多成分中性フェルミ超流動体における渦の理論的研究 量子多体物理学 41418128 堤 康雅 3He に代表されるp 波フェルミ超流動体は, Cooper 対がspin triplet を形成するため, ス ピンの自由度が 3 成分, 軌道の自由度が 3 成分あり, 全体で 9 成分の自由度を持つオーダ ーパラメーターによって記述される多成分フェルミ超流動体である. このオーダーパラメ ーターの多様性のために, 円筒容器中で外部回転なしに自発的な渦が現れるという, s 波超 伝導体には見られない特徴がある. 現在, このような特徴を持つ超流動 3He-A 相を円筒容器中に閉じ込めて, オーダーパラ メーターの空間変調した織目構造(texture)を NMR 測定によって調べる実験が進行してい る[1]. A 相では Anderson-Brinkman-Morel 状態が実現しており, スピン状態を表す d-vector と, 軌道状態を表す l-vector によっ てtextureが形成される. このtextureの変化 が, NMR 共鳴周波数のメインピーク強度の 変化となって観測されるのである. 本研究では, Ginzburg-Landau 理論を用い て, 外部回転による安定な texture の変化を 調べた. その結果, 実験で観測された低回転 での NMR メインピーク強度の変化が, polar 状態の特異点を持つ radial disgyration から, 特異点を持たないMermin-Ho texture への 図 1: 半径100μm, 温度0.95Tc の試料の 転移によるものであるという結論を得た. NMR メインピーク強度の外部回転によ る変化[1]. 図 2: 非回転下で安定な radial disgyration の(a) d-vector. (b) l-vector. [1] R. Ishiguro et al, 日本物理学会第 62 回年次大会 (2007).
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