米国政策金利の引き上げとそのインパクト;pdf

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米国政策金利の引き上げとそのインパクト
ご参考資料
ストラテジー・レポート
2015 年
4月
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先進国中唯一、
政策金利の引き上げに
踏み切ろうとしている米国。
その影響を推察する。
フェデラル・ファンド金利先物( 30 日物)が織り込む、政策金利
の引き上げタイミングは 8 月以降。
低インフレ下で雇用環境も改善している米国は、リーマンショッ
ク後、利上げをする唯一の先進国に。
注目点は政策金利(フェデラル・ファンド金利)の利上げ幅。低
インフレ下では、利上げペースは緩慢。
フィデリティ投信
商品マーケティング部長
太田 創
三菱銀行、シティグループ等の外
資系資産運用会社等を経て、2007
年 フ ィ デ リ テ ィ 投 信 入 社 。商 品
マーケティング部長として、商品
企画およびマーケティングに携わ
円安の地合いは変わらないが、米ドル/円為替レートの最高値か
らは 6 割程度の円安が進行。
る 。メ ガ バ ン ク で の 資 金 デ ィ ー
株価も世界的に回復中。利上げによる為替や株価への影響は比
較的マイルドなものを予想。
手がけ、テレビ・ラジオでのコメン
2015 年のいずれかのタイミングで、米連邦準備制度理
事会(FRB)が政策金利の引き上げに踏み切ることが予
想されています。金利先物が織り込む利下げのタイミ
ングは 8 月以降。年内に利上げがあるのか、それとも来
年以降に持ち越しになるのか、その方向性が市場で注
目されています。
ラーとしての経験を活かし、マー
ケット関連の著作・出稿を数多く
テーターなども担当。
今回のレポートでは、米国の利上げを目前に控え、その
可能性と利上げ後の投資環境について考察していきた
いと思います。
利上げの市場コンセンサスは、2015 年 8 月以降。
昨年 10 月の FRB による量的金融緩和終了の決定後、米国長
る水準になっています。
(図 1)この間、米国ハイ・イールド債
期金利(米 10 年国債利回り)は政策金利の引き上げを見越し
券や米国リートなど、金利上昇によるパフォーマンスの悪化
て、上昇に転じました。しかしながら、その後 FRB が政策金
が想定されるリスク資産の価格が、一時的に下落したのは記
利の引き上げに関して明確な方向性を示さなかったことか
憶に新しいところです。
ら、長期金利は 2 %を割り込むまで下落しました。もちろん
もちろん、長期金利は政策金利の利上げ要因だけで上昇する
この間にウクライナやイスラム国関連の地政学リスクが深
わけではありませんので、政策金利が本当に引き上げられる
刻化し、ギリシャに左翼新政権が誕生するなど、利上げ以外
かどうかを、長期金利の動きだけで予想するのは困難です。
にも米国債を含む米ドル建て資産が買われやすい地合いが
より直接的に判断するとすれば、政策金利であるフェデラ
あったことは否めません。その後、2015 年に入ると再び利
ル・ファンド金利がどのように動くかを想定して取引される
上げの可能性がクローズアップされ、長期金利は 2%を超え
金利先物相場を見ておく必要があります。
※記載は当レポート作成月時点の投資環境の見方です。今後の相場を保証または示唆するものではありません。
また予告なく変更されることがあります。最終ページを必ずお読みください。
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米国政策金利の引き上げとそのインパクト
2015 年 4 月
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図 2 は、シカゴ・マーカンタイル取引所に上場しているフェ
デラル・ファンド金利の誘導目標は
0%∼0.25%の幅がある
デラル・ファンド金利先物(30 日物)の限月(決済月)ごとの
ため、この幅を上方に動かすか、また刻みをどの程度にする
金利水準を並べたものです。先物金利が現在のフェデラル・
かで、今後の FRB の利上げスタンスを予想することができる
ファンド金利誘導目標の上限値である 0.25%を超えるのは、
でしょう。いずれにせよ、低インフレ下での利上げとなれ
2015 年 8 月限の時点です。先物金利の水準から市場関係者
の利上げのコンセンサスを判断すると、
「利上げは 8 月以降
ば、従来のように 0.25%刻みで引き上げるといった手法では
にあり得る」ということになります。
レンジの調整ということも考えられます。
なく、例えば、誘導目標を 0.25 %∼ 0.5 %に設定するという
利上げの幅については議論のあるところですが、現状のフェ
(図 1)米 10 年国債利回り推移
2015年以降の利上げを想定し、
再度長期金利が上昇。
2.70%
2.50%
2.30%
2.10%
1.90%
1.70%
1.50%
14年9月
2014年10月29日のFRBによる
量的金融緩和の終了を見越した
金利先高観が醸成。
14年10月
14年11月
14年12月
15年1月
15年2月
15年3月
(注)Bloomberg よりフィデリティ投信作成。期間:2014 年 9 月 17 日∼2015 年 3 月 17 日。
(図 2)フェデラル・ファンド金利先物(30 日物)の各限月金利水準
2.50%
2.00%
1.50%
1.00%
先物金利が、政策金利誘導目標の
0.25%を超えるのは8月以降。
0.50%
0.00%
2015年3月
現在の政策金利誘導目標。0%∼0.25%
2015年9月
2016年4月
2016年10月
2017年5月
2017年11月
2018年6月 (限月)
(注)Bloomberg よりフィデリティ投信作成。CME・フェデラル・ファンド金利先物(30 日物)取引
各限月の終値を使用。2015 年 3 月 15 日時点。
※記載は当レポート作成月時点の投資環境の見方です。今後の相場を保証または示唆するものではありません。
また予告なく変更されることがあります。最終ページを必ずお読みください。
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2015 年 4 月
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リスク資産へのインパクト
市場は既に FRB の利上げを織り込んだ動きになっています。
モディ首相の経済運営が順調なため、株価は当面堅調に推移
まず株式については、既に日米欧とも業績相場に移行し、利
するでしょう。
上げだけの理由で株価に悪影響があるとは考えられません。
債券相場に関しても、米国国債利回りが年初から 0.3 パーセ
日本の上場各社の業績は順調に推移中であり、大手自動車会
ント・ポイント程度上昇していますので、再度、年内の利上
社のベアも前年比大幅増で決着。今後は、中小企業の賃上げ
げの可能性を織り込み始めたと考えられます。長期金利の上
にも波及すると予想され、日経平均株価は 2 万円目前となっ
昇は、国債のみならず投資適格債券やハイ・イールド債券相
ています。米国株も好調な企業業績を背景に史上最高値を更
場の下落要因の一つになります。しかしながら、米国ハイ・
新中であり、利上げによるマイナス影響はないでしょう。欧
イールド債券相場が昨年 11 月から 12 月にかけて 5%弱下落
州(ユーロ圏)は量的金融緩和が始まったばかりで今後その
したのは、利上げによる長期金利上昇リスクの顕在化による
効果が期待されるところですが、欧州株の中ではドイツ株の
ものではなく、実際には原油価格下落に端を発した、エネル
みが 2000 年年初の株価を高値更新中で、唯一の勝ち組と
ギーセクターに対する信用力の低下が原因です。このよう
なって株価をけん引しています。
(図 3 )これは、域内で最も
に、債券相場は利上げやそれに伴う長期金利の上昇を織り込
大きな影響力を持つドイツ企業が量的金融緩和の恩恵を最
み済みであり、大きなインパクトはないと考えています。
も大きく受けると考えられているからです。エマージング株
為替に関しては、量的金融緩和を継続しているユーロと円
に関しては、ブラジル株は国営石油会社(ペトロブラス)の汚
は、米ドルに対しては引き続き弱含みの展開となるでしょ
職問題により、為替も含めて軟調で、ロシア株も地政学リス
う。これは、世界の主要中央銀行の金融政策が緩和的である
クで敬遠されています。中国株は政府の目標経済成長率の引
のに対し、FRB のみが引き締めに転じようという状況下、金
き下げにより市場関係者は懐疑的となる一方で、インド株は
利上昇要因を抱える米ドル需要が旺盛だからです。
戦略とリスク
このように、利上げによるインパクトは各資産に対して限定
られるでしょう。例えば、図 3 に示すように、欧州ではドイ
的だと考えられます。こうした中、リスク資産の投資対象を
ツ株が一人勝ちし、先に量的金融緩和を停止した英国株や、
絞っていくのであれば、業績相場に移行している先進国株式
同じユーロ圏のフランス株はドイツ株に大きく劣後してい
やリート、低金利下でも比較的利回りの高いハイ・イールド
ます。特定の国に投資資金が集中することは、今後のバブル
債券や高配当株式が妥当な選択だと思われます。
発生を想起させます。投資対象資産が割高になっていないか
リスクに関しては、現在の量的緩和による流動性の注入が、
どうかをチェックすることも、重要な戦略の一つです。
株価の極端な二極化を招くのではないかということが上げ
(図 3)2000 年以降の日米欧主要株価の推移
180
160
140
120
ドイツDAX指数
フランスCAC40指数
英FTSE100指数
日経平均株価
NYダウ指数
ドイツDAX指数
NYダウ指数
日経平均株価
英FTSE100指数
フランスCAC40指数
100
80
60
40
20
99年 00年 01年 02年 03年 04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年 12年 13年 14年
12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月
(注)Bloomberg よりフィデリティ投信作成。期間:1999 年 12 月 31 日∼2015 年 3 月 13 日。 週次。
1999 年 12 月 31 日を 100 として指数化。
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ビスによって、お客様の求める資産形成を実現することを使命としています。当社は 1946 年米国ボストンで創業された「フィデリ
ティ・インベストメンツ」の国際投資部門として 1969 年に設立しました。1980 年に米国の組織から独立し、現在は経営陣と創業家が
主要株主となっています。日本においては、フィデリティ投信株式会社が投資信託および企業年金や機関投資家向け運用商品やサービ
スを提供、フィデリティ証券株式会社が投資信託を中心にお客様の長期的な資産運用をサポートする各種サービスを提供しています。
(※ 1 ドル =119.895 円で計算、データは 2014 年 12 月 31 日現在)
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