長崎市における地域医療連携 ~長崎在宅Dr.ネットと緩和ケア普及の;pdf

鬱◎●◎◎◎●◎ @ 鬱鬱◎◎⑱●◎◎◎◎◎ @ ◎●鬱◎◎◎◎◎◎◎◎◎ @ ◎◎◎◎鰺◎◎◎◎◎⑱鬱●◎◎◎◎ @ 鬱⑭◎●鬱鰺 @ ◎◎◎鱈◎◎●◎◎◎
鰹
長崎蔀 鯲 ける地域曜孃踵聴
長崎;
在宅 D rネ ットと緩和ノ
ケア普及のための地域プロジェクト (O PT M 長崎)
夕霞命
豊 (所属 1 )、 安中 正和 (所属 2 )、 奥平 定之 (所属 3 )、
白髭
上戸 穂高 (所属 4 )、 野田 剛稔 (所属 5 )
(所属 1 ) 長崎市医師会理事、 「緩和ケア普及のための地域プロジェクト」 長崎地域プロジェ
クトリーダー、 長崎県在宅緩和ケア推進連絡協議会世話人、
医療法人白髭内科医院院長、 N po 法人長崎在宅 D r.ネット事務局長
(所属 2 ) 「緩和ケア普及のための地域プロジェクト」 長崎がん相談支援センター、
長崎県在宅緩和ケア推進連絡協議会世話人、 安中外科 ・脳神経外科医院院長
(所属 3 ) 「緩和ケア普及のための地域プロジェクト」 長崎がん相談支援センター、
医療法人奥平外科医院院長
(所属 4 ) 長崎県医師会常任理事、 長崎県在宅緩和ケア推進連絡協議会、
(医) 緑風会長崎みどり病院院長
(所属 5 ) 長崎市医師会会長、 「緩和ケア普及のための地域プロジェクト」 長崎地域統括責任
者、 野 田消化器クリ ニ ッ ク
院長
はじめに
ら 情 報 を 伝 達 す る。 そ の 後、 コ ー ディ ネ ー タ ー か
長 崎市で は、 2008 年 4 月 よ り 開始さ れた 「緩
ら、 個人情報を考慮して疾患、 居住地等の情報を
和ケア普及のための地域 プロジェク ト」 や長崎在
メ ー リ ン グリ ス トでメ ン バ ー に 周 知 し、 手 上 げ方
宅 D r.ネ ッ トの活動等を通 して、 病院 と在宅医療
式で主治医、 副主治医を決定する (図 1 )。 退院
の連携が進展し、 多職種連携が発展的に進み、 患
者の望む療養場所の実現と緩和ケアの充実が実現
前には、 病院と在宅スタ ッ フ合同でカ ンファ ラン
スを行う。 最大の特徴は、 ひとりの在宅患者に対
しつ つある。 ま た、 長 崎 県 で は、 2008 年 に長 崎
して、 主治医と副主治医の複数の担当医師を決め
県がん対策推進条例が制定され、 医療 ・介護 ネ冨
祉 ・市民 (患者) が意見交換する機関として長崎
県在宅緩和ケア推進連絡協議会が設立された。 本
ることである。 副 主治医は、 主治医よりあらか じ
め診療情報を提供され、 万が一 の支援に備 える。
日常診療のなかで、 副主治医が往診 ・訪問診療す
稿では、 長崎における がん医療を中心・と した地域
医療連携について述べる。
ることはない。 あくまで主治医不在の際の バ ッ ク
ア ッ プであるので、 副主治医になることで負 担を
感 じることは少なく、 また副主治医のなり手に困
1 . 長 崎 在 宅 D r. ネ ッ ト
在宅療養支援診療所を含めた一般診
療所が無理なく在宅医療を請け負うた
ー
A 病院
-
B病院
C 病院
ケアマネ他
め には、 相互の連携による負担軽減が
必 要 不 可 欠 で ある。 2003 年、 診 診 連
携を推進する組織と して 「長崎在宅 D r.
ネ ッ ト」 (以下、 D r.ネ ッ ト) が発足 し
た (文献 1、 2 )。 自宅療養を希望す
る入院患者の主治医が見つからぬ場合
に、 事務局 が窓口 とな り病院側 ・ ,患者
ー
埜輔 轍 漢燈副 け “ ‐Lキ !錢 撥 箪情報L
メンバーに受入を依頼
側に在宅主治医、 副主治医を紹介する。
具体的には、 市内を 5 地区に分けて
コ ー デ ィ ネ ー タ ー を 配 置 し、 事 務 局 か
32
長崎県医師会報 第771号 平成22年 4 月
。
◎◎ @ ◎鬱鬱◎◎ @ ◎ @ ◎◎ @ ◎◎ @ @ ◎◎◎ @ ◎◎ @ ◎◎ @ ◎ @ @ 毬◎◎◎⑳ @ ◎ " @ @ 鰡◎●◎ @ 鰺◎⑳鰺鬱 @ ◎ @ @ ◎◎鬱◎◎◎◎◎◎◎ @ ◎◎◎
医事小論
ることもない。 主治 医が学会や旅行で不在の際に、
必要があれば、 副主治医が往診にかけつけること
患者 数 45 名 でう ち D r.ネ ッ ト登 録症 例 は 4 例 で
ある。 副 主治医が いる症例 は 42 例 で、 3 名 の副
ができる。 24 時間対応 の 実現 はもとよ り、 主 治
医 ・ 副主治医で異なる専門分野をカバーできる利
主治医 に依頼 している。 しかし、 殆 どが 1 名の副
点もある。
白髭内科医 院の 2009 年 8 月 の 現状 で は、 在宅
主治医に集中し、 反対にその 1 名から集中的に副
主治医を依頼されている。 この副主治医の診療所
は、 当 院から 500 600 m の距離 があり至 近距 離
でない (遠からず、 近からずの距離感が大切
である)。 基本的な緊急対応は、 まず主治医
が連絡を受け、 主治医の指示で自院看護師と
< 連携医へのアンケー ト>
図2
1 年間に副主治医に往診を依頼した連携医数
訪 問 看 護 ス テ ー ン ョ ン 看 護 師 が 行 う。 D r.
ネ ッ ト結成の 2003 年 以後の 6 年 間 で、 当 院
から実際に副主治医に往診をお願いした症例
は 4 例のみで、 そのうち 2 例は予め予測のつ
く看取りをしていただいた症例である。 すな
看取りをお願いした
わち、 主治医は副主治医の存在により不在時
の対 応 に大きな安心感を得られる一方、 副主
0
5
10
15
連携医 68 名中 55名回答 (81 % )
図3
2009 年 12 月 調査
連携医にとって、 役立っている点 (複数回答有)
治医が実働することは少なく、 副主治医の負
担はそれほ ど大きくない。
2009 年 12 月 実施のアンケー ト調査では、
「連携医の パートナーが決まっ ている」 医師
は、 回 答 の あ っ た 連 携 医 55 名 中 19 名
(34 % ) だっ た。 連携医 55 名 の 内、 1 年 間
で実際に副主治医に往診を依頼したことがあ
る医師は 14 名 (25 % ) に過ぎず、 看取りを
依頼した連携医はわずか 2 名であった (図 2 )。
そ の 一 方、 D r.ネ ッ ト が 役 立 っ て い る 点 を 聞
0%o
20%。
40%o
60 %
80 %
100%
連携 医 68 名 中 55 名回答 (81 % )、 役立 っ ていると答えた者 46 名
2009 年 12 月調査
図4
D r.ネ ッ トには、 皮膚 科、 眼科、 精神 科、
平 均 : 0 .7 1 日
形成外科、 脳外科など専門性の高い診療科の
医師も 「協力医」 として参加し、 医学的助言
87 % が 48 時間以内
1"
′
143
ぎ
3 )。 すなわち、 当 院の状況 と同 様で、 実 際
の往診は少ないものの、 副主治医の存在によ
る安心感が大きいことが明らかになっ た。
紹介より主治医決定までの日数
や必要に応 じて往診を行う。 さらに、 市内の
老
拶
84
いたところ、「不在時の副 主治 医への安 心感」
をあ げた者 が 52 % と半数を 占め てい た (図
2日 15 ク
病院の医師も参加し、 専門的な助言をしたり、
3日 8
病 診 連携の橋渡 し役 とな っ てい る。 2010 年
4日 6 ^
5日
3 月現在、 人口 45 万人の長崎市全域と近郊
2
6日 も 1
7日
から計 150 名の医師が参加 している (主治医、
1
11日 、也
0
20
40
60
80
100
120
140
ず60
2010 年 (平成 22 年) 2 月調査 :
2009 年 (平成 21 年 ) 12 月 までの登録症例 について
長崎県医師会報 第77 1号
副主治医として往診を行う 「連携医」 68 名、
眼科 .皮膚科な ど専門性の高い医師等と遠隔
地 から当ネ ッ トの趣 旨に賛同 して 参加 す る
「協力区」 43 名、 「病院 .施設医師」 39 名)。
平成22年 4 月
33
醗酵◎“ @ ◎◎◎◎ @ ◎◎⑳ @ 醗酵⑳◎◎⑳◎◎ @ @ 鱗◎◎◎◎◎◎◎◎ @ ◎◎⑳◎◎◎◎◎鬱 @ ⑯◎鬱 @ 鴛鬱◎鬱◎◎ @ @ 鰺◎◎鰺◎◎鬱◎◎◎◎⑳◎
医事 小論
2009 年 12 月までで、 病 院等 から事務局 に
主治医の斡旋を依頼された症例は 365 例に及
んだ。 主治医決定までに要した時間は平均
0 .71 日 と短時間であり、 2 日 以内が 87 % に
圀在 宅
の ぼっ た (図 4 )。 追跡調査 できた 298 例 中、
がんが 210 " =、 がん以外が 88 例だっ た。 298
例中 230 例 が死亡 していたが、 そのう ち 191
鬮通 院
口 病院 ・施設 ・
その他
例 (83 % ) が が ん で あ っ た。 在 宅 死 は 123
例で全死亡の 53 % に及んだ (図 5 )。
図 6 に、 最終的な療養場所別の平均在宅日
50
最終的な療養場所別の平均在宅日数
平均 111 日 の在宅療養を実現 した。 また、 最
終的な療養場所が病院の症例 (すなわち在宅
移行後、 再入院して病院で亡くなった症例)
でも、 平均 127 日の在宅期間を実現した。 従
/
、
鴎桝5翻刻,.
り
17/18イ
獲
来なら、 かかりつけ医がいない症例について
は在宅療養ができなかっ たであろう が、 最終
的な死亡場所が在宅の場合は 4 ヶ月弱、 病院
nns擬驚倒
の場合 4 ヶ月 の在宅生活が実現できたの は、
我々 の存在があっ たからこそと自負 している。
92月07例
l
/
0
/
20
平均742日 (=
平均 191日 (13
1032日)
平均T離日 (1
1750日)
平均127日 (2 1256日) 熱
メ
I
-
/
40
/
60
/
80
/
/
100
00
120
2009 年 (平 成 21 年) 12 月ま でにの登録症例 について
有機的に展開され成功 している。 また、 これ
らが病院や ホス ピス ・ 緩和ケア病棟から在宅
ワト協力施設(長崎X平成20年9月現在)
窪ロジェ
病院・諺糠所 ・在宅へ
の出張錮帥ケア
へ の ス ム ー ズ な 移 行 の 一 因 と も な っ て お り、
こ の流れは、 がん以外の疾患についても地域
全体 に広がり をみせ てい る。
地域緩和
支援センター
(長崎市医師会内) ケアチーム
2008 年 4 月 よ り、 「緩和ケア普及のための
2326日)
※計算可能症例数/各総症例数
U数/各総症例数
・ノ成 22 年)
年 ) 2 月 調査 :
2010 年 (平成
師 ・薬剤師 ・歯科医師など多職種との連携も、
2 . 「緩和ケア普及のための地域 プロジ ェク
ト豊O P T -M 」
250
平成 2 1 年 (2009 年 ) 12 月までに受 け付 けた症例について
し最後まで在宅で過ごし亡くなっ た症例では、
ネジ ャー ・ ヘルパー ・ 管理栄養士 ・ 訪問看護
200
平成 22 年 (2010 年) 2 月 症例転帰 :
数を示した。 すなわち、 入院から在宅に移行
在 宅 ケ ア の な か で は、 メ ン バ ー 外 の ケ ア マ
150
100
L雙鑿変幻
診嫌所:78名 (メ¥会員530名中)
薬局 :65名 (約脇①施設中 )
殴中)
病院:T7施設 ( 52距
中)
轤
吏
読者:9施設〔l8施
居宅:20施設 (T36施設中)
地‐包 :2施設 (十5施設中)
言判 8 1 施設
3せ9 名
患者・家族 ・医讓
書か島、 がんに
闇窮る糟讓を褻
‘
ずる。
地域 プロ ジ ェ ク ト : O PT IM 」 (厚 生労働科学
研究 がん対策のための戦略研究) が、 開始
Lホスピス報和ケア病轢」
さ れた。 長崎市は全国 4 つのモ デル地域の 一
つに選 ばれ、 長崎市医師会を中心 と してプロ
11)。 こ の
研究の目的は、 日本に合う緩和ケアの地域モデル
を作ることにより、 3 年間で、 患者と遺族に対す
ロ ジェクトを行うのに対 して、 長崎は地区医師会
と して、 在 宅医療 の現場 に近い立 場 か ら の ア プ
る苦痛緩和の改善と緩和ケア利用数の増加、 及び
死亡場所が患者の希望に沿う変化をするか等を評
長崎市医師会に設置した 「長崎がん相談支援セン
価するもの である。 他の 3 つの地 域が病院から プ
医療従事者への研修会 ・講演会の実施、 総合相談
ジ ェ ク トに取り組んでいる (文献 3
ローチを行うこ とで、 成果を着実に挙 げつつある。
ター」 を中心 に、 緩和ケ アの市民への啓 発活動と
長崎県医師会報 第771号 平成22年 4 月
鬱◎ @ ◎◎◎◎ @ ◎◎◎◎◎◎◎●◎◎◎◎◎ @ 鰺鬱◎◎◎◎◎◎◎◎⑭◎毬◎◎◎◎◎ @ 鰺⑯◎ @ @ ◎ @ @ @ ◎◎◎ @ ◎◎◎◎◎鰺鰺◎◎◎◎◎●◎◎
医事小論
窓口としての機能と関係機関との連絡
調整、 早期退院支援、 地域連携促進を
行 っ ている。さらに、専門緩和ケアサー
ビスと して 「地域緩和ケアチーム」 を
組織 し・ 緩和ケアチーム のない病院 ・
図8
行 っ ている (図 7 )。
和 ケ ア カ ン フ ア ラ ン ス に 20 08 年 4
月 の o p T I M 開 始 後 は、 プ ロ ジ ェ ク ト
に関与する看護師・ 診療所医師等で分
長崎大学緩和ケアチーム症例転帰
圏永 眠 圏 自宅退院 口在 宅 圏転 院 口 その他
o%
20 %
40 %
60 %
80 %
/
書籍簾
診療所 ,在宅への出張緩和ケアコンサ
ル テ ー ン ヨ ン ・往 診 ・ 教 育 の 提 供 を
>
書法蓼
緩和ケアカンフ
綴
弄
ァヘ在宅医の参加開始 (2007 .3月 )
「緩和ケア普及のための地域オロジ
クト」
開始
(2008
4月)
ェ
.
希箋 礎
- , 担を決め て、 市内 3 つのがん診療拠点
病院 (長崎大学病院、 長崎市立市民病
院、 日赤長崎原爆病院) の緩和ケア力
図9
詩
聖癈/燃
平成 22 年度 年間目標
ンフ ァ ランス に定期的に出席するよう
長崎がん相談文振センターと地域緩和ケアチームを積極的に利
になっ た。 在宅医側から患者の受け入
がら、 がんに限ら穿地域の様々な医療 (施設 ・
用していただきな
用して
在宅) に関する相談窓口として
f
、 認知される年年 !
れ可能との意思表示をすることで、 緩
和ケアチーム ・ 地域連携室を通 して、
患者、家族、主治医、病棟看護師を動か
し、 退院支援へ数多く っながっ ている。
長崎大学の緩和ケアチーム が関与した
症例の転帰では、 在宅移行症例の割合
が、 2005 6 年の 2 % から我々 が緩和
ケアカ ン フ ァ ランスに参加するように
な っ た 2 007 年 に 7 % に 急 増 し、 O P T I M が 始 ま っ た 2008 年 に は 17 % に、
目標項圓
目標
1 ) 活動の集約と
活動
、 がん医療 ・緩和ケアに対する具体的提言
ートガイドブックの作成
①がんサポ
①が
・在宅へのスムーズな連携
2 ) 医療機関の退院調整システムの構築への支援と地域
医療
①病院医師への働きかけ ②病院看護師への働きかけ
そ療治誉±和談志 u (長崎がん把隷支援セ
133 ) 苺綣の仕
総
タ『信鬱し) をめざす
ッ
l
紬詩辯 地域差のない市凸 三者)のための辰喧々-- - 許鮴俶 ノステムの範宋 l
ー
I4 ) 紬詩
ノンケート詞宣盆もとにしに樋仙施設職員への啓発
ゆ′
ゆノ
155 )市民 ((患首) の自己決疋 @ 支える
l
①市
①市民 (忠百) の自己決定と文えるための医療機関の取り組み & 育緘公開
②が
②がんサロンの立ち上げ
③セ
③セルフケアア
ップのための講座 (市民、 患者対象)
・がん栄養教室 ・排泄のケア (コンチネンスケア)
・口腔ケア
・メンタルケア ・リンパ浮腫のケア
④ポ
④ボランティア育成
(がんに特化しない)
鱗
その翌年の 2009 年には 21 % に増加 した (図 8 )。
2008 年 9 月、 長 崎大学 地域 医療 連 携セ ンタ ー
医の情報な ど在宅スタッフ側が精通する詳細な情
は、 がんに 限らず入 院時 に行 わ れるリス ク ス ク
リーニングで 「ハイリス ク」 と判定された症例の
退 院 支 援 に 結 び つ け て い る。 ハ イ リ ス ク ・ カ ン
フ ァ ラ ンス では、 月 平均 10 例の患者の検討を行
うち在宅移行に課題のある症例を、 病院 ・在宅ス
い、 月平均 5 .6 例の在宅移行が実現 した。 このノ、
タ ッ フ 合 同 で 検 討 す る 「ハ イ リ ス ク ・ カ ン フ ァ ラ
イ リ ス ク ・ カ ン フ ァ ラ ンス は、 在 宅 ス タ ッ フ が 早
ンス」 を 開催する よう にな っ た。 地域連携室の医
期の退院支援 ・調整にも参画できるよう にな っ た
師 ・看 護 師 ・ M S W、 診療 所 医 師 ・看 護 師、 長 崎
点で特筆に値する。同様のカ ンファ ラ ンス は、2009
がん相談支援センタースタ ッ フ、 訪問看護師な ど
年 6 月より長崎市立市民病院でも開催されるよう
が主な参加者である。 退院困難なケース に病院ス
になり、 毎月 1
タ ッ フ と 在 宅 ス タ ッ フ が 討 議 し、 ス ム ー ズ な 在 宅
現 して い る。
移行に向けた具体的検討を行 っ ている。 すなわち、
報) を病 院、 在宅スタ ッ フで共有する ことにより、
2 例の検討の上、 在宅移行が実
最 終年 度 で あ る 2010 年 度 の 長 崎 の O PTIM は、
「長崎がん相談支援センターと地域緩和ケアチー
在宅でどのような医療手技が可能か (輸血、 胸腹
水の穿刺ができるか等) や、 在宅の医療資源情報
ムを積極的に利用 していただきながら、 がんに限
(地域で利用可能な訪問看護ス テ ーシ ョ ン、 在宅
らず地域の様々な医療 (施設 ・在宅)に関する相談
□ 平成22年
平成22 4 月
長崎県医師会報 第771号
35
@ @ ◎◎◎◎◎◎⑯◎◎◎◎物◎⑳◎◎◎◎●◎◎ @ ◎ @ ◎ @ ◎◎◎ @ @ 鰺 @ ●◎◎ @ ◎◎◎◎◎◎●◎◎◎⑳ @ ◎◎◎◎⑱◎◎●◎◎ @ @ ●⑳◎◎◎◎
医事小論
和ケア普及のための地域 プロジェク ト』 は、 3 年
間の介入で、 緩和ケアの地域モ デルを作る ことを
年 2 月、 長崎県および長崎県医師会は、 「長崎県
在宅緩和ケア推進連絡協議会」 を設置した。 この
協議会には、 患者団体も参加しており、 がん診療
に関わる医療従事者、 患者、 行政が今後のがん医
目標とする。 そのために、 緩和ケアの普及と標準
化、 早期の退院支援 ・ 調整、 地域医療連携ネ ッ ト
療、 ケアのあり方を討議する場 と して、 その成果
が期待される。 協議会の目標は、 ①地域における
ワークの整備、 在宅医療従事者への研修 ・教育を
在宅医療ネ ッ トワークの構築、 ②地域における緩
和ケアのニ ー ズ の把 握と地域資源 の発 掘、 ③緩和
窓口として、 認知される 1 年」 を目標としている。
詳細な目標 は、 「2008 年 4 月 より始ま っ た 『緩
継続 していくととも に、 これま での プロジェク ト
の周 知の基 盤を利用 し、 長 崎 がん相 談支援 セ ン
ター及 び地域緩和ケアチームを利用 してもらう こ
ケア等に必要な資源の確保、 ④地域の在宅緩和ケ
アの現状把握と推進状況の評価、 ⑤施設職員への
とを目指 す。 また、 行政、 患者会と の 交流を図り、
地域 (患者 ・ 家族、 一般市 民) のニ ー ズ に即 した
教育 ・啓発である。
援助を実現する。 更に可能な限り自宅以外の在宅
きいこと (特に医 師に温度差 がある こと )、 訪問
の場 も広 げ、 かつ家族以外の介護力の確保につい
看護師の不足があり受け入れを制限せ ざるを得な
ても十分な配慮と対策を考慮する。 本年度は、 緩
い 事態になっ ている こと、 訪問看護師間の連携が
ないこ と が指摘された。 病院側からは、 在宅に帰
和ケアに限定することのない、 地域医療の相談支
援センターと して磐石な実績を上 げ、 永続運用 を
行うことができるように成果を上げることを目指
す。」 (図 9 )
以上の目標 に向かい、 医師向け、 看護師向け、
協議会での討議により、 現状では地域格差が大
したいが どこ に相談すれ ばよ いのか分からない、
との指摘 があ っ た。 老人保健施設や グルー プホー
ム等の居宅系 介護施設においては、 職員の教育の
問題、 人手不足の問題、 看取りをするこ と による
多職種向け講習会を行なう一方、 地域緩和ケア
報酬的な裏付けがないことから、 看取りまでを行
チーム 出張研修、 長崎がん相談支援センター出張
う施設が少ないこ とが分かっ た。 離島では、 在宅
緩和ケア と いう認識が低く、 病院で亡くなるこ と
研 修 と して、 リ ン ク ス タ ッ フ か ら 希 望 の あ る テ ー
マ、 内容で、 院内、 所 内、 看護部への出張研修会
を中心に随時開催する。 さらに、 今年度は、 後述
が大半であることが分かっ た。
の長崎県在宅緩和ケア推進連絡協議会と連携して、
プホ ー ム、 有 料 老 人 ホ ー ム、 ケ ア ハ ウ ス 等 606 ヶ
施設職員への教育啓発も手がける。 また、 患者 ・
家族向けに、 栄養、 コンチネンス (排泄) 等につ
所の施設責任者、 および長崎市内 146 ヶ所計施設
いてセルフケアア ッ プ講座を開催 し、 最終的には
細については、 近日中に別途報告する が、 看取り
の 経験がない施設のうち、 今後も対応できない と
「がんサロン」 を立ち上 げ運営 していく方向を考
2009 年 11 月、 県下 全域 の特養、 老 健、 グルー
職員 を対象としてアンケ ー ト調査を実施 した。 詳
え て い る。
答えた施設の理由は、職員 の 経験不足、医療の バッ
クア ッ プ体制の未整備等であっ た。 施設職員では、
3 . 長崎県在宅緩和ケア推進連絡協議会
看取りの経験者は半数程度だが、 学習意欲は高い
2008 年 3 月、 長崎県は、 「がんによる死 亡者 数
の減少」、 「すべてのがん患者及 びその家族の苦痛
の軽減並びに療養生活の質の向上」、 「離島地域に
おけるがん診療の質の向上」を全体目標として「長
崎県がん対策推進計画」 を策定した。 さらに、 同
こ と が 分 か っ た。 施 設 で は、 医 療 の バ ッ ク ア ッ プ
体制を整え職員の経験不足を解消すれば、 今後看
取り は増加 する も の と思 わ れた。 2010 年度 には、
施設職員 への教育 ・ 啓発、 環境整備を行 っ てい き
た い と 考 え て い る。
年 8 月、 がん対策を県民とともに推進するため、
「長崎県がん対策推進条例」 を定めた。 しかしな
おわりに
がら、 医療 ・ 介護 ・福祉について市民 ・ 患者団体
が意見交換 し、 よりよいがん対策につなげるべき
図 10 に、0 IPTIM 介入前後での介入 地域のがん
の自 宅死亡率 の変化を示す。 他の 3 地域に比べ長
協議機関はこれまで存在 しなかっ た。そこで、2009
崎 の み 2007 年 の 6 .8 % よ り 2008 年 に は 10 .6 %
36
長崎県医師会報 第771号
平成22年 4 月
◎◎◎◎◎◎◎◎◎等◎⑭◎⑳ @ ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎⑳◎◎◎◎◎鬱 @ ◎◎◎◎◎◎◎◎ @ ◎ @ ◎ @ ◎ @ ◎◎◎ @ ⑳◎ @ ◎鬱◎◎◎◎◎
医事小論
ゞ
\
と劇的に上昇 している。 長崎市の在宅死率は、 図 10
2 004 年 の 8 .6 % か ら 2 008 年 に は 12 .4 % へ
と増加した (図 11)。 同期間における全国と
長崎県の在宅死率はわずかながら増加してい
る も の の、 長 崎 市 で の 3 .8 % の 増 加 に は D r.
ネ ッ トや 0 PT IM の活動 が大きく 関与 してい
ることが考えられる。
(謝辞)
O PT lM 介入前後の がん患者の自宅死亡率の推移
12 %
10 .6 %
盤 る
8
轤
髪丸榊ゞr菅
薑
T0%
6 .8 %
4.2% 4 4%
全 国
鶴岡地域
本稿作成にあたり、 長崎大学病院地域医療
連携セ ンター副センター 長 川 崎浩二先 生、
全国
鶴岡地域
柏地域
浜松地域
長崎地域
酒田地域
同院麻酔科緩和ケアチーム北條美能留先生に
資料提供をいただいた。 ここに、 深甚の謝意
を表する。
1 ) 白髭豊、 藤井卓 : 長崎在宅 D r.ネ ッ トに
2007
22,747/338,381
29/510
100/1470
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在宅死亡率の経年変化
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よる地域医療連携 (日本医事新報 4 224 :
29‐32、 2 005 )
2 ) 藤 井 卓、 白 髭 豊 : 長 崎 在 宅 D r. (ドク
ター ) ネ ッ トにおける病診連携 ・ 在 宅医療
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3 ) 白髭豊、 諸岡久夫 : がん対策のための戦
略研究 『緩和ケアプログラムによる地域介
会が参加したことに
入研究』 へ長崎市医師イ
ついて (報告) (長崎市医師会報 4 86 : 34
柏地域 浜松地域 長崎地域 酒田地域
(がん在宅死亡数/がん死亡数)
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在宅死 = 自宅、 介護老人保健施設、 老人ホーム
‐3 7、 2007 )
4 ) 白髭豊、 諸岡久夫 : 『がん対策のための戦略
研究 (課題 2 : 緩和ケア プログラムに よる地域
介入研究)』 へ長崎市医師会が採択 (長崎県医
師会報
長崎での地域医療連携の試み - . (緩和医療学
11 (.3) : 9 ‐15、 200 9
先端医学社)
8 ) 白髭豊、 藤井 卓、 野田剛稔 :在宅緩和ケア
ネ ッ トワーク の構築 - 長崎での取り組み (最新
74 0 : 14‐16、 2 007 )
5 ) 白髭豊 : 長崎在宅 D r.ネ ッ トの取り組み と 「緩
和ケア普及のための地域 プロジェク ト」 地域で
支える患者本位の在宅緩和ケア、 片山壽 (編)
(㈱篠原出版新社、 東京、 2008、 172‐188)
6 ) 白髭豊 : 〔長崎市〕 地域緩和ケアネットワー
ク の構 築の 試み . ホス ピス 緩和 ケ ア白書 2008、
(期日本ホス ピス ・ 緩和ケア研究振興財団 「ホス
ピス緩和ケア白書」 編集委員会 (編) (節日本
ホス ピス .緩和 ケア研 究 振興財 団、 2008、 78‐
82)
7 ) 白髭豊 : 在宅医療 と緩和ケアネ ッ トワーク -
情報) - (自在医会誌 11 (1) : 119‐123、 2001))
9 ) 白髭豊、 野田剛稔 : 「緩和ケア普及のための
地域 プロ ジェク ト」 を中心と した長崎の取り組
み (緩 和 ケ ア
V O L ,20、 N o . 1 : 4 3‐4 5
20 10
青海社)
10)白髭豊、野田剛稔 : 在宅支持療法のネ ッ トワ ー
ク構築 (呼吸
ピ レー シ ョ ン
29 巻 1 号 : 63‐69、 2 0 10
リサーチ
レス
フ ァ ン デー シ ョ ン)
11) 白髭豊、 野田剛稔 : がん医療における診療所
同 士 の 連 携 ( M edico v o l.4 1 N o . 3
9 ‐14
20 10
千代田開発株式会社)
長崎県医師会報 第771号 平成22年 4 月
37