自分たちの「のはらうた」

分科会G1
自分たちの
の「のはらうた」をフォトポエムで作ろう
う
千葉市立山王小学校 教諭 鬼澤敦子
キー
ーワード:のはらうた,創作詩,1人1台タブレット端末,フォトポエム,AR
1. 従来の課題
評価と指導の難しさから、詩の指導
導は読む学習、鑑
賞指導が多くなり、創作詩を書く学習
習まで至っていな
いことが多い。教科書に掲載されてい
いるのは、成人が
児童のために書いた少年詩が多く、少
少年詩を鑑賞指導
で学習していることが多くなっている
る。
しかし、ひらがな、カタカナを覚え
えた1年生の時期
から、日常生活や体験的な学習活動の
の中で自然の変化
を発見し、動植物と触れ合う中で感じ
じ取ったことや想
像したことを、文章で表現することが
が必要である。
そこで、創作詩の指導を、フォトポ
ポエム1という新し
い創作学習として扱うこととする。フォトポエムとは、
写真と言葉を組み合わせた作品である
る。
2.目的・目標
分科会G1
(1)児童が詩に興味を持つ工夫
児童が詩に興味を持つことができる
るように、環境を
整えた。
教室の中に、
児童向けの詩の本を100冊以上揃え、
お気に入りの詩を見付けたら、名前と
と月日を書いた付
箋を貼るようにした。そして、朝の時
時間や休み時間を
活用して、お気に入りの詩を視写して
て、アンソロジー
作りをする活動を行った。しかし、た
たくさん本を読む
児童と、全く読まない児童の差が大き
きい。そこで、詩
のリズムの良さや楽しさに興味を持つ
つことができるよ
うに、ARを活用することとした。
AR(AugmentedReality)とは、拡張現実のこと
である。
自分のお気に入りの詩を決めて、詩を
を紹介する動画を
撮影する。そして、本にタブレット端
端末をかざすとそ
の動画が流れ、友達の紹介する詩を聞
聞くことができる
ように設定した。児童の興味関心が高
高まり、
詩の音読、
創作に意欲的になると考えたからであ
ある。
目標は、紹介するためにお気に入り
りの詩を選び、友
達のお気に入りの詩を聞くことにより
り、詩の本に興味
を持つことである。
フォトポエムで作
(2)自分たちの「のはらうた」をフ
る工夫
本実践は、児童に人気のある「のは
はらうた」を、自
分たちで制作する学習である。まず、「のはらうた」
の読み聞かせや音読、作者を当てるク
クイズをして、
「の
はらうた」に興味関心を持たせるよう
うにした。
次に、図工の時間に自分のお気に入
入りの作者「へび
いちのすけ」や「かまきりりゅうじ」などを、1人1
人が紙粘土で制作をした。紙粘土で制
制作することによ
り、自分が紙
粘土の作品(のはらうたの作者)にな
なったつもりで、
「のはらうた」を創作できるようにし
したためである。
それぞれに、思いを込めて制作し、名前を付けた紙
端末(iPad)
粘土の作品と、1人1台タブレット端
を持って校庭に行き、「のはらうた」の仲間がいるよ
うな場所で写真を撮影する。撮
撮影した写真に合った詩
を打ち込むことにより、自分た
たちの「のはらうた」を
制作するのである。
目標は、自分の決めた登場人
人物になりきり、想像を
広げ、詩に書きたいことを見付
付けて、ふさわしい表現
を選んでフォトポエムを制作す
することである。
3.実践内容
(1)ARを使って本の紹介を
をする
「Aurasma」というアプリケ
ケーションを使い、現実
環境にある本の表紙から、バー
ーチャルに友達が出てく
るようにセッティングをして学
学習を行った。
お気に入りの詩を紹介するた
ためには、まず本を読ま
なければならない、読みたくな
なるきっかけ作りが必要
である。そのきっかけ作りとして、本の表紙にタブレ
ット端末をかざすと、友達がお
おすすめの詩を紹介する
動画がARで飛び出す仕組みを
を準備した。
まず、お互いがお気に入りの
の詩を紹介する姿を動画
撮影して、紹介したい本にリン
ンクを貼った(写真1)。
お互いの動画撮影をするうちに
に、詩のリズムの楽しさ
に気付き、詩を暗唱して発表す
する子が増えてきた。ま
た、自分の動画を再生して確認
認することで、もっと大
きな声で撮影したい、周りの静
静かな場所で撮影したい
と、子ども達が主体的に活動す
するようになった。
写真1
お互いの動画を撮
撮影している様子
タブレット端末を本にかざす
すと友達が詩を紹介する
という仕組みがおもしろくなり、友達の紹介する詩を
聞いて「この詩おもしろいね。
。」と言い、本を自ら読
むようになった。この学習を行
行うことにより、友達の
紹介した詩や本に興味を持ち、
、「○○くんの紹介した
本を、次貸してね。」と声をか
かけ合うことができるよ
うになった。
(2)「のはらうた」の制作か
から協働的な学習へ
タブレット端末のアプリケー
ーション「Phonto」を使
用して、自分が撮影した写真に
にあった、自分なりの「の
はらうた」の作品を考えて制作
作することができた。
紙粘土で作った「のはらうた
た」の仲間を校庭で写真
撮影する際には、最初は一人一
一人が、個人で活動し写
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JAPET&CEC成果発表会
とめて、5年生に作品を発表して、交流を深めること
ができた。
みつけられるかな
ヘビすすむ
ぼくは、いま、草の中にいて
ぼくはみどりのヘビ
草の色もみどりだから、
みつけられるかな。
真撮影をしていた(写真2)が、だん
んだんと友達との
関わりが増え、友達の作品と並べたり
り、話をしたりす
るうちに、ストーリーが生まれてくる
るようだった。紙
粘土を置き、写真を撮っている間に、自然と協働的な
学習に発展したようだった(写真3)
。児童が撮影した
写真は、最初は紙粘土の作品が1つの
の物から、徐々に
2つ、3つ、4つの物と増えていた。
写真4
写真2
一人で制作したフォ
ォトポエム
あーきもちいい
でもなんか、へんなかんじ
あーーー!
ソファーかとおもったよ
んだ!
へびくんはへんしんできるん
一人で撮影をする
る児童
写真5
協働的に学びなが
がら撮影した作品
写真3
協働的に学んでい
いる児童
教室に戻ると、「忘れちゃうからメモしておく。」と
言って、考えた詩をメモしている子や
や、すでに、撮影
した写真に詩を打ち込んでいる児童も
もいた。友達と関
わりながら撮
影し、作品をつくっていたが、同じよ
ような作品をつく
る子は1人もいなかった。
図工の作品づくりなどで、友達と一
一緒に制作してい
ると似てしまうことがよくあるが、今
今回は一人一人の
作品に対
する思いがはっきりしているのだと感
感じた(写真4,
5)。
い方を大型TVに
フォトポエム作りの学習では、使い
映しながら説明を行った。子どもたち
ちの作品はiCloud
で共有することにより、お互いに作品
品を鑑賞すること
ができた。
4月当初は2人組の学習や話し合い
いなど、協力する
ことが苦手な児童だったが、お気に入
入りの詩を紹介す
る際に、お互いに動画を撮影し作品を
を見合うことで協
力して活動ができるようになってきた
た。
出来上がった作品をお互いに見合い
い、発表会の練習
をする際には、「この詩、おもしろい
い。」「この写真
いいね。」とお互いの作品の良いとこ
ころを自然とほめ
合うことができるようになっていた。また、これまで
に制作したフォトポエムのデータを保
保存してあるため、
最後には「ロイロノート」で作品をプ
プレゼン資料にま
詩を創作するためには、詩を
を身近に感じることが必
要である。ARで、お気に入りの
の詩を紹介することは、
とても効果があった。
「思ったことや感じたことを
を、自由に書いてごらん。」
と、話しても、何を書いてよい
いのかわからない子、こ
んなことを書いてよいのかと不
不安になる子がいる。し
かし、
「のはらうた」の仲間になって、感じたことや思
ったことを自由に書いてごらん
んと話したところ、生き
生きと意欲的に全員が活動し、
、作品を制作することが
できた。
5.今後に向けて
タブレットの準備や片付けが
が、担任1人では大変た
め、児童が操作方法に慣れるま
まで、支援員が必要だと
感じた。また、写真を見ながら、縦書きで文字が入力
できるタブレット端末のアプリケーションが開発され
ると、もっと簡単にわかりやす
すく学習ができる。写真
の上に文字を、直接入力してい
いたが、見やすさやバラ
ンスなども考えていきたい。
1
デジタル表現研究会(D-projectt)には、フォトポエムのプ
ロジェクトがある。
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4.成果