米金融安定監督評議会、意思疎通の改善に向けてノンバンクのSIFI 認定プロセスを変更 米金融安定監督評議会(FSOC)は2 認定結果にどれだけ影響が現れるかは未 月4日、ノンバンクのSIFI(システム上 知数である。 重要な金融機関)認定プロセスの変更を 一方、昨年末FSOCからSIFI に認定さ 採択した。FSOCはこれまで議会や業界 れた米国最大の保険会社、メットライフ 団体にSIFI 認定の審査基準や手続きが は、今年に入って、決定の無効化を求め 不透明だと強く批判されてきたが、今回 て連邦地方裁判所に司法審査を請求し の変更では彼らの提言を多く採り入れた た。メットライフの提訴については勝算 こともあり、概ね好意的に受けとめられ を疑問視する向きも少なくないが、今後 ている。 FSOCがノンバンク分野で果たすべき役 変更の主な内容は、1)SIFI 審査の対 割に関する議論に影響する論点も多く含 象となった会社に従来より早い段階で通 まれており、注目に値する。たとえば、 知し、対象会社およびその監督機関と意 「FSOCは現在、資産運用業については 思疎通を図る機会を増やす、2)審査の 「会社」全体をSIFI に認定するのでは スクリーニング段階で用いられる数値基 なく、特定の「業務」を特にリスクが高 準の閾値や審査下にある会社数など情報 いと見なして、FRBの厳格な監督下に 公開を拡大し、認定プロセスの透明化を 置くことを検討している。一方で、伝統 図る、3)SIFI に認定されたノンバンク 的な保険業務が経済にシステミックリス が引き続きSIFI 基準を満たしているか クをもたらさないことは議会や当局の証 毎年再評価を行う際の手続きを明確化し 言で繰り返し述べられている。そうした 意思疎通の機会を増やす、というもの。 状況にもかかわらず、なぜ保険業界でも SIFI 審査の対象となった会社にとって 資産運用業のように「業務」に基づいた は情報提供や反論の機会が増えるが、 アプローチを取らないのかFSOCは論理 FSOCのメンバーの一人が「変更後のプ 的に説明していない」とメットライフは ロセスでもこれまでにFSOCが下した実 主張している。 際の決定が変わってしまう可能性は低い だろう」と発言しているように、今後、 16 野村総合研究所 金融 ITナビゲーション推進部 ©2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. ニューヨーク州、仮想通貨業者の免許制度を新設する規制フレームワークを再提案 ニューヨーク州金融サービス局は2月、ビットコイン ネーロンダリング対策などの観点から連邦、州規制当局 など仮想通貨の送金や法定通貨との交換などのサービ がそれぞれ対応を進めてきた。特に、 「送金業者」はほ スを顧客に提供する業者に対して免許制度を新設する とんどの州で免許制で監督されており、仮想通貨業者が 規制フレームワークを提案した。昨年7月に公表した提 この「送金業者」の定義に当たると考えられるケースは 案を修正したもので、仮想通貨業者に対して免許( 「ビッ 多いため、州当局は必然的に大きな役割を果たす必要が トライセンス」 )の取得を義務付け、最低資本の維持、顧 あった。昨年12月には、州銀行監督協議会(CSBS) 客取引などの記録の保持とともに、顧客資産の保全、消 が、仮想通貨業者を州の免許制・監督に置くべきとする 費者保護、マネーロンダリング対策、サイバー安全プログ 方針と、州規制の一貫性を図るためのモデル規制の枠組 ラムの導入などを課すもの。今回の修正案ではスタート み案を発表した。この方針では、仮想通貨業者には業務 アップ企業に配慮した2年間の暫定免許の制度も導入さ 内容に応じて免許取得義務や監督を課すべきだが、具体 れた。ロースキー局長は昨年末、2015年前半にも最終 的な規制方法については、今回のニューヨーク州のよう 的な規制フレームワークを発表しその後速やかに仮想 に新たに仮想通貨業務に絞った法規制を導入すること 通貨業者に免許を付与したいという意向を示している。 も、既存の法規制を解釈したり修正したりして仮想通貨 近年、米国では仮想通貨をめぐって消費者保護やマ 業者に適用することもできる、とされている。 オランダ職域年金PFZWがヘッジファンド投資から撤退 オランダの医療・福祉部門の従業員向け職域年金 が昨年採択した新しい投資方針は、すべての投資カテゴ PFZWが1月、ヘッジファンド投資はもはや同基金に リーを、サステナビリティ、複雑さ、投資目標への期待 とって戦略的投資カテゴリーではなく、昨年中にほぼ 貢献度、コストの観点から評価するものであった。 投資を解消したと発表した。同基金はオランダで2番目 金融危機後、年金基金を始めとする機関投資家は株 に大きな年金基金で、2013年には資産運用額の2.3% 式と債券以外に投資の分散化を図るためオルタナティ に当たる37億ユーロをヘッジファンド投資に充ててい ブ投資を強化しヘッジファンドへの投資も積極化させ た。今回の決定に至った理由についてPFZWは、1)分 ていた。その一方で、ここ数年は世界的な株高が続く 散化を図ることを目的としていたが、近年十分にその 中、ヘッジファンドのパフォーマンスは相対的に見劣 役割を果たしていなかった、2)投資内容がわかりづら りがし、同時に投資内容の透明性や手数料の高さが問 く、 「コントロールしやすさ」と「理解しやすさ」を重視 題として認識されるようになっていた。昨年9月には した新しい投資方針の基準を満たしていなかった、3) 米国の巨大年金、カリフォルニア州職員退職年金基金 コストが高いにもかかわらずリターンが不確実、4) (カルパース)がヘッジファンド撤退を発表した際に ヘッジファンドはマネジャーの報酬が高い上、社会・環 は大きな話題となり、他の年金基金がこれに追随する 境に対する配慮が限定的であること、を挙げた。PFZW のか対応に注目が集まっていた。 Financial Information Technology Focus 2015.4 17
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