制度変更に惑わされず、利用者本位の グループホーム;pdf

きょうされん 居住支援部会レターNo.2
2014 年5月 26 日発行
制度変更に惑わされず、利用者本位の
グループホーム事業を進めましょう!
~グループホームの夜間支援体制加算の見直しに関して~
きょうされん居住支援部会レター(臨時)でお知らせしたとおり、きょうされんが昨年度実施し
た緊急アンケートでは、多くのホームで夜間支援を「宿直」勤務で行っており、今回の改定案通り
で進めば、多くのところで『大変な収入減となりホーム運営が成り立たなくなる』重大な事態であ
ることが判明しました。
しかし5月も終わろうとしている今になっても、きょうされん加盟のグループホームの多くは、
今回の事態にどのように対応していいのかまだまだ戸惑っているのが実態です。
そこで、居住支援部会では部会のある支部の状況や、そもそも労働基準法で宿直と夜勤はどのよ
うに位置づけられているのか、そして全国各地ではこの件についてどのように対応しているのかな
どの情報をまとめて、みなさんにお伝えします。
きょうされん加盟のグループホーム中には社会保険労務士と相談をしながら、宿直から夜勤へと
勤務体制を変えてきたところも多く見受けられます。そのポイントは、①変形労働時間制を敷くこ
と、②深夜勤務・超過勤務の割増賃金を支払うこと、③勤務の中の休憩時間の設定に工夫をし、人
の確保に支障がないようにすること、④ホーム内での休憩時間の在り方について、キーパーと確認
をしておくことなどです。
これまでの「宿直勤務」については、利用者の生活を守るため必要であったにせよ、労働基準法
違反ともとられかねない実態もあり、夜勤体制を引くことで、コンプライアンス(法令遵守)にも
なっていきます。グループホームで暮らす障害のある人たちの生活、働く職員の労働条件、そして
事業所の運営を守るために、ぜひ当レターを活用してください。またより詳しい情報が必要な方は、
全国事務局を通じて、居住支援部会員と直接相談することもできます。制度の変更に手をこまねく
ことなく、一歩踏み出しながら利用者本位のグループホーム事業を進めていきましょう。
しかし、もっと根本的に大幅な報酬増がなければ、不安定な運営は続き、障害のある人たちの地
域でのあたりまえの暮らしを守ることはできません。そういった意味でも、より大きな課題は来年
度の報酬改定です。今回のような突然のマイナス提案はあり得ません。早急に、来年度に向けての
提案を厚労省へ突きつけていく必要があります。全国のグループホームの皆さん、豊かな暮らしの
支援の為に、本来あるべき制度への抜本的な改善をさせていくよう、しっかりと検討しつつ、全国
的に大きな運動を進めていきましょう。
きょうされん居住支援部会ニュースレターNo.2 2014/5/26 発行
【労働基準法における夜勤と宿直の違いについて】
「夜勤」については、「宿直」とは異なり、労基法に特別な定めはありません。このため労働時間、休憩、休日の規定の対象と
なると解されます。これはおおむね、以下のような労働者保護がかかる事を意味します。
①原則1週 40 時間、1日8時間の法定労働時間の対象となり、これを超えて働かせるためには、労使協定を締結し届け出た上
で、割増賃金の支払いが必要
②深夜の時間帯である午後 10 時から午前5時までの労働についても、同様に割増賃金の支払いが必要
③労働時間が6時間を超える場合には、一定の休憩時間を労働時間の途中に与える必要がある(休憩は自由利用の原則があり
ますが、事業場内において自由に休憩しうる場合であれば、外出を所属長の許可制とすることは必ずしも違法にはならない。基発 1575 号)
④毎週少なくとも 1 回の休日を与えなければならない
これに対して、「宿直」は労基法第 41 条第 3 号に基づき、所轄労働基準監督署長の許可を受けて、労働時間、休憩、休日の
規定の対象外とするものです。先にあげた労働者保護を外して、通常の労働時間とはみなさない手続きですので、労働者保
護の観点から、以下の一定の要件を厳密に満たさないと許可を受けることが出来ません。
①通常の労働から一端解放された後、常態として軽度かつ短時間の作業のみを行う時間帯であること(待機仮眠時間の他、お
むつ交換など身体介助を要せず、1日2回以内)
②当該事業所内の同種の労働者の割増賃金の基礎となる賃金平均の3分の1を下回らない宿直手当を支給する(通常の労働
時間ではないので、他に割増賃金は不要)
③原則、週に1回を限度とする
④睡眠設備の設置
以上について念頭に置いた上で、今回のグループホームにおける夜間支援体制加算については、4 月 9 日付けで出された
厚生労働省のQ&Aの問18の回答である「(略)夜間支援従事者が夜間及び深夜の時間帯に休憩時間を取得している場合で
あっても、休憩時間を配置されている共同生活住居内で過ごす場合は、利用者に対して夜間及び深夜の時間帯を通じて必要
な介護等の支援を提供できる体制を確保しているものと取り扱って差し支えない。」と、事業所における現況の支援体制、労基
署の宿直許可などを勘案の上、「夜勤」か「宿直」か、慎重に選択する事が大切です。
【各地の対応状況】
●東京
3/24 に東京都の説明会があり、国の制度に加えて、運営費の都加算について、2013 年度と同程度のものが 2014 年
度も継続されることが示された。2013 年度までは都加算があることから、重度の入居者が利用するホームのほとんどが
夜勤体制をとっており、2014 年度も同じ体制で行っていくものと思われる。また、宿直の場合も 2013 年度と同様の加算が
継続されることになっている。
●愛知
4/24 にあいされんとして名古屋市と「夜間支援体制加算」について懇談の場を持った。市としては厚労省Q&Aの中
身(それ以上でも無ければそれ以下も無い)となるが、夜間に事業所内において人が配置されている事が「夜勤体制加
算Ⅰ」を算定する条件としては必要と説明を受ける。また、夜勤体制をとった場合は深夜時間帯において働いた実態に
合わせた割増賃金の支払い等、労働条件整備もクリアしておいてほしいと話があった。今回の急な体制加算の提案が
現場に大きな混乱を招いている事や、ベースとなる基本報酬単価が低すぎる事、名古屋市以外の運営費補助金が無い
市町村の事業所は今回の夜間支援体制加算の変更は事業所の死活問題となっている事も説明した。
●滋賀
3月末に支部会員へ、「加算の種別」「夜間の勤務時間」「休憩時間と賃金の有無」について緊急アンケートを送付。回
収済みのところでは概ね夜勤への変更を行っていた。支部部会として、今回の一元化とアンケートに基づいて、サービス
管理責任者の集まりを近々持つ予定。日々の運営についての悩みを出しあったり、労働基準法含めた制度について学
んだりする場の設定などを検討している。
●大阪
多くの事業所が「宿直」から「夜勤」への変更を行ってきている。その多くが、深夜時間帯に多少の勤務を増やし、勤務
者の給料も増やしているが、「17 時間拘束の 15 時間労働」に変更したホームもあった。宿直のところは、軽度の方が入
居しているホームと、もともと深夜時間帯に宿直者を配置しているホーム。他団体が府に対し「深夜で休憩時間をかなり
多く取っていいか」と聞いたところ、府は「良いのではとは思うが厚労省に確認する」と回答。その後、厚労省からの文書
回答は無く、口頭で「あくまで労基法上の勤務内容とすれば、時間については問わず』と回答があったとの事。
○発行:きょうされん居住支援部会
○お問い合わせ先:きょうされん事務局 担当 渡部 TEL:03-5385-2223
きょうされん 居住支援部会レターNo.3
2014 年 12 月 12 日発行
居住支援部会のこの間の取り組みをお知らせします。くらしに関わる制度が変わり、実態がますます厳しくなる中
で、様々な活動を行っています。内容は記事をお読みいただき、くわしくは全国事務局にお問い合わせください。
①運動に関して…報酬単価をめぐる厚労省との懇談、グループホーム団体懇談会、各自治体への要望活動
②交流活動…各支部の居住関係部会の学習交流会、居宅支援に関する意見交換会
③研修会…安居楽業ゼミナール「くらし」、全国大会分科会
④調査活動…居宅支援事業所実態アンケート
報酬単価をめぐる厚労省との懇談と要望書概要
今年7月 31 日、「報酬改定」課題で厚生労働省と懇談会を開催しました。昨年5月の「グループホームの一元化」、今
年2月の「夜間支援加算問題」に引き続いての取り組みです。
今回は、居住支援部会だけでなく、相談支援部会とも連携して、「グループホーム」「居宅支援」「相談支援」の3つの課
題でまとめた要望書を提出し、障害保健福祉部障害福祉課と約1時間 20 分ほどの懇談を行いました。
グループホームは、基本報酬を大幅に上げ、日割りから月払いに変更し、小規模でも安定して運営できるようにする事。
障害の重い人への支援ができる報酬とする事。パーソナルアシスタンス制度を創設する事。以上3項目の要望でしたが、
厚労省の返答では、基本報酬増額は財政的に厳しいし、月割りへの変更も厳しいが、重度加算は検討の余地があり、今
年度末で終わるグループホーム内での個別ヘルパー利用特例延長についても要望が多いので可能性は高いとの事で
した(特例については、パブリックコメントが提案されています。)。
居宅支援の要望は、重度訪問介護の大幅な報酬増と対象者や時間、利用範囲の拡大・充実でしたが、厚労省の返答
では、報酬増は財政的に無理であり、仕組の改訂についても総合支援法3年後見直し規定の中にある為、平成 28 年4
月の見直しとの事。また、移動支援の個別給付化についても難しいとの事。
相談支援については、『計画相談』が来年3月までに、とても全対象者に進まないが、策定期間の延長はないのか、ま
た計画がない理由でサービスの打ち切りはしないように要望しました。厚労省は、3年以降の延長はない。計画がなけ
れば支給決定やサービスが受けられないような事は考えていない。残り期間で、まず策定をスタートできるよう、市町村
に指示を出していきたいとの事でした。
財政的に困難で要望に応えられないと言いつつ、現場の実態・声は聴いていきたいという厚労省でしたが、担当者が
毎年のように変わるので、しっかり現場の声を届けていく必要を感じました。報酬改定(案)は、2月上旬までには出される
と思われます。その際の内容によっては、昨年度末のように緊急要望書や懇談が必要となる可能性もあります。今後と
も、国の動きをしっかりと把握して、行動も行っていきたいと思います。
支部居住部会との学習・意見交換会
8月 29 日と 30 日、京都にてきょうされん支部内の居住関係の部会と、全国居住支援部会との5回目の学習・意見交換
会を、11 支部 22 名で行ないました。理事長による平和や政治の視点を含めた体系的な情勢報告から始まり、弁護士で
ありケアマネージャーでもある松宮氏を招いての、現場における権利擁護をテーマとした学習、そして各地で異なる自治
体裁量上の制度的格差と活動の共有を行ないました。
話題にあがった主な課題としては、①グループホームにおける夜間支援体制、②建築基準法上の用途変更や、消防
法によるスプリンクラー設置義務によるホーム立ち上げが困難になりつつあること、③介護保険サービス移行 65 歳問題
が出されました。
居住支援に関する部会がある支部はまだ4分の1程度です。支部内部会は、暮らしの制度や実践の課題を検討する
場であるだけでなく、一人職場となることが多い生活の場の職員が、日々の思いを話す場ともなっています。こういった
部会が増えることで、全国の部会と一緒に、地域間格差をはじめとする各課題について共有、議論する場として、この企
画を来年度も開催していきたいと思います。
初めてのグループホームについての全国団体懇談会(8団体参加)もたれる!
11 月 14 日、東京駅の近くの会議室を会場として、GH学会、あみ、DPI日本会議、きょうさんが呼びかけた団体となっ
て、グループホームについての団体懇談会を持ちました。参加は、セルプ協、知的障害者福祉協会、自閉症協会、全国
地域生活支援ネットワークを含めた8団体による初めての懇談でした。この間の国の動向から、グループホームの在り
方を巡っての危機感(定員問題、精神病棟転換問題、一括集約経営など)について、多くの団体から発言がありました。
また、夜間支援体制の課題については、その運営実態が十分に把握されていませんが、地域間での解釈の違いや報酬
単価の低さから不十分な運営体制にならざるを得ない問題の指摘もありました。
現在検討が進められている平成 27 年度報酬改定については、基本報酬単価を上げていくことや加算制度の充実につ
きょうされん居住支援部会ニュースレターNo.3 2014/12/12 発行
いては、細かい意見も出されました。さらにこの問題について、来年の国の動向をにらんで、タイミングを外さずに団体間
意見交換を行なうことについて確認しました。
個別課題では、消防法の改正問題が共通した課題となり、来春には、スプリンクラー設置などに対する例外措置など
の具体的内容が固まってくるので、その部分についても情報交換することとなりました。合わせて全国のGHの実態、自
治体の支援など情報交換の必要性、また、この間の制度の動きの運用上の情報交換も行ないました。
懇談の終了にあたっては、この場を継続してもっていくこと、当面報酬をめぐっての情報交換について、タイミングをみ
て行うこと、またグループホームの在り方などについても意見交換を行っていたことなど確認し、事務局としてきょうされ
んが担うこととなり、この懇談の開催経費を参加団体でどうしていくかについて次回検討することとなりました。
居宅支援事業所実態アンケートの取り組み
今年の7月~8月の期間において居宅支援の実態アンケートの取り組みを実施しました。
特徴としては、全体的に非正規の方の雇用率が高く(全体の 80.3%)、また求人を出しても人がなかなか確保できない
人材不足の課題が顕著な結果として表されていました。人材不足は福祉全般の課題ともなっていますが、居宅支援の現
場でもより深刻な課題となっているのが伺えました。
今回焦点を当てた移動支援事業では、地域によって利用できるサービス内容、支給決定時間が大きく異なるアンケー
ト結果でした(最大84時間、最少8時間)。住む地域によってこれだけ利用できる支援に違いがある事は、改めて地域間
格差の深刻な問題が浮き彫りになった結果でした。アンケートの最終的なまとめについては現在作業中ではありますが、
まとまり次第皆さんに発表したいと思います。
また、11月27日には昨年度も実施した「居宅支援に関する意見交換会」を開催しました。全国から約40名の参加が
ありました。介護保険移行 65 歳問題に関する報告、人材確保における地域の活動報告、実践報告等多岐に渡る中身と
なりました。
どこも人材確保や育成の面で厳しい体制の中、ヘルパーという個別支援の現場の中で、どのように実践を深めていく
のか等、各地の事業所の実態交流もしながら議論を深める場となりました。居宅支援に関しては実践交流の場が少ない
だけに、今後も継続して取り組んでいきたいと思います。
諸研修のなかでの実践交流(全国大会「暮らし」分科会、安居楽業「くらし」)
きょうされんの研修等で居住支援部会が協力して行なったものについて、報告をいたします
●第 37 回きょうされん全国大会 in かながわ「暮らし・居住」分科会
メインテーマ(第 37~40 回大会):地域社会で生活する平等の権利とは
サブテーマ(第 37 回大会):住まい方を選ぶ(一人暮らし、結婚、家族同居、ホーム)
まず、現在それぞれの住まい方をしているメンバー、家族、支援者から発表がありました。その後、アドバイザーの田
中智子先生(佛教大学)から、権利条約でうたわれている「他の者との平等」を目指し、その人らしい人生を追求しよう、暮
らしを支える専門性を明らかにしていこう、というお話をいただきました。
●安居楽業ゼミナール くらし
実践報告では、居宅支援事業所、精神障害のグループホーム、知的障害のグループホームからの発表があり、精神
障害のグループホームからはメンバーの発表もありました。シンポジウムのアドバイザーは全国大会と同じく田中先生で、
生活の豊かさをはかる「ものさし」が重要となり、それをもとに、当事者や家族の暮らしをはかり、他の者と平等な豊かな
暮らしを求めていけるようにしたい、というお話をいただきました。
グループホームに関する自治体交渉状況
きょうされんでは毎年、都道府県、政令指定都市、中核市、東京特別区を対象にグループホームに関する自治体独自
の補助制度を調査しています。※最新の 2013 年度一覧は、きょうされんHPのサイト内検索で「hojo」と入力いただきご覧ください。
この資料は各支部で行なわれている行政交渉の際に、補助の内容の引き上げや、補助制度の創設を求める際の資
料として使用されています。
今年度の事例としては、もともと補助制度のなかった広島市で、市議会での一般質問で、当データに基づいた独自補
助の各地現状説明と制度創設を求める質問が出されました。これに対し市長自ら、「他の指定都市と共同で、国に対しグ
ループホームについての人員配置基準見直しや適正な報酬単価設定を要望」していること、そして「市独自の支援策に
ついて検討していきたい」旨答弁しました。
また、独自補助のない兵庫県および神戸市でも、自治体独自補助制度資料に基づいた制度創設についての要望を行
なっています。
○発行:きょうされん居住支援部会
○お問い合わせ先:きょうされん事務局(担当:渡部) TEL:03-5937-2444
きょうされん 居住支援部会レターNo.4
2015 年3月 25 日発行
居住支援部会のこの間の取り組みをお知らせします。くらしに関わる制度が変わり、実態がますます厳しくなる中
で、様々な活動を行っています。内容は記事をお読みいただき、くわしくは全国事務局にお問い合わせください。
①制度に関して…平成 27 年度報酬改定、消防法のスプリンクラー設置義務化
②運動に関して…グループホーム団体懇談会、各自治体への要望活動
③調査活動…居宅支援事業所実態アンケート最終報告
平成 27 年度報酬改定について
今年4月より、障害福祉サービスの報酬が改定されます。厚生労働省は、今回の報酬改定に向けて昨年6月より学識
経験者5名と省内の課長クラスを中心に「報酬改定検討チーム」を立ち上げて、半年ほどで計 15 回の論議を進めてきま
した。このチームは、障害関係 50 団体へのヒヤリングを行い、きょうされんも意見を出してきました。
今回の報酬改定の特徴は、①福祉・介護職員の処遇改善(月平均 1.2 万円賃金アップ)、②実際には社会保障財源の
切り詰めによる、利益率の高い事業の基本報酬削減、③各事業の加算の条件設定をより細かくしたものとなっています。
介護保険事業が大幅削減の中、障害福祉サービス全体では処遇改善アップと合わせて横ばいの改定と言われています
が、多くの事業所は実質的には報酬減となりました。
昨年秋に、障害福祉サービスの各事業の収益率を公表し、報酬案発表の1月末には、各団体に事前に報告するなど、
厚生労働省としてはとても用意周到に準備を進められて来たと思われます。
就労移行や生活介護等の日中支援の事業所と居宅介護が厳しい報酬だったのに比べて、グループホームや重度訪
問介護は、基本報酬が少し上がりました。これまで、グループホームの報酬がとても低く抑えられてきており、暮らしの支
援にはグループホームの制度改善が必要との要望が、全国の各障害者団体から出ていたことの反映といえます。
今回のグループホームの報酬の考え方は、『施設や病院からの地域移行を進める上で、障害者の高齢化・重度化や
「親亡き後」を見据えたニーズの高まりを踏まえ、重度障害者への支援の充実を図る』とされ、その内容は、①重度の障
害のある人の基本報酬の充実、②夜間支援等体制加算の見直し、③重度障害者支援加算の見直し、④日中支援加算
の見直し、⑤個人単位で居宅介護等を利用する場合の経過措置の延長となっています。
①の基本報酬は、世話人配置4:1で障害支援区分4から区分6の場合、22~23 単位のアップとなります。4名定員で全員
区分4として 365 日利用なら、年 32 万円のアップとなります。
②については、夜間支援対象利用者数を、2人以下と3人以下を新たに増やしました。重症化によりマンツーマン体制で支
援しているグループホームは評価されました。しかし、今年度より夜間支援等体制加算が「夜勤」と「宿直」を区別し、経
過措置として週のうち「宿直」が半分以下なら「夜勤」報酬として認めていたのが、日単位の算定評価となりました。今後、
どう「夜勤」体制として進めていけるかが課題です。
③の重度障害者支援加算は、360 単位の大幅に引き上げられましたが、これまでの「2名以上なら事業所全体」の算定か
ら、「1名からで対象者のみ」の算定となりました。また、経過措置期間はありますが、新たに強度行動障害支援者養成
研修か喀痰吸引研修が必要となりました。
④は、日中支援加算(Ⅱ)の対象者の拡大です。グループホームの利用者が障害福祉サービスだけでなく、介護保険や精
神科医療のデイサービスを利用していても、休んだ時にホームで支援すれば加算が算定出来るようになりました。この
課題は、1年かけてようやく決着がつきました。しかし、支援3日目からしか算定できない課題は残ったままです。
⑤については、利用者が重度化し、グループホームでの個別対応の必要がより強まっている中で、3年のみの期間延長
ではなく恒常的な制度にして欲しいと思います。
今回の報酬改定はホームの基本報酬が上がったとはいえ、正規で世話人が雇える金額には程遠く、慢性的な人手不
足を解消することには繋がりません。また一定の成果を上げれば加算が付くという加算主義は、事業所が障害のある人
にとって必要な支援内容を考えるよりも、いかに加算を取るかということを優先してしまう恐れもあります。
当たり前に暮らせる場の確保と安定ということを考えると、「他の事業は減収になったが、ホームは増収になった」と喜
んではいられない現実が見えてきます。
今後、Q&A や留意事項等、より詳細な発表があります。そして、4月に入って直ぐに、新しい制度に合わせた事業変
更手続きも必要となります。今回の報酬改定の内容をしっかり把握して、利用者の立場に立った支援を進めていきましょ
う。きょうされん居住支援部会としても、他団体と連携して、残された課題を引き続き厚生労働省へ追及していきますので、
ご意見・ご相談等あればよろしくお願いします。
きょうされん居住支援部会ニュースレターNo.4 2015/3/25 発行
スプリンクラー設置義務化と建築上の用途変更について
消防法改正により、今年4月より、全ての障害のある人のグループホームにスプリンクラーの設置が必要となります。
但し、平成 30 年3月末までの3年間の猶予期間や除外規定もありますので、慌てず、情報を把握し対策を練っていく必
要があります。
今回の改正は、長崎や北海道での悲惨な火災事故等の結果、介護施設と合わせて障害のある人のグループホーム
も含めての大幅な改正となりました。これまでは住居面積 275 ㎡以上の大規模な共同生活住居にはスプリンクラーの設
置が必要でしたが、小規模の生活住居も必要となりました。
現在のところの除外規定は、消防法施行令第 12 条に記載されていますが、避難しやすい共同生活住居で、6 項ハ(障
害支援区分4の以上の入居者が 80%を超えない)の共同生活住居は、基本的には自火報(消防署通報との連動)のみで
良いとの事です。
集合住宅を利用している6項ロ(障害支援区分4以上の入居者が 80%以上)の共同生活住居でも、防火区画が確立し
ており、100 ㎡以下で 1 階(避難階)なら免除の方向との事です。但し、11 階以上の共同生活住居や集合住宅に店舗が併
設されている場合は厳しいようです。
スプリンクラー設置には高い設備費が必要ですが、簡易な水道栓直結式スプリンクラーだけでなく、水を使わない簡
易で安価な粉噴射式も開発中で、現在 消防庁の許可待ちと言われています。設備整備の補助制度も整っていない中
では、あまり焦らない方が良さそうです。
また、建築基準法の「寄宿舎扱い」への用途変更が必要で新規開設が厳しかった課題は、スプリンクラー設置をする
事で大幅に緩和されるそうです。
今後も、こういった開設課題に関わる件については、他団体とも連携して情報把握と改善運動を進めていきます。
第2回グループホームについての全国団体懇談会(6団体参加)がもたれる
2015 年2月6日、きょうされん他3団体が呼びかけ人となっている「グループホームについての団体懇談会」の第2回
懇談会を行いました。参加団体は、障害のある人と援助者でつくる日本グループホーム学会、全国精神障害者地域生活
支援協議会[あみ]、DPI日本会議(以上3団体は呼びかけ人)、日本知的障害者福祉協会、日本自閉症協会の6団体で
した。
懇談会の主な目的としては、グループホームに関わる各団体の情報交換です。今回は、①平成 27 年度報酬改定での
問題点や課題とその対応について、②夜間支援体制の現状、③消防法や建築基準法に関すること、などが話し合われ
ました。各団体で現場の意見をまとめ、厚労省や自治体などと交渉しており、そこで各団体が把握している情報を共有し
たり、考え方について議論したりすることができました。参加団体のみなさんのご協力で、団体の垣根を越えて、活発な
話し合いとなったと思います。
今後も継続していくことになっており、次回は8月7日を予定しています。
グループホームに関する自治体交渉状況
当レターNO.3 でお伝えしていました(会員専用ページ内 http://goo.gl/QKva60)、広島市での、きょうされんが独自に調
査している自治体独自補助一覧データ(http://goo.gl/oRMCFl)に基づいた市議会一般質問にて市長自ら「市独自の支援
策について検討」する旨答弁した件ですが、2015 年度予算にて「グループホーム重度障害者受入促進補助」制度が新設
されました(制度内容…1人あたり年額で区分4:17 万円、区分5:27 万円、区分6:37 万円)。制度化に結びついたことは
非常に大きな成果です。
居宅支援事業所実態アンケート最終報告
当レターNO.3 で既報のとおり、会員法人向けの居宅サービス実態アンケートを行ないました。その最終報告を、このレ
ターとともに送付されている全会員発信にてお送りしております。特徴としては、移動支援支給時間上限の自治体間格
差について、全国的な範囲で示しています。
障害のある人の地域での暮らしにおいて、居宅サービスの重要性はますます高くなっているにもかかわらず、パート
就業で一人職場、サービス提供現場への直行直帰など、実践の集約が困難な事業であり、多くの課題が山積している居
宅サービスの充実に資することができれば幸いです。ぜひご確認、ご活用ください。
●発行:きょうされん居住支援部会 ●お問い合わせ先:きょうされん事務局(担当:渡部) TEL:03-5937-2444