「網走・北見・紋別地方 温暖化予測情報」を掲載しました。

網走・北見・紋別地方
温暖化予測情報
平成27年2月
網走地方気象台
地球温暖化問題
現在の地球は過去1400年間で最も暖かくなっており、様々な影響が出てい
ま す 。 地 球 規模 で気 温が上 昇す る現 象を 地球温 暖化 とい い、 気温の 上昇 だけ
で な く 、大 雨 や 干ば つの増 加、 海面 水位 の上昇 など 様々 な現 象を伴 いま す。
実 際 、 1880 年 か ら 2012 年 の 間 に 世 界 平 均 気 温 は お よ そ 0.9 ℃ 上 昇 し ま し た 。
将 来に わ た って 気温 はさら に上 昇し 、自 然界、 人間 に深 刻な 影響が 生じ ると
考えられています。
地球温暖化の原因
地球 の 大 気 は 窒素 や酸素 が主 成分 です が、 二 酸化 炭素 など の温室 効果 ガス
と 呼ば れ る 気体 もわ ずかに 含ま れて いま す。 こ れら の気 体は 地表か ら出 てい
こ うと す る 赤 外線 を 吸収し 、再び 放出 す る性質 があり ます 。 この性 質のた め、
太 陽か ら の 光 で 暖め られた 地球 の表 面か ら宇宙 に向 かう 赤外 線の多 くが 、 熱
と して 大 気 に 蓄 積さ れ、 再 び地 球の 表面 に戻っ てき ます 。こ の戻っ てき た赤
外 線が 、 地 球 の 表面 付近の 大気 を暖 めま す。 こ れを 温室 効果 と呼び ます 。 温
室効果によって地球は生物にとって快適な気温に保たれています。
しか し、 18世紀 の 産業革 命以 降、人類の活動によって 温室効果ガスが大量
に 排 出 さ れ 、大 気中 の温室 効果 ガス は急 激に増 加し まし た。 代表的 な温 室効
果ガス である 二酸 化 炭素の 濃度は 工業化前に比べて約40%増加しました。 こ
れにより温室効果が強まったことが地球温暖化の原因と考えられています。
1
温室効果の模式図
網走・北見・紋別地方の気候の将来予測
気象庁では気候モデルによる計算によって地域ごとの気候予測を行いました。将来
の温室効果ガスの排出量によって予測は変化します。この予測では、温室効果ガスの
濃度はIPCC温室効果ガス排出シナリオ(SRES)A1Bを仮定しています。
気候の予測は、現在気候(1980~1999年)、近未来気候(2016年~2035年)、
将来気候(2076年~2095年)のそれぞれ20年の期間を平均して表します。
計算対象の年代
気温の予測
温室効果ガスの大幅な増加に伴って、気温はさらに上昇し、将来気候は現在
気候に比べて年平均 気温が3.4℃程度上昇します。冬は他の季節に比べて気温の
上昇が顕著で、4.2℃程度の上昇が見込まれます。
オホーツク海の海氷が減少することにより、冬や春はオホーツク海を中心に
大きな気温 の上昇 が見込まれま す。また、1年のうち最も暑い時期や最も寒い時
期がそれぞれ10日程度早くなることが予測されます。
現在気候と将来気候における平均気温の季
網走・北見・紋別地方の平均気温の将来変化
現在気候からの差を示しています。青が近未来気候、赤が
将来気候、黒い棒は左から現在、近未来、将来気候におけ
る年々変動の幅を表します。
節変化
値は、現在気候における年平均との差を示しています。
陰影は年々変動の幅です。矢印は最も暑い時期と寒い
時期を表しています。
2
春
夏
秋
冬
年間
将来気候における平均気温の上昇量の分布図
夏日・真夏日の予測
夏 日 は 年 間 で 25 日 程 度 増 加 し ま す 。 現 在 気 候 で は 夏 日 の出 現 が 稀 な 春 や 秋
にも数日程度の増加が見込まれます。
真夏日は年間で10日程度増加します。秋にも1日程度の増加が見込まれてお
り、秋に真夏日が観測されることがそれほど稀な現象でなくなることが予想さ
れます。
夏日
真夏日
網走・北見・紋別地方の夏日日数と真夏日日数の将来変化及びそれらの北海道における分布図
(上)現在気候からの差を示しています。青が近未来気候、赤が将来気候、誤差棒は年々変動の幅を表します。
3
(下)将来気候における夏日・真夏日日数の現在気候との差の分布。
春から夏の低温日と日々の気温の変動の大きさの予測
現在気候の 気温の 気候値を基準 として、5月から7月における低温注意報が 発
表されるよう な低温 の日数は、近 未来気候では約半分、 将来気候では約 5分の1
と 大 幅 に 減 少 します 。 また、 現在 、 近未 来、将来の各 々の期 間における気候 値
を基準とした、5月から7月における気温の日々の変動の大きさは現在気候と
ほとんど変わりません。
(日)
20
15
10
5
0
15 日
8日
3日
現在気候
近未来気候
将来気候
日々の変動の
大きさ
現在
気候
近未来
気候
将来
気候
日平均気温
3.7℃
3.6℃
3.6℃
日最高気温
4.3℃
4.2℃
4.1℃
日最低気温
3.1℃
3.1℃
3.1℃
網走・北見・紋別地方の気温の日々の変動の
大きさの将来変化
網走・北見・紋別地方の低温日数の将来変化
5月から7月において、日々の平均・最高・最低気温の20
5月から7月において、網走・北見・紋別地方における日
年平均値(気候値)を現在・近未来・将来気候のそれぞ
平均気温の領域平均を求め、それが現在気候の20年平均
れについて作成し、日々の気温がそれら気候値からどの
より4℃以上低い日の数を1年あたりの数として示してい
くらいの幅で変動するかを表しました。
ます。
雷や突風、竜巻の予測
雷や 突 風 、 竜巻な どの激しい現 象は大 気の状態が不 安定な 時に発生しやす く
な りま す 。こ れらの 現象と関連の 深い各 指数は将来気 候では いずれも不安定 な
方 向に 変 化 し ます。 このことは、 地球 温 暖化が進んだ 将来は 現在よりも雷や 突
風などの激しい現象の頻度が増加する可能性が高いことを意味します。
(℃)
1
0.5
0.05
50
0.04
40
0.03
30
0
0.02
20
-0.5
0.01
10
0
0
-0.01
-10
-0.02
-20
-1
-1.5
SSI
EHI
SWEAT
雷や突風などの激しい現象と関連の深い各指数の網走・北見・紋別地方における将来変化
現在気候からの差を示しています。青が近未来気候、赤が将来気候、誤差棒は年々変動の幅を表します。SSI
は低下するほど、EHIとSWEATは増加するほど大気の状態が不安定であることを示します。各指数の詳しい
意味は、地球温暖化予測情報第8巻を参照してください。
4
降水量の予測
降水量は、年や地域による変動が大きいため、気温に比べて変化が明瞭では
ありませんが、次のことが見込まれます。
年間の総降水量及 び夏の降水量は、統計的に意味のある明瞭な変化が見込ま
れません。一方、春と冬の降水量は50mm前後の増加が見込まれます。気温が
高いほど空気中に含 みうる水蒸気の量が増えるため、将来は冬季における降水
量が増加すると考えられます。一方、秋の降水量は60mm程度の減少が見込ま
れます。これは、全 国的な傾向として秋に無降水日数が増加することを反映し
た変化と考えられます。
網走・北見・紋別地方の降水量の将来変化
現在気候からの差を示しています。青が近未来気候、赤が将来気候、誤差棒は年々変動の幅を表します。
春
夏
秋
冬
年間
将来気候における降水量の変化量の分布図
5
現在気候の降水量に比べて、将来気候で何%増加(緑)または減少(茶色)するかを示しています。
雪の予測
冬季全体で現在に比べて気温が大きく上昇するため、現在雪が降る期間の一部で雨
が降り、また融雪量が増加します。そのため、寒候期を通して積雪は現在に比べて少
なくなります。長期積雪(根雪)の期間は1か月程度短くなることが見込まれます。
降雪量は寒候期の初めと終わりに減少します。これは現在気候で降水が雪となって
いる期間の一部で雨が降るようになるからです。一方、真冬は温暖化が進んでも依然
として気温が低く雨ではなく雪が降ると考えられます。また、気温が上昇すると空気
中の水蒸気の量が増加します。そのため、気温の低い真冬や内陸部を中心に降雪量は
増加する見込みです。
積雪
降雪
網走・北見・紋別地方の最深積雪及び降雪量の将来変化
現在気候からの差を示しています。青が近未来気候、赤が将来気候、誤差棒は年々変動の幅を表します。
降雪
積雪
年間
2月
将来気候における最深積雪及び降雪量の変化の分布図
現在気候と比べて何cm増加(青)または減少(赤)するかを表し、年間と2月の値を示しています。
6
流氷の予測
網走で観測された流氷初日(網走から初めて流氷が見えた日)、流氷終日(流氷が
見えた最後の日)、流氷期間(流氷初日から流氷終日まで)の日数を下のグラフに示
します。個々の年の変動が大きいですが、流氷期間が徐々に短くなっていることが分
かります。
地球温暖化予測情報第8巻で気象庁が行った気候計算では、流氷の予測を行ってい
ません。しかし、流氷の後退と融解には沿岸の気象が深く関連すると考えられ、実際、
網走の初春の気温が高いほど海明けが早くなるという関係があります。そこで、網走
における海明けと、3月上旬前後1ヶ月の気温との関係を調べ、それを将来気候の気
温に当てはめたところ、将来気候では現在気候に比べて海明けが約20日早くなると
見積もられました。温暖化に伴ってオホーツク海全体の海氷が減るのはほぼ確実と考
えられていますが、流氷の動向には未解明な部分が多く、現在も研究が続けられてい
ます。
1970年から2014年までの網走の流氷初日、流氷終日の平年差と流氷期間の推移
参考文献
地球温暖化についてさらに詳しく知りたい方は以下の資料をご覧ください。
資料1
地球温暖化予測情報第8巻(気象庁)
気象庁が地域気候モデルを使って、日本の地域ごとの気候変動の予測を行った結果の報告
です。気象庁ホームページ内の次のページから入手できます。
http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/GWP/index.html
資料2
IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書
気象庁訳
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)がとりまとめた気候変動の自然科学的な根拠に関
する報告書で、気象庁が翻訳を作成したものです。
気象庁ホームページ内の次のページから入手できます。
http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar5/index.html
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この資料に関するお問い合わせ先
網走地方気象台 Tel. 0152-43-4349