【発表要旨】 *姜惠彬(筑波大学大学院 5 年一貫制博士後期課程 人文社会科学研究科 文芸・言語専攻 日本文学 領域) 「川端康成『浅草紅団』論-〈遊戯〉と〈虚構〉を視座として-」 『浅草紅団』 (昭和 4 年 12 月~昭和 5 年 9 月)は主に二つの観点から論じられてきた。一つは、浅草の形容を焦点化 する都市論からの接近であり、一つは、テクストの前衛性を主題化する試みである。本発表では、本作を特定の枠から 切り離し、弓子の復讐劇の意味を集中的に読解すると共に、作品の同時代的意味を考察する。弓子の復讐劇は、浅草を 舞台に生きる人物たちの再生を担い、紅座全員の緻密な構成によって完成している。また、「仮想」都市浅草の中で演 じられる子供たちの「遊戯」は、同時代の堀辰雄の作品中にも主題化されている。更にその「遊戯」は、芸術の「仮象」 性の問題を含意し、完全な「虚構」としての文学に向き合う川端文学の一面を示唆している。 *東雲かやの(早稲田大学大学院博士後期課程) 「不在者のための対話――川端康成『女の手』論」 文芸雑誌『人間』の創刊号(1946.1)に掲載された『女の手』は、川端康成が戦後初めて発表した小説テクストであ る。しかしながら、川端の戦後テクストを考える場においても参照される機会は少なく、等閑視されてきたと言っても 過言ではない。本発表では、この『女の手』に改めて注目し、二者のダイアローグによって現前化される「不在者」の 在り方を分析する。川端テクストに頻出する、二者+「不在者」という構図を考える上で有意義に働く考察を導き出す こと、言葉によって「不在者」の〈姿をよみがへらせ〉ようとする登場人物の運動と、川端康成という作家の創作意識 との接続点を探ること、それが本発表の目的である。 【会場地図】二松学舎大学九段キャンパス 1 号館(〒102-0074 千代田区九段南 2-2-4) アクセス 地下鉄東西線・半蔵門線・都営新宿線「九段下」駅下車、2番出口より徒歩 8 分 JR 中央線(総武線) 、地下鉄有楽町線、東西線、南北線「飯田橋」駅下車、徒歩 15 分
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