マーケットの底 流 を読 む 株式会社ジャパンエコノミックパルス Japan Economic Pulse Co., Ltd. OECD 景気先行指数、底離れ機運 [email protected] 世界緩和や原油安が寄与、危機後の在庫循環も 3 巡目 OECD 景気先行指数(加盟 33 カ国総計)は今年 1 月に 100.4 となり、昨年 4 月以降の 100.3 前後での 横這い停滞から底離れ機運が見られ始めた。世界減 速の重石となってきた欧州経済が底入れし、中国や インド、ブラジルなどの新興国も復調傾向にある。 世界的な金融緩和や原油安、米国の内需回復などが 先行きの世界経済を下支えしていくほか、2008 年 9 月のリーマン・ショックから今年 4 月で約 80 カ月目 となり、キチン循環と呼ばれる伝統的な在庫循環の 40 カ月周期も 3 巡目に向かいつつある。 中国の CPI 上昇、世界デフレ懸念を緩和 「ユーロ圏で成長の勢いに前向きな変化が見受け られるほか、主要先進国、及び OECD 全体では成長の 勢いが安定している」――。 OECD は最新 1 月の景気先行指数に関し、このよう な解説を行っている。同指数は産業活動や GDP の流 れ、通貨量などを基に、観測時点から 4-6 カ月後の 景気動向を占うものだ。指数が基準値 100 を上回る と景気拡大を、基準値を下回ると景気後退を意味す る。最近では昨年 4 月以降、100.3 での横這い停滞 が続いてきたが、今年 1 月は 100.4 となり、緩やか ながらも底離れの機運が見られ始めた。 地域別では懸案のユーロ圏が 100.7 となり、前月 の 100.6 から上昇。ドイツは 99.7 と前月の 99.6 か ら改善し、昨年 1 月の 101.1 を直近ピークとした低 下傾向に歯止めが掛かっている。イタリアも 3 カ月 連続で前月比プラスとなっており、ユーロ安や資源 下落、欧州中銀(ECB)の量的緩和導入などにより、 欧州経済の減速に一服感が見られている。 さらに米国や日本は横這いとなる一方、中国やイ ンド、ブラジルなどの新興国が改善してきた。世界 的な金融緩和や原油安、米国の内需回復、地政学リ スクの小康などを受けて、世界経済には先行き復調 のサインが点滅しつつある。ちょうど 10 日には中国 の 2 月 CPI(消費者物価指数)が前年比+1.4%となり、 予想の+1.0%や前月の+0.8%を大きく上回る上昇 となった。春節(旧正月)連休に伴う食品や運輸関連 のコスト上昇が影響したが、 「食品・エネルギーを除 く」ベースでも+1.6%となり、前月の+1.2%から 反転上昇となっている。世界的なデフレ圧力の一因 となっている中国での物価改善は、過度な世界減速 とディスインフレの懸念を緩和させるものだ。 日本でも最新 2 月の景気ウオッチャー調査では、 企業関連の景気現状判断 DI が 50.9 となり、前月の 45.5 から大きく上昇した。昨年 3 月以来の高水準を 回復しており、国内での消費税増税や海外の景気減 2015/3/11 速などを受けた低迷から脱却している。 先行き判断の回答では、 「燃料価格が大幅に下がっ ており、海上部門では 5 年前の価格水準に戻ってい ることで、荷主への還元が進んでいる」(輸送業)、 「自動車関連の既存部品で久々の増産情報が入って きている。停滞気味だった自動車試作開発案件も通 常のボリュームに戻り、しばらく動きがなかった油 圧ショベル向けの仕事も若干の増産に転じる見込 み」(一般機械器具製造業)、 「4 月から樹脂原料が大 幅に下がる見込みで、仕入れ原料のコストが下がり、 収益率の向上につながる」 (化学工業)といった前向 きな現場の声が見られていた。 世界の景気循環面でいえば、2008 年 9 月のリーマ ン・ショックから今年 4 月で約 80 カ月目を迎える。 伝統的に景気循環の短期波動を意味する在庫循環は 「キチン循環」と呼ばれ、約 40 カ月の周期と定義さ れてきた。足元では世界的な金融経済危機からのリ バウンド回復や反動減速などを経て、3 巡目の回復 サイクルへと向かいつつある。もちろん、現在は IT 革命の進捗や経済のグローバル化などにより、明確 な周期性は崩れている。それでも米国では最新 2 月 の ISM 製造業景況指数、日本では 1 月の鉱工業生産 などで、昨年からの在庫積み上がりの反動的な在庫 調整入りの改善局面が確認されている。 OECD 循環回復、FRB 利上げまで継続 すでに 1 月の OECD 景気先行指数でも、加盟国に主 要新興国を合わせたベースでは、前年同月比で小幅 プラスへの基調改善が見られ始めた。昨年 5 月から 12 月までのマイナスを経て、循環回復入りが示唆さ れている。日経平均株価は外需依存度が高く、過去 には OECD 指数の循環サイクルと明確な相関性を有 している。過去に「加盟国+主要新興国ベース」が 前年比で底入れし、循環回復に転じてくると日経平 均も連動する形で上昇モメンタムが点火されてきた。 その意味で日経平均の 2 月からの上昇加速は、 「世界 経済の循環的なファンダメンタルズ改善」に即した 上昇として、先行きの持続性が注目されよう。 1980 年代以降、OECD 指数が前年比で底入れ反転し てくると、日経平均は前年比ベースで+3000 円から +6000 円程度まで上昇する相場循環が繰り返され てきた。例えば前回の指数底入れは 2012 年 5 月であ ったが、当時は同年後半のアベノミクス相場の始動 も重なり、その後に日経平均は上昇の勢いが加速。 月中高値の比較ベースでは、2013 年 11 月に「前年 同月の高値比+6236 円」という高値まで株高が進展 している。 その前の OECD 指数の循環回復に連動した株高ピ ークでは、2006 年 5 月に前年比+6072 円、2004 年 4 月に+3945 円、2000 年 2 月に+5404 円、1996 年 6 月に+6734 円――という実績が見られてきた。今回 は過去に比べると世界景気の回復ペースは緩慢なが ら、過去の「前年同月比+3000 円から+6000 円」と いう経験則と、 「昨年の月中高値 1 万 5000 円から 1 万 8000 円」を基準とすれば、今年は年後半にかけて 2 万 1000 円から 2 万 4000 円程度を試す可能性も非 現実的ではない。 しかも現在は日本の企業業績にとり、円安と原油 安という二重の追い風が吹いている。NY 原油先物は 急落が一服してきたが、それでも 1 バレル=50 ドル 前後での安値圏にあり、前年同月比では-50%前後 のマイナス推移が維持されている。過去の OECD 景気 先行指数は原油価格の急落後、6 カ月程度のタイム ラグで成長ペースが底上げされる遅行効果が観測さ れてきた。今回の場合、昨年 11-12 月から原油価格 は下落が堅調となっており、今年の年央にかけて時 97 100 103 106 109 112 115 118 121 124 127 改善余地↑ 130 133 OECD景気先行指数;加盟国+主要新興国の前年比 日本の鉱工業生産;在庫(2010年=100、軸を上下反転) 在庫減↑ OECD(左軸) 在庫増↓ 5 4 3 2 1 -1 -2 -3 在庫(右軸) 先行指数(左軸) Apr-15 Mar-14 Feb-13 Jan-12 Dec-10 Nov-09 Oct-08 Sep-07 Aug-06 Jul-05 Jun-04 May-03 Apr-02 Mar-01 Feb-00 Jan-99 Dec-97 OECD景気先行指数;加盟国+主要新興国の前年比 日経平均の前年比変化幅(月中高値の比較) 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 -0.5 -1.0 -1.5 -2.0 -2.5 8,000 6,000 4,000 2,000 0 -2,000 -4,000 -6,000 -8,000 底入れ 日経平均(右軸) Jan-15 Dec-13 Nov-12 Oct-11 Sep-10 Aug-09 Jul-08 Jun-07 May-06 Apr-05 Mar-04 Feb-03 Jan-02 Dec-00 Nov-99 Oct-98 Sep-97 Aug-96 Jul-95 Jun-94 May-93 Apr-92 % Nov-96 Oct-95 Sep-94 Aug-93 Jul-92 Jun-91 % 間差を経た累積の景気刺激効果が注目されよう。 加えて年初からは世界的な金融緩和競争が活発化 している。米国では 6 月から 9 月にかけての FRB に よる利上げ観測が高まっているが、過去の「平時」 の OECD 景気先行指数では、循環回復から減速局面へ の移行は、FRB による継続的な利上げから引き締め バイアスを明確化させたあとに訪れるケースが目立 つ。 ひるがえって現在は 6-9 月の米利上げにまだ不 透明感が漂うほか、当面はあくまで金融政策の「中 立化」や「正常化」に向けた小幅利下げにとどまる 可能性が高い。本格的な引き締め傾斜は来年以降と の見方が強く、それまでは OECD 景気先行指数の緩や かな循環回復トレンドが維持されよう。同指数は外 国人投資家による日本株投資と密接な相関性を有し ており、短期的な利益確定売りを経ながらも、回転 の効いた対日株式投資がしばらくは持続する可能性 を秘めている。 円 お客様は、本レポートに表示されている情報をお客様自身のためにのみご利用するものとし、第三者への提 供、再配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させる ことは出来ません。情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありませ ん。また、これらの情報によって生じたいかなる損害についても、当社および本情報提供者は一切の責任を 負いません。本レポートの内容は、投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的とし たものではありません。投資にあたっての最終判断はお客様ご自身でお願いします。
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