IFRS Developments 第104号 2015年03月(PDF:961KB)

第 104 号 2015 年 3 ⽉
IFRS Developments
IASB と FASB による収益認
識基準のさらなる改訂
重要ポイント
•
IASB と FASB は、新たな収益認識基準の経過措置を改訂することで合意した。
•
⾮現⾦対価、売上税の表⽰及び回収可能性に関する規定を改訂すべきか否かについ
て、両審議会は異なる結論に⾄った。
•
両審議会のスタッフは、本⼈か代理⼈かを検討するための適⽤ガイダンスに係る懸
念に対する対処⽅法に関する調査状況を報告した。
•
同基準は、パブリック・コメントの募集など、両審議会のデュー・プロセスに従っ
て改訂される予定である。
概要
両審議会は、⼀部の経過
措置に関し、実務上の簡
便法を付け加えること
で⼀致した。
国際会計基準審議会(IASB)及び⽶国財務会計基準審議会(FASB)(以下、両審議
会)は、移⾏時の契約変更の会計処理を容易にするため、新たな収益認識基準に実
務上の簡便法を設けることで合意した。IASB は、既に完了した契約について完全遡
及適⽤アプローチを適⽤した場合の実務上の簡便法を加えることとした。⾮現⾦対
価、売上税の表⽰及び回収可能性の規定に関して提起された論点に対する対処⽅法
について、両審議会は異なる結論に⾄った。
両審議会によって収益認識基準の改訂が暫定決定されたことで、IFRS 適⽤企業と
US GAAP 適⽤企業の実務に乖離が⽣じるかどうかは現時点では定かでない。
IASB は、2015 年 2 ⽉と 3 ⽉の会議における決定事項、及び追加の改訂が必要であ
ればそれらを織り込んだ公開草案を 2015 年 6 ⽉に公表する予定である。⼀⽅ FASB
は、それぞれの会議での決定内容に関する公開草案を IASB とは別に公表する予定
である。
2015 年 3 ⽉の会議で両審議会のスタッフは、本⼈か代理⼈かを検討する際の適⽤
指針に加えられる可能性がある改訂に関する調査内容についても議論した。両審議
会はこの論点について早急に検討するものとみられる。
両審議会の暫定決定事項
経過措置−契約変更及び完了した契約
両審議会は、いずれの移⾏アプローチ(すなわち完全遡及適⽤あるいは修正遡及適
⽤)の下でも、基準が適⽤されるより前に変更されていた契約については、移⾏時
における会計処理の負担を緩和するため、新たな収益認識基準に実務上の簡便法を
設けることで合意した。当該改訂なくしては、この評価は、変更が複数回に及ぶ複
数年契約を締結している企業にとっては煩雑なものになっていただろう。
契約の開始時点から「契約変更調整⽇(CMAD)」までの間に⾏われた各契約変更
の影響を、企業がその都度評価しなくても済むように、両審議会は実務上の簡便法
を設けることで⼀致した。ただし、CMAD の定義は両審議会で異なる。企業は各契
約変更の影響をその都度評価する代わりに、契約の取引価格を CMAD 時点で(後知
恵も⽤いて)算定し、過去の独⽴販売価格を基に取引価格を履⾏済み及び未履⾏の
すべての履⾏義務にまとめて配分することが可能となる。CMAD より後に⾏われる
契約変更は、新たな収益認識基準に従って会計処理される。企業は、類似の特性を
有するすべての契約について、この実務上の簡便法を適⽤しなければならない。
IASB は、いずれの移⾏アプローチの下でも、CMAD は表⽰される最も古い期間の期
⾸とすることとした。そのため、財務諸表に表⽰される年数によって、CMAD は IFRS
適⽤企業ごとに異なる(例:暦年を採⽤しているため年度末が 12 ⽉ 31 ⽇であり、
財務諸表に⽐較期間を 1 期のみ含めている企業に関しては、CMAD は 2016 年 1 ⽉
1 ⽇となる)。⼀⽅ FASB は、CMAD は、新たな収益認識基準に従って表⽰される
最も古い期間の期⾸とするとした(すなわち、暦年を採⽤している上場企業(⽐較
期間を 2 期とする)が完全遡及適⽤アプローチを採⽤する場合には CMAD は 2015
年 1 ⽉ 1 ⽇となり、修正遡及適⽤アプローチを採⽤する場合には 2017 年 1 ⽉ 1 ⽇
となる)。
IASB はまた、完全遡及適⽤アプローチを使⽤する企業に関しては、表⽰される最も
古い期間の期⾸時点で完了していない契約に対してのみ、新たな収益認識基準が適
⽤されるように、実務上の簡便法を起草するよう、スタッフに指⽰した。企業が既
存の収益認識基準及び解釈指針に従って当初適⽤⽇より前に識別される財及びサー
ビスのすべてを移転している場合、契約は完了しているとみなされる。IFRS と USGAAP
いずれの新たな収益認識基準でも、修正遡及適⽤アプローチを選択する企業に関し
ては、すでに同様の会計処理が認められている。
FASB は、この実務上の簡便法を付け加えないことを決定した。そのため、完全遡
及適⽤アプローチを選択する US GAAP 適⽤企業は適⽤時に、現⾏の US GAAP の下
では「完了した」と考えられる契約でも、新たな収益認識基準の下で未履⾏の履⾏
義務が存在していないか評価する必要がある。
FASB は、完全遡及適⽤アプローチを使⽤する企業は、会計処理の変更が、適⽤期
(たとえば 2017 年)における財務諸表の表⽰科⽬に及ぼす影響を開⽰する必要が
ないことを明確にするため、経過規定の⽂⾔をさらに改訂することを決定した。当
該改訂が⾏われないと、⽶国会計基準書第 250 号「会計上の変更及び誤謬の訂正」
によりその開⽰が求められることになる。当該改訂は、新たな収益認識基準に移⾏
する IFRS 適⽤企業の既存の免除規定とも整合している。
2
IASB と FASB による収益認識基準のさらなる改訂
⾮現⾦対価
利害関係者から、取引価格に織り込む⾮現⾦対価の公正価値をどの時点で測定すべ
きか、という疑問が提起された。さらに関係者は、⾮現⾦対価の変動性はその形式
(たとえば株式)のみならず、他の要因(たとえば、企業が受け取る権利を有する
対価の額に影響を及ぼす業績要因)からも⽣じることに⾔及し、変動対価の制限が
そうした状況でどのように適⽤されるか質問した。
IASB は、今後⽣じる他の問題点やアウトリーチ活動を踏まえた検討を⾏うまでは、
いずれの疑問についてもそれを解消するための基準の明確化を現段階では提案しな
い予定である。
FASB は、⾮現⾦対価の公正価値を契約の開始時点で測定することとした。すなわ
ち、企業は取引価格を算定する際(変動対価がなければ契約開始時点)に限りその
公正価値を測定することになる。⾮現⾦対価の公正価値の事後的な変動は、他に適
⽤する基準があれば、それに従って測定することになるが、顧客との契約から⽣じ
る収益としては認識されない。FASB はまた、⾮現⾦対価の変動がその形式及び他
の理由の双⽅に起因する場合、変動対価に係る制限は、形式以外の理由に起因する
変動のみがその対象になることを明確化した。
弊社のコメント
現段階では IASB が⾮現⾦対価に関する明確化を提案するかどうかは定かではない。
そのため、契約の開始時点で⾮現⾦対価の公正価値を測定することを提案する FASB
の決定が、IFRS と US GAAP の適⽤企業に実務上の乖離をもたらすことになるかど
うかは、不透明である。
売上税の表⽰
新たな収益認識基準は、「第三者に代わり回収される⾦額(たとえば⼀部の売上
税)」1は、取引価格から控除しなければならない、と定めている。実際この規定に
より企業は、税⾦が企業に課税されるのか、それとも顧客に課税されるのかを判断
するために、営業活動を⾏っているすべての国や地域で回収する税⾦を評価しなけ
ればならなくなる。現⾏の IFRS2でも同様の判断が求められている。
現⾏の US GAAP では、適⽤対象となる売上税は、関連する開⽰要求を満たせば、
総額ベース(すなわち収益及び費⽤に含める)と純額ベース(すなわち収益から除
外する)のいずれの表⽰も会計⽅針として選択することが認められている。
FASB は、⽅針を開⽰すれば、売上税や使⽤税、物品税、付加価値税、フランチャ
イズ税(総称して「売上税」)をはじめとする⼀定の種類の税⾦を控除した純額で
収益を表⽰できる実務上の簡便法を設けることを決定した。⼀⽅ IASB は、この論
点は解釈上の問題ではなく、US GAAP の規定の適⽤⽅法について⽶国の利害関係者
が表明した懸念であることから実務上の簡便法は必要ないと判断した。
1
IFRS 第 15 号 47 項
2
IAS 第 18 号 8 項
IASB と FASB による収益認識基準のさらなる改訂
3
回収可能性
新たな収益認識基準では、取決めが契約に該当するための要件(回収可能性要件を
含む)を満たさない場合、以下の 2 つの事象のいずれかが⽣じた時点で、受領して
いる返⾦不要な対価を収益として認識する。
(1) 履⾏の完了、及び実質的にすべての対価の受領
(2) 契約の解約
利害関係者は、この規定により、両審議会は多くの状況(たとえば企業が継続的に
実施する⽉次のサービス契約)で返⾦不要の現⾦対価の認識を無期限に遅らせるこ
とを意図しているのではないかと考えた。また、利害関係者は、契約が「解約され
た」とみなされるのは、企業が財やサービスの提供を中⽌した時点なのか、それと
も企業が顧客からの回収を停⽌した場合なのか、についても疑問を呈した。
IASB はこの論点について投票を求められておらず、スタッフは、今後の IASB の会
議でこの論点を改めて議論する前に、さらに調査を⾏うべきであると提⾔した。
他⽅ FASB は暫定的にではあるが、企業が財の移転及びサービスの提供を中⽌でき
る、また実際にそうした場合には、契約は解約されたとみなされる点を明確にする
こととした。また、ステップ 1 の回収可能性基準を精緻化し、企業は約定⾦額の合
計ではなく、顧客に移転される財やサービスと交換に企業が権利を得ると⾒込む対
価に係る回収可能性を検討すべきであることを明確化するため、設例を追加もしく
は改訂することを暫定的に決定した。
たとえば、2 カ⽉前に通知すれば契約当事者いずれもが違約⾦なしで解約できる 3
年間のサービス契約の場合、契約を解約できない 2 カ⽉間のみを評価に織り込むこ
とになる。しかし、この考え⽅が適⽤されるのは、企業が新たな収益認識基準の下
で有効な契約を有しているかどうかを判断する場合のみで、(たとえば取引価格を
算定する⼜は配分するため)同基準の他の規定を適⽤する際に考慮される契約期間
には影響を及ぼさない。
リサーチ・プロジェクトのアップデート
本⼈か代理⼈かの検討
両審議会のスタッフは、本⼈か代理⼈かの判断に関する適⽤ガイダンスの改善に向
けた調査結果について説明した。新基準の下では、約定された財⼜はサービスを顧
客に移転する前に⽀配している場合には、企業は本⼈とみなされる(したがって収
益は総額ベースで認識する)。企業の唯⼀の役割が、他の企業による財やサービス
の提供を⼿配することである場合には、企業は代理⼈とみなされる(したがって⼿
数料として留保する純額を収益として認識する)。
IASB スタッフによると、当該適⽤指針に関して IFRS 関係者から寄せられた質問は、
US GAAP と⽐べて少なかったが、5 ⽉の会議で IASB がこの論点について議論する
前に、スタッフはさらなる調査とアウトリーチ活動を引き続き⾏う予定である。
⼀⽅ FASB スタッフは、現⾏の US GAAP の適⽤における問題点の多くは、新たな収
益認識基準の下でも解決されないだろうと述べた。FASB スタッフはまた、新たな
収益認識基準では、企業が本⼈か代理⼈かを判断する際、財⼜はサービスの⽀配の
4
IASB と FASB による収益認識基準のさらなる改訂
移転に関する新たな原則をどのように適⽤すべきかなど、新たな疑問が⽣じる可能
性が⾼いと利害関係者が考えていることに⾔及した。
⼀⽅、FASB スタッフは、現⾏の収益認識基準及び新たな収益認識基準の両⽅の改
善を検討することもあり得る、と述べた。そのためには、本⼈か代理⼈かのすべて
の判断の基礎となる原則の明確化、指標の改訂、無形の(⼜はバーチャルの)財や
サービスに関する設例の追加、及び本⼈でありながら総額ベースの収益を⾒積もる
ケースがあるか、また、あるとすればそれはどのような場合なのかを明確化するこ
となどが必要になる。
次のステップ
両審議会の今回の決定は暫定的なものであり、提案される変更部分についてはパブ
リック・コメントが求められることになる。FASB は 2015 年 4 ⽉の会議で、新た
な収益認識基準の発効⽇を遅らせる提案をするかどうかを決定する。IASB が同様に
発効⽇の先送りを検討するかどうかは不透明である。
IASB と FASB による収益認識基準のさらなる改訂
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リースの借⼿の開⽰について、IASB と FASB が異なる決定