大学院体育学研究科修了生の皆さん、卒業並 びに修了お;pdf

告
辞
鹿屋体育大学体育学部卒業生、大学院体育学研究科修了生の皆さん、卒業並
びに修了おめでとうございます。
また、これまで卒業生、修了生の皆さんを暖かく見守ってこられたご家族の
皆様、本日は誠におめでとうございます。
本日の卒業式並びに修了式の挙行にあたり、文部科学省 芦立 訓(あしだて
さとし)審議官をはじめ、多くのご来賓の皆様をお迎えし、卒業式並びに修了
式を盛大に挙行できますことに対し、厚く御礼申し上げます。
さて、2020 年には、東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。最
近、テレビ等で「オリンピックレガシー」が話題になっております。レガシー
とは「遺産」とか「受け継いだもの」との意味であります。
オリンピック開催には競技施設の新設等多大な労力が費やされますが、オリ
ンピックが終了した後にどのような効果を社会に残しているか、という観点か
らオリンピックを考えようとするものであります。これはオリンピックで優れ
た成績を残す事と同じくらい、またはそれ以上に非常に重要な点であろうと思
われます。
我が国では、これまでに 1964 年東京オリンピック、1972 年札幌オリンピッ
ク、1998 年長野オリンピックの夏冬合わせて 3 度のオリンピックを開催してき
ました。
思い起こせば、1964 年の東京オリンピックでは国立競技場が新設され、東京
に首都高速道路が整備され、新幹線が開設されるなど多くのインフラが完備さ
れました。
一方、スポーツ科学の観点から考えますと、東京オリンピックと同時に開催
された国際スポーツ科学会議などをとおして、欧米諸国からサーキットトレー
ニング、インターバルトレーニング等多数の近代トレーニング方法が紹介され
ました。
その後、このような科学的トレーニング方法の効果の検証などの研究が大学
や研究所で盛んに行われるようになりました。また、競技選手のフィットネス
を測定する試みも数多く行われました。さらに、その後の 1972 年札幌冬季オリ
ンピックにおいてはスキーやスケート等、種目ごとに、それぞれの科学チーム
が結成され、測定や調査が行われ、多くの科学的資料が集積されました。当時、
私はアルペン種目の測定チームに所属し、滑降時のフォーム分析結果などを選
手にフィードバックした事が思い出されます。
つまり、1964 年東京、及び 1972 年札幌の両オリンピックが残したスポーツ
科学領域のレガシーは日本における近代トレーニング方法やその科学的研究が
根付いた事と言えます。
さて、2020 年の東京オリンピックに向けどのようなレガシーが考えられます
でしょうか。近年急速に発達してきたスポーツ科学やトレーニング科学はスポ
ーツの現場に大きな影響を与えてきました。身体の発揮するパワーの向上やそ
の持続性を向上させるためのトレーニング方法やその為のトレーニング機器の
開発は目覚ましいものがあります。また、スポーツ障害の予防や治療の手法も
著しく進歩してきました。さらに、健康・体力を維持増進するための日常生活
における運動の組み込みなどの研究開発も盛んに行われ、その研究成果は社会
に多大の貢献をしております。
一方で、依然として「スポーツ科学が現場に必ずしも役立たない」などの声
も聞こえてきます。スポーツパフォーマンスを向上させるには多くの要因が関
係してくる事がその理由であろうと思われます。人の持つ運動能力には非常に
多くの個人差が見られ、大多数の人に効果的な手法であっても特定の個人には
当てはまらない場合が存在します。ここに個々人を対象としたきめ細かな実践
事例研究の重要性がクローズアップされてきます。そこで、鹿屋体育大学では
スポーツパフォーマンス実践事例研究の開発に取り組んでおります。
2020 年東京オリンピックでは、鹿屋体育大学からスポーツパフォーマンス実
践事例研究をレガシーとして、世界のスポーツ界に発信していきたいと思いま
す。
皆さんは、このような最新の体育・スポーツ科学に関わる様々な事象の研究
と学習に取り組み、学部や大学院において学業を成就された結果として学位記
を授与されました。これは、非常に価値あるものといえます。
これからも、皆さんが体育・スポーツ科学の専門家として、社会のリーダー
として活躍されますことを教職員一同、心から祈念いたしまして、卒業並びに
修了を祝う告辞といたします。
平成 27 年 3 月 24 日
鹿屋体育大学長
福 永 哲 夫