《京都》 御所と離宮の栞

其
の
十
二
しおり
《京都》 御所と離宮の
御所と離宮の栞
栞
- 京 都 御 所 -
平成27年京都御所春季一般公開では御大
礼に関連する展示をします。
100年前に行われた大正天皇御大礼
京都御所春季一般公開
平成27年4月3日(金)~7日(火)
だんてい
大正天皇即位礼当日紫宸殿の儀 南庭の様子
『大礼記録』大礼記録編纂委員会編(大正8年)(国立国会図書館デジタルコレクション)
今から100年前の大正4年(1915)に京都御所などで大正天皇御大礼の諸儀式が行われました。一連の儀式は,4月19
日の賢所に期日奉告の儀に始まり,京都では11月10日即位礼当日賢所大前の儀(京都御所春興殿),同紫宸殿の儀
(京都御所紫宸殿)※,11月14日大嘗宮の儀(仙洞御所跡敷地),11月16,17日即位礼及び大嘗祭後大饗の儀(二条離
宮。現在の二条城),11月25日明治天皇山陵に親謁の儀(伏見桃山陵),11月26日孝明天皇山陵・仁孝天皇山陵・光格
天皇山陵に親謁の儀(後月輪東山陵・後月輪陵)などが行われました。
貞明皇后(大正天皇の皇后)は,時を同じくして第四子を御懐妊中であったため,一連の儀式には御出席されません
たかひと
でした。その後12月2日にお生まれになったのが,今年で満100歳になられる三笠宮崇仁親王殿下です。
また,通常御大礼行事に御参加になる皇族は,成年
皇族となっているところ,当時皇太子殿下(後の昭和天
皇)は14歳ではありましたが,大正天皇の御沙汰により
即位礼当日の儀式のみ御参列になりました。
※は現在の京都御所紫宸殿で執り行われ,高御座
(写真:左)はその時造られたものが,昭和天皇(昭和3
年),今上陛下(平成2年)と3回にわたり使用されまし
た。
現在の紫宸殿内の高御座
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ばん
般
□
御即位で使用される旛
写真掲載している旛は以下のとおり展示し
ます。
(こちらで写真掲載した旛は昭和天皇御即位に使用したものです) 京都御所春季一般公開
平成27年4月3日(金)~7日(火)
紫宸殿
高御座
大臣宿所
御帳台
即位礼の紫宸殿の儀では,前庭(京都御
だんてい
だいきんばん
所では南庭)に大錦旛を始めとする調度品
が並びます。
左近の桜
右近の橘
ばん
それらの旛(はた)は,登極令(明治42年公
日像纛旛
月像纛旛
霊鵄形大錦旛
菊花章中錦旛
萬歳旛
頭八咫烏形大錦旛
萬歳旛
青
青
黄
黄
赤
赤
白
白
紫
紫
布 元号制定,即位礼などを規定した旧皇
室令)により左記図のように配されました。
にっしょう とうばん
左近の桜より南には,日像纛旛,次に
や た が ら す
だいきんばん
ちゅうきんばん しょうきんばん
頭八咫烏形大錦旛,菊花章中錦旛・小錦旛
菊花章中錦旛
りゅう
各5旒 (青・黄・赤・白・紫)が並びます。左近
の桜に相対し右近の橘の南側には
げっしょうとうばん
れ い し
月像纛旛,霊鵄形大錦旛,菊花章中錦旛・
青
青
小錦旛各5旒が同じく並びます。
菊花章小錦旛
黄
黄
赤
赤
白
白
紫
紫
菊花章小錦旛
紫宸殿南庭庭上に並べられる旛の配置
日像纛旛は赤地の瑞雲の錦に金糸で日像
を刺繍した旛で,月像纛旛は白地の瑞雲の
錦に銀糸で月像を刺繍したものです。旛は
竿に掛けられ,竿の頂には纛形(被髪状の
飾り)を据えます(下記写真:左端の旛(日像
纛旛))。
げっしょうとうばん
にっしょう とうばん
月像纛旛
日像纛旛
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『昭和大礼要録』大礼記録編纂委員会編
昭和6年(国立国会図書館デジタルコレクション)
頭八咫烏形大錦旛(写真:上段右)
は,五彩瑞雲の赤地錦の旛の上方に
頭八咫烏が刺繍されています。この頭
八咫烏は神武天皇が東征の際,熊野
から大和への道を先導した大きな烏と
されています。
れ い し
霊鵄形大錦旛(写真:上段左)は,五
彩瑞雲の白地錦の旛の上方に金鵄が
刺繍されています。金鵄は神武天皇が
東征の際,神武天皇の弓に止まると,
体が光り輝いたと伝えられています。
れ い し
霊鵄形大錦旛
や た が ら す
頭八咫烏形大錦旛
ばんざいばん
萬歳旛は儀式の際に東西に
ある大錦旙の内側に置かれま
す。赤地雲形文錦に,上方に
いつへ
は魚と厳瓮が刺繍され,その
下には金糸で「萬歳」と刺繍さ
れています。
厳瓮は祭祀に用いられる神
酒を入れる土器で,神武天皇
が東征の際に厳瓮を川に沈め
て占ったという故事により瑞祥
のしるしとして表現されていま
す。
ふしみのみや さ だ な る
この「萬歳」という文字は,大正の御大礼では伏見宮貞愛親王殿下,昭和の
かんいんのみやこ と ひ と
御大礼では閑 院 宮 載仁親王殿下の御染筆が刺繍となっています(写真:下段
右)。
なお,大正天皇と昭和天皇の御即位では,同じ意匠の旛を使用しました。今
回写真掲載した旛は昭和天皇御即位で使用したものです。
ばんざいばん
萬歳旛
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- 御 所・離 宮 -
御所透かし
御所や離宮の庭園では様々な樹木が植えられて
おり,季節に応じた手入れがされています。御所や
離宮の代表的な技法としては「大刈込」や「御所透
かし」が挙げられます。(大刈込は栞其の二で紹
介)
修学院離宮の御馬車道
観
□
一般的な手入れの技法で「透かし手入れ」という
ものがありますが,御所や離宮の庭園では透かし
手入れの一種である「御所透かし」という技法を用
います。
樹木は年々大きくなりますが,大きくなりすぎると
庭の雰囲気に合わなくなってくるため透かし手入
れをおこない,樹形を整えると共に枝の伸長を抑
制します。「御所透かし」という技法はこの透かし手
入れを基本に,なるべく手入れ前後の景観に変化
京都御所の御台所跡
観
□
を与えず,自然な樹形となるようにし,個々の樹木
が庭園全体に馴染むよう仕上げていくものです。
ここでは,御所や離宮で樹木本数の多いアカマツとクロマツで説明します。
みどり つ
春季には混み合った枝を取り除くとともに,「緑摘み」と呼ばれる作業をおこないます。新芽が4~5㎝くらいに伸びると3㎝
以下になるように指で摘み取ります。この作業は新芽のやわらかい時期におこない,新芽を縮めることで一年の伸長量を抑
制でき,枝が間延びすることを防ぎます。
緑摘み作業前
緑摘み作業後
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秋季には,立ち枝(横に伸びず上方に伸びた枝)及び垂れ枝(横に伸びた枝から下方に伸びた枝)を切り除くとともに古葉
を取り除きます。アカマツは振るえば簡単に古葉は落ちますが,クロマツは簡単には落ちないため一枝ずつむしり取りま
す。この時新葉にあまり手を加えないようにします。枝を切るときは外向きの小枝を残して切る「小芽止め」を心がけます。
作業前
作業後
赤枠内の枝におけるふところ枝
御所透かしの手入れの特徴のひとつに「ふと
ころ枝」を大切に育てるということがあります。
「ふところ枝」は枝の幹に近いところから生えて
いる小枝のことで,これを外側にある枝と同じ
ような樹形に育てていきます。これは「枝の差
しかえ」を可能にするためで,ある程度ふところ
枝が形になったら外側の枝を切り除きます。こ
れで樹木全体がひとまわり小さくなり庭の大き
さに合った樹形を維持することができます。
作業前
作業後
樹木は寿命や病気で枯れることもありますが,真夏や真冬に枝を取りすぎると寒暖の影響で枯れてしまうことがありま
す。適期に正しい手入れをおこなうことが重要で,御所や離宮の作庭当時の庭の形状を保つために先人達の技法を継承
し,日々の管理に励んでいます。
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京都御所案内図
紫宸殿
大臣宿所
南庭
外 マークは,御所・離宮の外側から,いつでもご覧になれます。
○
観 マークは,参観でご覧になれます。
□
申込み方法は, http://sankan.kunaicho.go.jp/ をご覧ください。
般 マークは,春と秋には申込みが必要のない一般公開の際にご覧になれます。下記にて日程等をご確認
□
くださいますようお願いします。http://www.kunaicho.go.jp/event/kyotogosho/kyotogosho.html
内 マークは,通常公開していない場所にあります。
◇
これまでの「《京都》御所と離宮の栞」については,
宮内庁ホームページのこちらからご覧ください。
<問い合わせ先>
〒602-8611
其の十二:平成27年3月31日発行
京都市上京区京都御苑3
宮内庁京都事務所 代表電話:075-211-1211
参観係直通電話:075-211-1215
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