〔科目名〕 地球の科学 〔担当者〕 佐藤 和弘 SATOH Kazuhiro 〔単位数〕 4 単位 〔科目区分〕 教養科目 〔オフィス・アワー〕 時間:授業開始時に指示 場所:604号室 〔科目の概要〕 旧カリ「地球の科学」(2 単位)は前半 15 回で読替え 地球に生命が誕生し、それが多種多様な生物に進化したことは歴史的事実である。しかし、いつ、どこで、どのようにし て生命が生まれ、どのような進化を経て現在の生物界が形成されたのか、またその原動力となった物理的・化学的メカニ ズムとはなにか、これらの疑問に答えることはきわめて難しい。その場にいあわせ、一部始終をつぶさに観察したものな どいないからである。生命の起源と進化という問題は、多くの謎に満ちた興味のつきない研究テーマである。 生命誕生の場となった地球もまた謎に満ちている。太陽系惑星の一つとして誕生した地球は、46 億年という長い時間 をかけて今日の姿に進化した。固体地球はコア、マントル、地殻からなる層構造をなし、その表層には豊富な水をたたえ た海洋が存在する。大気は酸素が多く二酸化炭素が少ない。強い惑星磁場(地磁気)がある。生命の存在も含めて、地 球には太陽系の他の惑星には見られない特徴が多い。こうした地球の特異性がどのようにして生じたのか、またそれは なぜか、という疑問に答えるのもまた難しいが、非常に魅力ある研究テーマである。 さらに、生命の進化と地球の進化を比べると、大きな変革のあった時期が互いにほぼ重なることがわかってきた。それ は単なる偶然なのか(そうとは思えないが)、それとも生命と地球の間には何か強い相関がはたらいているのか、興味は 高まる一方である。 生命と地球に関するこれらの謎や素朴な疑問に対して、最近の科学(宇宙科学、惑星科学、地球科学、地質学、分子 生物学、発生学、進化学、古生物学、およびその総合)は、ようやく、ある程度「根拠」をもって答えることができるようにな った。それは確かにすばらしい進展である。 この講義では、生命の起源と進化という問題を、地球の進化と重ね合わせながら概観する。すでに標準とされる理論、 科学者の間でまだ意見の不一致がある理論、現在もなお激しい論争の渦中にある仮説などを織り交ぜながら、この分野 でいまなにが問題になっているのかを明らかにしたい。 〔「授業科目群」・他の科目との関連付け〕・〔なぜ、学ぶ必要があるか・学んだことが、何に結びつくか〕 地球という惑星の誕生と進化、そしてこの地球に誕生した生命とその進化について理解を深めることは、複雑化した現 代社会を生きる上で必須の基礎的素養といえる。人間社会の真の豊かさや、地球環境という難しい問題を考える上で、こ うした科学的知識とその理解は、大きな助けとなるであろう。本学の学生が経営経済を学ぶ上でも、それが有効でないは ずがない。 〔科目の到達目標(最終目標・中間目標)〕 科学というと、「難しい」、「さっぱり分からない」、というのが一般的な風潮とされている。その一因は、現代の科学が精 密さ、厳密さをひたすら追求する、専門性の高い学問に変貌してしまったからである。しかし科学は専門家だけの占有 物ではない。その成果は等しく市民のみなが共有すべきであるというのが私の基本的な考えである。もとはといえば、科 学とは自然界の謎に対して、なんらかの「筋道立った説明」を与えるのがその目的であった。好奇心の強い人間ならば、 誰にとっても、「謎解き」の過程は楽しいものである。難問に出会い、その不思議さに魅せられ、何度も首をひねり、はら はらどきどきの後に、ようやく「理の通った解決」が得られたときの喜びは何物にもかえがたい。この講義は、科学の楽し さとすばらしさを学生諸君に伝えることにある。講義を通して、ものの見方、考えかたが変わり、自然や人間を見る目が豊 かになったとすれば、この科目の目標は達成されたことになる。。 〔学生の「授業評価」に基づくコメント・改善・工夫〕 受講した多くの学生から、「宇宙の歴史、地球の歴史、生命の歴史」について、興味深い話が聞け、たいへん面白か ったという評価を得ています。未知の世界に対する知識が増える、理解が深まるというのは、誰しもがわくわくする体 験です。将来皆さんが、地球環境問題や、自然と人間との関わりなどについて考えるようになるとき、この科目で学ん だことがきっと役だつでしょう。 〔教科書〕 佐藤和弘 『改訂第 2 版・生命のはなし』 北方新社(2015) <教科書購入にあたっての注意> 『改訂第 2 版』は 2015 年 3 月末発行予定なので、ガイダンス期間中の教科書販売はありません。『初版』、および『改訂 版』は、現在品切れのため、書店あるいはネットでの購入はできません。『改訂第 2 版』は、4 月早々(授業開始直後) に、604研究室で直接配布できる予定です(定価4000円で販売)。4月中旬以降は、市内書店やネットでも購入可能にな る見込みですが、その場合は税込み 4320 円になります。なお、この教科書は、3 年次の「教養演習Ⅰ」、「生命科学」で も使用する共通のテキストですので、履修計画の参考にしてください。 〔指定図書〕 佐藤和弘 『わが眼にあらた―複雑系研究の 20 年―』北方新社(2010) 〔参考書〕 テキストの参考文献リスト参照 〔前提科目〕 な し 〔学修の課題、評価の方法〕(テスト、レポート等) 期末試験の得点による 〔評価の基準及びスケール〕 成績評価は期末試験(100 満点)によって次のように決まります(全学共通のスケールです)。 A 80 点以上 B 70~79 点 C 60~69 点 D 50~59 点 F 50 点未満 〔教員としてこの授業に取り組む姿勢と学生への要望〕 正確さを損なうことなく、「地球と生命の歴史」について、平易に講義します。 科学にまったく興味がないのに、単位目当てで履修することは止めてください。 科学を「学ぶ」ということに対して謙虚になれない人は履修しないでください。 授業スケジュール 第1回 テーマ(何を学ぶか):地球の科学で学ぶこと 内 容: 授業全体の紹介、イントロダクション 第2回 テーマ(何を学ぶか):宇宙のはじまり、星の進化 内 容: ビックバンによる宇宙の始まりから、星の誕生と進化を明らかにする。 第3回 テーマ(何を学ぶか):超新星爆発と元素生成 内 容: 宇宙の元素は、星の内部で進行する核融合反応と、巨大星の最後に起きる超新星爆発によって 生成されることを述べる。 第4回 テーマ(何を学ぶか):太陽系と地球の誕生 内 容: 46 億年前に生まれた太陽と、その第 3 惑星である地球の姿を概観する。 第5回 テーマ(何を学ぶか):太陽系惑星 内 容:地球の兄弟惑星である金星、火星、木星などについて学ぶことにより、地球という惑星の特異性を 理解する。 第6回 テーマ(何を学ぶか):生命の誕生 1 内 容:約 40 億年前の地球に生まれた最初の生命とは、いったいどんな生命であったのかを推理する。そ のために、地球生命の設計図である DNA について学ぶ。 第7 回 テーマ(何を学ぶか):生命の誕生 2 内 容: 設計図に基づいて生成されるタンパク質とその働きについて学ぶ。 第8 回 テーマ(何を学ぶか):細胞の進化 1 内 容:約 20 億年前に起こった最初の大進化の謎に迫る。最初の生命は現在の原核細胞に近いシンプル な構造をしていたに違いない。それが現在の真核細胞のような複雑な構造をもつ細胞に進化したのはなぜ かを推理する。 第9 回 テーマ(何を学ぶか):細胞の進化 2 内 容:7 回の後半 第 10 回 テーマ(何を学ぶか):陸地の誕生 内 容:マントル対流のメカニズムと、マントル対流によって形成された陸地について明らかにする。 第 11 回 テーマ(何を学ぶか):マントル対流の変化と超大陸の形成 内 容:マントル対流の巨大化と、超大陸の形成、および地球環境の大きな変化の関係を明らかにする。 第 12 回 テーマ(何を学ぶか):地球磁場の形成 内 容: 地球には強い磁場が存在する。その結果、地球の周りにどのような電磁現象が起こるのかを議論 する。 第 13 回 テーマ(何を学ぶか):多細胞生物の誕生 1 内 容: 約 10 億年前に起こった単細胞生物から多細胞生物への大進化について明らかにする。 第 14 回 テーマ(何を学ぶか): 多細胞生物の誕生 2 内 容: 12 回の後半 第 15 回 テーマ(何を学ぶか):カンブリア爆発と大絶滅 内 容: 約 5 億年前、生物の世界に起こった大進化(カンブリア爆発)により、複雑な構造を持つ動物が一 挙に出現したことを明らかにする。その後、5回繰り返された大絶滅について概観する。 第 16 回 テーマ(何を学ぶか):前半のまとめと後半への導入 内 容: 授業内容の振り返り、地球の歴史の全体像を明らかにする。 第 17 回 テーマ(何を学ぶか): 生物の多様性 1 6億年前に起きた大型生物の爆発的な多様化について学ぶ。 第 18 回 テーマ(何を学ぶか):生物の多様性 2 現在の地球の生物多様性について学ぶ。 第 19 回 テーマ(何を学ぶか):植物の進化 1 約4億年前に起こった植物の上陸と、その後の進化について概観する。また植物と菌類(カビ、キノコ)、植 物と昆虫との共生関係についても議論する。 第 20 回 テーマ(何を学ぶか):植物の進化 2 18 階の後半。なぜ被子植物が多様化を達成できたのかを学ぶ。 第 21 回 テーマ(何を学ぶか): 動物の進化 1 30 門からなる動物門の系統樹をもとに、5 億年にわたる動物の進化の筋道を概観する。ここではとくに脊椎 動物の進化に注目する。脊椎動物は中枢神経を持つ動物である。中枢神経の先端はやがて脳という優れ た情報処理器官へと発達する。 第 22 回 テーマ(何を学ぶか): 動物の進化 2 21 回の後半 第 23 回 テーマ(何を学ぶか):共生 1 植物、動物、微生物の共生関係について考える。共生なしには生態系は成り立たないことを理解する。 第 24 回 テーマ(何を学ぶか):共生 2 22 回の後半。 第 25 回 テーマ(何を学ぶか):繰り返す大絶滅 生物は多様性を増していくが、その一方で、現在までに大規模な絶滅が5回起こっている。生命進化におけ る大絶滅の意味、生物の多様化をもたらした要因とは何かについて考える。 第 26 回 テーマ(何を学ぶか):ヒトの進化 1 ヒト科の出現は約 600 万年前、われわれ現世人の直接の祖先にあたるホモ・サピエンスの出現はわずか 20 万年前のできごとである。サピエンス誕生にいたる人類の進化について考える。 第 27 回 テーマ(何を学ぶか):ヒトの進化 2 サピエンスの繁栄は農耕の発明と定住化による。ここでは栽培植物と農耕の起源について明らかにする。 第 28 回 テーマ(何を学ぶか): 文明の誕生 約 5 千年前に発祥した古代オリエント文明などについて学ぶ。 第 29 回 テーマ(何を学ぶか):地球システムの将来 46 億年の地球の歴史を踏まえて、地球システムの将来像を議論する。 第 30 回 テーマ(何を学ぶか): まとめ 試 験 筆記試験(マークシート中心)
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