建学の精神と北里大学の理念

建学の精神
開
報
拓
恩
叡智と実践
不撓不屈
建学の精神と北里大学の理念
建学の精神と北里精神
学祖北里柴三郎博士〔1853年(嘉永5年)~1931年(昭和6年)〕の主な業績は、破傷風菌の純培養、血
清療法の確立やペスト菌の発見など「国際的な科学者としての学問探究」、日本初の私立伝染病研究所、結
核療養所・土筆ヶ岡養生園の創設、北里研究所、慶應義塾大学医学部の設立など「社会事業家としての近代
国家づくり」、そして、北島多一、志賀潔、秦佐八郎、宮島幹之助、高木友枝ら高弟などの「教育者として
の人材育成」に集約できます。
北里博士の足跡を集大成すると、次の4本の柱が導き出され、これを「北里精神」と呼び北里大学建学の
精神としています。
北里精神とは、
1.「開拓の精神」熊本の医学校に学び東京帝国大学医学部を卒業した北里博士は、ドイツに留学し、微生
物学の第一人者であったローベルト・コッホ博士の門下生となり、破傷風菌の純培養の成功、破傷風菌の毒
素と免疫抗体の発見、ペスト菌の発見などの独創的な発想から、医学界における世界的な成果を導き出され
ました。太鼓のバチの形をした破傷風菌は、大学の校章として用いられています。
2.「報恩の精神」北里博士の恩師であるローベルト・コッホ博士、福沢諭吉翁(慶應義塾の創立者)、明治
天皇をはじめ、恩義を受けた方々に対する礼を尽くされた北里博士の人柄、心構えから導き出されました。
コッホ博士の遺髪は今も白金のコッホ・北里神社に納められています。
3.「叡智と実践Sophia kai Ergon」北里博士の「学者の知識はどのように革新的で高尚なものであっても、
それが一般社会に還元されなければ何の役にもたたない」という持論から導き出されました。ギリシャ語表
記の「Sophia kai Ergon」は本誌の誌名にもなっています。
4.「不撓不屈の精神」波瀾万丈の生涯を送られた北里博士の悪戦苦闘、それにめげることのない足跡から
導き出されました。北里博士は、学問の独立と自由を守るため、たとえ恩師といえども間違っていれば、真
摯な気持ちをもってこれは正しくないと指摘し、学問の真のあり方を問い続けました。
北里博士の怒涛のような人生を突き動かした力は、一体なんであったのであろうか。これを考えるとき、
それは明治天皇や福沢諭吉翁たち恩人の恩義に報い、また赤痢やコレラの蔓延するわが国に公衆衛生学を広
め、それによって国民の健康を増進させるための強い使命感であったことに気が付きます。
本学に学ぶ者は、この北里精神を真に身にまとい、学業に励み、人間性に富んだ将来有為な科学人である
ことが求められています。そのためには、いかなる困難にも屈することなく、なにごとにも勇猛果敢に挑戦
する姿勢が期待されています。
北里大学 名誉教授 故 田口 文章
4 Sophia kai Ergon / No.212