先進ボーリングコア情報によるトンネルの時間遅れ変状

50.先進ボーリングコア情報によるトンネルの時間遅れ変状機構に関する考察
Study on time dependency of rock by advanced boring core of tunnels
○伊東佳彦・岡﨑健治・大日向昭彦(土木研究所寒地土木研究所),村山秀幸・丹羽廣海(フジタ技術センター)
Yoshihiko Ito, Kenji Okazaki, Akihiko Obinata, Hideyuki Murayama, Hiroumi Niwa
1.はじめに
B 時には CⅠ~DⅠ(一部 DⅡ)へ,支保は概ね設計通
り~軽装備側に変更されている.ただし,施工は DⅠ
北海道の国道トンネルでは,変位計測および全線の
先進ボーリング調査結果等から地質性状を評価してト
~DⅡであり,設計時の評価に近いかたちで行われた.
ンネル支保を決定している.しかし,支保設置直後や
時間遅れ変状は発生しておらず,地山評価は妥当であ
トンネル開通後のいわゆる時間遅れ変状を起こすトン
ったといえる.
ネルが依然発生しており,施工や維持・管理上の課題
(3) デイサイト部
設計時は CⅡで,先進 B 時も大部分で CⅡ,部分的
となっている.
本論では,熱水変質作用を被った新第三紀火山岩・
(図中左寄り等で DⅠ~DⅡへと重装備側,中央部で C
火砕岩類からなるトンネル地山の先進ボーリングコア
Ⅰへと軽装備側)に変更された.施工は概ね先進 B 時
で計測された一軸圧縮強度,P 波速度,有効間隙率等
の評価に基づいたが,2 箇所で時間遅れ変状が発生し
の物理力学特性の相互関係を検討し,時間遅れトンネ
縫い返し掘削(E)が行われた.なお,縫い返し掘削
ル変状との関係について考察したので,その結果につ
部も,当初の施工は CⅡで実施された.時間遅れ変状
いて報告する.
が発生したため,地山評価については改善の余地があ
る.変状部の合理的な評価方法の構築が焦点となる.
2.トンネルの概要と調査内容
3.2
調査対象地は,北海道日本海沿岸の延長約3キロの
NATM 工法で施工されたトンネルである.トンネル地
デイサイト部の評価方法
デイサイト部の時間遅れ変状箇所についてみると,
山は熱水変質作用を被った新第三紀の火山岩類(デイ
非変状箇所と比較して,切羽評価点,RQD(5),一軸圧
サイト,安山岩溶岩)および火砕岩である.本トンネ
縮強度,地山強度比など特に変わったところはない.
ルでは支保設置後に2箇所で盤膨れが発生し,縫い返
変状箇所②では先進ボーリング時の湧水量が多かった
し掘削が行われている.両箇所とも熱水変質作用を被
が,施工時の湧水は周囲と比較してもそれほど多くは
ったデイサイトである.
なかった.また,先進ボーリングコア観察においても,
調査トンネルの施工時の計測記録を図-1 に示す.上
前後と較べて特に目立った変化は認められなかった.
より,地質断面図(先進ボーリング結果反映済),設計
注目されるのは,変状が 2 箇所とも土被り厚が最大
時,先進ボーリング評価時(以後,先進 B 時),施工
となる近傍で発生していることである。今後,地山強
時の支保パターン,切羽評価点,RQD(5),先進ボーリ
度比とは異なる方法で,土被り厚を考慮した評価方法
ング時の湧水量,一軸圧縮強度,地山強度比である.
を構築する必要があると考える.なお,内空変位およ
なお,これらの調査は北海道開発局が実施した物であ
び粘土鉱物等の検討結果については,別途報告する 1).
る.上下に渡っている黒枠部分が縫い返し掘削を行っ
4.おわりに
た 2 箇所である.
本調査の実施にあたり,資料提供ならびに現地調査
3.考察
にご協力いただいた国土交通省北海道開発局の関係各
3.1 支保パターンの妥当性
位に,ここに記して深謝いたします.なお,本調査研
(1) 安山岩部
究は,国土交通省建設技術研究開発助成制度における
設計時に CⅠであったのが,先進 B 時と施工時には
「変状を伴う老朽化トンネルの地質評価・診断技術の
CⅡ~DⅡへと 1~3 ランク重装備側に変更されている.
開発」の補助金で実施した.
この部分は,先進ボーリング調査によって RQD(5)が
小さいのと一軸圧縮強度,地山強度比が低いことが考
文献
慮されたと考えられる(切羽評価点も低かった).時間
1) 岡崎健治,大日向昭彦,伊東佳彦,丹羽廣海,村
遅れ変状は発生しておらず,地山評価は妥当であった
山秀幸(2014)
:建設後に変状が生じたトンネルに
といえる.
おける施工時の計測データに関する考察,
(社)日
(2) 自破砕溶岩(一部堆積岩)部
本応用地質学会平成 26 年度研究発表会(投稿中).
坑口を別とすれば,設計時に DⅠであったのが先進
99
貫通点
地質断⾯図
標⾼(m)
450
400
350
⾃破砕溶岩
⼀部堆積岩
300
250
200
デイサイト
安⼭岩
先進パターン
坑⼝
E
DII
DI
CII
CI
坑⼝
E
DII
DI
CII
CI
施⼯⽀保パターン
設計⽀保パターン
変状区間①
坑⼝
E
DII
DI
CII
CI
切⽻評価点
80
変状区間②
500
1,000
1,500
2,000
2,500
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
1,501
2,001
2,501
TD(m)
2,000
2,500
TD(m)
RQD(5)%
湧⽔量(l/min)
(kN/m2)×1000
先進ボーリング
圧縮強度
TD(m)
赤線:設計支保パターン(投影)
1
501
1,001
赤線:設計支保パターン(投影)
0
500
1,000
1,500
0
500
1,000
1,500
0
500
1,000
1,500
0
500
1000
1500
2000
2500
TD(m)
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
TD(m)
0
500
1000
1500
2000
2500
TD(m)
60
40
20
0
100
80
60
40
20
0
2500
2000
2,000
2,000
2,500
2,500
TD(m)
TD(m)
1500
1000
500
0
250
200
150
100
50
0
40
地⼭強度⽐
TD(m)
0
30
20
10
0
図-1
調査トンネルの施工時の計測記録
100