IASB公開草案「株式に基づく報酬取引の分類及び測定(IFRS第2号の修正案)」 に対する意見 平 成 27年 3 月 25日 日本公認会計士協会 日本公認会計士協会は、国際会計基準審議会(IASB)の継続的な努力に敬意を表すと ともに、公開草案「株式に基づく報酬取引の分類及び測定(IFRS第2号の修正案)」に 対するコメントの機会を歓迎する。 以下、公開草案の質問項目についてコメントする。 質問1 IASB は、権利確定条件及び権利確定条件以外の条件が現金決済型の株式に基づく報 酬に与える影響の会計処理は、IFRS 第 2 号の第 19 項から第 21A 項において持分決 済型の株式に基づく報酬の測定に用いているアプローチに従うべきである旨を明確 化することを提案している。 これに同意するか。賛成又は反対の理由は何か。 【コメント】 IASBの提案に同意する。 当該明確化により実務におけるばらつきが解消されること、また、持分決済型の株式 に基づく報酬取引も現金決済型の株式に基づく報酬取引も同じ IFRS 第2号「株式に基 づく報酬」(以下「IFRS 第2号」という。)の対象であることを勘案すると、当該明 確化により現金決済型の株式に基づく報酬取引と持分決済型の株式に基づく報酬取引 の会計処理の不一致が解消されるものと考える。 - 1 - 質問2 IASB は、企業が法定の源泉徴収義務を果たすために、資本性金融商品の所定の部分 を源泉徴収することによって純額決済する株式に基づく報酬取引は、全体を持分決 済型として分類すべきである旨を明示することを提案している。これは、純額決済 の要素を含んでいなかったならば株式に基づく報酬取引の全体が持分決済型の株式 に基づく報酬取引として分類されることとなっていた場合に要求される。 これに同意するか。賛成又は反対の理由は何か。 【コメント】 IASB の提案に同意する。ただし、以下については明確化及び修正が必要と考える。 BC15 項では、 「識別された運用上の複雑性を軽減するために、IASB は、IFRS 第2号 の要求事項に対する例外という形で IFRS 第2号にガイダンスを追加することを提案し ている。」と記載されている。しかし、本公開草案の提案は BC12 項に記述の見解を背景 としており、「要求事項に対する例外」とする記載は必ずしも適切ではないため、当該 記載は削除すべきと考える。 質問3 IASB は、現金決済型の株式に基づく報酬取引が現金決済型から持分決済型に分類が 変化する条件変更の会計処理を明示することを提案している。IASB は、こうした取 引は次のように会計処理すべきであると提案している。 (a) 株式に基づく報酬取引は、条件変更の結果として付与した資本性金融商品の条 件変更日の公正価値を参照して測定する。 (b) 当初の現金決済型の株式に基づく報酬に関して認識した負債は条件変更時に認 識の中止を行い、持分決済型の株式に基づく報酬を、サービスが条件変更日まで に提供されている範囲で認識する。 (c) 条件変更日現在の負債の帳簿価額と同日現在で資本に認識されている金額との 差額を、直ちに純損益に計上する。 これに同意するか。賛成又は反対の理由は何か。 【コメント】 現金決済型の株式に基づく報酬から持分決済型の株式に基づく報酬への条件変更に ついて会計処理を明確化するという提案には同意する。 ただし、IFRS第2号は、持分決済型の株式に基づく報酬から現金決済型の株式に基づ く報酬への条件変更についても具体的なガイダンスを設けていないため、当該条件変更 についてもガイダンスの要否を検討する必要があるものと考える。 - 2 - 質問4 IASB は、これらの修正を将来に向かって適用することを提案しているが、遡及適用 するために必要な情報を有して当該情報が事後的判断を用いずに利用可能である場 合には、修正を遡及適用することを認めることも提案している。 これに同意するか。賛成又は反対の理由は何か。 【コメント】 IASBの提案に同意するが、要求事項の適用範囲について明確化する必要があると考え る。 公開草案に含まれる提案のうち、権利確定条件が現金決済型の株式に基づく報酬に与 える影響を明確化するための修正は、費用計上の時期に影響を与えるものであること、 及び仮に遡及適用を求める場合には過去時点での公正価値を再度測定する必要がある という影響も考慮すると、将来に向かって適用することを原則とすることは妥当と考え る。また、その他の提案についても、上記の提案と同時に改訂される予定であることに 鑑みると、同様の移行方法を採用することが作成者及び利用者の利便性に資するという 見解は妥当と考える。 しかし、我々は、要求事項の適用範囲が基準本文(第63D項)に明確に記載されてお らず、結論の根拠に記載されているのみであり、またその記述も不明確であると考える。 提案されたBC22項においては「公開草案に含まれている修正のうち、権利確定条件が現 金決済型の株式に基づく報酬の測定に与える影響を明確化するための修正を、新規の報 酬と未決済の報酬の両方について、将来に向かって適用する」と記載されている一方で、 他の二つの修正(「純額決済の要素を有する株式に基づく報酬取引」及び「株式に基づ く報酬取引の分類を現金決済型から持分決済型に変更する条件変更の会計処理」)につ いては、BC23項において「将来に向かっての適用を提案している。」と記載されている のみである。このため、特に純額決済の要素を有する株式に基づく報酬取引に関する修 正が、新規の報酬と未決済の報酬の両方に適用されるのかが明らかではなく、基準本文 にて明確にされるべきである。 質問5 提案について他に何かコメントがあるか。 【コメント】 該当なし。 以 - 3 - 上
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