未来に向けたヘルスケア ソリューション特集に寄せて 特命顧問 近年の急速な少子高齢化は,日本が抱える最大の社会問題の一つです。健康長寿社会 の達成に向けて,治療技術の発展のみならず,特に発症前に病気を防ぐ一次予防や病気 を早期に発見し,治療を開始する二次予防医療の重要性が高まっています。医学領域は, DNA,RNA,タンパク質などの生体分子情報を系統的に解析するオミックス科学の発 達によって,「疾患の治療を目指す医学から,予防医療を目指した健康寿命を延伸させる ヘルスケア」へと展開してきています。一方,政府は日本再興戦略の一環として「国民 の健康寿命が延伸する社会の実現」を掲げ,健康・医療分野を戦略分野の一つとして健康・ 医療産業の国際競争力向上を目指しています。このような動向により,健康・医療分野 の市場規模は,国内で現在の16兆円から2030年には37兆円に,海外においては163兆円 から525兆円へと大幅に拡大すると見込まれており,ヘルスケア分野のICTビジネスは 今後も大きく拡大していくと予想されます。 富士通は,1970年代に医療分野のビジネスをスタートし,医事会計やオーダーエント リシステムを開発・展開してまいりました。そして,1990年代後半から電子カルテシス テムを中核ビジネスとして先進医療機関を中心に圧倒的なシェアを獲得しています。ま た,電子カルテシステムの普及とともに,地域における医療機関で診療情報の連携ニーズ が高まる中,地域医療ネットワークをクラウドサービスとして展開し,現在では国内の数 多くの地域で,医療機関や薬局,介護施設などにおいて幅広く活用いただいております。 昨今では,電子カルテシステムに蓄積されたデータの利活用や,新たなサービス,他 分野との連携など,ビッグデータやクラウドを活用した新たなソリューションやサービ スに対する期待も高まっております。そこで富士通は,今まで培ってきた技術力の強み を生かし,ヘルスケアビジネスの領域を更に拡大していくため,最先端の研究機関や医 療現場と連携することで,ICTを最大限に活用した新たな事業を創出することをミッショ ンとした「未来医療開発センター」を2013年に設立しました。未来医療開発センターで は,国家プロジェクトを基点とした次世代医療情報システムの開発・展開,健康生活情 報と診療情報を統合した医療ビッグデータサービスの創出による重症化予防,医療費削 減,最適な診断・治療への応用,HPC(High Performance Computing)を活用した IT創薬,生体シミュレーションといったビジネスに取り組むとともに,海外への積極的 な展開も視野に入れて活動しています。今後,未来の医療,健康,福祉を支える情報イ ンフラとして,次世代医療情報基盤を整備することでソーシャルイノベーションを更に 加速していきたいと考えています。 最後に,国民が健康で暮らしやすい社会作りを目指して,富士通グループ一丸となっ てヘルスケア分野のビジネスイノベーションを推進していきたいと考えておりますので, 引き続き皆様のご指導ご鞭撻をよろしくお願いいたします。 FUJITSU. 66, 2, p. 1(03, 2015) 1
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