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第 25 回腎と妊娠研究会 CKD における妊娠・出産はどこまで可能か?
抄 録
特別講演
特別講演 1
10 : 45~11 : 45
特別講演
母体血 cell-free DNA/RNA を用いた周産期管理の現状:出生前遺伝学
的検査から胎盤機能評価まで
昭和大学医学部産婦人科学講座
○関沢 明彦
1997 年に母体血漿中に胎児由来の DNA が循環していることが報告された。この報告で
は、男児を妊娠した母体血漿中から cell-free DNA を抽出し、母体に存在しない Y 染色体特
異的な DYS14 遺伝子を母体血漿中に同定することで、胎児由来の DNA の検出に成功した
ことを示した。さらに、2000 年には母体血漿中 cell-free RNA の中に絨毛細胞由来の HLA-G
遺伝子が循環していることが報告された。
母体血漿中 cell-free DNA は母体血中に存在しない遺伝子を母体血漿中に同定する遺伝子
検査として胎児性別診断、RhD 陰性妊婦の胎児 RhD 血液型診断、父親由来や突然変異によ
る胎児遺伝性疾患の出生前診断として、主に PCR を用いた検査として研究され、2000 年頃
より臨床応用もされていた。出生前遺伝学的検査としての PCR を用いた男児診断などは高
精度であるが、その診断対象を染色体異常に拡大することは難しいと考えられてきた。そこ
に、DNA 解析の技術的な革新があり、次世代シークエンサが登場した。この装置を出生前
検査の領域に応用することで、2008 年、21 トリソミーが検出できることが報告され、つい
に、2011 年 10 月に母体血胎児染色体検査が臨床検査として米国で臨床応用され、その対象
は、21 トリソミーのみではなく、18・13 トリソミー、性染色体異常、微小欠失症候群と徐々
に拡大していった。我が国では 2013 年 4 月に、この検査が 21・18・13 トリソミーの 3 疾患
に限って臨床研究として行われるようになっており、年間 10000 件程度の検査が実施されて
いる。
母体血漿中 cell-free RNA を用いて胎盤の機能的な変化をモニターすることも盛んに研究
されている。胎盤由来 cell-free RNA を用いることで絨毛細胞の機能的な変化をリアルタイ
ムにモニターできると考えられている。実際に、妊娠高血圧症候群の発症予知を抗血管増殖
因子である Flt-1 や endoglin をマーカーとして行うことで、妊娠初期からその後の妊娠高血
圧症候群の発症を高精度に予測できることが報告されている。
このように母体血中には胎盤に由来する cell-free DNA/RNA が循環しており、それを用
いて無侵襲な出生前遺伝学的検査や胎盤の病態変化をモニターする検査が可能であるなど、
その応用範囲は広く、興味深い研究対象であると考える。本講演では母体血漿中 cell-free
DNA/RNA を用いた様々な研究の進歩の歴史と現状について報告する。
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第 25 回腎と妊娠研究会 CKD における妊娠・出産はどこまで可能か?
■ 略
歴
特別講演
関沢明彦(せきざわ あきひこ)
略歴
昭和 63 年 3 月
昭和大学医学部卒業
昭和 63 年 4 月
昭和大学医学部産婦人科学 前期助手
平成  2  年 9 月
昭和大学藤が丘病院 産婦人科学 助手
平成  3  年 5 月
昭和大学医学部 産婦人科学講座 助手
平成  6  年 6 月
国立精神・神経センター 国府台病院 産婦人科医員
平成  8  年 7 月
昭和大学医学部 産婦人科学講座 助手
平成  9  年 4 月Tufts University, Tufts-New England Medical Center
Department of Obstetrics and Gynecology, Division of Genetics(Prof.
Diana W Bianchi),Research Fellow
平成 10 年 12 月 昭和大学医学部 産婦人科学講座 助手
平成 13 年  4  月 昭和大学医学部 産婦人科学講座 講師
平成 17 年  4  月 日本産科婦人科学会 学術奨励賞 受賞
平成 19 年 12 月 昭和大学医学部 産婦人科学講座 准教授
平成 25 年  4  月 昭和大学医学部 産婦人科学講座 教授
専門
周産期医学・臨床遺伝学
学会活動
Editorial Board:Prenatal Diagnosis, Official Journal of the International Society for Prenatal Diagnosis(ISPD):2007Editorial Board:The Journal of International Medical Research(2011-)
日本産婦人科医会常務理事(平成 26 年 6 月~)
日本産科婦人科学会評議員(平成 23 年~)・倫理委員会委員(平成 25 年~)
日本周産期・新生児医学会評議員(平成 22 年~)・
学会制度あり方委員会委員(平成 24 年~)
東京産科婦人科学会常務理事(平成 26 年 6 月~)
日本産科婦人科学会ガイドライン委員会委員(平成 18 年~)
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特別講演 2
15 : 20~16 : 20
特別講演
妊娠糖尿病をどうとらえ、どうアプローチするか
聖マリアンナ医科大学代謝・内分泌内科
○田中 逸
妊娠糖尿病とは 2 型糖尿病ではない。あくまで正常と糖尿病の中間段階、いわゆる境界型
であって糖尿病の予備群とされる病態である。しかし妊婦ではわずかな血糖上昇が母胎の周
産期リスクを上昇させるため、産科と内科が連携したアプローチが必要である。また妊娠糖
尿病例は出産後に真の糖尿病へ移行する頻度が高率であることも知られている。かかる背景
を踏まえて、2010 年に妊娠糖尿病の診断に関する国際基準が発表されたが、この基準値は
種々の周産期合併症の発症率に基づいて設定されている。
新しい診断基準を適用した妊娠糖尿病の発症率は欧米では 15~30% とされているが、我が
国では 12~13%、すなわち 8 人に 1 人が妊娠糖尿病と推測されている。従って、早期からの
スクリーニングが必要である。妊娠糖尿病の診断には 75g-経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)
が必要であるが、OGTT の適応を判断するためのスクリーニングは妊娠初期の血糖検査であ
る。演者自身は食後 2 時間程度の採血検査で血糖値 100mg/dL 以上を OGTT の適応と考え
ている。100mg/dL 未満であっても妊娠中期に再検査を行うが、この時は食後 2 時間血糖値
または 50g-糖負荷後 1 時間血糖値が 140mg/dL 以上であれば、診断のために OGTT を施行
する。空腹時血糖値 92mg/dL 以上、1 時間血糖値 180mg/dL 以上、2 時間血糖値 153mg/dL
以上のいずれか 1 項目にでも該当すれば妊娠糖尿病と診断するが、2 時間血糖値が 200mg/
dL 以上の場合、同時検査で HbA1c が 6.5% 以上であれば「糖尿病」、6.5% 未満であれば「ハ
イリスク妊娠糖尿病」(真の糖尿病にきわめて近いという意味)と診断する。
妊娠糖尿病やハイリスク妊娠糖尿病、あるいは糖尿病と診断された場合はまず食事療法の
指導を行う。基本的な食事エネルギー量は標準体重 kg あたり 30kcal が基本である。妊娠前
の BMI が 25 未満の非肥満例では妊娠 28 週まではこれに+200~300kcal、28 週以降は+300
~400kcal を上乗せする。但し、妊娠前の BMI が 25 以上で肥満を伴っていた例では付加量
はなしとする。通常は間食を 1~3 回はさんで、1 日 4~6 回の分割食をアドバイスして食後
高血糖を避けるようにする。目標血糖は毎食前 100mg/dL 未満、かつ毎食後 2 時間が 120mg/
dL 未満であり、食事療法で達成できない場合はインスリン注射を開始する。
当院では妊娠糖尿病と診断されたケースは原則、全例入院としている。講演当日は当科で
検討した妊娠糖尿病の病態と特徴、および出産後の耐糖能の変化に関する検討成績もご紹介
したい。
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第 25 回腎と妊娠研究会 CKD における妊娠・出産はどこまで可能か?
■ 略
歴
特別講演
田中 逸(たなか やすし)
略歴
昭和 61 年
滋賀医科大学医学部卒業
同大学 第 3 内科に入局
繁田幸男先生、吉川隆一先生のもとで糖尿病の臨床
研修と基礎研究を行う
平成  4  年
医学博士取得
平成  6  年
東京都済生会中央病院 内科勤務
松岡健平先生、渥美義仁先生のもとで糖尿病の患者教育と臨床研究に従事
平成  7  年
順天堂大学内科学・代謝内分泌学講座に助手として勤務
河盛隆造教授のもとで糖尿病全般の臨床と研究に従事
平成  8  年
同大学、講師
平成 14 年
同大学、助教授
平成 18 年 4 月
聖マリアンナ医科大学代謝・内分泌内科教授
平成 19 年
NPO 法人「川崎糖尿病スクエア」設立、理事長
平成 26 年 4 月
聖マリアンナ医科大学病院 副院長
資格
日本糖尿病学会専門医、研修指導医
日本内分泌学会専門医、研修指導医
学会活動
日本糖尿病学会学術評議員、監事
日本内分泌学会学術評議員
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