家とまちなみ Vol.34 No.1 ISSN 0287-8968 71 2015.3 No. 71 〈大阪〉 2015.3第 回 まちなみシンポジウム〈東京〉 海外で活かされる日本のまちづくり 26 http://www.machinami.or.jp/ 一般財団法人 住宅生産振興財団 インタビュー ガーデンシティ舞多聞の試み 自立した持続可能な地域コミュニティの実現をめざして 齊木崇人 まちづくり研究「住まい・まちづくり」の更新手法を探る──30年を経た戸建住宅地を訪ねて 済藤哲仁 住宅地研究 断章・住まいで都市を造りえるか 敷地主義と団地主義をこえて 小沢 明 シンポジウム 第26回住生活月間協賛 まちなみシンポジウム〈東京〉 〈大阪〉海外で活かされる日本のまちづくり 基調講演 佐々木宏幸 パネルディスカッション 金 容善、奥野博昭、川島 裕、佐々木宏幸、渡 和由 新連載 戸建住宅地におけるまちなみの管理 温井達也 心に残るまちなみ 砂漠の赤い邑と、白い港町 (モロッコ) 賑わい・色彩の氾濫・ 生活空間としての路地 ティトゥアンの路地・憩う人と猫 40 髙澤静明(路地広場空間設計室代表) モロッコの気候風土は地域ごとに大きな特徴があり、そこで培われてきた 文化はそれぞれ魅力に富む。共通するのは、目を射る色彩、耳慣れない音と 不思議な香り、そしてそれらが織りなす量感のある混沌だ。 内陸からの風がサハラ砂漠の砂丘に風紋をつくり、静かに砂が流れ落ちる。 ① その砂漠を越えたオアシスに寄り添う要塞化された邑クサルは、赤い大地か らひねり出された粘土のオブジェのようだ。ここには、今も昔ながらの価値 まちなみ遺産 シリーズ 22 美々津(宮崎県日向市美々津) 観を大切にして暮らす人々が、大勢いる。この赤い土の壁で囲まれた邑の路 地は、砂埃を気にせずに駆け回る子供たちの歓声が響く。旅人にとっては、 写真・文:江田修司 蠱惑し拒絶する、静けさに満ちた迷路でもある。 み み つ 一方、地中海沿いの港町のタンジェやティトゥアン、大西洋岸のエッサウ 今は日向市の一部になった美々津は、九州中央山地の椎葉を源 ィラは、交易拠点として独特の文化を形づくってきた。それは侵略と占領の に日向灘にそそぐ耳川の河口に発展した港町である。高千穂から 長い戦いの歴史を経て、先住民ベルベル人が築いてきた文化に、イスラム文 化が融合し、さらにイベリア半島のキリスト教文化が混合した産物でもある。 こうした特殊な歴史を持つ街は、世界中の多くの芸術家や文化人に刺激を与 え、魅了し、洗練された街としてより一層の成長を遂げることになる。 街のスーク(市場)は市民のお楽しみの広場でもある。色とりどりの日除 けテントの下には、衣類や貴金属、革製品、果物などが山積みされている。 動きのある色彩が同時に目に飛び込み、さまざまな香りと、スークがつくり 下った神武天皇が東征に際し、ここから船出したという神話伝説 上:タンジェ・布地のスーク(市場) 表紙:ティトゥアンの路地広場 裏表紙上段(港町) :エッサウィラの港・スーク 中段(港町) :左/ティトゥアン・右/アルジャ ディーダ 下段(砂漠の赤い邑) :左/アイトベンハドゥ・ 右/マディードクサル だすリズミカルな音、ロバ引きの怒号や物売りの声が響き、喧騒感が重なる。 が整備されつつあるが、いまだにアクセスには時間がかかる地域だ。 が、一方で観光地化が進んでくるとだんだん全国似通った印象し して寛ぐ人。路地に開かれた小さな憩いの広場だ。子供たちはこの路地でサ か残らないものになっていくきらいがある。 ッカーをして遊ぶ。路地を歩けば、夕飯の支度の気配もする。家事仕事をし 寛容さ、民族間の理解、国同士の謙虚さだと、改めて思う。 船業で繁栄した名残りである。新幹線や九州を周巡する高速道路 して整備され、衆目を集めるようになるのは好ましいことではある 塗り分けられた扉。石畳で舗装してあるが埃っぽい。それでも椅子を持ち出 じる。異文化が融合したこの地に身を置いた時、今大切なことは、宗教間の 並みが形成されている。江戸時代末期から明治、大正にかけて廻 景観が生まれている。歴史的な町並みが、町おこしのきっかけと 入り組んだ住宅の狭い路地は、汚れかかった白い漆喰壁。深緑色の鎧戸。 この国は若者が多い。文化の継承と創作にも意欲的で、大きな可能性を感 ② 西 330m、南北 350mほどの狭い範囲に、2 本の通りをメインに町 には住民の暮らしや地域の経済基盤によって、さまざまな町並み イックな秩序を感じる場所でもある。 でも、そこで暮らす子供たちが街の主役だ。 耳川河口の港から、南に現在の国道10 号線と海岸に挟まれた東 現在100を超えた伝建地区には、その歴史、地理的条件、さら 同時に、ただ雑然としているだけではなく、一定の整合性を内在した、スト ながら、近所の子供たちの声で外の様子がわかるのだろう。いつでも、どこ が町の自慢である。 髙澤静明(たかさわ・しずあき) ROJI 路地広場空間設計室代表。仙台市出身・ 室蘭工業大学建築工学科卒。㈱相田建築設計事 務所・ミサワホーム㈱を経て、2008年よりま ちづくり企画設計事務所を主宰。 http://www.roji.rexw.jp/ 地元の人々に言わせると、かつては美々津の町並みと一体とな って映えた美しい砂浜は、テトラポットによる浜辺の植生変化に よってその景観が変わったという。しかし、波の音を聞きながら、 ひっそりと佇むホッとする町並みの風情を味わってみたいと思っ たら、美々津がおススメである。 ③ ①保存地区の中心、仲町の通り沿いの町並み。右は廻船問屋を復 元した歴史民俗資料館 ②2階を塗屋造り、1階は出格子、そして「バンコ」と呼ばれる床 几付設した二階屋が多い。突き当たりが耳川河口 ③自販機ひとつない通りに町並みのランドマーク、旅籠屋「とき わ」の灯りだけがともる 71 2015.3 No. http://www.machinami.or.jp/ 心に残るまちなみ40 砂漠の赤い邑と、白い港町(モロッコ) 賑わい・色彩の氾濫・ 生活空間としての路地 インタビュー ガーデンシティ舞多聞の試みから 自立した持続可能な 地域コミュニティの実現をめざして まちづくり研究「住まい・まちづくり」の更新手法を探る 髙澤静明(路地広場空間設計室 代表) 齊木崇人氏(神戸芸術工科大学 学長) 2 済藤哲仁(株式会社現代計画研究所) 10 小沢 明(建築家/東北芸術工科大学 名誉教授) 16 西村 猛 22 笹原和喜男 24 ── 30 年を経た戸建住宅地を訪ねて 住宅地研究 断章・住まいで都市を造りえるか 敷地主義と団地主義をこえて エッセイ66 シェアするハウス エッセイ67 住み続け、住み熟す (一級建築士事務所スタジオ・エムアイティエヌ主宰) (西神ニュータウン研究会世話人) ヴィンテージタウンをめざして シンポジウム 平第26回 住生活月間協賛 26 まちなみシンポジウム〈東京〉 〈大阪〉 海外で活かされる日本のまちづくり 〈第1部〉基調講演「海外における住宅地開発」 佐々木宏幸(FTS Urban Design 代表/明治大学理工学部 建築学科 専任准教授) 〈第2部〉パネルディスカッション「海外で活かされる日本のまちづくり」 36 金 容善(東京大学大学院新領域創成科学研究科 研究員) 奥野博昭(大和房屋(蘇州・無錫)房地産開発有限公司 総経理) 川島 裕(パナホーム㈱ 台湾・マレーシア プロジェクトマネージャー/アーバンデザインインターナショナル㈱ 代表取締役) 佐々木宏幸(明治大学理工学部建築学科 専任准教授) モデレーター 渡 和由(筑波大学芸術系環境デザイン領域 准教授) まちなみ研究 戸建住宅地におけるまちなみの管理 新連載 温井達也(㈱プレイスメイキング研究所 代表取締役) 46 坂井 文(北海道大学工学部建築都市コース准教授) 52 第1回 プレイスメイキングの思考と実践 住宅地研究 住宅地開発とランドスケープ 第2回 住宅地開発と公園整備:共用庭園・スクエアーから公園へ 住宅総合展示事業実績(平成 26 年1月〜平成 26 年 9月) 59 バックナンバー 財団日誌 66 まちなみ遺産 シリーズ 22 美々津(宮崎県日向市美々津)
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