葉がない問題場面
【考 】 テ ープ 図 か ら問 題 文
問題作りをしよう。
をテープ図で表し、立式して問題を解決
や式をイメージして考え
する。
る。(発言、ノート)
第
三
問題を出し合って、
⑫ テープ図をもとに、問題、式を考える。
次
テープ図を使って答
⑬ 問題作りをし、テープ図を作り、答えを
(2)
えを求めよう。
求める。
【考 】 加 法や 減 法 の数 量 の
関係 を 言 葉や 数 、 式、 図 を
用いて表現し考えている。
(ノート、マジックシート)
4
単元と児童
(1) 単元について
児童は、1 年で加法、減法(合併・増加・求残・求補・求差・求大・求小)それぞれ簡単な場面につ
いて学習した。その際に、演算が成り立つ場面をとらえて演算決定を行い、計算した。計算の仕方が
学習の中心であったために、順思考の問題場面を取り扱ってきた。問題場面を問題文で使われている
言葉(たし算言葉、引き算言葉)に着目している様子が見て取れる。言葉を拠り所にした場面把握は、
具体物の操作にもつながっている。
2 年では、加法と減法の相互関係に目を向けさせる。例えば、問題場面における数量の関係は減法
の表現になっているが、計算は加法を用いる、逆思考の場面と出会わせる。ここで順思考に慣れて
いる児童や問題場面を理解できていない児童は、演算決定ができずに止まったり、演算決定を間違
え、問題解決ができなかったりすることが考えられる。
本単元では、問題場面を的確に読み取り、数量関係をテープ図などの図に表し、それをもとに演
算を決定し、立式して問題を解決するという学習の流れを目標にして学習を進める。問題場面を読
み取り、すぐに演算決定を行うのではなく、テープ図などを用いて具体物の操作を行い、説明でき
る力を養っていく。そして、問題場面をテープ図などの図に表すことの良さを実感させていく。
(2)児童の実態
本学級では算数が好きと答える児童は計算が得意なことが多い。それに対して、算数が苦手と考え
る児童は計算が苦手であったり、演算決定を苦手としていたりして自信がないことが多い。児童は、
たし算やひき算の計算について 9 割近くの児童が計算の仕方を習得している。中には、くり上がり、
くり下がりのある計算を苦手としている児童もいる。計算などの基礎基本を定着させる反復練習に、
意欲的に取り組み、身に付けようとする意欲が高い。
4 月から自分の考えを表現させることに重点を置き、時間設定や意欲付けを工夫してきた。このた
め、学級の全員が問題の解決の方法について表すことができるようになってきた。今まで、自分の考
えを1つ考えたら活動を終わりにしていた児童も他の表現方法で考えをまとめるようになってきた。
操作活動に関心をもつ児童が多い。立式し、答えを求める流れの学習では、活動が止まってしまう
児童も、操作活動を行うことでスムーズに問題に取り組むことができる。テープ図をマジックシート
とビニールテープを使うことで、操作活動を行うことができ、テープ図と立式、計算とが繋がるよう
にしていきたい。
5
単元と児童
(1) ねらい
問題文の表現にかかわらず、テープ図をもとに演算決定をすることができる。
(2) 展開の構想
問題場面を提示すると、児童はまず、問題場面を把握し、解決の見通しを立てようとする。問題
場面をイメージできるかどうかが、次の操作活動、テープ図の作成に大きくかかわっている。その
ため、絵などを使って児童の場面把握を援助する。この時に、問題文の「ぜんぶで」や「のってき
た」というたし算言葉から加法場面だと考える児童がいるだろうし、逆に、求める数が部分であり、
全体が分かっていることに気付く児童は、減法だと考えるであろう。
このように、児童が、加法場面なのか、減法場面なのかを確かめた
くなる課題意識をもたせる。
次に、マジックシートを使ってテープ図を作成する。2枚のテー
プを使わせる。テープは貼って剥がせるものを使うため、問題場面
を想起し、操作しながらテープ図を作成させることができる。この時に、分かる数と分からない数
を明記させ、演算決定ができるようにさせたい。
(3) 展開
・学習活動
T 教師の働きかけ
10
・問題を知る
T 問題を読みましょう。
分
もんだい バスにおきゃくが27人のっていました。後から何人かの
時間
C 予想される反応
□評価
○支援
☆留意点
☆見通しを限定しないよう
に補足説明は控える。
ってきたので、おきゃくはぜんぶで34人になりました。後からの
ってきたのは何人でしょうか。
・解決の見通しを C「ぜんぶで」があるからたし算だ。
もつ
C 後から乗ってきたからたし算だ。
○問 題 場 面の 理 解 を助 け る
ために絵を見せる。
C 後から乗ってきた数が分からないからひき算
だと思う。
C テープ図を作れば分かる。
・本時の課題をも C たし算かな?ひき算か?
つ
C テープ図を使ってたしかめたい。
めあて たしざんかひきざんか、テープずをつかってたしかめよう
☆児 童 の 反応 や つ ぶや き を
拾い な が ら、 め あ てを 設 定
する 。 児 童が 本 時 の課 題 を
理解できるようにする。
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・テープ図を作成 T マジックシートにテープ図を作って、答えを
○机 間 巡 視を し な がら 、 テ
分
し、自力解決をす 出しましょう。
ープ 図 作 成に 戸 惑 って い る
る
C まず乗っていた人は27人だな。
児童 に は 、問 題 場 面を 想 起
C 乗ってきた人は分からないから□人だな。
させる補助をする。
C 全部の数は34人だな。
□テ ー プ 図を も と に演 算 決
C 部分が分からないからひき算だ。
定を し 、 問題 を 解 決す る こ
C34-27=7で答えは7人だ。
とができる。(マジックシー
ト)
・ペアでテープ図 T ペアでたし算になったか、ひき算になったか
☆全 体 に 説明 す る 際は マ ジ
を使って説明する
確かめましょう。
ック シ ー トを 大 型 テレ ビ に
・全体で理解を深 C テープ図はこんな図になりました。
投影 し 、 児童 が 説 明し や す
める
C 部分が分からないからひき算だよ。
いようにする。
C たし算だと全部の数より多くなってしまいま
す。だからひき算です。
10
・まとめ
分
T テープ図を使うとたし算かひき算かが分か
る。
・ふりかえり
C テープ図を使って答えを正しく出すことがで
□テ ー プ 図を も と に演 算 決
きた。
定を し 、 問題 を 解 決す る こ
C テープ図を使うと、分かりやすい。
とができる。(発言)
(4) 評価
・テープ図をもとに演算決定をし、問題を解決することができる。(マジックシート、発言)
6
実践を振り返って
(1)
授業の実際
はじめに、数量の関係が加法の表現になっているが、計算は減法を用いる逆思考の問題場面を提
示した。教師は、演算決定の場面でひき算とたし算の両方の考えが出て、どちらが正しいのかを確
かめるのを本時の課題にしたいと考えた。実際には、問題場面を正確に読み取り、ひき算の問題と
捉えた児童は 19 名(74%)いた。それに対して、「ぜんぶで」「あとからのってきた」という「たし算
言葉」を手がかりにし、たし算の問題と捉えた児童は 6 名(26%)いた。ここで、児童同士で自分の
考えを伝え合った。ひき算側は、「後から乗ってきた人が分からないから引き算だよ。」「全部は 34
人でもう分かっているからひき算だよ。」と数を取り出して説明しているので分かりやすかった。た
し算側は、やはりたし算言葉に着目した意見を述べた。この後、「ひき算の問題かたし算の問題かを
たしかめよう」という課題を設定し、問題解決に取り組んだ。
課題を決めた後に、問題場面をテープ図に表して式を立てる活動に取り組んだ。はじめからテー
プ図に表すことができた児童は 15 名(65%)であった。今まで使ってきたテープ図を確認した後は 19
名(74%)に増えた。単元全体でテープ図を使ってきたことで、テープ図に慣れてきているといえる。
しかし、次の問題点が見られた。1 点目は、テープ図と式が結びつかない児童がいた点である。テ
ープ図は正しくひき算の場面を表すことができているのだが、答えをたずねると全体の数と答える
児童が 6 人出てきた。全員で問題解決の見通しの確認の際に、求めるところを確かめているにもか
かわらず、分かっている全体を答えと捉える児童が出てきたのである。「何を求めるのか」「何が分
かっているのか」を言葉、数で確認するだけでは不十分であり、テープ図だとどのように表される
のかを確認するべきであった。
2 点目は、テープ図の表し方が様々であり、ペア学習で自分のテープ図を見直したり、課題にせま
る話し合いをしたりできなかった点である。一人一人が自分なりのテープ図を作ることができたが、
テープの使い方を決めなかったため、自分のテープ図は正しいのか間違っているのかを判断するこ
とが難しかった。結果として、テープ図を作り慣れている児童しか判断ができなかった。課題を決
めた後に 2 本のテープの使い方を決めることで、ペア学習と全体での考えの吟味がより内容のある
ものになったと考えた。
ペアで考えを伝え合った後、全体で考えの確認を行い、作ったテープ図と式を紹介していった。
全てのテープ図がひき算を表していると確認できたため、本時の問題場面はひき算であることが確
認できた。はじめ、たし算の問題だと考えた児童も、「たし算で考えると 34+27=61。答えが 61 人
になって、後から乗ってきた人が 61 人になったら、バスに乗っている人が 95 人になっちゃうよ。」
という意見に納得していた。ところが、立てた式を確認すると「34-27=7」と「27+□=34」の 2
通りがあった。児童は、テープ図ではひき算だと理解できたが、式に表すとたし算も出てきたこと
に戸惑っているように感じられた。結果的に「テープ図を手がかりにして、ひき算が正しい。」と考
えることにとどまってしまった。ここで、テープ図と式を結びつけた確認や□の入ったたし算の式
をひき算の式と結びつける確認を大切にするべきであったと反省している。次時には、テープ図と
式を結びつけて確かめると、「27+□=34」は「34-27=7」になることを理解することができた。
(2) 研究テーマにかかわって
①
問題提示の工夫
実践を通して、問題場面の読み取りを大切にしてきた。はじめは、たし算言葉やひき算言葉を
手がかりにする読み取りを児童は行っていた。それが空欄を作った問題、順番を意図的に変えた
板書、誤答を提示するなど問題の提示を工夫することで、問題をじっくり読み取る児童が増えた。
本時の逆思考の問題を正しく読み取ることができた児童が 74%に達したのも一つの成果と考え
る。
また、問題と向き合った時の児童のつぶやきを取り上げ、課題の設定、解決の見通しとして取
り上げる学習の流れを続けてきた。A 児の授業のふりかえりの中に「問題を見た時は、(聞かれて
いることが)分かりませんでした。B さんが、
『増えるからたし算だよ。』と話してくれたから、テ
ープ図を作ることができました。」と書いていた。A 児と B 児は席が離れている。A 児の見通し
が B 児の考えを助けた姿といえる。見通しをもつ時間を設定することで、問題場面の読み取りが
苦手な児童も既習事項を意識したり、本時の課題をつかんだりすることができると考える。
②
自分の考えをもたせるための工夫
自分の考えをもたせるために、具体物の操作や絵や図をかかせる活動に重点を置いて指導して
きた。問題を見てすぐに立式できなくて解答を諦めてしまう児童も、意欲的に考えを表現できる
ようになってきた。図のかき方や記号の使い方を伝えることで、分かりやすく考えを表現しよう
とする児童も増えてきた。
自分の考えをもつことについては成果が見られたが、ペアでの考えの交流には課題がある。ま
ずは、授業者が考えを交流したい、深めたいという児童の姿を見取ることである。ただの意見交
換になっていては意味がない。次に、児童が話し合うための視点をあらかじめもたせることであ
る。何について話すのかをはっきりさせることで児童の考えを広げたり、深めたり、自信を持た
せたりすることができると感じた。本時では、たし算のテープ図なのか、ひき算のテープ図なの
かを確かめる視点をもたせることが必要であった。テープ図のかき方を掲示しておいたが、それ
を視点としている児童はいなかった。違う逆思考の問題に取り組んだ時に、テープ図のかき方を
視点にすると、「分からないところが全体になっているからたし算で、あの図と一緒だね。」「全
体が分からない問題だけど、ここ(部分)が分からないから違うんじゃないかな。」ペアでの考えの
交流の内容が良くなった。
③
自作ホワイトボード「マジックシート」の活用
自分の考えをもつ活動、考えを伝え合う活動でマジックシートを、算数だけでなく全教科で活
用してきた。自分の考えを相手に説明しやすいように整理して書く姿や、掲示されたマジックシ
ートから仲間と自分の考えの相違点を比較し仲間分けする姿が
見られるようになった。マジックシートに書くのに慣れること
で、ノートに書く内容にも改善が見られた。また、ノートでは
できない具体物の操作も、マジックシートとテープなどの補助
道具を使うことで可能になった。テープ図を操作して作る活動
を積み上げることで、単元末にはテープ図をかき記すことがで
きる児童が 21 名(91%)になった。児童の学習への意欲を向上さ
せるだけでなく、具体物から抽象物への表現の移行を助ける道具としても有効であると感じた。
(3)
今後の課題
本実践では、児童一人一人が自分の考えをもち、自信をもつことができるように数学的コミュニ
ケーション能力を育てたいと考えた。一人一人が考えをもたせる工夫として、問題の提示、問題場
面の把握・見通し、操作活動は有効であった。
しかし、自分の考えに自信をもたせるためには、さらに工夫が必要である。まず、ペア学習を成
立させるための解決方法の見通しの整理である。例えば、表現方法を設定することで、児童の考え
が拡散し過ぎを防ぐことができると考えられる。
次に、課題の確認の見直しである。今まで、児童のつぶやきを取り上げる中で課題を設定してき
た。課題は、自分の考えに算数的な価値を見出す視点となるものである。課題にある算数的価値を
授業者と児童が共有することで、お互いの考えを吟味できるようになると考える。これからも検討
していく必要がある。