たま たま 球は霊なり ~野球部だより 27~ 12.2.2013 朝6時。朝日を浴びて少しずつ薄紅色に染まる富士山を眺めながらグラウンドに立って いると、選手たちが暗い中、集まってきました。本格的なトレーニングが始まる12月と なり、今年は例年より早く、2日から豊顕寺に行くことにしました。片道5,5キロ。長 距離走そのものが、野球のプレーにつながるトレーニングとはなりませんが、「全員で何か を成し遂げた」という結束力を高め、個人的にも「やり遂げた」という達成感は得られる と思います。 6時30分過ぎに出発して、7時過ぎに三ツ沢の豊顕寺に到着。江戸時代には300人 を越える僧侶の学問所として栄えたこの地は、たくさんの八重桜が春に咲き、豊顕寺市民 の森として親しまれています。その一部に、三ツ沢上町駅から三ツ沢公園へ抜ける近道と して、木々に囲まれた中に階段はあります。選手たちの駆ける足音と吐く白い息。階段ダ ッシュを20本もやると、さすがに選手たちから言葉は何も出てきません。設定されたタ イムに20本すべて入ったのは堀内主将ただ一人。その主将の姿勢に周りの選手たちが何 を感じるのかが問われます。終わったのは8時半過ぎ。帰る前の休憩時間、師走の風に吹 かれて散っていく色鮮やかに紅葉した葉を眺めていると、選手たちに負けないくらい、人 生後半に心を真っ赤に燃やすのも悪くはないと思いました。 「走れと言った以上は自分も走 る。選手だけ走らせるなんて、選手が認めてくれんと思うんです。『なんで走らんといかん のや』と選手が思っても、一番後ろから監督が走っていたら、『あいつも走りようけん、し ょうがないな』となりますから。 」と話したのは愛媛県立今治西高校の大野康哉監督。その 言葉を胸に、心を燃やして選手とともに走って生麦へ戻りました。 昨年8月8日、桐光学園松井投手に22奪三振を喫した対戦相手でもあった今治西。今 秋の四国大会も優勝して、来春の甲子園選抜大会出場もほぼ確定しています。その試合を 3塁ダグアウト上で観戦していた時のことですが、試合前の大野監督のノックは「すばら しい」の一言に尽きるものでした。一打一打、ボールを通して選手に話しかけていること が伝わってくるようなノック。監督の人柄に魅了された7分間で、チームの強さとはそん なところに秘密があるのかもしれないと思わされました。 宮崎キャンプ。誰よりも早く起き、誰よりも早くグラウンドに行き、 「今日も選手たちが けがをしないように」と、祈りながら小石を拾われていたのは、先日お亡くなりになった 川上哲治元巨人監督だそうです。V9 を築いた「昔の巨人」の強さも、そんなところにあっ たのかもしれません。
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