インテグラル立体

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インテグラル立体
1.背景
8Kスーパーハイビジ ョ ン
(8K SHV)のさらにその先の
次次世代放送サービスを目
指して、めがねなし立体テレ
ビの研究を進めています。
8K SHV の超高画質は、人
の視覚特性からみた究極の
二次元テレビです。一方、め
がねなしの立体テレビの方式
の1つであるこのインテグラ
ル立体テレビは、奥行きも含
めて、被写体が存在する空間
を立体的に表現できます。
2.従来の立体テレビとの違
いは何?
映画「アバター」に代表され
るこれまでの立体映像の多く
は、右目用と左目用の2種類
の映像を用意し、これらの映
像の差分(両眼視差)を特殊
なめがねで切り替えることで
立体的に見ることができまし
た。
一方で、人が実際のモノや
景色を見る場合、右目や左目
の横方向だけでなく、被写体
が様々な方向に発したり反射
したりする光を見て形や色を
認識します。インテグラル立
体テレビでは、実際の空間の
光と同様な状態を再現するこ
とで、めがねなしでたとえ寝
転がって見ても立体的に見る
ことができるのです。
4.今後の課題
インテグラル立体テレビで
は、表示される立体像の品質
を上げるためには、撮影時の
カメラや表示用のディスプレ
ーなどの画素数を非常に多く
する必要があります。8K SHV
は、現行のハイビジョンの 16
倍の画素数を持っていますが、
これでもインテグラル立体テ
レビには十分ではありません。
立体テレビとして望ましい立
体像の品質を明らかにし、そ
れに向けてカメラやディスプレ
ーの画素数を増やすための
研究開発を進めているところ
です。
3.基本的な仕組み
では、どのようにして実際
の空間の光と同じ状態を再現
しているのでしょうか。
インテグラル立体テレビは、
1908 年にフランスの物理学者
リップマンが提案したインテグ
ラルフォトグラフィ(以下、IP)
という立体写真の原理を使っ
ています。
IPでは撮影時に、小さな凸
レンズを二次元状に配置した
レンズアレーをカメラで撮影し
ます。その映像には、被写体
から個々のレンズの方向に進
む光の強さや色が多数の要
素画像として映しだされてい
ます。表示の時には、レンズ
アレーを通して、多数の要素
画像が映し出された映像の背
面から照明を当てます。撮影
の際に個々のレンズの方向
に進んできた光が、逆の方向
に再現され、被写体があった
位置に光学的な立体像を生
成することができるのです。
IPは、撮影・表示とも、レーザ
ー光のような特殊な光源を必
要としません。
撮影
さらに、遠景の映像など、
より多様なシーンの撮影が可
能なようにレンズアレーを用
いない撮影装置の研究開発
も加速しています。この装置
は、複数台のカメラを用いて
様々な方向から被写体を撮
影し、撮影した映像から被写
体の3次元的な形状や色を反
映したデータを生成すること
で、さきほどのレンズアレーに
映しだされた要素画像と等価
な情報を生成することが可能
です。
表示
ディスプレー
要素画像
要素画像
要素画像
テレビカメラ
被写体
立体像
撮影用
レンズアレー
表示用
レンズアレー
インテグラル立体テレビの仕組み