3M™ Clean-Trace™ NG Luminometer ATP基準値作成ハンドブック ATP検査の目的とは… 食中毒を防ぐには 食中毒菌の感染ルートはさまざま。 清掃不足や手洗い不足により、調理環境から食中毒菌が混入する可能性もあります。 そのため、こまめな清掃と衛生チェックが肝要です。 また、表面上はきれいに清掃したつもりでも見えない汚れが残っている可能性があります。 □ 清掃、手洗いの効果を把握していますか? □ 自信を持ってきれいになったと言えますか? ATP検査はそういった疑問を解決する方法です。 ● 清掃、手洗いの効果を数値化して確認することができます。 ● 結果がすぐにわかるため、その場で確認、指導することができます。 【ATP検査のイメージ】器具・器材の清掃チェック 清掃 洗い残しチェック (ATP検査 ) 数値が高い場合は、 食材など汚れが残っている そのままでは、 菌が増殖する可能性がある 磨き残しチェック (歯垢染色液) 染色された場合は 歯垢が残っています そのままでは、虫歯などに なる可能性があります 歯磨きのチェックに例えるなら… 歯磨き ※ATPとは :生き物がエネルギーを蓄えるための物質です。動物や植物はもちろん、それらを加工した食品に含まれています。 Adenosine triphosphate(アデノシン三リン酸)の頭文字から、ATPと呼ばれています。 ※ATP検査とは:目に見えない洗い残しを ATPを指標として目に見える形にする清浄度検査です。洗浄・清掃後の器具や手指をスワブでふき取り、 試薬と反応して発光させます。そして、その発光量を測定器で計測し、数値化します。数値が高いほど ATP 量が多く、汚れが多いと 判断できます。洗い残しの有無を瞬時に知ることができる仕組みとして食品衛生検査指針にも検査法が収載されています。 2 運用状況 リアルタイムで行える検査 株式会社フレッシュシステム様では、ATP検査を「リアルタイムで行える検査」として、現場の手洗い や器具・器材の洗浄効果の確認に活用されています。例えば、作業前に決められた箇所をふき取り、 ATP値を調べます。数値が基準値以上だった場合には、合格ラインに達するまで再洗浄を行い、合 格できるまでは作業に入れないルールとなっております。ふき取り箇所は特に洗いにくいところを中心 に選定しており、結果は A(合格)、B(注意)、C(不合格)の評価で判定しています。 「出荷前に細菌検査の結果を確認することは不可能ですが、その代わり最初の洗浄・殺菌工程で 汚れていないことを数値で示せれば、菌数が抑制できていることの一定のめどは付けられます。従って、 製品サンプルの細菌検査はどちらかというとモニタリングとしての位置付けになります。」 (品質管理統括室 品質管理室 鈴木理英子様) ATP 測定のオペレーション 1 測定キットのスワブで器具表面を拭き取る。 特に洗いにくい部分を重点的に拭き取る。 メリット・効果 2 スワブを検査試薬の入った チューブに戻し、スティックを 押し込んだ後、最低 5 秒、 良く攪拌させます。 3 チューブを測定器本体に 差し込み、測定開始ボタンを 押します。 効果的なスタッフ教育とPDCAサイクル ATP 検査を実施することにより、効果的にスタッフの教育やPDCAを回すことができると感じています。 「一方的に『手を洗いましょう』 『作業場をきれいにしましょう』 と呼びかけるよりも、説得力はずっと高いと 言えます。例えば、0よりも100 の方が数値は高い。この事実は誰でも理解できますので、洗浄が足り ないかどうかが実感できます。また、状況の変化によってすぐに数値の違いが表れるため、細菌検査 と組み合わせることで具体的な改善につなげやすくなります。 」 (品質管理統括室 品質管理室 鈴木理英子様) 実際、洗浄作業の見直しにつながった例もあります。製品の菌数が比較的高く出ていたラインでATP値 を調べたところ、洗いにくい構造のため汚れが落ちていない機器があることが分かりました。そこで発泡 剤を用いたライン洗浄を行い、ATP 値を測定した結果、数値が下がり、菌数も落ち着いたといいます。 「あらゆる器具・器材を細菌検査にかけるのはやはり無理があります。ATP 検査を活用し、原因として 考えられる箇所をある程度絞り込んでから細菌検査をすれば対応は迅速になります。 」 (製造本部 カット事業部 ヘッドセクションマネジャー 澤井孝和様) 11 3M™ クリーントレース™ ATP 測定機器 ルミノメーター UNG3 ご採用事例 株式会社 フレッシュシステム 川崎センター 様 ■概要 業種:青果加工(カットフルーツ、野菜加工) 設立年:1997 年 延床面積:1万1876 ㎡ 年間出荷量:量販店・CVS向け540万食、 学校給食向け890万食(2010 年実績) 年間取扱品目:45種 従業員:257人(正社員 36人、パート・契約・派遣社員 221人) 導入の背景 製造本部カット事業部 ヘッドセクションマネージャー 澤井 孝和 様 品質管理統括室 品質管理室 ジョブリーダー 鈴木 理英子 様 出荷前に細菌検査の結果を知ることは不可能 株式会社フレッシュシステム様は、全国15カ所の拠点と 24 棟の加工センターを展開しているカット フルーツ、野菜加工の企業様です。同社は ISO9001 : 2008 を運用するほか、全国7カ所のカットフル ーツ、野菜工場では2005年より順次ISO22000 : 2005の認証を取得され、品質の向上と食品安全に 向け日々積極的な改善活動を続けられております。カットフルーツ、野菜加工をする上で重要な衛生 管理の一つに微生物管理があります。 「細菌による食中毒を防ぐ3大原則は①付けない②増やさない③殺菌(加熱) と言われています。とこ ろが、カットフルーツは製造の最終工程に加熱工程がありません。そのため、洗浄・殺菌工程の後は いかに細菌を『付けない』『増やさない』 ようにするかが重要になります。」 (製造本部 カット事業部 ヘッドセクションマネジャー 澤井孝和様) また、 「カットフルーツは消費期限が2日程度しかないため、出荷前の細菌検査は事実上不可能です。 」 (品質管理統括室 品質管理室 鈴木理英子様) このような状況を踏まえ、洗浄・殺菌工程以降の汚れを抑制することが重要であると株式会社フレッシュ システム様は考えられております。そして、その汚れを抑制する上で ATP 検査が有効だと考えられて おり、3M™ クリーントレース™ATP 測定機器 ルミノメーター UNG3 をご使用いただいております。 10 管理基準値の設定方法 5 基準値設定までの ステップ 1 ふき取り箇所を選びます 2 洗浄前後の数値を測定します 3 基準値(合格/不合格レベル)を決めます Step Step Step 4 Step 5 Step 運用を始めます (頻度、記録フォーム、不合格の場合の対応) 長期的な傾向を見ます 3 1 Step ふき取り箇所を選びます 洗いにくく、汚れが残りやすい箇所、 食材がよく 接する箇所、 従業員の手指 ふき取り箇所例: 調理器具:包丁、まな板、ザル、おたまなど 設備:冷蔵庫の取っ手、テーブルなど 加工器具:スライサー、ミキサー、リボンミキサーなど 従業員:手指 検査箇所毎のふき取り方法(環境) まな板 包丁 ● ● 100cm2(10cm×10cm)の 面積をふき取る。 スレンレス容器、樹脂製容器 (ボウル・バットなど) ●100cm2 の面積をふき取る。 両面および柄の付け根部分を ふき取る。 スレンレス容器、樹脂製ザル 100cm2 の面積をふき取る。 ● トング、おたま、しゃもじ、フライ返し ● 両面(食品に接する部分)をふき取る。 ▶穴、段差、継ぎ目などの部分の洗い残しが 多いことから、満遍なくふき取る。 冷蔵庫、冷凍庫、オーブン、 炊飯器の取っ手など ● 全面を満遍なくふき取る。 扉、テーブル、お盆、トレイなど ▶表面および裏面、最大100cm2 の 面積を目安としてふき取る。 100cm2 の面積をふき取る。 ● トレイ 押さえ ミキサー 補強板の裏側 プローブ 刃 内側面 スクレイパー 羽根 ドレン 軸 容器 ミキサー リボンミキサー 肉用スライサー ● 全面を満遍なくふき取る。▶表面および裏面、最大100cm2 の面積を目安としてふき取る。 手洗い前の場合: ● 検査対象者(拭き取ってもらう側) 1. そのまま利き手の手のひらを広げる ● 検査実施者(検体を拭き取る側) 1. 手のひらを手首側から指先に向けて、親指から小指まで 5 回、放射状にふき取る 2. 手の外周部に沿って、指先と指の間をふき取る 手洗い後の場合: ● 検査対象者(拭き取ってもらう側) 1. 通常の方法で手を洗う 2. ペーパーで手を拭く 3. 利き手の手のひらを広げる ● 検査実施者(検体を拭き取る側) 1. 手のひらを手首側から指先に向けて、親指から小指まで 5 回、放射状にふき取る 2. 手の外周部に沿って、指先と指の間をふき取る ※手洗いの評価ですので、アルコール消毒前の検査をお勧めします。 消毒後に検査する場合には、手をよく乾燥させてください。 4 3M™ クリーントレース™ ATP 測定機器 ルミノメーター UNG3 および 3M™ クリーントレース™ ATP 測定用試薬 UXL100を 使用した場合の検査基準表(例) 検査対象(表面) 作業者の手 合格(RLU) 要注意(RLU)不合格(RLU) サンプル採取方法 1000 以下 1001∼1999 2000 以上 手のひら、指、指の間 包丁(刃) 200 以下 201∼399 400 以上 包丁の刃の両面から採取 まな板(一般、野菜用) 200 以下 201∼399 400 以上 まな板の中央部分の100㎠ ( 横10㎝X縦10㎝ ) まな板(肉、魚用) 300 以下 301∼599 600 以上 まな板の中央部分の100㎠ ( 横10㎝X縦10㎝ ) 200 以下 201∼399 400 以上 器の中央部の100㎠ 300 以下 301∼599 600 以上 器の中央部の100㎠ 調理台 300 以下 301∼599 600 以上 シンク(流し) 500 以下 501∼999 300 以下 301∼599 600 以上 取っ手の内側と外側全体 150 以下 151∼299 300 以上 食べ物が触れる部分(両面) ステンレス製容器 (ボウル、バット、保存容器) 樹脂製容器 (ボウル、バット、保存容器) 取っ手 (冷蔵庫、電子レンジ、オーブン、扉) 調理用器具(お玉、しゃもじ) 検査対象(水質) 飲料水 (ミネラルウォーター、地下水、 浄水器、水道) 洗浄用水 作業台中央部100㎠ ( 横10㎝X縦10㎝ ) 1000 以上 シンク台の底部分の角100㎠ 合格(RLU) 要注意(RLU)不合格(RLU) サンプル採取方法 100 以下 飲用水 25ml 以上から採取 150 以下 洗浄用水 25ml 以上から採取 参照 : 3M™ Clean-Trace™ NG Luminometer の衛生迅速モニタリング効果確認及びガイドライン提示、昌原大学校 2009.11 ソウル 市内の主要ホテルの衛生実態調査と ATP 結果の関係についての分析研究、中央大学校食品工学科、1 中央大学校医薬食品大学院、 2 韓国保健産業振興院 9 5 Step 長期的な傾向を見ます 衛生レベルが長期的に管理されているかを把握します。 まずは、数ヶ月間試験データをとってみましょう。 継続的に衛生レベルを改善する判断材料とします。 今後起こり得る問題を予測します。 例: ● 不合格が多いふき取り箇所はないか ● 工場間で合格率にバラつきがないか ● 作業者間のバラつきがないか ● 安定した管理ができている場合、より高いレベルでの衛生 管理ができるよう基準値の見直しができないか ● 夏場は数値が高い傾向にあるため、洗浄方法の強化を検討する 〈不合格が多いふき取り箇所の改善例〉 改善前 改善後 〈基準値の見直し例〉 一定基準値での事例 基準値の見直しを行った事例 8 2 Step 洗浄前後の数値を測定します 洗浄前 ふき取り箇所をすすぎ洗いし、見た目できれいな状態にします。 (この時洗剤は使用しません。 ) ふき取り測定を行い、結果を記録します。 洗浄後(洗浄前のふき取り測定が行われた後に洗浄を行います) 日頃行っている方法で洗浄します。 その後ふき取り測定を行い、結果を記録します。 同じふき取り箇所を、同じ方法で5日間分拭き取り測定します。 *5日間のふき取り測定の結果は、毎日の洗浄において達成可能な 衛生レベルを示します。 さらに、5日間のうち 1日は特に念入りな方法で洗浄を行い、 その結果も測定します。 洗浄前後のふき取り結果例: 包丁 1(RLU) 2(RLU) 3(RLU) 洗浄前 14,204 洗浄後 - - 390 401 378 念入りな洗浄 まな板 - 1(RLU) 洗浄前 5,832 洗浄後 491 - 120 2(RLU) 415 392 - 420 - 4(RLU) 426 5(RLU) - 298 - 5(RLU) 410 325 念入りな洗浄 ボウル 3(RLU) 4(RLU) 1(RLU) 洗浄前 1,922 洗浄後 294 2(RLU) 394 3(RLU) 310 158 念入りな洗浄 ※RLUとは:Relative Light Unit の略であり、相対的な光の量を表します。 5 4(RLU) 365 5(RLU) 335 3 基準値(合格/不合格レベル)を 決めます Step Step2 で得られたデータを基に、合格 / 不合格レベルは、一定の幅を もって設定します。 現状の洗浄レベルを維持する場合:洗浄後の試験データよりも高い値を合格値とします。 洗浄レベルを向上させる目的の場合:通常の洗浄後試験データよりも低い値を合格値とします。 ただし、念入りな洗浄レベルより高い値とします。 不合格値は、合格値の 2 倍とします。 例: パターン 合格(RLU) 注意(RLU) 不合格(RLU) 2,000 A 1,000 1,001∼1,999 B 750 751∼1,499 1,500 C 500 501∼999 1,000 D 400 401∼799 800 E 300 301∼599 600 F 250 351∼499 500 G 200 201∼399 400 H 150 151∼299 300 J 100 101∼199 200 基準値の設定例 包丁 1(RLU) 洗浄前 14,204 洗浄後 390 念入りな洗浄 - 包丁 現状の洗浄レベルを維持する場合 包丁 洗浄レベルを向上させる場合 まな板 1(RLU) 洗浄前 5,832 洗浄後 350 2(RLU) - 401 4(RLU) - 420 378 - - 105 5(RLU) - 298 - 合格(RLU) 注意(RLU) 不合格(RLU) 500 501∼999 1,000 400 401∼799 800 2(RLU) 404 3(RLU) 4(RLU) 383 念入りな洗浄 310 5(RLU) 405 325 まな板 現状の洗浄レベルを維持する場合 包丁 洗浄レベルを向上させる場合 ボウル 3(RLU) - 1(RLU) 洗浄前 1,922 洗浄後 294 合格(RLU) 注意(RLU) 不合格(RLU) 500 501∼999 1,000 400 401∼799 800 2(RLU) 394 310 念入りな洗浄 ボウル 現状の洗浄レベルを維持する場合 包丁 洗浄レベルを向上させる場合 3(RLU) 4(RLU) 365 5(RLU) 335 158 合格(RLU) 注意(RLU) 400 401∼799 800 300 301∼599 600 6 不合格(RLU) 4 Step 運用を始めます (頻度、記録フォーム、不合格の場合の対応) 運用頻度を決めます。 記録フォームを作成します。 不合格の場合の対応方法を決めます。 運用頻度例 1. 食材がよく接する箇所について、最低週に 1 回実施します。 洗いにくく、汚れが残りやすい箇所はさらに週末に 1 回実施します。 2. 食品との非接触面について、清掃業者が清掃を実施した後、 必要に応じて監査を行います。 記録フォーム例 検査箇所 測定値 (テストポイント)(RLU) 判定 再洗浄 予想される原因 (RLU) (記号を記入) 指導内容 合格・注意・不合格 合格・注意・不合格 合格・注意・不合格 結果への対応方法 合格 :特に対応は不要です。 注意 :水ですすいでから再検査を行い、合格レベルになることを確認します。 手順通りに正しく洗浄が行われているかを確認します。 不合格:再洗浄後に再検査を行い、合格レベルになることを確認します。 手順通りに正しく洗浄が行われているかを確認します。 手順通りに正しく洗浄が行われている場合、手順書の見直しを行います。 (洗浄方法に問題がある可能性があるため) 必要に応じて器具を交換します。 (まな板、プラスチック製ボウルなど) 7 3M™ クリーントレース™ ATP測定機器、試薬の使い方 1. ふき取る、2. 反応させる、3. 測定する の簡単3ステップ。 あらかじめスワブが湿っているので、すぐにふき取ることが可能です。測定時間もわずか約15秒。 3 1 2 ふき取る または 浸す (UXL100) 拭き取り方法 反応させる (AQT200) ※毎回同じ方法で拭き取ってください。 1 横に直線的に 拭き取ります 2 反対側に戻りながら 拭き取ります 3 縦に拭き取ります 4 縦向けに全て 拭き取ります ● 青色のスティック部分を持ち、スワブの先端部分には 触れないでください。 スワブの 使い方の 注意事項 ● 拭き取るときには指でしっかり持ち、途中でスワブを 回転させてスワブの全面を使って拭き取ってください。 機器本体の故障の恐れがあるので、下記に ご注意ください。 注意 測定する ● 機器本体に衝撃を与えないでください。 ● 機器本体に試薬を入れたままにしないでください。 ●試薬を入れたまま機器本体を傾けないでください。 ●試薬の外側が汚れたまま挿入しないでください。 3M™ クリーントレース™ ATP 測定機器、試薬 Q&A http://www.mmm.co.jp/microbiology/faq/index.html 修理等に関するお問い合わせ スリーエム ヘルスケア株式会社 ハードグッズサポートセンター 0120-158-211(フリーダイヤル) 受付時間 9:00 ∼ 17:00 月∼金(土・日・祝日を除く) 3M、Clean-Trace、クリーントレースは3M社の商標です。 カスタマーコールセンター 製品についてのお問い合わせはナビダイヤルで 食品衛生市場プロジェクト部 http://www.mmm.co.jp/microbiology/index.html Please Recycle. 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