中小企業の海外進出に対する意識調査

情報メモ No.27-2
「中小企業設備投資動向調査」付帯調査(2015 年 1 月調査)
中小企業の海外進出に対する意識調査
2015 年 4 月 2 日
商工中金調査部[担当:上田 Tel:03-3246-9370]
【調査結果の要旨】
1. 海外進出の状況
 現在、海外進出を行っている企業は全体の 1 割強。進出実績なく今後の予定もなし、とする企業が全体の
7 割強を占める。
2. 海外進出を行う理由
 中小企業が海外進出を行う理由は、拡大する海外市場を取り込むための積極的な理由が中心となってい
る。特に、今後海外進出を予定している企業は、その傾向が強い。
 円安が海外進出の判断に与える影響については、「為替相場を理由として海外進出の判断は行っていな
い」とする回答が約 6 割を占めた。
3. 進出国、進出予定国
 現在の進出国は中国が最も多く、かつ重要度が最も高い国である。今後の進出予定国としては、ベトナム
が最も注目度が高い。
 現在の主な進出国における当初および現在の進出目的は、日本あるいは現地の日系サプライチェーンへ
の生産・販売が中心となっている。しかし、今後の進出目的としては、現地の市場へ向けた生産・販売が
中心となる。
4. 海外進出を行わない理由
 中小企業が海外進出を行わない理由は、国内事業で事業継続が可能と判断している理由が最も多い。
 2 年半前の調査と比べると、人材確保の難しさを理由に挙げる割合が増えている。特に、海外進出を行う
能力のある人材が確保できないなど、「質」的な人手不足が目立っている。
【円安が海外進出の判断に与える影響】
円安によりコストアッ
プする場合は、海外
進出を諦める
70
その他
6.7%
12.9%
円安によりコス
トアップする場
合は海外進出
の見直しを行い
たいが、その他
の事情により海
外進出の判断
は変えられない
13.6%
進出国
60
8.1%
円安によりコ
ストアップする
場合は、海外
進出の投資規
模を縮小する
【現在の進出国、今後の進出予定国】
(%、複数回答)
進出予定国
50
40
海外進出は業
務上必要であ
り、為替相場
を理由として
海外進出の判
断は行ってい
ない
58.7.%
30
20
10
0
中
国
韓
国
台
湾
香
港
シ
ン
ガ
ポ
ー
ル
タ
イ
マ
レ
ー
シ
ア
フ
ィ
リ
ピ
ン
イ
ン
ド
ネ
シ
ア
ベ
ト
ナ
ム
ミ
ャ
ン
マ
ー
イ
ン
ド
米
国
【
目
次
】
〇調査要領
〇調査回答企業の属性
P.1
P.2
〇調査結果
1. 海外進出の状況
2. 海外進出を行う理由
P.3
P.6
3. 進出国、進出予定国
4. 海外進出を行わない理由
P.10
P.16
【調査要領】
1. 調査目的・内容
〇調査目的
海外進出に対する意識調査
〇調査内容
1. 海外進出の状況
2. 海外進出を行う理由
2-1. 海外進出を行う理由
2-2. 円安が海外進出の判断に与える影響
3. 進出国、進出予定国
3-1. 進出国、進出予定国の分布
3-2. 進出国に対する目的、評価、今後の方針
3-3. 進出予定国に対する目的
4. 海外進出を行わない理由
※ 本調査における海外進出とは、海外の工場等への投資の他、事業所開
設、生産委託、業務提携を含むものと定義しています。
2. 調査時点
平成 27 年 1 月 1 日時点
3. 調査対象先
当金庫取引先中小企業 9,073 社、有効回答数 4,079 社(回収率 45.0%)
◇ここでいう中小企業とは、いわゆる「中小会社」(会社法第 2 条 6 号に規定
する「大会社」以外の会社)、または法定中小企業(中小企業基本法第 2
条に規定する中小企業者)、のいずれかに該当する非上場企業。
4. 調査方法
調査票によるアンケート調査(郵送自記入方式)
□ご照会先
商工中金 調査部 上田
(注)各調査項目の構成比合計は、四捨五入の関係で 100%とならない場合がある。
1
℡ 03-3246-9370
【調査回答企業の属性】
(1)従業員規模別
回答企業数
10人以下
構成比
590
14.5%
10人超~30人以下
1,231
30.2%
30人超~50人以下
725
17.8%
50人超~100人以下
765
18.8%
100人超
768
18.8%
4,079
100.0%
合計
(2)地域別(本店所在地)
回答企業数
構成比
回答企業数
構成比
北海道
148
3.6% 東海
479
11.7%
東北
338
8.3% 北陸
208
5.1%
関東
1,113
27.3% 近畿
665
16.3%
北関東
136
3.3% 中国
329
8.1%
首都圏
977
24.0% 四国
147
3.6%
甲信越
224
428
10.5%
4,079
100.0%
5.5% 九州・沖縄
合計
東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
関東(茨城、栃木、群馬、東京、埼玉、千葉、神奈川)
甲信越(山梨、長野、新潟)
東海(静岡、愛知、三重、岐阜)
北陸(富山、石川、福井)
近畿(大阪、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山)
中国(鳥取、島根、岡山、広島、山口)
(注)北関東と首都圏は、関東の内訳。北関東(茨城、栃木、群馬)、首都圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)。
(3)業種別
回答企業数
製造業
食料品
繊維
木材・木製品
紙・パルプ
化学
窯業・土石
鉄・非鉄
印刷
金属製品
一般機械
電気機器
輸送用機器
精密機械
その他製造業
1,468
179
98
66
29
126
51
68
96
244
134
90
84
43
160
構成比
回答企業数
36.0% 非製造業
4.4%
2.4%
1.6%
0.7%
3.1%
1.3%
1.7%
2.4%
6.0%
3.3%
2.2%
2.1%
1.1%
3.9%
合計
2
建設
卸売
小売
不動産
運輸
サービス
情報通信
飲食店・宿泊
構成比
2,611
64.0%
304
766
308
143
635
328
38
89
7.5%
18.8%
7.6%
3.5%
15.6%
8.0%
0.9%
2.2%
4,079
100.0%
【
調
査
結
果
】
1. 海外進出の状況
海外進出の現状と今後の予定を見ると、全産業では全体の 11.7%が「進出実績あり」と回答し、「進出実績は
ないが、今後進出の予定(以降、「今後進出予定」)」は 1.8%であった(図表 1-1)。「進出実績あり」の回答割合は、
製造業は 19.8%、非製造業は 7.0%となった。「今後進出予定」の回答割合は、製造業は 1.9%、非製造業は
1.8%と概ね同程度であった。「進出実績はあったが、現在は撤退(以降、「現在撤退」)」の回答割合は、製造業
は 3.9%、非製造業は 1.8%と、製造業の方がやや回答割合が高かった。これらの結果は、2012 年 7 月に同じ設
問で実施した調査結果1と比較して、大きな違いはなかった。
「進出実績あり」の回答割合を業種別に比較すると、精密機械(43.9%)、電気機器(29.9%)、輸送用機器
(26.5%)、一般機械(24.6%)、繊維(20.4%)など、主に機械製造業が高くなっている(図表 1-2)。非製造業では、
情報通信業(17.1%)、卸売業(15.1%)が高くなっている。
「進出実績あり」および「今後進出予定」と回答した企業の構成比を比較すると、「今後進出予定」と回答する企
業は非製造業の方が多かった(図表 1-3)。非製造業の中では、卸売業が最も多い。
このほか、企業規模が大きいほど「進出実績あり」と「今後進出予定」の回答割合は高くなっている(図表 1-4)。
[図表 1-1] 海外進出の現状および今後の予定
非製造業
製造業
全産業
0
10
2012年7月調査
(m=4,340)
11.0
2015年1月調査
(n=3,754)
11.7
20
30
40
50
60
70
13.2
80
90
71.1
1.8 2.8
10.4
73.6
1.8 2.6
2012年7月調査
(n=1,592)
19.1
2015年1月調査
(n=1,370)
19.8
15.3
59.0
2.6 4.0
12.0
62.4
1.9 3.9
2012年7月調査
(n=2,748)
6.3
2015年1月調査
(n=2,384)
7.0
12.0
78.2
1.4 2.1
9.4
80.0
1.8 1.8
進出実績あり
進出実績はないが、今後進出の予定
進出実績なく、今後の進出の予定は未定
進出実績なく、今後の進出の予定もなし
進出実績はあったが、現在は撤退
1 「中小企業の海外進出に関する認識調査(2012 年 7 月調査)」(2012 年 10 月 3 日公表)。詳細は商工中金ホームページに掲載。
3
100 (%)
[図表 1-2] 業種別の「進出実績あり」「今後進出予定」回答割合
0
10
食料品(n=161)
20
30
18.6
繊維(n=93)
40
1.9
20.4
木材・木製品(n=58)
進出実績あり
17.2
紙・パルプ(n=27)
60 (%)
50
今後進出予定
14.8
化学(n=116)
17.2
窯業・土石(n=48)
5.2
2.1
鉄・非鉄(n=63)
17.5
印刷(n=89)
5.6
3.2
1.1
金属製品(n=222)
19.8
一般機械(n=130)
1.8
24.6
電気機器(n=87)
0.8
29.9
輸送用機器(n=83)
26.5
1.2
精密機械(n=41)
43.9
その他製造業(n=152)
19.7
建設業(n=280)
4.9
3.3
2.5 2.5
卸売業(n=710)
15.1
小売業(n=279)
5.0
不動産業(n=131)
1.1
3.8
運輸業(n=571) 2.3
サービス業(n=298)
3.7
2.1
4.6
0.4
1.7
情報通信業(n=35)
17.1
飲食店・宿泊業(n=80)
5.0
5.0
[図表 1-3] 「進出実績あり」「今後進出予定」「現在撤退」の業種別構成比
0
進出実績あり
(n=438)
今後進出予定
(n=68)
現在撤退
(n=96)
10
20
30
40
21.5
17.6
21.9
50
60
70
40.4
80
38.1
20.6
61.8
33.3
素材型製造業
44.8
加工型製造業
非製造業
※ 素材型製造業=食料品、繊維、木材・木製品、紙・パルプ、化学、窯業・土石、鉄・非鉄。
加工型製造業=印刷、金属製品、一般機械、電気機器、輸送用機器、精密機械、その他製造業。
4
90
100
(%)
[図表 1-4] 企業規模別の「進出実績あり」「今後進出予定」回答割合
<従業員数別>
<年商規模別>
0
5億円以下
(n=1,149)
5
4.5
10
15
20
25
30
35 (%)
0
進出実績あり
1.2
10人以下
(n=527)
5
10
15
進出実績あり
1.7
6.1
今後進出予定
今後進出予定
5億円超~
10億円以下
(n=892)
10.7
10億円超~
20億円以下
(n=796)
1.6
13.1
20億円超~
50億円以下
(n=565)
10人超~
30人以下
(n=1,126)
8.6
1.6
2.1
50人超~
100人以下
(n=705)
1.4
20.5
100億円超
(n=142)
30人超~
50人以下
(n=672)
2.5
18.9
50億円超~
100億円以下
(n=210)
25 (%)
20
26.1
100人超
(n=724)
4.2
11.3
1.5
13.9
2.4
1.9
18.6
「進出実績あり」および「現在撤退」と回答した企業に対する、「現在撤退」回答企業の比率を業種別で比較す
ると、サービス業(45.0%)や化学(31.0%)などで比率が高くなっている(図表 1-5)。一方、輸送用機器(4.3%)や
食料品(9.1%)は低い。なお、企業規模別の比較では、大きな違いは見られなかった。
[図表 1-5] 撤退企業比率の比較
(%)
50
45.0
40
31.0
30.0
30
25.0
22.0
20
16.4
13.6
10
13.3
10.2
9.1
20.5
12.3
4.3
0
(
n
製
=
造
3
業
2
計
4
)
(
n
食
=
料
3
品
3
)
(
n
= 繊
2 維
2
)
(
n
= 化
2 学
9
)
(
n 金
= 属
4 製
9 品
)
(
n 一
= 般
4 機
1 械
)
(
n 電
= 気
3 機
0 器
)
(輸
n
送
=
用
2
機
3
)器
(注) 撤退企業比率=現在撤退÷(進出実績あり+現在撤退)、で計算。
「進出実績あり+現在撤退」のサンプル数20未満の業種は、記載省略。
5
(そ
n の
= 他
4 製
0 造
)業
(
n 非
= 製
2 造
1 業
0 計
)
(
n
= 卸
1 売
2 業
2
)
(
n
小
=
売
2
業
0
)
(サ
n ー
= ビ
2
ス
0
)業
2. 海外進出を行う理由
2-1.海外進出を行う理由
「進出実績あり」または「今後進出予定」「現在撤退」と回答した企業2 を対象に、海外進出を行う(行う予定、行
っていた)理由を尋ねた。
海外進出を行う理由としては、「海外市場の拡大が今後期待できるため」(全産業 52.2%)が最も多く、「安い人
件費等を活用したコストダウンのため」(同 33.3%)が続く(図表 2-1)。一方、「為替変動の影響を回避するため」
(同 3.5%)は極めて少ない結果となった。
さらに、これらの理由のうち、最も重要度の高いものはどれか尋ねたところ、「海外市場の拡大が今後期待でき
るため」が全体の約 4 割を占めた。なお、製造業・非製造業別では、大きな差はなかった。
海外進出状況別に比較すると、「今後進出予定」と回答した企業は、進出予定の理由を「海外市場の拡大が今
後期待できるため」や「日本国内の市場が今後縮小すると見込まれるため」と回答する割合が高くなり、「安い人
件費等を活用したコストダウンのため」は低下している(図表 2-2)。
[図表 2-1] 海外進出を行う理由
(%、複数回答)
60
52.4
52.2
<最も重要度の高い理由(全産業)>
52.0
為替変動
回避
1.0%
50
40
33.3
30
国内取引
先の海外
進出
12.2%
35.2
30.6
28.2
26.0
23.0
20
22.3
20.6
18.3
10
3.5 3.4 3.6
5.4 4.27.1
0
今海
後外
期市
待場
での
き拡
る大
たが
め
安
コい
ス人
ト件
ダ費
ウ等
ンを
の活
た用
めし
た
今
後
縮
小日
す本
る国
と内
見の
込市
ま場
れが
る
た
め
海
外
進日
出本
を国
行内
うの
取
(
行引
う先
予企
定業
)
のが
た
め
その他
4.7%
為
回替
避変
す動
るの
た影
め響
を
そ
の
他
国内市場
の縮小
13.4%
海外市場
の拡大
39.7%
コストダウ
ン
29.0%
(n=575)
(注)左記の選択肢のうち、最も重要度の高い
理由を1つ選んで回答。
全産業(n=607)
製造業(n=355)
非製造業(n=252)
2 全産業に占める割合は 16.0%。
6
[図表 2-2] 海外進出を行う理由(海外進出状況別、全産業)
(%、複数回答)
80
72.1
海外市場の拡大が今後期待できる
ため
70
60
50.9
40
30
安い人件費等を活用したコストダウ
ンのため
47.1
50
39.6
36.8
24.9
22.1
20
14.6
16.2
10
2.7
日本国内の市場が今後縮小すると
見込まれるため
27.1 25.0
5.9 5.9
0.0
5.5
0
(進
n
出
=
実
4
績
3
あ
8
)り
5.2
8.3
日本国内の取引先企業が海外進
出を行う(行う予定)のため
(
n 現
= 在
9 撤
6 退
)
今
(
n 後
= 進
6 出
8 予
)定
為替変動の影響を回避するため
その他
参考1 海外進出状況と国内設備投資の関係
当調査は、「中小企業設備投資動向調査(2015 年 1 月調査)」3の付帯調査として実施している。そこで、海外
進出の状況別に、中小企業設備投資動向調査で設問している国内設備投資の有無を集計した。
全体的に大きな差はないものの、「進出実績なく、今後の進出の予定もなし」と回答している企業は、国内設備
投資についても「無し」と回答している割合がやや高くなっている。
[参考図表 1] 海外進出状況と国内設備投資
【2014年度実績見込み】
0
進出実績あり
(n=438)
今後進出予定
(n=68)
20
40
56.6
63.2
60
80
【2015年度計画】
(%)
100
0
43.4
36.8
進出実績あり
37.9
今後進出予定
39.7
現在撤退
(n=96)
57.3
42.7
現在撤退
今後の予定は未定
(n=389)
59.1
40.9
今後の予定は未定
今後の予定なし
(n=2,763)
47.4
今後の予定なし
52.6
20
35.4
40
60
37.0
41.2
31.3
39.3
29.4
38.0
35.5
※回答企業数は同左。
有り
未定
無し
3 「中小企業設備投資動向調査(2015 年 1 月調査)
」
(2015 年 3 月 11 日公表。詳細は商工中金ホームページ掲載。
)
7
(%)
80
100
25.1
19.1
33.3
22.6
35.1
2-2.円安が海外進出の判断に与える影響
「進出実績あり」または「今後進出予定」「現在撤退」と回答した企業を対象に、円安が海外進出の判断に与え
る影響を尋ねた。
「海外進出は業務上必要であり、為替相場を理由として海外進出の判断は行っていない」とする回答が全体
の約 6 割を占め、最も多かった(図表 2-3)。さらに、「円安によりコストアップする場合は海外進出の見直しを行い
たいが、その他の事情により海外進出の判断は変えられない」とした回答を加えると、全体の約 7 割の企業が、海
外進出の判断に円安は影響していないと回答した。
また、最重要と考える海外進出の理由別に比較すると、海外市場の拡大や国内市場の縮小、国内取引先の海
外移転を理由として挙げた企業は、「為替相場を理由として海外進出の判断を行っていない」が圧倒的に多い
(図表 2-4)。為替変動回避を理由として挙げた企業は、円安進行により投資を諦めるまたは縮小するとしている
ものの、図表 2-1 のとおり為替変動回避を最重要と考える企業は極めて少ない点は注意が必要である。
なお、設問の趣旨が若干異なるが、2012 年 7 月調査で尋ねた「海外進出企業の海外投資方針に対する円高
の影響」を見ても、円高の如何に関わらず投資方針が決められていることが分かる(参考 2)。
[図表 2-3] 円安が海外進出の判断に与える影響
0
10
20
30
全産業
(n=567)
8.1
12.9
13.6
製造業
(n=331)
7.6
13.9
14.2
非製造業
(n=236)
50
60
70
80
90
100 (%)
58.7
6.7
57.7
12.7
11.4
8.9
40
6.6
60.2
6.8
円安によりコストアップする場合は、海外進出を諦める
円安によりコストアップする場合は、海外進出の投資規模を縮小する
円安によりコストアップする場合は海外進出の見直しを行いたいが、その他の事情により海外進出の判断は変えられない
海外進出は業務上必要であり、為替相場を理由として海外進出の判断は行っていない
その他
[図表 2-4] 最重要と考える海外進出理由別の、円安が海外進出判断に与える影響(全産業)
(%)
70
【海外市場
の拡大】
(n=212)
【コストダウン】
(n=154)
69.8
60
【国内取引先の
海外移転】
(n=66)
【国内市場
の縮小】
(n=75)
(n=5)
60.0
60.6
57.3
50
【為替変動回避】
42.9
40.0
40
30
20.8 22.7
20
10
4.7
9.0 9.9
6.6
16.0
11.0
9.3
12.0
2.6
5.3
10.6
16.7
3.0
9.1
0.0 0.0 0.0
0
円安によりコストアップする場合は、海外進出を諦める
円安によりコストアップする場合は、海外進出の投資規模を縮小する
円安によりコストアップする場合は海外進出の見直しを行いたいが、その他の事情により海外進出の判断は変えられない
海外進出は業務上必要であり、為替相場を理由として海外進出の判断は行っていない
その他
8
以上、中小企業が海外進出を行う理由をまとめると、拡大する海外市場を積極的に取り込むことが業務上必要
であるために行っている、という積極的な理由が中心となっている。特に、今後海外進出を予定している企業は、
国内取引先の海外移転やコストダウン目的、為替相場の動向を、その主たる判断材料としていないと考えられ
る。
参考 2 海外進出企業に対する円高の影響
2012 年 7 月実施の「中小企業の海外進出に関する認識調査」において、海外進出企業の海外投資方針に対
する円高の影響を調査した。「円高の如何に関わらず投資は横ばい」が最も多い結果となった。
[参考図表 2] 海外進出企業の海外投資方針に対する円高の影響(2012 年 7 月調査)
0
10
全産業
(n=386)
4.1
製造業
(n=237)
4.2
非製造業
(n=149)
4.0
20
30
23.3
24.9
20.8
40
50
60
70
12.2
60.4
9.7
61.2
16.1
80
90
100 (%)
59.1
円高により投資を増やす
円高の如何に関わらず投資を増やす
円高の如何に関わらず投資を減らす
円高の如何に関わらず投資は横ばい
(注)海外進出の現状および今後の予定において、「進出実績あり」と回答した企業が対象。
(資料)商工中金「中小企業の海外進出に関する認識調査(2012年7月調査)」
参考 3 為替レートの推移
今回調査時点、および 2012 年 7 月調査時点における為替レートは、下図のとおり。2 年半で約 40 円程度、円
安が進行したものの、図表 1-1 または図表 4-1(後掲)のとおり、中小企業の海外進出状況および海外進出を行
わない理由は大きく変化していない。
[参考図表 3] 為替レートの推移
(円/ドル)
130
円安
120
2015年1月平均
118.3 円/ドル
110
100
2012年7月平均
79,0 円/ドル
90
80
70
60
11/01
11/07
(資料)Bloomberg
(日次)
12/01
12/07
13/01
9
13/07
14/01
14/07
15/01
3. 進出国、進出予定国
3-1.進出国、進出予定国の分布
「進出実績あり」または「今後進出予定」と回答した企業4を対象に、進出している国および今後進出を予定して
いる国を尋ねた。
現在進出している国(以下、進出国)で最も多いのは「中国」(61.4%、製造業・非製造業計。以下同。)であり、
「タイ」(23.4%)、「台湾」(15.9%)、「ベトナム」(15.2%)と続く(図表 3-1)。今後進出を予定している国(以下、進
出予定国)で最も多いのは「ベトナム」(40.7%)であり、「タイ」(23.1%)、「インドネシア」(19.8%)、「中国」
(17.0%)と続く。また、進出国では少数派であるミャンマーが、進出予定国では上位に挙げられている。
進出国における各国の製造業・非製造業の構成比を進出国の全体平均と比較すると、タイやフィリピン、米国
では製造業の構成比が全体平均よりも大きく、韓国やシンガポール、マレーシア、ベトナムでは非製造業の構成
比が全体平均よりも大きい。進出予定国の中では、タイやフィリピン、インドで製造業の構成比が進出予定国の全
体平均よりも大きく、香港は非製造業の構成比が全体平均よりも大きい。
[図表 3-1] 進出国、進出予定国の分布
70
(%、複数回答)
非製造業
進出国
60
製造業
50
40
30
20
10
0
中
国
50
韓
国
台
湾
香
港
シ
ン
ガ
ポ
ー
ル
タ
イ
マ
レ
ー
シ
ア
フ
ィ
リ
ピ
ン
イ
ン
ド
ネ
シ
ア
ベ
ト
ナ
ム
ミ
ャ
ン
マ
ー
イ
ン
ド
米
国
(n=428)
(%、複数回答)
非製造業
進出予定国
製造業
40
30
20
10
0
シ
タ
ン
イ
ガ
ポ
ー
ル
(注)進出国、進出予定国のどちらも回答数10未満の国は省略。
中
国
韓
国
台
湾
香
港
マ
レ
ー
シ
ア
4 全産業に占める割合は 13.5%。
10
フ
ィ
リ
ピ
ン
イ
ン
ド
ネ
シ
ア
ベ
ト
ナ
ム
ミ
ャ
ン
マ
ー
イ
ン
ド
米
国
(n=182)
進出国・進出予定国の両方で上位に挙げられている中国・タイ・インドネシア・ベトナムのアジア 4 カ国について、
海外進出の理由を比較した(図表 3-2)。4 カ国共通の傾向として、「海外市場の拡大」や「国内市場の縮小」は、
現在進出している理由よりも今後の進出理由として多く挙げられている。反対に、「コストダウン」や「国内取引先
の海外進出」の理由は減少している。
[図表 3-2] 主な進出国・進出予定国別の海外進出理由
中国 (n=進出国262、予定国31)
(%、複数回答)
80
77.4
70
60
46.9
45.0
50
38.7
40
30
25.8
21.8
19.8
20
9.7
3.1 6.5
10
タイ (n=進出国100、予定国42)
(%、複数回答)
80
76.2
70
57.0
60
47.6
50
36.0
40
31.0
29.0
30
14.3
20
11.9
10
2.0 4.8
0
海
国
コ
国
為
外
内
ス
海内
替
拡
縮
市
市
ト
外取
変
大
小
場
場
ダ
進引
動
の
の
ウ
出先
回
ン
の
避
0
海
外
拡
市
大
場
の
国
内
縮
市
小
場
の
コ
ス
ト
ダ
ウ
ン
国
海内
外取
進引
出先
の
為
替
変
動
回
避
(%、複数回答) インドネシア (n=進出国52、予定国36)
80
69.2 72.2
70
60
50.0
50
36.5
34.6
40
28.8
30
16.7
13.9
20
3.8 5.6
10
(%、複数回答)
80
70
国
内
縮
市
小
場
の
コ
ス
ト
ダ
ウ
ン
進出国
国
海内
外取
進引
出先
の
62.2 60.0
60
50
45.9
43.1
40
29.7
30
23.1
20.0
20
12.2
3.1 5.4
10
0
海
外
拡
市
大
場
の
ベトナム (n=進出国65、予定国74)
0
為
替
変
動
回
避
海
外
拡
市
大
場
の
コ
ス
ト
ダ
ウ
ン
国
内
縮
市
小
場
の
国
海内
外取
進引
出先
の
為
替
変
動
回
避
(注)海外進出理由の「その他」は省略。
進出予定国
(参考)各国の製造業・非製造業構成比5
0
20
進出国
【中国】
40
60
製造業
80
100
(%)
非製造業
【タイ】
40
20
進出国
進出予定国
60
製造業
80
100
(%)
非製造業
進出予定国
0
進出国
0
20
【インドネシア】
40
60
製造業
80
100
(%)
非製造業
0
進出国
進出予定国
進出予定国
5 全ての国の合計は、図表 1-3 を参照。
11
20
【ベトナム】
40
60
製造業
80
非製造業
100
(%)
4 カ国の詳細を見ていくと、中国とベトナムは、現在の進出国では「コストダウン」が最も回答割合が高いが、今
後の進出予定国では「海外市場の拡大」が最も高くなる。タイとインドネシアは、進出国・進出予定国とも「海外市
場の拡大」の回答割合が最も高い。
さらに、進出国、進出予定国について、どの国の重要度が高いと考えているかを尋ねた6。重要度第 1 位の国
は、進出国では「中国」(47.2%)が最も多く、進出予定国では「ベトナム」(21.5%)が最も多い(図表 3-3)。進出
予定国の重要度第 1 位として挙げられた国は、顕著に多い国はなく、かなり分散した結果となった。
[図表 3-3] 重要度第 1 位の進出国・進出予定国
進出予定国 (n=149)
進出国 (n=354)
韓国
4.0%
ベトナム
21.5%
その他
13.6%
台湾
4.8%
その他
40.3%
中国
47.2%
インドネシア
6.5%
タイ
13.4%
ベトナム
6.5%
米国
6.8%
中国
10.1%
タイ
10.7%
ミャンマー
6.7%
6 進出国および進出予定国のうち、重要度第 1 位から第 3 位までを選択。
12
インドネシア
8.1%
3-2.進出国に対する目的、評価、今後の方針
重要度第 1 位の進出国として回答割合の高い上位 5 カ国(中国、タイ、米国、ベトナム、インドネシア)に対して、
当初の進出目的や現在の進出目的、現在の評価、今後の方針を尋ねた7。
当初の進出目的と現在の進出目的を見ると、大きく 3 つのグループに分けられる。中国とベトナムは、「日本向
けに生産・販売」の理由が最も多い。タイとインドネシアは、「現地の日系企業向けに生産・販売」が最も多い。米
国は、「現地の市場向けに生産・販売」が最も多い。中国とベトナムは日本向けの生産拠点として、タイとインドネ
シアは現地の日系企業のサプライチェーンに組み込まれる形で進出していることが多いことが窺える。
[図表 3-4] 主な進出国の、当初の進出目的と現在の進出目的
0
10
20
40
50
60
70
59.0
80
100(%)
90
19.7
19.7
0.5
中国
(n=188)
当初の進出目的
30
中国
(n=188)
1.1
現在の進出目的
53.7
19.7
23.4
1.6
1.6
23.8
47.6
3.2
20.6
タイ
(n=63)
当初の進出目的
タイ
(n=63)
1.6 3.2
現在の進出目的
17.5
47.6
25.4
6.3
1.6
ベトナム
(n=35)
1.6
当初の進出目的
71.4
現在の進出目的
71.4
22.9
5.7
ベトナム
(n=35)
17.1
8.6
インドネシア
(n=35)
2.9
当初の進出目的
37.1
40.0
5.7
14.3
インドネシア
(n=35)
2.9
現在の進出目的
28.6
42.9
2.9
20.0
5.7
11.1
18.5
59.3
7.4
3.7
59.3
7.4
3.7
米国
(n=27)
当初の進出目的
米国
(n=27)
現在の進出目的
7.4
22.2
日本向けに生産・販売
現地の日系企業向けに生産・販売
現地の市場向けに生産・販売
第三国の日系企業向けに生産・販売
第三国の市場向けに生産・販売
その他
7 図表 3-4~3-6 は、進出国のうち、重要度第 1 位~第 3 位として選択した国に対する設問である。
各国の業種構成比は、中国=製造業 60.1%、非製造業 39.9%。タイ=製造業 71.4%、非製造業 28.6%。ベトナム=製造業 60.0%、非製造業 40.0%。
インドネシア=製造業 60.0%、非製造業 40.0%。米国=製造業 81.55、非製造業 18.5%。
13
これらの国について、現在の評価を尋ねた。どの国も、「成功している」が半数を超えている(図表 3-5)。中国
やベトナムがやや多いものの、概ね 60%前後となっている。「成功していない」は 10~15%程度であり、少数派と
なっている。
[図表 3-5] 主な進出国の、現在の評価
0
10
20
30
中国
(n=191)
40
50
60
70
67.0
タイ
(n=63)
インドネシア
(n=37)
30.2
11.1
54.1
米国
(n=30)
18.3
11.1
63.9
25.0
13.5
60.0
32.4
13.3
成功している
100 (%)
90
14.7
58.7
ベトナム
(n=36)
80
成功していない
26.7
分からない
更に、これらの国について、今後の方針を尋ねた。中国は「拡大」が少なく「現状維持」が約半数を占めている
が、その他の国は「拡大」が半数近くを占める(図表 3-6)。なお、「撤退または第三国(地域)へ移転」の回答は、
5 カ国では中国のみ回答があった。ただし、中国は進出企業の数が他国に比べ圧倒的に多い点は、注意が必要
である。
[図表 3-6] 主な進出国の、今後の方針
0
中国
(n=188)
10
20
30
40
50
32.4
タイ
(n=62)
62.2
100 (%)
90
14.4
27.0
51.4
2.1
10.8
43.2
60.0
拡大
80
51.6
ベトナム
(n=37)
米国
(n=30)
70
51.1
48.4
インドネシア
(n=37)
60
現状維持
5.4
40.0
縮小
14
撤退または第三国(地域)へ移転
3-3.進出予定国に対する目的
重要度第 1 位の進出予定国として回答割合の高い上位 4 カ国(ベトナム、タイ、中国、インドネシア)に対して、
その進出目的を尋ねた8 。「現地の市場向けに生産・販売」が最も回答割合が高い。ただし、ベトナムとインドネシ
アは、「日本向けに生産・販売」と「現地の日系企業向けに生産・販売」が合わせて 4 割程度を占めており、生産
拠点としての期待も一定程度続くと考えられる。
また、図表 3-1 または図表 3-3 で進出予定国上位に挙げられたミャンマーは、その進出目的まで回答を得られ
たものは少なかった。ミャンマーに対しては、興味はあるものの、具体的な目的や計画は見えていない状況である
と考えられる。
[図表 3-7] 主な進出予定国の、進出目的
0
10
20
ベトナム
(n=35)
タイ
(n=25)
37.1
40
50
60
5.7
70
80
90
100(%)
2.9
45.7
5.7
8.0
12.0
68.0
2.9
8.0
4.0
中国
(n=19)
インドネシア
(n=23)
30
21.1
68.4
5.3
5.3
13.0
26.1
日本向けに生産・販売
第三国の日系企業向けに生産・販売
52.2
現地の日系企業向けに生産・販売
第三国の市場向けに生産・販売
4.3 4.3
現地の市場向けに生産・販売
その他
以上、主な進出国・進出予定国の状況をまとめると、現在は日本あるいは現地の日系企業のサプライチェーン
向けに生産・販売を行っているものが中心であるが、今後は現地の市場向けに生産・販売を行う目的が中心と
なる。
主な国別にまとめると、中国は現在の進出国で最も多く、かつ重要度も高い。現在はまだ日本向けの生産拠点
としての機能が強いものの、今後は現地の市場向けの生産・販売を目的とした進出が期待される。また、現在中
国に進出している企業の今後の方針では、他主要国に比べ「拡大」を目指す割合は低く、また「撤退または第三
国(地域)へ移転」を考えている企業もあった。
ベトナムは、今後の進出予定国として最も注目されている。現在の進出目的は、中国と同じく日本向けの生産・
販売が中心となっている。今後の進出目的は、現地の市場向けの生産・販売が最も多くなるものの、日本および
現地日系サプライチェーンに向けた生産・販売も一定程度は維持される。
タイとインドネシアは、現在は現地の日系企業向けに生産・販売することが主な目的であるが、今後は中国や
ベトナム同様、現地の市場向けの生産・販売が中心となる。インドネシアへの今後の進出目的は、ベトナムと同様、
日本および現地日系サプライチェーンに向けた生産・販売も一定程度は維持される。
この他、今後の進出予定国としてはミャンマーに注目が集まっているものの、その具体的な進出目的まで検討
している企業は少ない。
8 図表 3-7 は、進出予定国のうち、重要度第 1 位~第 3 位として選択した国に対する設問である。
15
4. 海外進出を行わない理由
「進出実績なく、今後の進出の予定は未定」または「進出実績なく、今後の進出の予定もなし」と回答した企業 9
を対象に、海外進出を行わない理由を尋ねた。
「現状程度の国内需要で事業の継続が可能」が 66.0%と最も回答割合が高い。この他、「国内での雇用維持
を優先させたい」(18.9%)、「海外事業立ち上げのための人材が不足」(18.0%)、「国内の需要掘り起こしで収益
の確保ないし拡大が可能」(17.3%)が続く。これらの結果は、多少の回答割合の変化はあるものの、総じて 2012
年 7 月調査における同設問の結果と変わりない。
2012 年 7 月調査と比べると、「質的に人材確保の見通しが立たない」(9.3%→15.3%)や「量的に人材確保の
見通しが立たない」(3.8%→7.1%)など、人材確保の難しさを理由とする割合が高まった。また、「販売見通しが
採算ラインに届かない」(7.0→10.4%)の割合も高まっている。一方、「資金不足」(12.5%→9.8%)の回答割合は
下がっている。
[図表 4-1] 海外進出を行わない理由
0
10
20
50
(%、複数回答)
60
70
18.9
18.3
国内での雇用維持を優先させたい
18.0
16.3
海外事業立ち上げのための人材が不足
国内の需要掘り起こしで収益の確保ないし
拡大が可能
17.3
18.8
質的に人材確保の見通しが立たない
15.3
9.3
14.7
13.2
投資回収の目処が立たない・立てられない
13.0
11.5
海外事業立ち上げの実務が分からない
11.4
9.7
事業環境や制度面の情報が不足
販売見通しが採算ラインに届かない
7.0
10.4
9.8
資金不足
量的に人材確保の見通しが立たない
3.8
コスト低減効果が見込めない
3.6
想定進出先での原材料・部品仕入の目処が
立たない
40
66.0
63.8
現状程度の国内需要で事業の継続が可能
国内部門のコスト削減で価格競争力の維持
が可能
30
12.5
7.1
6.4
4.4
5.6
4.2
2.9
想定進出先の産業インフラが未整備である
3.1
1.8
2015年1月調査
(n=3,050)
技術の海外流出を阻止したい
3.0
2.2
2012年7月調査
(n=3,480)
その他
7.1
(注)2012年7月調査では、「その他」の選択肢なし。
9 全産業に占める割合は 84.0%。
16
「進出実績なく、今後の進出の予定は未定」と回答した企業と、「進出実績なく、今後の進出の予定もなし」と回
答した企業では、海外進出を行わない理由に違いがあるのだろうか。両者を分けて比較した(図表 4-2)。
「今後の予定はなし」とした企業は、「現状程度の国内需要で事業の継続が可能」とする理由が圧倒的に多い
が、「今後の予定は未定」とした企業は、その理由が分散している。特に、「今後の予定は未定」とした企業は、
「海外事業立ち上げのための人材が不足」や「事業環境や制度面の情報が不足」の回答割合が、「今後の予定
はなし」とする企業よりも高くなっている。国内事業で人手不足がボトルネックとなる中で、海外進出のための人
材確保も困難になりつつある10。もっとも、海外進出のための人手不足は、人手の数が足りないというよりも、海外
進出を行う能力のある人材が確保できないなど、「質」的な人手不足の意味合いが強いと考えられる。中小企業
の海外進出を後押しするためには、このような観点からの施策や情報提供が有効であろう。
[図表 4-2] 海外進出を行わない理由(進出予定「未定」と「なし」)
0
10
20
30
40
国内での雇用維持を優先させたい
17.1
海外事業立ち上げのための人材が不足
13.9
国内の需要掘り起こしで収益の確保ないし拡大が可能
14.4
質的に人材確保の見通しが立たない
12.6
投資回収の目処が立たない・立てられない
12.3
海外事業立ち上げの実務が分からない
11.5
事業環境や制度面の情報が不足
9.2
資金不足
6.3
38.0
30.1
28.0
22.6
19.0
14.1
10.0
7.7
5.8
コスト低減効果が見込めない
6.2
3.8
3.4
想定進出先の産業インフラが未整備である
2.4
技術の海外流出を阻止したい
2.5
その他
22.1
13.6
8.3
量的に人材確保の見通しが立たない
64.8
26.2
8.6
販売見通しが採算ラインに届かない
想定進出先での原材料・部品仕入の目処が立たない
(%、複数回答)
60
70
41.1
現状程度の国内需要で事業の継続が可能
国内部門のコスト削減で価格競争力の維持が可能
50
7.7
7.2
5.4
今後の予定は未定
(n=389)
5.4
6.9
今後の予定はなし
(n=2,763)
10 国内事業の人手不足については、「供給制約が中小企業に与える影響調査」(2015 年 3 月 19 日公表)を参照。
詳細は商工中金ホームページに掲載。
17
以上、海外進出を行わない理由をまとめると、「海外進出の予定なし」とする企業は、現状の国内事業で事業継
続が可能であると考え、海外進出を検討していない。「海外進出の予定は未定」とする企業も、同じく国内事業で
事業継続可能と考えているものの、人材・情報の不足などの理由により今後の方針を決めかねている企業が多
い。今後、「海外進出の予定は未定」と考える中小企業が海外進出を前向きに検討するようになるには、人材・情
報が十分に確保できる仕組み作りが必要となってくるだろう。
本資料は情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断の決定につきまし
ては、お客様ご自身の判断でなされますようにお願いいたします。
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