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ガラス防煙垂れ壁 設計・施工フローチャート
「ガラススクリーン」
「ガラス防煙垂れ壁」は
身近な場所にあるからこそ
わずかな破損・落下でも人的被害につながります。
「ガラススクリーン」は、高層ビルの低層部やショールームなど
ス防煙垂れ壁」は、震度5程度では破損しない設計になってい
人が歩く場所の近くに設置されていることが多いため、地震に
ますが、近年、
それ以下の地震でも破損する例が散見されてい
よるわずかな破損でも、人的被害を及ぼす可能性があります。
ます。これらは、低層鉄骨造の建物などでは揺れが大きくなりや
また「ガラス防煙垂れ壁」も、
オフィスや商業施設などで人々の
すいのに充分配慮されていないことや、設計・施工上の何らか
頭上に設置されているので、地震によって落下した場合の被
の不具合が原因だと思われるので、安全性確保に充分注意し
害は想像に難くありません。通常、
「ガラススクリーン」や「ガラ
てください。
■ガラススクリーンの被害例
■ガラス防煙垂れ壁の被害例
2005年8月 宮城県沖震源の地震による被害
2003年5月 宮城県沖震源の地震による被害
面ガラス、方立ガラスともに破損して全面が脱落した
写真 : 日本経済新聞社 提供
ガラスが破損し、下部通し材がなかったため一部が脱落した
写真 : 日経ア−キテクチュアより転載
気をつけたい! 事故が起きる7つの主な理由
ガラススクリーンの設計・施工上の問題点
ガラス防煙垂れ壁の耐震設計は、破損防止性の向上に加えて、破損した場合の脱落防止を重視して実施する必要があります。
設計・施工に際しては、以下の流れに沿って安全性の向上に努めてください。
取
付
け
箇
所
の
選
定
ガ
ラ
ス
の
割
付
け
、
高
さ
の
決
定
天
井
形
状
、
構
造
の
チ
ェ
ッ
ク
天
井
へ
の
取
付
け
金
物
の
選
択
耐
震
性
の
確
認
ガ
ラ
ス
の
選
択
見
積
り
・
発
注
取
付
け
工
事
ここに注意!
ここに注意!
ここに注意!
ここに注意!
ここに注意!
ガラスの割付幅、
高さには制限があ
るので注意してく
ださい
天井構造によって
取付け方法が 異
なるので合致した
ものを選択する
下部に脱落防止
金物が通っている
こと、端部に変形
の緩衝構造がある
ことを確認する
網入りガラスまたは
線入りガラスのどち
らかを選択する
天井金物に先加
工が 必 要な場 合
は、前工程へ早め
に連絡する
金物の取付けピッ
チの制限にも注意
する。
耐震設計のチェックポイント
現在、
ガラス防煙垂れ壁の設計では、
ガラスメーカーをはじめとするメーカー各社のガラス防煙垂
れ壁システムを採用することがほとんどであるため、
これを前提とした注意点を以下にまとめます。
●一定の耐震性が確保されているガラス防煙垂れ壁システムを採用する。
●ガラスが破損した場合を考慮し、
ガラス落下防止用の下枠等があるものを採用する。
●ガラス厚さ6.8mmの網入りガラスまたは線入りガラスを用いる。
1 ガラスまわりの納まり検討が充分でない
メーカーへの発注時に面ガラスや方立ガラスの厚さ、
大きさ、
ガラス品種、割付け寸法が決まっていないため、納まり検討
がなされていない
3 施工者が耐震性を無視した仕様変更をしてしまう
耐震設計がなされていても施工者の理解不足やコスト削減
のために設計変更されてしまう
2 層間変形角のチェックが不十分
4 シーリングの施工管理が不適切
小規模建物の場合、
1/200に対するチェックしか行わず耐震
性に関わる躯体の変形が検討されていない
養生も含めて適切にすべきシーリングの施工管理がずさんに
行われている
●ガラス端部と壁・柱などとの取合い部のクリアランスを充分にとり、
ガラス端部に緩衝材等を設ける。
●下地の構造が地震時にもガラスの重量に耐えられるものであることを確認する。
野縁を受け材として取付ける
こともできます
取付け構法によっては、
野縁を受け材として、
ガラス防煙垂れ壁を取付けることができます。但し、
野縁の強度が充分で
あるか確認することが必要です。
この場合は、
ガラス防煙垂れ壁の設置位置と天井下地の位置を合わせておくと作業効
率が高まります。他の取付け構法の場合は、
ガラス防煙垂れ壁のための受け材を別途取付ける必要があります。
施工時のチェックポイント
ガラス防煙垂れ壁の設計・施工上の問題点 5 耐震性に配慮した構法が採用されていない
耐震性能に対する意識が低く安易に設計・施工されている
7 実施設計の段階で耐震性が無視されてしまう
設計時の耐震性能が、施工段階でのミスや工期短縮など
の理由で変更されてしまう
●メーカーのガラス防煙垂れ壁システムを採用する場合は、施工マニュアルに忠実にミスのない施工を行う。
●メーカーのガラス防煙垂れ壁システムを採用しない場合は、耐震性について充分に検討を行うこと。
<参考・引用文献>「鉄骨造建築物におけるガラススクリーン及びガラス防煙垂れ壁構法の設計・施工ガイドライン」
(財団法人 日本建築防災協会)2007.03
6 採用したシステムの専用金具を使用しない
システム用の金具を用いずに代用品を使用したため、
充分な
保持力を有していない
●お問い合わせ
板硝子協会
〒100-0005 東京都千代田区丸の内3-4-1 新国際ビル2F TEL.03-3212-8631 FAX.03-3216-3726
制作:印刷 大東印刷工芸株式会社 / 2007.07
板硝子協会
設計から施工まで、
ガラス事故防止の安全チェックポイント。
近年、地震による構造物の被害は減少傾向にある一方で、壁や天井
ています。下記のフローチャートは、
(財)
日本建築防災協会による「鉄
など非構造部材の損傷が目立ちはじめています。とくに、人的被害に
骨造建築物におけるガラススクリーン及びガラス防煙垂れ壁構法の
つながりやすい「ガラススクリーン」や「ガラス防煙垂れ壁」が破損・脱
設計・施工ガイドライン」に基づいて作成したものです。設計・施工に
落するケースが散見され、設計・施工時には充分な注意が必要となっ
際しては、
フローチャートに則って充分な安全性を確保してください。
ガラスの納まり検討時のチェックポイント
ガラススクリーン設計・施工フローチャート(建物高さ13m以下低層鉄骨造の場合)
建築設計事業者のみなさんは、
フローチャートの「サッシ関係の見積り・発注」
「ガラス関係の見積り・発注」よりも前段階で耐震性に関わる各種
Check
寸法や性能値の設定を行ってください。
Check
1
基
本
設
計
・
地
震
時
の
層
間
変
位
量
の
指
示
・
設
計
風
圧
力
の
指
示
Check
実
施
設
計
・
構
法
の
選
択
Check
ガ
ラ
ス
の
割
付
け
、
方
立
ガ
ラ
ス
の
タ
イ
プ
の
指
示
2
Check
支
持
構
造
の
加剛
工性
のと
検
討
3
ガ
方ラ
立ス
ガの
ラ割
ス付
のけ
構、
成
選
択
基本設計のチェックポイント
Check
ガ
ラ
ス
の
耐
風
圧
設
計
・
方
立
ガ
ラ
ス
の
厚
さ
、
幅
の
検
討
Check
ガ
ラ
ス
の
納
ま
り
検
討
・
風
圧
力
な
ど
の
外
力
の
他
に
ガ
ラ
ス
重
量
に
よ
る
検
討
5
シ
ー
ル
目
地
幅
、
か
か
り
代
、
耐震性能を維持するために各部のクリアランスを確保する
下図に示すポイントについて、必要なクリアランスが確保されているか、
確実にチェックしてください。
6
シ
ー
リ
ン
グ
材
な
ど
の
検
討
6
・
エ
ッ
ジ
ク
リ
ア
ラ
ン
ス
、
面
ク
リ
ア
ラ
ン
ス
、
サ
ッ
シ
検
討
・
図
面
作
成
・
サ
ッ
シ
材
質
の
選
択
を
含
む
4
吊※
り吊
金下
げ
物型
の
検場
合
討
・
面
ガ
ラ
ス
の
厚
さ
検
討
構法選択のチェックポイント
サ
ッ
シ
関
係
の
見
積
り
・
発
注
躯
体
に
吊
り
金
物
を
取
付
け
サ
ッ
シ
製
作
面
ガ
ラ
ス
の
は
め
込
み
ま
た
は
吊
込
み
セ
ッ
テ
ィ
ン
グ
ブ
ロ
ッ
ク
の
セ
ッ
ト
サ
ッ
シ
取
付
け
方
立
ガ
ラ
ス
の
は
め
込
み
ま
た
は
吊
込
み
ガ
ラ
ス
の
位
置
調
整
・
固
定
方
立
ガ
ラ
ス
端
部
の
固
定
コ
ー
ナ
ー
ガ
ラ
ス
端
部
の
固
定
※吊下げ型の場合に
作業が発生
ガ
ラ
ス
関
係
の
見
積
り
・
発
注
吊り金物製作
C
※
コ
ー
ナ
ー
突
き
つ
け
が
あ
る
場
合
シ
ー
リ
ン
グ
工
事
A
養
生
ガ
ラ
ス
の
清
掃
E
検
査
・
引
渡
し
板ガラス
支持枠上面
セッティングブロック
B
方立ガラスと面ガラスの
クリアランス
B
D
セッティング
ブロック設計
F
端部面ガラスの破損対策
方立ガラスまわりのクリアランス
面ガラスとの目地幅は10mm以上と余裕をもたせる
方立ガラス構成選択のチェックポイント
セッティングブロック設計(自立型の場合)
セッティングブロックは下辺のエッジクリアランスが確保できる寸法と
してください。
またガラス重量で破断しない設計が必要です。
コーナーガラス部分の
破損対策
方立ガラスとサッシの間の面クリアランス
(A)
は、12mm以上、方立
ガラスと面ガラスのクリアランス
(B)は、10mm以上確保してくだ
さい。
ガラスに吊り金物を接着
D
壁
A
※吊下げ型の場合に
作業が発生
ガラス 製 作
方立ガラスとサッシ間の
面クリアランス
面ガラス上辺の
エッジクリアランス
E
コーナーガラス部分の破損対策
コーナー部でのガラスの突き付けは避けてください。やむを得ない
場合は、突き付け部分の目地幅を12mm以上、面クリアランスを
6mm以上確保し、
コーナー部に当てゴムを装着してください。
弾性シーリング材
(シリコーン系)
ガラス種別選択のチェックポイント
方立ガラス
Check
1
構造体の変形を考え、
層間変形角を必ず確認する
ここに注意!
Check
2
自立型か、吊下げ型か?
構法選択はガラス厚さと高さを目安に
ここに注意!
●構造体の層間変形角が示されているときは、
それに従って設計する
●一般にガラス高さ6m以上では、
吊下げ型を選択する
●指定が無い場合は、
1/100を想定する
●下置きに伴うゆがみを制御する場合は、高さ4∼6mでも吊下げ
型が望ましい
低層鉄骨造の場合、想定変形角1/100は、震度5または震度6
程度の地震でも想定される最大変位角であり、構造体の層間
変形角が示されていない場合には、最低でもこの値を維持し
てください。
Check
デザインだけでなく、
性能上の特長も考慮して決定する
3
両側ガラス方立
片側ガラス方立
○ガラススクリーン構法の種類と選択方法
ガラス高さ
ガラス厚さ
(mm) 自立型ガラススクリーン 吊下げ型ガラススクリーン
4.0m未満
8
4.5m∼5.0m未満
4.5m未満
10
5.0m∼5.5m未満
5.0m未満
12
5.5m∼6.0m未満
5.5m未満
15
6.0m∼10.0m未満
6.0m未満
19
説 明
風圧力は正圧、負圧ともに方立ガラスが受けるの
で信頼性が高い
方立ガラスを室内側にのみ配する場合が多いが、
この場合、負圧に対してはシリコーン系シーリング
材の接着引張強度に頼ることになるので、
シーリ
ング材の設計・施工面での検討と管理が必要
両側ガラス方立タイプ
片側ガラス方立タイプ
部位
面ガラス
方立ガラス
シーリング材
方立ガラス
部位に合わせて
適切なガラスを選択する
5
方立ガラス
目地幅を12mm以上余裕をもたせる
シーリング材や合わせガラスの中間膜に悪影響をおよぼさないものをご使用ください。
*クロロプレンゴムやEPDMは、
C
面ガラス上辺のエッジクリアランス
面ガラス上辺のエッジクリアランスは、耐震性確保のために必
要な寸法以上を必ず確保してください(一般に30mm程度)。
また、
ガラスのかかり代は20mm以上または板厚の1.5倍以上が目安です。
使用部位に合わせて
最も適切なものを選択する
シーリング材の種類
高モジュラスのシリコーン系シーリング材
シリコーン系シーリング材
F
端部面ガラスの破損対策
縦枠の面クリアランスは6mm以上、
エッジクリアランスは25mm以上
確保してください。また、
ガラスのかかり代は20mm以上、
または板
厚の1.5倍以上が目安です。
バックアップ材
30
20
○部位別の推奨シーリング材
部位
ガラスの突合せ部
ガラスと支持枠間
クロロプレンゴム
当てゴムを装着
またはEPDM*
クロロプレンゴム
またはEPDMなど*
シーリング材選択のチェックポイント
面ガラス
シーリング材
ガラスの種類
フロート板ガラス
フロート板ガラスまたは合わせガラス
合わせガラスを用いるなどして方立ガラスを厚くすると、
幅を小
さくすることができます
Check
面ガラス
4
○部位別の推奨ガラス
○方立ガラスの構成方法と性能
方立ガラスの構成方法
Check
6
6