2. 工学部共通実験・実習における安全

2. 工 学 部 共 通 実 験 ・ 実 習 に お け る 安 全
2.1
応用物理実験における安全
応用物理実験で起こる事故として、
(1)感 電 、 (2)電 気 災 害 、 (3)放 射 線 障 害 、 (4)や け ど 、 (5)光 線 に よ る 眼 の 傷 害 、
(6) 化 学 薬 品 に よ る 傷 害 、 ( 7) 回 転 機 や ガ ラ ス 器 具 な ど 使 用 機 器 に よ る 傷 害
が考えられる。応用物理実験を安全に行うために、
(1) 一 般 的 心 得 、 ( 2) 感 電 な ど の 事 故 防 止 に つ い て の 一 般 的 な 注 意 、
(3) 各 実 験 課 題 で 特 に 注 意 す る 点
について以下に順に述べる。
2.1.1
一般的心得
◎油断大敵、災いは忘れた頃にやってくる。
基礎実験では、よく知られた課題について実験する。だからといって油断
は禁物である。実験には危険が伴うものである。電気器具のように、日頃何
気なく使用しているものでも取扱い方法を誤れば感電する恐れがある。よく
使用される測定機器の安全な取扱い方法や安全に実験を行う心得を学ぶのも
基礎実験の一つの目的である。まじめに実験にのぞもう。
◎周到な準備をする。
実験開始までに実験指導書をよく読んで実験方法や装置の取扱いについて
十分理解しておく。準備不足のために、時間がかかって焦ったり、間違った
取扱いをしたりすることが事故につながる。
◎服装は軽快な動作ができるものを着用する。
応用物理実験では、白衣やロングスカートなどの裾の長い衣服、ネクタイ
などは着用しない。ベルトに巻き込まれるなどの危険があるからである。ま
た、ハイヒールや下駄・サンダルなども滑り易さや落下物に対する防護の観
点から好ましくない。
◎実験机には実験に必要なものだけを準備し、整理整頓する。
異常の早期発見や不注意による事故の防止のため、実験机や実験装置の周
辺は整理整頓しておく。このため、鞄やコートなど実験に不用な各自の持ち
物は、実験室入口付近にある戸棚に置く。雨天の時の傘は、滴で床が濡れ、
滑りやすくなったり、感電しやすくなったりするので、実験室入口にある傘
立てに入れ、実験室に持ち込まない。
◎異常を認めたら直ちに実験を中断し、指導者の指示に従う。
音や臭いにも注意し、異常が発生したら直ちに実験を中断し、原因を調べ
るとともに、指導者の指示に従う。
3
◎実験の後片づけをおろそかにしない。
後始末も実験の一部である。使用した薬品の回収や処理を怠らない。また、
次の実験が安全に行えるように、使用した器具なども整理整頓し、異常や不
良部分のないことを確認する。不良部分がある場合には、指導者に報告して
適切な措置をとる。
◎消火器の使用法や応急処置法に習熟しておく。
万一の火災や事故のために、消火器の設置場所や使用方法、応急処置の仕
方について調べておく。
◎実験室を含め建物内は禁煙である。
2.1.2
感電事故防止のための一般的注意
感電事故は、配線や接地の不備、装置の絶縁不良や誤使用などを原因として、
これらの不良によって生じた漏電部分に接触したり、通電されている部分に不
注意に触れて起こる。漏電は、絶縁や回路配線の不良によって電流が本来の回
路から漏れる現象であるが、それには、抵抗性漏電と容量性漏電とがある。こ
のうち容量性漏電は、交流電圧が加わった部分とケースや接地線との間の浮遊
静電容量を通して電流が流れる現象で、完全に防止することができない。感電
事故を防止するために次のことに注意する。
◎接地は確実に行う。
接 地 ( ア ー ス ) と は 、 装 置 の 接 地 端 子 を 0Vに 保 つ た め に 大 地 に 接 続 す る こ
とである。接地が十分である(接地抵抗が小さい)と、漏電が生じても漏電
電流は接地端子から大地に流れて感電することはない。接地が不備であると、
異常な高電圧が発生して装置の絶縁破壊や漏電を起こしたり、大地との間の
抵抗が低い人体を漏電電流が流れて感電事故を起こす。
◎ぬれた手で電気機器を使用しない。
感電したときに身体中に流れる電流値は、おおむね皮膚の電気抵抗で決ま
る 。 汗 や 水 で 濡 れ た 皮 膚 の 抵 抗 値 は 数 百 Ω 以 下 に 下 が る の で 、 100Vで も 大 量
の電流が流れ、死に至る場合もある。感電の恐れのあるときは、乾燥した手
袋(絶縁手袋)を使用したり、絶縁性の履物(絶縁靴)を履く。
◎電源を入れる前に入念に実験回路を点検する。
スイッチやプラグ、締め付け端子などに緩みがないか、回路に誤りはない
か、露出した通電部分が実験中人体や他の物体に触れないような配置になっ
ているか、など電源を入れる前に入念に点検する。
◎異常を発見したら直ちに電源を切る。
◎電気回路に触れるときは必ずスイッチを切る。
◎コンデンサーをふくむ回路は放電させてから取り扱う。
コンデンサーを含む回路ではスイッチを切っても電荷がコンデンサーに残
4
っている。このような回路をさわる場合には、コンデンサーの両端を導体で
短絡してコンデンサーを放電させた後に行う。また、高電圧コンデンサーは、
両端子間を短絡し、かつ、接地する必要がある。
◎他人が感電しているのを見つけたときは直ちに電源を切る。
感 電 の 電 流 が 10~ 15mAに な る と 、 筋 肉 の け い れ ん が 起 き 、 接 触 し て い る 機
器から離脱できなくなる。まわりの人が速やかに感電している人を離脱させ
るか、電源を切る必要がある。しかし、電源を切らずに被害者を助けようと
してその身体に触れると、助けようとした人まで感電する恐れがある。迅速
に電源を断つことが重要である。電源を切ることができない場合には、絶縁
靴や絶縁手袋などを着用し、救助者が感電しないようにする。
感電による火傷は内部まで及んでいる場合が多いので、外見上はひどくな
い場合でも医師の手当をうける。また、電流による直接的な障害の他に、感
電のショックによる二次的被害(引いた手を机にぶつけたり、転倒して頭を
打ったりすることによる外傷)も多いので注意する。
2.1.3
電気災害防止のための注意
電気に起因する災害には火災と爆発がある。
◎引火性、可燃性物質をスイッチや発熱する機器の近くに置かない。
電気器具では、漏電や過負荷、接続不良によって発熱が生じる。また、ス
イッチの開閉時や配線の短絡時などにスパークが発生する。このようなとき
に可燃性・引火性の物質や粉塵などが付近に存在すると、火災や爆発の恐れ
がある。
◎電気火災の場合は、電源を切ってから消化活動をする。
電気事故で火災が発生した場合には、特別の事情がないかぎり電源を遮断
してから消火活動を行う。やむを得ず通電したまま消火するときは、感電の
恐れがある水は使用せず、粉末消化器などを用いる。
2.1.4
放射線障害の防止のための注意
◎放射線に対する正しい知識を持ち、適切に取り扱う。
放射線の存在を人間の五感で直接知ることはできない。そこで、放射線の
人体への影響について過大の心配をする人がいる反面、放射線の影響を無視
する人がいる。そうではなくて、放射線の恩恵を受けるために、放射線を正
しく理解し、適切に取り扱うことが重要である。
放射線は、宇宙空間から飛んでくる宇宙線や地球上に自然に存在する放射
性物質から出る放射線のように、環境中にも自然に存在する。これを自然放
射線という。これに対し、各種の粒子加速器、人工放射性同位元素、X線発
生装置のような放射線発生装置などから放出される放射線を人工放射線とい
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う。人工放射線は自然放射線に比べて強度が非常に大きいことがあるので、
取扱いを誤ると知らない間に大量の放射線を被曝し、放射線障害が生じるこ
とも有り得る。放射線を恐がる必要はないが、取扱いには十分な注意が必要
である。
◎放射線の被曝量を自己及び他人に対して最小限に抑える。
放射線の存在を人間の五感で直接知ることはできない。放射線を取り扱う
場合、取り扱う本人は勿論、他人にとっても安全な環境であるよう注意する。
X線発生中の表示をしたり、放射線源を放置しないなどの注意が必要である。
◎放射線を取り扱う際には個人被曝線量計を装着する。
放射線の被曝は自覚症状がなく、放射線障害が現われるには時間を要する
ので、後から被曝に気づくことになる。そこで、ポケット線量計やフィルム
バッヂなどの個人被曝線量計を用いて被曝の程度を測定しておく。個人被曝
線量計は通常男性は胸部、女性は腹部に装着する。ポケット線量計は衝撃に
弱いので慎重に取り扱う。
◎外部被曝は防護の三原則(遮蔽、距離、時間)に従って防ぐ。
放射線の被曝は、体外からのもの(外部被曝)と体内からのもの(内部被
曝)の二つに分けられる。応用物理実験では、回折用X線発生装置と密封γ
線源を用いるので、外部被曝が問題となる。外部被曝を少なくするには、
1) 線 源 と の 間 に 遮 蔽 物 を 置 く ( 遮 蔽 )
2) 線 源 か ら 距 離 を と る ( 距 離 )
3)取 扱 い 時 間 を 短 く す る ( 時 間 )
ことが必要である。これを外部被曝に対する防護の三原則という。
2.1.5
強力な光線による眼の傷害防止のための注意
◎紫外線や強い光は直視しない。
直視する場合は必ず保護眼鏡を着用する。
◎レーザー光線が目に入らないように注意する。
レーザーは、空間的・時間的なエネルギー密度が高くなるので、安全には
十分な配慮が必要である。光学実験は暗い所で行うことが多い。このとき、
実験者の瞳孔は大きく開いているので特に注意が必要である。よく利用する
He- Neレ ー ザ ー で も 光 線 を 直 視 し て は い け な い 。 レ ー ザ ー 光 線 が 眼 底 に 集 光
され、網膜組織の破壊、失明などを起こす恐れがある。レーザー装置からの
主光路だけでなく、反射光線にも注意する。特に、赤外線レーザーのように
目に見えない場合、思わぬ所からの反射光線に気づかないことがある。この
ようなレーザーを取り扱う場合、保護眼鏡をかける。
表にレーザーの安全基準を示す。クラスによって警告ラベルの表示や反射
の防止、保護眼鏡の着用など対策が必要となる。応用物理実験で用いるレー
ザーはクラス2である。
6
表
クラス
1
2
定
レーザーの安全基準
義
安
どのような条件下でも
全
性
本質的に安全
最大許容露光量を越えない
可 視 光 ( 0.4 ~ 0 .7 μ m ) の
本質的に安全でない
CWあ る い は パ ル ス の 低 出 力 レ ー ザ ー
まばたきの反射作用を含む
被曝放出限界:
嫌悪反応で目が保護される
1m W : 放 出 持 続 時 間 t >0. 25 s の と き
ク ラ ス 1 と 同 じ : t <0. 25sの と き
3A
3B
可 視 光 ( 0.4 ~ 0 .7 μ m ) の
光学的手段を用いたビーム内観察
5mW ま で の C W レ ー ザ ー
は危険
クラスの制限値の5倍までの
まばたきの反射作用を含む
繰り返しパルス及び走査レーザー
嫌悪反応で目が保護できる
0.5W 以 下 の C W レ ー ザ ー
ビーム内観察は常に危険
5
-2
10 Jm 以 下 の 露 光 パ ル ス レ ー ザ ー
散乱反射による焦点を結ばないパ
ルスレーザーの観察は危険でない
4
クラス3B以上のもの
拡散反射光でも危険性大
皮膚への傷害の危険性あり
注 1 ) CWレ ー ザ ー と は 一 定 振 幅 の 出 力 を 連 続 的 に 発 生 す る レ ー ザ ー で あ る 。
注2)最大許容露光量とは、通常の環境下で人体に照射しても、その直後ある
いは長期にわたり障害を受けずに露光され得るレーザー放射の最大値をいう。
2.1.6
ガラス器具の取扱いについての注意
◎ガラス器具は衝撃や温度の急変を与えないよう慎重に取り扱う。
ガラスは、透明である、加工が容易である、薬品に対する耐久性が良いな
どの優れた特性を持っており、物理実験にも広く用いられる。しかし、一般
のガラスには極めてもろく破壊し易いという欠点がある。取扱いを誤り破壊
するとその破片でひどい外傷を起こす恐れがある。また、加工時の不適切な
熱処理などのために内部に歪みを持ったガラスは突然破壊することがある。
特にデシケーターやベルジャーのような肉厚ガラスにはこの危険性があるの
で、衝撃や温度の急変を与えないように注意する。
◎ベルジャーを使用する際には必ず安全カバーをかける。
応用物理実験では真空蒸着の実験でベルジャーを使用する。肉厚ガラスで
あるので、取扱い方によっては真空排気中に突然破壊する恐れがある。真空
容器内に流入した空気の反動で破片が飛び散り、思わぬ傷害を受ける可能性
がある。これを防ぐため、必ず安全カバーをかけて真空排気する。
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2.1.7
危険物質の取扱いについての注意
物理実験でも各種の化学薬品を取り扱うことが多い。危険な化学薬品は、そ
の性質に応じて発火性、引火性、可燃性、爆発性、酸化性、禁水性、強酸性、
腐食性、有毒性、有害性、放射性などに分類されている。
◎使用する化学薬品の性質をよく知る。
実験者に化学的知識が不足していると、とんでもない事故に結びつく可能
性がある。たとえば、写真の定着に使用するチオ硫酸ナトリウム(ハイポ)
に漂白剤として用いる亜塩素酸ナトリウムを接触させると、直ちに分解爆発
する。
化学薬品の安全性や事故例については文献に詳しく記載されているので、
必要に応じて参照する。
参考文献
1)兵 藤 申 一 著
物 理 実 験 者 の た め の 13章
2)化 学 同 人 編 集 部 編
東京大学出版会
実験を安全に行うために
化学同人
◎実験室を含め建物内は禁煙である。
引火性物質(水素、エーテル、ベンゼン、アルコール等)は火や高温物体
の側で取り扱ってはならない。一般に実験室ではこれらの物質が多いので禁
煙はもちろんのこと、火気には細心の注意をはらう。また、万一火災が起こ
った場合に備えて各実験室には消火器が設置してある。実験開始前に設置場
所や取扱い方法を熟知しておく。
◎薬品が目に入った場合は直ちに大量の水で洗う。
写真現像剤などの薬品を万一目に入れた場合には、失明の恐れがあるので
直ちに大量の水で洗う。
◎廃棄物には決められた処理を行う。
我々には、環境汚染防止の立場からたとえ微量であっても有害物質を自然
水域や大気中に排出することがないよう適当な処理を施す責任と義務がある。
た と え ば 、 写 真 の 現 像 液 な ど は 回 収 し 、 処 理 施 設 で 処 理 す る 。( 第 1 2 章 を 参
照)
2.1.8
各実験課題で特に注意する点
( a) 放 射 線 計 測
密 封 γ 線 源 を 使 用 す る の で 、 取 扱 い に 注 意 す る 。 取 り 扱 う 線 源 は 2MBq( メ
ガ ・ ベ ク レ ル ) 以 内 の 137Csを 封 入 し た 密 封 γ 線 源 で あ る 。 発 生 す る 放 射 線 の 量
は 小 さ く 法 規 制 を 受 け な い が 、 以 下 の 点 に 留 意 す る 。( 2 . 1 . 4 項 を 参 照 )
◎線源を乱暴に取り扱わない。
γ線源は、γ線の透過率が強いので金属カプセルに入っており、機械的に
十分な強度を持っている。しかし、乱暴に取り扱ってはいけない。万一破損
8
して内容物が容器外に出ると、体内被曝へつながる。
◎長時間皮膚に密着させない。
微弱な放射線だからと言って長時間身体に密着させない。一般的には、γ
線の遮蔽には高密度、高原子番号の物質(鉛、鉄など)を用いる。
◎線源を紛失しない。
密封線源をむやみに放置したり、紛失しない。知識のない他人には放射線
源であることが分からず、思わぬ事故につながる。密封線源は教官より直接
受け取り、実験後教官に直接手渡す。
その他の注意事項として
◎鉛レンガを手指や足などに落さない。
◎比例計数管には高電圧をかけるので注意して取り扱う。
(b)マ イ ク ロ ・ コ ン ピ ュ ー タ を 用 い た 金 属 の 熱 分 析
◎感電や電気災害に注意する。
電 気 炉 に は 大 き な 電 流 を 流 す の で 配 線 な ど に 注 意 す る 。( 2 . 1 . 2 項 お よ び 2 . 1 .
3項 を 参 照 )
◎やけどに注意する。
試 料 や 電 気 炉 な ど は 高 温 ( ~ 400℃ ) に な る 。 試 料 は 専 用 の は さ み を 用 い
て落としたりしないよう慎重に取り扱う。
( c) X 線 回 折
回折用X線発生装置は、X線のビームが細く、極めて強いことが特徴である。
X線に直接曝されると放射線障害が生じる恐れが特に大きい。作業の多くはX
線ビームに近接して行うため、取扱い上のわずかな不注意によって手指などに
思わぬ過剰被曝を受ける可能性がある。十分注意して取り扱う。
◎手指・目その他人体の部位をX線ビームに直接曝さない。
X線は直接見えないので、X線の光路に手をかざしても危険なだけである。
X線を観察するには蛍光塗料を塗布した鉛ガラスを通してみる。直接のぞく
と、眼がつぶれるから絶対にのぞいてはならない。
◎安全を十分確認してから電源を入れる。
使用しない放射窓のシャッターは確実に閉める。電源開閉器を「ON」と
すると、X線管フィラメントにも電源が供給される。電源を投入してもX線
放射を行なわない場合には必ず管電流調整器を左一杯に回しておく。X線放
射を中止する場合には、管電圧調節器と管電流調節器を左に回し、最低位置
に戻してからX線開閉器を「OFF」にする。
◎必要なときにだけX線を放射する。
カメラをセットした後、安全を十分確認してから電源を入れ、シャッター
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を開ける。X線を照射しないときには、必ずシャッターを閉めるか、電源を
切る。シャッターは、カメラを確実に固定した後に開ける。
◎X線の照射中は鉛板で遮蔽する。
カメラをセットした後、X線を照射するときは、漏洩X線による被曝を防
ぐために鉛の入った遮蔽板を取り付ける。
◎入射スリット付近における散乱X線に注意する。
カメラの入射部で散乱したX線に被曝しないために、カメラはできるだけ
X線管の窓に近づけ、しっかりと固定する。
◎必ず個人被曝線量計を装着する。
放射線の被曝は自覚症状がなく、放射線障害が現われるには時間を要する
ので、後から被曝に気づくことになる。そこで、ポケット線量計やフィルム
バッヂなどの個人被曝線量計を用いて被曝の程度を測定しておく。個人被曝
線量計は通常男性は胸部、女性は腹部に装着する。ポケット線量計は衝撃に
弱 い の で 慎 重 に 取 り 扱 う 。( 2 . 1 . 4 項 を 参 照 )
◎現像液などを適切に取り扱う。
現像液を衣服にかけたり、眼に入れたりしないように注意する。現像、停
止、定着に使用した容器類は実験終了後きれいに洗う。また、現像液などを
こぼした場合、ただちにきれいに拭きとる。
( d) 真 空 蒸 着
◎ベルジャーを使用する際には必ず安全カバーをかける。
真空蒸着に用いるベルジャーは肉厚ガラスであるので、取扱い方によって
は真空排気中に突然破壊する恐れがある。真空容器内に流入した空気の反動
で破片が飛び散り、思わぬ傷害を受ける可能性がある。これを防ぐため、必
ず安全カバーをかけて真空排気する。また、ベルジャーには衝撃を与えない
よう慎重に扱う。取り外したベルジャーは専用の台に落下しないように確実
に載せる。
◎ロータリーポンプのベルトに巻き込まれないように注意する。
◎感電や電気災害に注意する。
蒸 着 用 電 源 は 大 き な 電 流 が 流 せ 、 ま た 、 ガ イ ス ラ ー 管 に は 高 電 圧 ( ~ 10
kV) が か か る の で 取 扱 い に 注 意 す る 。 ナ イ フ ス イ ッ チ や ガ イ ス ラ ー 管 な ど
を 使 用 す る の で 、 洗 浄 用 ア ル コ ー ル を 蒸 着 装 置 に 近 づ け な い 。( 2 . 1 . 3 項 お
よ び 2 .1 .7 項 を 参 照 )
(e)レ ー ザ ー に よ る 光 の 干 渉 回 折 実 験
◎レーザー光線が眼に入らないようにする。
実 験 で は ク ラ ス 2 の He- Neレ ー ザ ー を 用 い る 。 ク ラ ス 2 の レ ー ザ ー で は
まばたきの反射作用を含む嫌悪反応で眼が保護されるが、故意にレーザー
を直視してはいけない。レーザー装置からの主光路だけでなく、反射光線
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にも注意する。
◎レーザー装置は高電圧の部分があるので取扱いに注意する。
( f) 電 気 伝 導
◎配線に注意する。
( g) 発 光 分 光 分 析
◎感電や電気災害に注意する。
アーク発生時には黒鉛電極に高電圧が印加されているので特に注意する。
試料交換などで黒鉛電極に触れる場合には、メインスイッチを必ず切る。ま
た、アースが完全でない場合には装置本体にも高電圧が誘起されるので、実
験 を 行 な う 前 に ア ー ス の 取 付 を 確 認 す る 。( 2 . 1 . 2 項 お よ び 2 . 1 . 3 項 を 参 照 )
◎アークを長時間直視しない。
◎測定した試料は熱くなっているのでやけどに注意する。
◎現像液などを適切に取り扱う。
現像液を衣服にかけたり、眼に入れたりしないように注意する。現像、停
止定着に使用した容器類は実験終了後きれいに洗う。また、現像液などをこ
ぼした場合、ただちにきれいに拭きとる。
( h) 水 の 粘 性
◎濡れた手で光源のスイッチなどに触らない。
(i)ダ イ ア ル ゲ ー ジ 、 ス ト レ ー ン ゲ ー ジ に よ る ヤ ン グ 率 の 測 定
◎重りを落としてけがをしないように注意する。
(j)核 磁 気 共 鳴 及 び ホ ー ル 効 果 を 利 用 し た 磁 場 測 定
◎電磁石電源は大容量であるので取扱いに注意する。
電磁石電源のコネクタの接続を間違って通電すると、思わぬ事故を起こ
す。また、電磁石電源は、通電状態で負荷抵抗を急変したり、出力側を開
放や短絡状態にしたりすると、各部に異常電圧を発生し、破損事故を招く。
さらに、大電流通電中に電源を切ったり、大電流を設定して電源を入れる
と、装置内部で異常電圧を発生し、事故を招くことがある。電源を切る場
合は、必ず励磁電流を最小にした後に行なう。
◎測定に使用した硫酸銅溶液は回収する。
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2.2
一般電気工学実験における安全
一般電気工学実験は電気系以外の学生を対象として設けられた科目である。
使 用 電 圧 は 交 流 200V 、 直 流 100V が 最 高 で あ る が 、 感 電 の 危 険 性 は 無 視 で き
ない。また、バックパワーの大きな直流機、誘導機等の回転機や変圧器に関す
る実験が含まれており、実験に際し充分な注意が必要である。
各テーマに関する注意事項については実験指導書ならびに実験担当者の指示
に従うこと。
ここでは一般電気工学実験に関する一般的心得を示す。なお電気特有の災害
で あ る 感 電 に つ い て は 、 第 5 .1 節 に 詳 し く 示 さ れ て い る の で 必 ず 参 照 さ れ た い 。
(1)配線における注意
1) 電 流 容 量 を 考 慮 し て 電 線 を 選 択 す る 。
2) 電 流 回 路 の 配 線 を 先 に 、 つ い で 電 圧 回 路 の 配 線 を 行 う 。
3) 配 線 、 接 続 を 終 え た ら 誤 り の な い よ う 必 ず チ ェ ッ ク を 行 い 、 確 認 し て か
ら電源スイッチを入れる。
4) 配 線 の 変 更 、 計 器 類 の 交 換 お よ び 討 議 の 際 は 、 必 ず 電 源 ス イ ッ チ を 切 っ
て行う。
(2)回転機使用時の注意
1) 大 き な 機 械 的 エ ネ ル ギ ー を も っ た 回 転 機 を 操 作 す る 場 合 は 、 巻 き 込 ま れ
ないように裾や袖の長い作業着やネクタイ等は着用しない。
2 ) 直 流 電 動 機 の 始 動 に 際 し て は 、 特 に 注 意 を 要 す る 。( 始 動 時 の 回 転 速 度
を 抑 え る た め 、 界 磁 電 流 を 充 分 大 き な 値 に し た 状 態 で 起 動 を 行 う こ と 。)
(3)その他の心得
1) 電 圧 調 整 器 に よ り 電 圧 を 種 々 変 化 さ せ る 実 験 で は 、 電 圧 調 整 器 の 出 力 を
最小の状態で電源スイッチを入れること。
2) 数 人 が 共 同 し て 実 験 を 行 う よ う に な っ て い る の で 、 電 源 ス イ ッ チ を 入 れ
る場合は全員が承知した上で行う。
3) 実 験 台 上 に は 、 実 験 遂 行 に 必 要 な 物 以 外 は 置 か な い 。
2.3
機械工作実習・一般機械工作実習における安全
工作機械を使っての作業は危険がいっぱいです。しかし、安全に十分注意し
て実習を行えば物作りの楽しみを十分味わうことができます。
実験工場で実習を受ける学生は教職員の指示、監督に従ってください。また、
各作業場での注意事項を十分に守って行ってください。
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2.4
安全の心得について
1. 作 業 服 装
1.1 作 業 服
a)身 体 に あ っ た 軽 快 で 着 や す く 上 着 の 端 や 袖 口 の し ぼ っ て あ る も の の 着
用が望ましい。
b) 長 い ネ ク タ イ 、 首 巻 き 腰 手 ぬ ぐ い は し な い こ と 。
1.2 作 業 帽
a) 作 業 帽 の 着 用 が 望 ま し い 。
b) 長 髪 者 の 場 合 に は 、 毛 髪 を 完 全 に お お う よ う に す る こ と 。
1.3 手 袋
a) 一 般 工 作 機 械 の 作 業 で は 、 手 袋 を 使 用 し な い こ と 。
1.4 は き も の
a) 靴 を は く こ と 。
b) 素 足 で 作 業 し な い こ と 。 必 ず 靴 下 を 着 用 す る こ と 。
2. 保 護 具
2.1 保 護 眼 鏡
a)切 粉 や 粉 塵 の 生 じ る 旋 盤 、 フ ラ イ ス ・ グ ラ イ ン ダ ・ バ リ ト リ 等 の 作 業
で は 、眼 鏡 ま た は 保 護 眼 鏡 の 着 用 が 必 要 。
b) 溶 接 作 業 お よ び 鋳 造 作 業 で は 、 定 め ら れ た 保 護 眼 鏡 を 使 用 す る こ と 。
2.2 保 護 衣
a)溶 接 作 業 お よ び 鋳 造 作 業 で は 、 定 め ら れ た 手 袋 ・ エ プ ロ ン ・ 腕 当 等 の
保護衣を使用すること。
3. 整 理 整 頓 、 そ の 他
3.1 工 具 は 定 め ら れ た 所 に 正 し く 置 く こ と 。
3.2 作 業 後 、 使 用 機 械 お よ び 周 辺 を 丁 寧 に 清 掃 す る こ と 。 機 械 に 付 着 し
た切屑や切削油はウエスでふき取ること。工具は必ず返却すること。
3.3 作 業 中 の 人 に 、 み だ り に 話 し か け ぬ こ と 。
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