巻頭言 “創造的成長”の実現を目指して 取締役 執行役専務 西田 直人 近年,私たちを取り巻く環境は目まぐるしく変化し続けています。エネルギーの安定供給や資源の確保,情報化 社会の進展,人口の増加など,グローバルに取り組むべき課題は多岐にわたり,複雑化しています。 こうしたなか東芝グループは,人々の“安心,安全,快適な社会−Human Smart Community”の実現を目指し, 事業の柱であるエネルギー,ストレージ,ヘルスケアの各分野において,これらの課題解決に取り組んでおります。 この経営方針を実現するにあたり,いわゆる“モノ”の提供にとどまらず,モノから実現される“こと”を顧客から 要求される真の価値と捉え,東芝グループが持つ技術力,商品開発力,及びモノづくり力を最大限に発揮すること によって,時代に適合した顧客価値を提供するとともに, “創造的成長” を更に加速してまいります。 2014 年の主な技術成果は,以下のとおりです。 電力・社会インフラ分野では,震災復旧のために,緊急電源としてコンバインドサイクル火力発電所を短工期 で完成させるとともに,被災した原子力発電所のがれき撤去の遠隔操作や燃料取出しに関する様々な技術開発を 進めました。高速大容量可変速揚水発電システムや地熱発電システムなど再生可能エネルギー電源の利用拡大に も取り組むとともに,世界のエネルギー需要に応えて効果的な送変電を可能にする多様な製品を出荷しました。 また,鉄道車両向けにPMSM(永久磁石同期電動機)とSiC(炭化ケイ素)を適用したインバータ装置を組み合わせ た世界初の省エネ駆動システムや,世界初の船舶搭載用固体化気象レーダなどの開発により,安心,安全,快適 な社会の実現に貢献しました。 コミュニティソリューション分野では,横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)や沖縄県宮古島市の実証事業など 自治体との連携により,CEMS(Community Energy Management System),BEMS(Building EMS),HEMS (Home EMS)といった幅広い技術を適用して,エネルギーの効率的な利用を実証しました。今後これらの実証 技術や,システム,サービスなどを,スマートコミュニティの実現に向けて各都市や地域に展開していきます。 ヘルスケア分野では,全身の血管内治療に対応した循環器用 X 線診断システムや,国産初の全身検査可能な TOF(Time-of-Flight)技術を搭載した大口径 PET(陽電子断層撮影)-CT(コンピュータ断層撮影)システムなど 基盤となる画像診断システムの開発に加えて,新たに日本人のゲノム構造を解析するゲノム解析サービスの開始に より個別化予防や個別化医療の実現を加速させます。 電子デバイス分野では,15 nmプロセス技術を用いて世界最小クラスのチップサイズを実現した128 Gビット (多値:2ビット/セル)NAND 型フラッシュメモリをサンディスクコーポレーションと共同で開発するとともに,業界 最大の記憶容量を実現したニアライン向け 3.5 型 HDD(ハードディスクドライブ)の製品化や,拡大する車載向け 画像認識プロセッサのラインアップ拡充を進めました。 ライフスタイル分野では,七つの使用スタイルでクリエイティブな作業を可能にするノートパソコンdynabook KIRA L93や,4K(3,840×2,160 画素)放送や4K 配信に対応したレグザ Z10Xシリーズを商品化しました。 更に,今後あらゆるモノもインターネットに接続するIoT(Internet of Things)がもたらす新たなイノベーションを 支えるICT(情報通信技術)基盤として,グローバルクラウド基盤サービスの地域拡大,サービス範囲の拡張,及び 信頼性の強化を図るとともに,ビッグデータの分析と利用を加速する様々なソリューションの開発を進めました。 以上,東芝グループの技術開発成果の一端を紹介いたしましたが,ぜひ本文をご一読いただき,皆さまのご助言, ご指導をいただければ幸甚です。 東芝レビュー Vol.70 No.3(2015) 1
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