観察結果を根拠にして結果を予想する指導の在り方 ~小学 3

実践のまとめ(第3学年 理科)
上越市立三郷小学校 教諭 家塚 大樹
1 研究テーマ
観察結果を根拠にして結果を予想する指導の在り方
~小学 3 年生「太陽とかげの動きを調べよう」の実践を通して~
2 研究テーマについて
(1) 研究テーマの意図
「児童が自然の事象・現象に親しむ中で興味・関心をもち、そこから問題を見いだし、予想や仮説の
基に観察、実験などを行い、結果を整理し、相互に話し合う中から結論として科学的な見方や考え方を
もつようになる過程が問題解決の過程として考えられる。このような過程の中で、問題解決の能力が育
成される。
」と学習指導要領解説にある。もちろん、予想や仮説の基に観察、実験を行うことは大切で
あるが、その逆、観察や実験から分かったことを基に、予想や仮説を立てることも、問題解決能力を育
成する大切なことだと考えている。また、3年生は、理科を初めて学習する学年である。幸い児童は、
植物や昆虫の飼育活動に興味をもって取り組むことができている。また、植物や昆虫のせい長に伴う変
化や、からだのつくりについて、観察から得られた経験を基に、知識として習得することができている。
しかし、観察から得られた情報を根拠として、結果の意味づけや理由づけが十分にできないという実態
があった。
以上のことから、観察したことをもとに、その後に起こる現象に対して根拠をもって説明する力を高
め、今後の理科学習での考え方や取組方の基礎としたいと考えた。
棒
(2) 研究テーマに迫るために
① ICT の活用
予想を立てる際、その根拠となる事象を実際に観察させることが大切である。しかし、時間的、空
間的に制限のあるものは、実際に観察させたくてもできないことが多い。そこで、定点観測を行った
り、記録映像を残したりする場面では、ICT 機器を活用し、子どもたちが根拠をもって予想できる環
境づくりを行う。
② 観察結果を実物大で見る工夫
かげの動きについて、互いに話し合い考えを深めるためには、観察
結果が共通であることが重要である。さらに、変化が大きく分かりや
すいことも大切である。そこで、棒の高さ1m50cmの大きな共通
モデルを使う。かげは、ラインカーで線を引き、それを大きな紙に写
して、実物大のかげの動きを記録する。
図 1 共通モデル
③ 作業シートの工夫
個人の考えをまとめる際、予想の基となるかげの動きを記録した共通のシートを用意する。そして、
予想したかげの動きを何度でもかき直せるように、ラミネート加工
太陽
をする。
かげがだんだん長くなることが、
容易に想像できないよう、
南中時刻が過ぎたかげは、記録しないようにする。
光の直進性
④ 単元配列の入れ替え
年間指導計画では、太陽とかげの動き(本単元)を学習した後、日
光の性質を学習する単元配列である。しかし、
「光の直進性」を先に
学習してから、太陽とかげの動きを学んだ方が、その関連性につい
て、根拠をもって思考することができると考える。よって、単元配
かげ
列を入れ替え、光の直進性を学んだ後、太陽とかげの動きについて
図2 光の直進性
学習する。
(3) 研究テーマにかかわる評価
子どもたちが観察結果を根拠に、自分なりの予想を導き出すことができたか。
(観察・記録)
3 単元と指導計画
(1) 単元名
「太陽とかげの動きを調べよう ~最強かげふみタイムを調べよう‐鬼バージョン‐~」
(2) 単元の目標
かげふみ遊びやかげ調べなどを通して、太陽とかげとの関係に興味をもち、太陽やかげの向きを、時
刻を変えて比較しながら調べ、かげの向きは太陽の動きによって変わることや、1 日の太陽の動きなど、
太陽とかげとの関係についての考えをもつことができるようにする。そして、かげふみ遊びの鬼にとっ
て一番有利な時間帯、不利な時間帯を見つけることができる。
(3) 単元の評価規準
関心・意欲・態度
科学的な思考・表現
観察・実験の技能
自然事象についての知識・理解
・日かげの位置の変化に興味・関心をもち、進んで太陽とかげの関係を調べよ
うとしている。
・日かげの位置の変化と太陽の動きを比較して、それらについて予想や仮説を
もち、表現している。
・かげふみ遊びの鬼にとって一番有利な時間帯、不利な時間帯を見つけること
ができる。
・遮光板や方位磁針を適切に使って、日かげの位置の変化と、太陽の動きを安
全に観察している。
・太陽の動きを調べ、その過程や結果を記録している。
・日かげは太陽の光を遮るとでき、日かげの位置は太陽の動きによって変わる
ことを理解している。
(4) 単元の指導計画と評価計画(全8時間、本時4/8時間)
次
学習内容
学習活動
(時数)
1
(2)
・かげ踏み遊びから、鬼に捕ま ◎かげふみ遊びをし、かげ
らない工夫がわかる。
の特性を理解しよう。(午前)
主な評価規準と方法
関・意・態
かげのできる場所に興味を
・これまでの経験から、かげの ◎かげふみ遊びをし、かげ 持ち、積極的にかげふみ遊び
変化と太陽の動きを関連付
の特性を理解しよう。(午後) をしている。
【観察】
ける。
◎かげについて、分かった
ことを話し合おう。
学習テーマ
思・表
かげのでき方や向きを、太
陽と関係付けて考えることが
かげの秘密を調べて、最強 できる。
かげふみタイムを見つけよ 【発言・記録分析】
う。
2
(4)
・まわりの景色が変わっても、 ◎方位磁針を使って、いろ
自分を中心とした方位は変 いろな場所で方位を測って
わらない。
みよう。
・かげは太陽と反対の方向にで ◎午前中のかげの様子を調
き、その位置や長さは時間と べてみよう。
知・理
方位磁針の使い方が分か
る。
【観察】
技・表
太陽の動きを調べ、その過
ともに少しずつ動いている。 ◎午前中のかげの様子か 程や結果を記録している。
ら、14 時 40 分のかげをピタ 【記録分析】
・太陽は東から昇って、南の空 リと当てよう。(本時)
を通り、西の空へと動いてい ◎太陽の動きを調べ、その
く。
知・理
かげの位置は、太陽の見え
過程や結果を記録しよう。 る向きと反対の向きにでき、
実験から分かることを整理 その位置は、太陽の動きによ
し、まとめよう。
って変わることが分かる。
【発言・記録分析】
3
(2)
・かげは、太陽と反対の方位に ◎かげと太陽の動き方をま
動く。太陽が動くからかげの とめてみよう。
動きも変わる。
知・理
太陽が動くと、かげは反対
の方位に動くことが分かる。
・南中時刻と夕方にかげふみ遊 ◎最強かげふみタイムでか 【記録分析】
びをして、確かめる。
げふみをしてみよう。
4 単元と児童
(1) 単元について
単元の導入で、かげふみ遊びをすることによって、かげは日光をさえぎる物があると、太陽の反対側
にできることをとらえ、太陽の向きとかげの向きの関係について見通しをもたせる。次に、午前と午後
でかげふみ遊びをした体験を比較し、かげのできる向きが、時間がたつと変わるかを問題にする。かげ
の動きを調べる中で、かげの動きと太陽の動きの関係をとらえることができるようにする。そのうえで、
遮光プレートや方位磁針などの観察器具を正しく使って調べ、かげは、日光をさえぎる物があると太陽
の反対側にでき、かげのできる向きは、太陽の動きによって変わるという見方や考え方ができるように
する。そして、太陽の1日の動き方をまとめ、太陽が、東から出て南の高いところを通り、西に沈むこ
とをとらえることができるようにする。最後に、鬼にとっての「最強かげふみタイム」を考える。
(2) 児童の実態 (男子2名 女子3名 計5名)
子どもたちは、2年生生活科で行った栽培活動や飼育活動、これまでの春の植物観察などから、
「理
科」と聞くだけで、期待感をもって授業に臨む姿が見られている。また、植物の様子をじっくり観察し、
細部にわたってスケッチしたり、興味のある植物や昆虫については、図鑑を開きながらその名前を調べ
たりすることに一生懸命である。しかし、観察から得られた情報を根拠とした意味づけや発言ができな
い、丁寧に観察してもそれが次の思考や活動に生かされないといった実態がある。よって、本学習のよ
うな、観察記録や体験をもとに予想を立てる経験を積ませたることで、根拠をもって事象を説明できる
力を育てたいと考えた。
5 本時の展開
(1) ねらい
午前中のかげの動きから、その後のかげの動きについて根拠をもって予想することができる。
(2) 展開の構想
まず、前時に記録した大用紙をもとに、時間とともに変化するかげの様子を振り返り、午前中のかげ
の変化を整理する。そして、それらを根拠に「14 時 40 分」のかげの動きを予想し、友達と意見交流す
る。その際、かげの動き方を縮小した作業シート(ホワイトボードに張り付ける)を使用する。子ども
たちが自らの考えをもった後、全員で意見を交流する。
次に、グラウンドに出かけ、実際のかげの様子を観察し、予想と結果との整合性を話し合い、どうし
てかげが西から東に動き、長さが変化するのか、考える。
(3) 展 開
時間
○教師の働きかけ
学習内容
□評価 ○教師の支援 ◇留意点
(分)
・予想される子どもたちの反応
7
午前中のかげの ○かげは、
「だんだん」どうなった ○(晴天・雨天時)晴天の日に子どもたちと
動 き を 確 認 す かな。
ともに記録を取る。
る。
・だんだん短くなる。
(晴天時)当日、グラウンドにかげの記録
・だんだん西から北に向く。
を残す。
(西から東に動く)
(雨天時)記録を結果として使う。
○四方位の概念も身に付けられるよう、左
○この後、かげはどうなるだろう。
右ではなく東西南北を使って説明させ
・東に動く。
る。
・だんだん短くなる。
◇天候に左右されるので、かげは事前に記
・だんだん長くなる。
録しておく。
○かげが西から東に向かっていること、時
間とともに短くなっていることを確認
する。
20
午前中のかげの ○午前中のかげの動き方から、14 ○理由が答えられない場合、ものさしや三
動きをもとに、 時 40 分のかげをピタリと当てよ
14時40分のかげ う。
○かげふみ遊びや的あてゲームをしたと
のでき方を予想
する。
角定規を使って考えるよう、支援する。
きの経験から、太陽の位置や光の直進性
A 西→東(長) B 西→東(短)
北
を想起させる。
北
◇午前中のかげの動き、方位、棒の中心が
西
東
西
東
描かれた作業シートを用意する。
○そう予想した理由をみんなに分 ○友達の考えを聞く中で、納得できる場合
かってもらえるように説明しよ
のみ自分の意見を変えてもよいことに
う。
する。
A 夕方、かげが長いから、長くな
る。
B
かげがだんだん短くなってい
るから、短くなる。
AB 東に動く。
グ ラ ウ ン ド へ 移 動
思・表
かげのでき方や向きを、根拠をもって考
えることができる。
【発言・記録分析】
15
14時40分のかげ ○実際に確かめてみよう。
のでき具合を実 ・A と同じだ。
○移動距離を短くするため、体育館で授業
を行う。
際に観察し、そ ・かげは北から東に動いている。
の理由を考え
る。
(西から東)
・かげが長くなった。
○かげの様子を正しく記録できているか
確認し、支援する。
○どうして、かげは長くなって、
東に動いたのだろう。
・太陽が反対のほうにあるから。
○太陽と関連付けて考えられるようにす
る。
・太陽がお昼よりも低くなったか ○作業シートに考えを記録する。
ら。
・太陽が動いたから。
思・表
かげのでき方や向きを、根拠をもって考
えることができる。
【記録】
3
本時の振り返り ○もし太陽が関係してかげが動い ◇かげは、時間とともに、西から北を通り
と 次 時 へ の 誘 たのなら、太陽はどんなふうに動
い。
東に向かうことを確認する。
くんだろうね。
※雨天や曇の場合は、グラウンドに出ず、すべて事前に記録した写真を使って行う。
※晴天時、授業場所は体育館で行う。
(4) 評価
○思考・表現
かげのでき方や向きを、観察記録を根拠に予想することができる。
【記録・発言】
6 実践を振り返って
(1) 授業の実際
まず、授業導入時に、以前行ったかげふみ遊びの写真を子どもたちに提示し、かげふみ遊びから分か
る「かげの特徴」を考えさせた。かげふみをする時間が違うと、かげの向きや長さが違うことや、安全
地帯(かげが白線の外に出ている状態)の場所が午前と午後で違うことなど、子どもたちの発言から、
かげの変化をまとめていった。
次に、数日前に子どもたちと一緒に記録した、実物大のかげを体育館の壁に貼り、子どもたちに問い
を投げかけた。
「かげはだんだんどうなった?」と問うと、子どもたちは、教師の予想とは違い、かげの
長さではなく、同じ幅で動いているという、角度に関する見方が数多く出された。1 時間ごとに同じ角
度で西から東に動いているということに気付けたことに驚いた。しかし、掲示物を壁に貼ってしまった
ために、
「方位がちがう。西と東の向きが違う。
」といった勘違いを子どもたちにさせてしまった。子ど
もたちはこれまで、地面に対して水平に方位を測ってきた。ゆえに、体育館の中にいても、どちらが北
か、大方の方角を感覚として身に付けている。今回の授業では、掲示物によって、
「北が天井方向」とい
う、これまで子どもたちが体験したことのない感覚を与えてしまった。
時間と共に変化するかげの様子をじっくりと話し合った後、1 時間ごとに 8 時 30 分から 11 時 30 分ま
でかげを記録した作業シートを与え、11 時 30 分から約 3 時間後の 14 時 40 分のかげを予想した。子ど
もたちは初め、影がだんだん東に動いていることから、11 時半よりも少し右側に線を引いていた。しか
し、
「約 3 時間後のかげをピタリと当てよう!」という課題を再確認してから、
「かげの開き具合(角度)
は 3 時間分だから、大きく開くのかな。
」
「11 時半の 3 時間前は 8 時半だから、8 時半のかげの長さと同
じかな。かげの向きは反対かも。
」と考え始める子どもも出てきた。
最後に、14 時 40 分、体育館脇からグラウンドに出て、かげの様子
を観察した。
「予想通りだ!」
「当たった!」という声が聞こえる一方、
「大体あっているかなぁ。
」という不安げな声も聞かれた。子どもた
ちの予想通り、かげは東の方角へ傾き、長さは長くなっていた。8 時
半と同じくらいの長さ、開き具合は 3 時間分と予想していた子どもに
とって、ほぼ予想に近い結果が得られた。その後、体育館に戻り、
「ど
うしてかげは長くなって、東に動いたのか。
」と、自分なりの考えを
話し合った。
「太陽が動いたから。
」
「地球が回ったから。
」など、太陽
と関連付けて考えることができた。子どもの意見で多かった、
「太陽
が西から東に動いたから。
」というものがある。太陽もかげと同じ方
向に動いていると思っている子どもが多く、この後の太陽の観察がと
ても楽しみに思われた。
(2) 研究テーマにかかわって
① ICT の活用
「雨が降ると、線が消えてしまう。
」
「曇っているとかげが見えな
い。
」というように、この単元の進行状況は、天候に左右されてし
まう。よって、デジタルカメラなどで当時の活動記録を残すことは、
とても有効に働いた。本単元においても、デジタルカメラで記録を
残し、授業のたびに、スクリーンに投影したり、紙に印刷したりし
ながら、子どもたちの記憶を呼び戻すために効果を発揮した。子ど
もたちが、根拠をもって考える場面では、欠かせない存在であった。
しかし、デジタルカメラで撮影したものは、実物と違う大きさに
なってしまうという課題も発見できた。撮影する角度によっては、
全く違った結果を映し出してしまうこともあった。
図3 本物のかげの観察
図4 写真を使った振り返り
② 観察結果を実物大で見る工夫
変化がはっきり分かりやすく共通の物、つまり、壁に貼られたか
げの動きを全員で見ることにより、友達の意見に共感しながら話を
聞くことができた。また、外でかげを観察したときと同じ大きさ、
同じ変化であったことにより、安心して意見を述べる様子が見られ
図5 実物大の掲示
た。さらに、自分の身長よりも大きなかげの
物
動きは、変化を読み取りやすく、動く幅(角度)に目を向けるきっかけとなった。観察結果を正確
に読み取り、かげの動きを予想するための材料として、とても効果的だった。ただ、壁に貼ることな
く、地面と水平方向に置き、実際の方角と合わせていたら、方角に関連した児童の混乱は、起こらな
かったかもしれない。
③ 作業シートの工夫
午前中のかげの動きを作業シートに書き込んでおいたことによ
って、14 時 40 分のかげの位置を考える材料となった。かげの記録
を 11 時 30 分という南中に近い時刻にとどめたことや、約 3 時間後
のかげをピタリと当てるという課題によって、たくさんの児童の考
えを生み出すことができた。また、何度も容易に書き直せるようラ
ミネート加工したことにより、1 度ひらめいた考えを修正したり、
友達の意見を聞いて考えを練り直したりする姿も見られた。より正
確な予想にしようと、観察結果と自らの予想を見比べながら、何度
も書き直すことができていた。ただ、作業シートと実際のかげを見
比べた際、大きさが異なり、本当に自分の予想がピタリと合ってい
図6 ラミネート加工した作業シート
るのか、判断しづらいという問題を生じてしまった。
④ 単元配列の入れ替え
「光の直進性」を先に学習してから、太陽とかげの動きを学ぶこ
とで、太陽とかげの関連性について、根拠をもって考えている様子
が見られた。本時の後、太陽の動きとかげの動きについて考えさせ
た際、初め図 6 をかいた子どもは、右側の図のみをかいていた。し
かし、
「分かりづらいなぁ。もっと分かりやすくかいてみて。
」とい
う教師の問いかけに対して、左側の図をかいて説明してきた。この
図は、光の直進性を活用したものであり、単元を入れ替えて学んだ
成果が表れていた。子どもたちは、かげの長さと太陽の高さの関係
を、
「光の直進性」を通して理解することができた。
図7 かげの長さが変わる理由
(3) 今後の課題
本実践において、観察したことをもとに、その後に起こる現象に対して根拠をもって説明する力を高
める4つの手立ては、児童の発言や記録から、有効に働いたことが実感できた。本単元のまとめ「最強
かげふみタイム~鬼バージョン~」を見つける際、子どもたちは、かげが長い時間帯、つまり、太陽が
低い位置にある朝と夕方が、鬼にとって一番有利であることを見つけることができた。そして、建物が
周りにないこと、季節によっても違うのではないかということまで、目を向けることができるようにな
った。
しかし、課題として、次の2点があげられる。
① 作業シートが実物よりも小さく、予想と結果を見比べたときの整合性がとりづらかったこと。
② 太陽が東から西へ動くという観察から得た知識が、なかなか身に付かなかったこと。
①について言えば、今回の作業シートは、個人で考えを整理しまとめることには有効に働いた。しか
し、考えを伝える場面では、シートを見せながら、自らの考えを友達に伝えるだけの活動になってしま
った。話し合いながら、考えを練り上げるという活動からは程遠くなってしまった。また、実際のかげ
とは大きさが異なるために「ピタリと当たっている」かどうか、判断できなかった。個人用の作業シー
トのよさはあるが、今回の授業展開では、授業の導入で使った拡大掲示を使って、5 人で話し合い相談
しながら、14 時 40 分のかげを直接そこに書かせたら面白かったように思う。観察結果を活用して考え
を練り上げる場面では、作業シートの大きさや、個人用か全体用かなどを十分に考えて制作する必要が
ある。
②について言えば、かげと太陽の動く方向を混同していることが、ワークテストを通してはっきりと
分かった。かげは、地面という平面で観察し、大きな紙の平面に記録した。しかし、太陽は、空中とい
う空間で観察し、平面の作業シートに記録した。この矛盾が、児童の知識理解を妨げてしまったのでは
ないかと思う。透明半球を使って空間を記録するなど、太陽の動きを観察する際の工夫が必要であった。
今後は、観察結果から根拠をもって予想するための手立てとして、児童の思考の流れを止めることの
ない単元を見通した作業シートの工夫と、観察の対象物の動きや特性を正確に記録する方法を考えてい
きたい。