報 文 模擬橋梁を用いた施工試験による寒冷地用塗料の施工性、施工対策に関する検討 Study on Paint for Cold Regions by Construction Tests Using Model Bridge: Workability and Measures of Working 林田 宏* 冨山 禎仁** 石田 博文*** HAYASHIDA Hiroshi, TOMIYAMA Tomohiro, and ISHIDA Hirohumi 模擬橋梁を用いた施工試験により、寒冷地用塗料の施工性、施工対策を明らかにするための検討を 行った。氷点下および気温が比較的高い温度域において、有機ジンクリッチペイント、ふっ素樹脂塗 料を使用した仕様の施工試験を行った結果、作業性、外観、乾燥性に大きな問題は認められなかった。 また、施工対策として送風機による換気を行うことで、結露の発生を抑えることができた。 《キーワード:模擬橋梁;寒冷地用塗料;施工性;施工対策》 A study by construction tests using model bridge investigated the workability of paint for cold regions and the effectiveness of a measure taken against problems that are likely to occur during work. Construction tests about the specification for organic-zinc-rich paint and fluorine were carried out at below-zero temperatures and at a relatively high range of temperatures. No major problems were found regarding workability, surface appearance and drying performance. Ventilation using a blower as a measure against problems that are likely to occur during work, was able to prevent condensation. 《Key words: model bridge, paint for cold regions, workability, measures of working》 2 寒地土木研究所月報 №742 2015年3月 となっている。形状等は図-2、3のとおりである。 1.はじめに 図-3に示す2本の桁のうち、片側の桁を施工対象と 冬期の低温時に塗装工事を行う場合、変性エポキシ した。 樹脂塗料などの低温用塗料を適用しても、5℃以下で 2.1.3 塗装仕様 の塗装は制限される。このため、以下のような問題が 別途行った検討の結果2)から、耐久性が良好であっ 生じていた。 たメーカーの異なる5種類の寒冷地用塗料を用いて、 (1)一日の中で適温となる施工可能時間が夏期に比べ 短いため、作業効率が低下する。 施工試験を行った(表-1)。なお、各仕様の塗装範囲 は、図-4に示すように、対傾構で分割された橋軸方 (2)適温確保のため、暖房機などを使用すると、夏期 向に5m程度の範囲である。 に比べてコスト増となり、CO2排出量も増加する。 (3)上記の問題とも関連し、塗装工事は発注時期が春 25 から夏にかけて集中し、繁忙期と閑散期が極端と そこで、これらの問題を解決するため、イソシアネ ートでの重合反応硬化等により5℃以下の低温領域で 1) 硬化が可能となる寒冷地用塗料が開発された 。しか し、寒冷地用塗料の耐久性や施工性等の性能に関する 20 ᷷ᐲ䋨㷄䋩 なる。 15 10 5 0 -5 検討は十分に行われていない。 このため、室内促進試験、実環境における暴露試験、 図-1 札幌の平均気温の平年値(1971 ~ 2000年) 模擬橋梁を用いた施工試験などを通して、寒冷地用塗 料の耐久性、施工性、施工対策等を明らかにするため の検討を行った。 本報文では、このうち、模擬橋梁を用いた施工試験 による氷点下および気温が比較的高い温度域での施工 性、結露への施工対策に関する検討結果を報告する。 なお、耐久性の検討、揮発溶剤への施工対策の検討 結果については、別途参考文献2)を参照されたい。 写真-1 模擬橋梁 2.下限温度での施工性に関する検討 2.1 試験概要 厳寒期を想定した氷点下の温度域における、寒冷地 用塗料の施工性について確認するため、模擬橋梁を用 いた施工試験を行った。 2.1.1 目標温度 図-1は、札幌における1971 ~ 2000年の平均気温 図-2 側面図 3) の平年値 を示している。この図より、厳寒期におい ても平均気温の平年値は-5℃以上であることから、 今回の施工試験においては、寒冷地用塗料の施工温度 の下限目標を-5℃に設定した。 2.1.2 模擬橋梁 施工試験に使用した模擬橋梁(写真-1)は、道内に 架設されていた橋梁の架け替えに伴い、その一部を角 山試験場 (北海道江別市)に試験体として移設された 図-3 断面図 後、床版等が設置されており、極めて実橋に近い状態 寒地土木研究所月報 №742 2015年3月 3 表-1 塗装仕様 ᭽ฬ 䋱ጀ⋡ 䋲ጀ⋡ 䋳ጀ⋡ ⤑ෘ 㪌㪇㱘㫄 㪌㪇㱘㫄 㪌㪇㱘㫄 㸇F2 ᯏ䉳䊮䉪䊥䉾䉼 䊕䉟䊮䊃 䉣䊘䉨䉲ਅႣ 䉣䊘䉨䉲ਅႣ 㸇AF1 ᯏ䉳䊮䉪䊥䉾䉼 Ḩ᳇⎬ൻᒻ Ḩ᳇⎬ൻᒻ 䊕䉟䊮䊃 䊘䊥䉡䊧䉺䊮ਅႣ 䊘䊥䉡䊧䉺䊮ਅႣ ෘ⤑ 䈸䈦⚛Ⴃ 㸇AF2 ᯏ䉳䊮䉪䊥䉾䉼 䊕䉟䊮䊃 䉣䊘䉨䉲ਅႣ 䉣䊘䉨䉲ਅႣ ෘ⤑ 䈸䈦⚛Ⴃ 㸇AF3 ᯏ䉳䊮䉪䊥䉾䉼 䊕䉟䊮䊃 䉣䊘䉨䉲ਅႣ 䉣䊘䉨䉲ਅႣ ෘ⤑ 䈸䈦⚛Ⴃ 䉣䊘䉨䉲ਅႣ ෘ⤑ 䈸䈦⚛Ⴃ ᯏ䉳䊮䉪䊥䉾䉼 㸇AF4 䊕䉟䊮䊃 䉣䊘䉨䉲ਅႣ 㶎㪈䋺Ⴃᢱฬ䈲䇸ኙ಄↪䇹䉕⋭⇛ 㶎㪉䋺ෘ⤑Ⴃᢱ䈱႐ว䈱⤑ෘ 䋴ጀ⋡ 䋵ጀ⋡ 㶎㪉 㪉㪌㱘㫄 㪊㪇㩿㪌㪌 㪀㱘㫄 䈸䈦⚛↪ਛႣ 2.1.4 塗装方法 塗装作業は、はけ塗りにて行った。なお、塗装作業 䈸䈦⚛Ⴃ OO OO OO Σ( OO Σ#( OO OO Σ#( OO Σ#( OO Σ#( に用いる塗料の希釈調整については、各塗料の温度- 粘度-希釈率曲線と塗装時の温度に基づき、各塗料メ ーカーの適性塗装粘度になるように希釈調整を行った。 図-4 各仕様の塗装範囲 また、塗付量は各塗装仕様の Wet 数値を Wet ゲージ にて確認しながら管理した。 また、塗装作業に先立ち、旧塗膜を除去するため、 除せい度が Sa2.5以上となるまで、ブラストによる素 地調整を行った。なお、ブラストにて旧塗膜を除去す る際の飛散防止のため、実施工と同様に防護パネルを 設置し、防護パネル内部には飛散防止シートを設置し て、養生を行った (写真-2)。この養生は降雪等の影 響を避けるための養生も兼ねている。 写真-2 養生状況 2.1.5 評価項目 施工性の評価は表-2の項目について実施した。 表-2 施工性の評価項目 2.2 試験結果 施工性の評価結果を表-3に示す。なお、施工試験 時の温度は概ね目標温度である-5℃程度となってい た。詳細については、4章で後述する。 ⹏ଔ 㗄⋡ ᬺᕈ ٤㧦 ห╬એ ޓ4EΣߣߩᬺᕈߩᲧセ ٌ㧦 ߿߿ᬺᕈ߇ᖡ 㧦 ᬺᕈ߇ᖡ 2.2.1 作業性 表-3に示すように、いくつかの塗料で「やや作業 ᄖⷰ ٤㧦 ⇣⁁ߥߒޓ 性が悪い」という評価となった。具体的には、時間経 ޓႣ⤑⇣⁁ߩή ٌ㧦 ࠊߕ߆ߦ⇣⁁ࠅ 過によって、はけさばきがやや重く、つっぱり感を感 じるようになるというものであり、はけ塗り作業が困 難となるほどのものではなかった。これは、寒冷地用 塗料が低温状態における乾燥性向上のため、揮発の早 い溶剤を用いていることに起因するものと推測される。 4 㧦 ⇣⁁ࠅ ੇ῎ᕈ ٤㧦 ඨ⎬ൻੇ῎એ ޓ⠉ᣣߩੇ῎⁁ᘒ ٌ㧦 ߴߚߟ߈ 㧦 ᜰ⸅ੇ῎એਅ 寒地土木研究所月報 №742 2015年3月 表-3 施工性の評価結果 ᭽ฬ ᬺᕈ ᄖⷰ ੇ῎ᕈ 䉳䊮䉪 ਅႣ ਅႣ ਛႣ Ⴃ 䉳䊮䉪 ਅႣ ਅႣ ਛႣ Ⴃ 䉳䊮䉪 ਅႣ ਅႣ ਛႣ Ⴃ 㸇F2 䂾 䂦 䂦 䂾 䂾 䂾 䂾 䂾 䂾 䂦 䂾 䂾 䂾 䂾 䂾 㸇AF1 䂾 䂦 䂦 㪄 䂦 䂾 䂦 䂾 㪄 䂾 䂾 䂾 䂾 㪄 䂾 㸇AF2 䂾 䂾 䂦 㪄 䂦 䂦 䂾 䂾 㪄 䂾 䂾 䂾 䂾 㪄 䂾 㸇AF3 䂾 䂾 䂾 㪄 䂾 䂦 䂾 䂾 㪄 䂾 䂾 䂾 䂾 㪄 䂾 㸇AF4 䂾 䂦 䂾 㪄 䂾 䂾 䂾 䂾 㪄 䂾 䂾 䂾 䂾 㪄 䂾 2.2.2 外観 表-3に示すように、ほとんどの塗料の外観は概ね 良好であったが、一部の塗料で「はけ目」や「たれ」 が見られた。具体的には、仕様Ⅰ AF3の有機ジンク リッチペイントで若干の「はけ目」が、また、仕様Ⅰ AF2の有機ジンクリッチペイント、Ⅰ AF1の下塗、 ΣAF3 ΣAF2 ΣAF1 ΣF2 Ⅰ F2の上塗で若干の「たれ」が見られた(写真-3)。 しかし、いずれの仕様においても、所定の膜厚は確保 されており、防食性には問題ないと考えられる。 2.2.3 乾燥性 表-3に示すように、すべての塗料において、乾燥 性は良好であった。 写真-3 外観異常の状況 3.上限温度での施工性に関する検討 3.1 試験概要 20 雪期には、日中の気温が5℃を上回って、推移するこ とが想定される。この場合、寒冷地用塗料の乾燥や硬 化反応が早くなり、施工性の低下が懸念される。 そこで、気温が比較的高い施工環境での、寒冷地用 塗料の施工性について確認するため、模擬橋梁を用い た施工試験を行った。 3.1.1 目標温度 ᷷ᐲ㧔͠㧕 通常塗料が使用できなくなり、寒冷地用塗料の使用 が想定される最低気温5℃を下回り始める向寒期や融 11/1 11/20 11/10 11/30 15 10 5 0 -5 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 ᤨೞ 図-5 11月の一日の気温推移(江別、2011年) 施工試験を行った前年11月の一日の気温推移を図- 5に示す。概ね11月中旬(11/10 ~ 20)頃に、日中の気 温が5℃を下回るようになるが、最高気温は10℃程度 3.1.3 塗装仕様 となっている。このため、今回の施工試験では、施工 表-1に示す塗装仕様のうち、表-4に示す各層の 中の目標温度を10℃に設定し、検討を行った。 11種類の寒冷地用塗料を用いて試験を行った。また、区 3.1.2 模擬橋梁 画分けについては、片側の桁の内側を、図-6に示す 施工試験では、2章で述べた模擬橋梁の桁のうち、 ように分割した。具体的には、各塗料の施工面積は、垂 未施工である反対側の桁を施工対象とした。 直補剛材を挟んだ2パネル分のウェブであり、幅2000 mm ×高さ1400mm である。この区画を希釈調整直後、 1、2、3時間後の4回に分けて施工した。 寒地土木研究所月報 №742 2015年3月 5 3.1.4 塗装方法 表-4 塗装仕様 塗装作業は、はけ塗りにて行った。塗装作業に用い ᭽ฬ 0Q る塗料の希釈調整については、各塗料の温度-粘度- 1 ΣF2 希釈率曲線と塗装時の温度に基づき、各塗料メーカー の適性塗装粘度になるように希釈調整を行った。なお、 1、2、3時間後に適性塗装粘度を外れた場合には、 Ⴃᢱฬ 1ጀ⋡ ᯏࠫࡦࠢ࠶࠴ࡍࠗࡦ࠻ 2 ΣAF1 1ጀ⋡ ᯏࠫࡦࠢ࠶࠴ࡍࠗࡦ࠻ 3 ΣAF3 1ጀ⋡ ᯏࠫࡦࠢ࠶࠴ࡍࠗࡦ࠻ 4 ΣAF1 2,3ጀ⋡ Ḩ᳇⎬ൻᒻࡐ࠙࠲ࡦਅႣ 5 ΣAF2 2,3ጀ⋡ ࠛࡐࠠࠪਅႣ 適性塗装粘度になるように、再度、希釈調整を行った。 また、塗付量は各塗装仕様の Wet 数値を Wet ゲージ 6 ΣAF4 2,3ጀ⋡ ࠛࡐࠠࠪਅႣ 7 ΣF2 4ጀ⋡ ߰ߞ⚛↪ਛႣ にて確認しながら管理した。 塗装作業前の素地調整については、旧塗膜にさびが 8 ΣF2 ほとんどなかったため、図-6に示す④~⑪の区画に 5ጀ⋡ ߰ߞ⚛Ⴃ 9 ΣAF2 4ጀ⋡ ついては、素地調整程度4種とした。また、有機ジン ෘ⤑߰ߞ⚛Ⴃ 10 ΣAF3 4ጀ⋡ クリッチペイントを塗装する①~③の区画について ෘ⤑߰ߞ⚛Ⴃ 11 ΣAF4 4ጀ⋡ ෘ⤑߰ߞ⚛Ⴃ は、素地調整程度1種とし、除せい度が Sa2.5以上と なるまで、ブラストによる素地調整を行い、旧塗膜を OO 除去した。 OO OO OO OO OO OO OO 3.1.5 評価項目 施工性の評価は、施工現場での塗料の使用時間が約 Ԙ ԙ Ԛ 2時間程度であることを考慮して、希釈調整直後、1、 2、3時間後の4水準について、表-2に示す項目に Ԝ ԝ Ԟ ԟ ԛ Ԡ ԡ Ԣ 図-6 各仕様の塗装範囲 ついて実施した。 13 ᷷ᐲ㧔͠㧕 3.2 試験結果 施工性の評価結果を表-5に示す。なお、施工試験 時の温度については、図-7に示すとおり、桁の中間 位置のウェブに設置した温度計の測定結果では、概ね 目標温度である10℃前後で推移した。 12 11 10 9 8 3.2.1 作業性 9 10 表-5に示すように、塗料 No. 5、8は、試験途中 11 12 13 14 15 ᤨೞ でゲル化した。なお、各時間の塗装前に行った粘度測 図-7 施工時の気温 定の結果、塗料 No. 5、8の粘度は、1時間後の時点 表-5 施工性の評価結果 0Q ᭽ฬ ᬺᕈ ᄖⷰ ੇ῎ᕈ ⋥ᓟ 1H 2H 3H ⋥ᓟ 1H 2H 3H ⋥ᓟ 1H 2H 3H ࠫࡦࠢ ٤ ٤ ٤ ٤ ٌ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ 2 ΣAF1 ࠫࡦࠢ ٤ ٤ ٌ ٌ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ 1 ΣF2 3 ΣAF3 ࠫࡦࠢ ٤ ٤ ٤ ٤ ٌ ٌ ٌ ٌ ٤ ٤ ٤ ٤ 4 ΣAF1 ਅႣ ٤ ٤ ٌ ٌ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ 5 ΣAF2 ਅႣ ٤ ٤ ٌ 㧙 ٤ ٤ ٤ 㧙 ٤ ٤ ٤ 㧙 6 ΣAF4 ਅႣ ٤ ٤ ٌ ٌ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ 7 ΣF2 ਛႣ ٤ ٌ ٤ ٌ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ 8 ΣF2 Ⴃ ٤ ٌ 㧙 㧙 ٤ ٤ 㧙 㧙 ٤ ٤ 㧙 㧙 9 ΣAF2 Ⴃ ٤ ٌ ٤ ٌ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ 10 ΣAF3 Ⴃ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ 11 ΣAF4 Ⴃ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ ٤ 㧦ࠥ࡞ൻߦࠃࠆਛᱛ 6 寒地土木研究所月報 №742 2015年3月 で、すでに大きく上昇していた。この粘度上昇は、急 ート等による養生条件、塗装仕様、塗装方法は2章で 速な硬化反応が進んでいることを示している。 述べたとおりである。 次に、表-5に示すように、時間経過と共に「作業 4.1.2 測定項目、測定部位、測定断面 性」がやや低下した塗料について着目すると、1時間 結露の発生を把握するため、温度、湿度、鋼材温度 後では塗料 No. 7、9、また、2時間後では塗料 No. 2、 等の測定を行った。部位により、温度や湿度などの変 4、6の作業性がやや低下した。なお、作業性の低下 化の程度が異なることが想定されたため、図-8に示 とは、はけさばきがやや重くなり、つっぱり感を感じ すように、桁中間部の内側と外側のウェブ、上フラン るようなものであり、はけ塗り作業が困難となるほど ジおよび下フランジ下面を測定部位とした。 ではなかった。作業性低下の理由については、別途、 4.1.3 測定方法 検討を行う必要があるが、今回のような気温が比較的 (1) 外気温度、外気湿度 高い条件では、硬化反応や溶剤の揮発が、気温の低い 現地の外気温度、外気湿度を測定するため、模擬橋 場合に比べて早く進むことなどが考えられる。 梁の直近に設置した仮設小屋を利用し、降雪の影響の 3.2.2 外観 ない小屋の軒下に温湿度センサーを設置した。なお、 表-5に示すように、ほとんどの塗料において、 「外 データロガー(本体部)は仮設小屋の中に設置した。 観」は概ね良好であったが、塗料 No. 3、1では若干 (2) 温度、湿度、鋼材温度 の「はけ目」や「たれ」が見られた。塗料 No. 3は、 各部位の温度、湿度を測定するため、超小型温湿度 最終の塗装面である上塗りではなく、最下層に用いる センサーを各部位の鋼材面直近に設置した。あわせて、 有機ジンクリッチペイントであるが、写真-4に示す 鋼材温度センサーを設置した。 ように、ややはけ目が目立つ傾向にあった。また、塗 料 No. 1も、有機ジンクリッチペイントで、写真-4 に示すように、希釈調整直後の時点においてのみ、若 No.3 No.1 干のたれが生じていた。ただし、両塗料とも所定の膜 厚は確保されており、防食性能には問題ないと考えら れる。 3.2.3 乾燥性 表-5に示すように、すべての塗料において、塗装 写真-4 外観異常の状況 した1時間後には半硬化乾燥状態になっており、乾燥 性に問題は認められなかった。 Ԙ Ԝ 4.結露への施工対策に関する検討 ԙԛ ᩴ㜞ߐ 1,400 4.1 試験概要 氷点下の温度域では飽和水蒸気量が極端に少なく、 Ԛ 作業員などから発生する水蒸気などにより、容易に高 湿度となるため、結露が発生し、塗膜異常につながる 恐れがある。 図-8 温度、湿度、鋼材温度等の測定部位 そこで、結露への施工対策として、送風機による換 ๆ᳇ญ 気の有効性を確認するため、模擬橋梁での施工試験を 行った。 ㅍ㘑ᯏ 4.1.1 試験時期、模擬橋梁、塗装方法等 試験時期に関しては、結露発生の可能性が高くなる 氷点下の温度域で施工試験を行うため、年間の平均気 温が最も低くなる1月下旬に実施した。なお、本試験 図-9 送風機の設置位置 は、2章で述べた下限温度での施工性の検討と合わせ て実施したものであり、施工対象とした模擬橋梁、シ 寒地土木研究所月報 №742 2015年3月 7 (3) 結露 4.1.4 施工対策 氷点下における結露は外観目視では、見づらく、把 結露への施工対策として、送風機による換気を行っ 握しにくいことが想定されたため、調査箇所直近に薄 た。送風機の設置位置については、塗装作業時の動線 いステンレス板を設置し、なるべく結露を見やすくす 等を考慮し、図-9に示すように試験場内の偶角部付 るようにして、外観目視を行った。 近に設置して、場内の空気を排気する形とした。外気 ᷷ᐲ㪲㷄㪴 ਅႣ㩿㪈㪀 㪍㪇 ਅႣ㩿㪉㪀 ਅႣ㩿㪊㪀 ਛႣ Ḩᐲ㪲䋦㪴 Ⴃ 㪈㪇㪇 㪌㪇 㪏㪌 㪋㪇 㪐㪇 㪏㪌 㪏㪇 㪊㪇 㪎㪇 㪉㪇 㪍㪇 㪈㪇 㪌㪇 㪇 㪋㪇 㪊㪇 ㍑᧚᷷ ᄖ᳇᷷ᐲ Ḩᐲ 㪉㪇 㪈㪆㪉㪏㩷㪇㪑㪇㪇 㪏䋺㪇㪇 㪈㪆㪉㪎㩷㪈㪉㪑㪇㪇 㪏䋺㪇㪇 㪈㪆㪉㪎㩷㪇㪑㪇㪇 ㍑᧚᷷ᐲ㪄㔺ὐ 㪈㪈䋺㪊㪇 㪈㪎䋺㪇㪇 㪈㪇䋺㪇㪇 㪈㪈䋺㪇㪇 㪈㪆㪉㪍㩷㪈㪉㪑㪇㪇 㔺ὐ 㪏䋺㪇㪇 㪈㪆㪉㪌㩷㪈㪉㪑㪇㪇 㪈㪆㪉㪌㩷㪇㪑㪇㪇 ᷷ᐲ 㪏䋺㪇㪇 㪈㪇䋺㪇㪇 㪈㪌䋺㪇㪇 㪈㪆㪉㪋㩷㪈㪉㪑㪇㪇 㪏䋺㪇㪇 㪈㪇䋺㪇㪇 㪈㪌䋺㪇㪇 㪈㪆㪉㪋㩷㪇㪑㪇㪇 㪈㪈䋺㪇㪇 㪈㪌䋺㪇㪇 㪈㪆㪉㪊㩷㪈㪉㪑㪇㪇 㪈㪆㪉㪊㩷㪇㪑㪇㪇 㪄㪉㪇㩷 㪈㪆㪉㪍㩷㪇㪑㪇㪇 㪄㪈㪇㩷 ᄖ᳇Ḩᐲ 図-10 施工期間中の温度、湿度などの計測データ(上フランジ ) 表-6 施工期間中の最低・最高温湿度などに関する一覧表 ᣣઃ 㪈㪉㪊ᣣ 㪈㪉㪋ᣣ 㪈㪉㪌ᣣ 㪈㪉㪍ᣣ 㪈㪉㪎ᣣ 㔐 㔐䈱䈤᥍ ᥍ ᥍ ᥍ ᄤ᳇㶎 ᣉᎿᤨ㑆 ᄖ᳇ ႐ౝ ᷷ 䇭䈉䈤ᣉᎿਛ ᐲ ㍑᧚ 䇭䈉䈤ᣉᎿਛ ᄖ᳇ Ḩ ႐ౝ ᐲ 䇭䈉䈤ᣉᎿਛ 8 㪏㪑㪇㪇 䌾 㪄㪌㪅㪏 㩿㪉㪊㪑㪇㪇㪀 㪄㪉㪅㪎 㩿㪉㪊㪑㪉㪇㪀 㪄㪇㪅㪎 㩿㪏㪑㪉㪇㪀 㪄㪋㪅㪉 㩿㪉㪊㪑㪊㪇㪀 㪄㪈㪅㪋 㩿㪈㪊㪑㪊㪇㪀 㪍㪌㩼 㩿㪉㪇㪑㪋㪇㪀 㪌㪍㩼 㩿㪉㪊㪑㪈㪇㪀 㪎㪉㩼 㩿㪈㪌㪑㪇㪇㪀 䌾 䌾 䌾 䌾 䌾 䌾 䌾 䌾 㪈㪌㪑㪇㪇 㪇㪅㪊 㩿㪇㪑㪉㪇㪀 㪈㪅㪈 㩿㪈㪊㪑㪌㪇㪀 㪈㪅㪈 㩿㪈㪊㪑㪌㪇㪀 㪄㪇㪅㪊 㩿㪐㪑㪇㪇㪀 㪄㪇㪅㪊 㩿㪐㪑㪇㪇㪀 㪐㪎㩼 㩿㪇㪑㪈㪇㪀 㪐㪋㩼 㩿㪈㪑㪌㪇㪀 㪐㪋㩼 㩿㪏㪑㪊㪇㪀 㪏㪑㪇㪇 䌾 㪄㪏㪅㪈 㩿㪉㪊㪑㪌㪇㪀 㪄㪋㪅㪊 㩿㪉㪊㪑㪌㪇㪀 㪄㪊㪅㪋 㩿㪏㪑㪇㪇㪀 㪄㪌㪅㪍 㩿㪉㪊㪑㪊㪇㪀 㪄㪌㪅㪈 㩿㪏㪑㪇㪇㪀 㪌㪋㩼 㩿㪈㪋㪑㪊㪇㪀 㪌㪌㩼 㩿㪈㪑㪇㪇㪀 㪍㪉㩼 㩿㪈㪌㪑㪇㪇㪀 䌾 䌾 䌾 䌾 䌾 䌾 䌾 䌾 㪈㪌㪑㪇㪇 㪄㪉㪅㪍 㩿㪈㪋㪑㪇㪇㪀 㪄㪈㪅㪈 㩿㪈㪋㪑㪇㪇㪀 㪄㪈㪅㪈 㩿㪈㪋㪑㪇㪇㪀 㪄㪊㪅㪊 㩿㪈㪋㪑㪊㪇㪀 㪄㪊㪅㪊 㩿㪈㪋㪑㪊㪇㪀 㪏㪏㩼 㩿㪏㪑㪇㪇㪀 㪏㪏㩼 㩿㪈㪇㪑㪋㪇㪀 㪏㪏㩼 㩿㪈㪇㪑㪋㪇㪀 㪏㪑㪇㪇 䌾 㪄㪈㪉㪅㪈 㩿㪎㪑㪇㪇㪀 㪄㪎㪅㪉 㩿㪏㪑㪇㪇㪀 㪄㪎㪅㪉 㩿㪏㪑㪇㪇㪀 㪄㪏㪅㪐 㩿㪏㪑㪈㪇㪀 㪄㪏㪅㪐 㩿㪏㪑㪈㪇㪀 㪌㪐㩼 㩿㪐㪑㪌㪇㪀 㪌㪉㩼 㩿㪎㪑㪌㪇㪀 㪌㪊㩼 㩿㪏㪑㪇㪇㪀 䌾 䌾 䌾 䌾 䌾 䌾 䌾 䌾 㪈㪌㪑㪇㪇 㪏㪑㪇㪇 䌾 㪄㪊㪅㪍 㪄㪈㪌㪅㪋 䌾 㩿㪈㪈㪑㪉㪇㪀 㩿㪎㪑㪈㪇㪀 㪄㪉㪅㪋 㪄㪐㪅㪍 䌾 㩿㪈㪈㪑㪉㪇㪀 㩿㪏㪑㪇㪇㪀 㪄㪉㪅㪋 㪄㪐㪅㪍 䌾 㩿㪈㪈㪑㪉㪇㪀 㩿㪏㪑㪇㪇㪀 㪄㪋㪅㪐 㪄㪈㪈㪅㪌 䌾 㩿㪈㪋㪑㪋㪇㪀 㩿㪏㪑㪉㪇㪀 㪄㪋㪅㪐 㪄㪈㪈㪅㪌 䌾 㩿㪈㪋㪑㪋㪇㪀 㩿㪏㪑㪉㪇㪀 㪏㪇㩼 㪌㪌㩼 䌾 㩿㪈㪋㪑㪋㪇㪀 㩿㪈㪌㪑㪋㪇㪀 㪏㪍㩼 㪋㪐㩼 䌾 㩿㪈㪇㪑㪈㪇㪀 㩿㪎㪑㪉㪇㪀 㪏㪍㩼 㪋㪐㩼 䌾 㩿㪈㪇㪑㪈㪇㪀 㩿㪏㪑㪇㪇㪀 㪈㪎㪑㪇㪇 㪏㪑㪇㪇 䌾 㪈㪈㪑㪇㪇 㪄㪌㪅㪋 㪄㪈㪋㪅㪊 䌾 㪄㪋㪅㪇 㩿㪈㪋㪑㪈㪇㪀 㩿㪍㪑㪇㪇㪀 㩿㪐㪑㪌㪇㪀 㪄㪊㪅㪊 㪄㪐㪅㪍 䌾 㪄㪊㪅㪏 㩿㪈㪌㪑㪈㪇㪀 㩿㪎㪑㪊㪇㪀 㩿㪈㪇㪑㪋㪇㪀 㪄㪊㪅㪊 㪄㪐㪅㪍 䌾 㪄㪊㪅㪏 㩿㪈㪌㪑㪈㪇㪀 㩿㪏㪑㪇㪇㪀 㩿㪈㪇㪑㪋㪇㪀 㪄㪌㪅㪎 㪄㪈㪇㪅㪏 䌾 㪄㪍㪅㪉 㩿㪈㪍㪑㪇㪇㪀 㩿㪎㪑㪋㪇㪀 㩿㪈㪊㪑㪌㪇㪀 㪄㪌㪅㪎 㪄㪈㪇㪅㪏 䌾 㪄㪍㪅㪍 㩿㪈㪍㪑㪇㪇㪀 㩿㪏㪑㪇㪇㪀 㩿㪈㪇㪑㪌㪇㪀 㪎㪐㩼 㪌㪉㩼 䌾 㪏㪌㩼 㩿㪈㪑㪉㪇㪀 㩿㪈㪇㪑㪋㪇㪀 㩿㪉㪈㪑㪋㪇㪀 㪏㪍㩼 㪌㪋㩼 䌾 㪏㪇㩼 㩿㪈㪇㪑㪌㪇㪀 㩿㪌㪑㪇㪇㪀 㩿㪐㪑㪇㪇㪀 㪏㪍㩼 㪌㪎㩼 䌾 㪏㪇㩼 㩿㪈㪇㪑㪌㪇㪀 㩿㪏㪑㪇㪇㪀 㩿㪐㪑㪇㪇㪀 㶎ᄤ᳇䈲ᣉᎿᤨ㑆ਛ䈱䉅䈱 寒地土木研究所月報 №742 2015年3月 の取り入れは送風機を設置した対角の養生用シートを ず、外気温度に近づくような温度変化となっている。 開放して吸気口とする、自然流入方式とした。 なお、鋼材温度は概ね場内の温度と連動して変化し、 施工中は場内温度よりも約0~2℃くらい低い温度と 4.2 試験結果 なっていた。 2章で述べたように、今回用いた寒冷地用塗料の塗 4.2.2 湿度 装工程は最大5層である。今回の施工試験では、実施 図-10より、外気の1日の湿度変化は、1/23と1/24 工を意識し、一日一層の施工を行うこととし、施工期 を除き、ばらつきはあるものの、日没前からの温度低 間は年間の気温が最も低くなる時期である1月下旬の 下に伴い、湿度が上昇し、朝方まで湿度が高い状態が 5日間 (1/23 ~ 1/27)とした。 続き、日の出以降は、気温の上昇と共に、湿度が低下 今回の施工試験において、調査を行った部位のうち、 するといったサイクルを繰り返している。なお、1/23 「桁内側の上フランジ」が結露環境として最も厳しい と1/24において、外気湿度が85%以上の高湿度となっ 条件であったため、以下では「桁内側の上フランジ」 ている時間帯があるのは、降雪のためである。次に、 に関して、検討を行った結果について述べる。「桁内 場内湿度は、調査時間帯においては、最低温度に近い 側の上フランジ」の温度、湿度等の施工期間中の計測 時間帯であり、調査員が発する水蒸気が発生するため、 データを図-10に示す。また、日付毎の天気、最低・ 調査開始時刻を示す緑点線を境に急激に湿度が上昇し 最高温湿度の値などを表-6に示す。なお、図中の桃 ている。一方、施工時間帯の場内湿度は、送風機で相 色の網掛けは、結露環境の目安となる「鋼材温度-露 対的に湿度の低い外気を取り入れているため、ばらつ 点」の値がマイナスになっている部分を示し、また、緑 きはあるものの、場内湿度は低下する。しかし、1/25、 の点線は前日に施工した塗膜の乾燥状態などの調査開 1/26、1/27の時のように、施工時間帯の場内温度が- 始時刻を示し、オレンジの点線は塗装作業開始時刻と 5℃程度の場合、外気温度と場内温度がほぼ同じでも、 終了時刻を示している。以下では、調査開始時刻から 場内湿度は外気湿度と同程度となるまでは低下せず、 塗装作業開始時刻までを「調査時間帯」 、塗装作業開 外気湿度よりも5~ 15%程度、高くなる。したがって、 始時刻から終了時刻までを「施工時間帯」と呼ぶこと 送風機によって結露対策を行う場合、1/23の11:00 ~ とする。 12:00の時のように、外気湿度が塗装制限湿度である 送風機に関しては、基本的に施工時間帯のみ稼働す 85%を下回っていても、場内湿度は85%以下とならな ることとし、調査時間帯や作業を行わない時間帯は稼 い場合があるので、注意を要する。 働を停止した。 なお、上記の傾向とは逆に、1/24には、施工時間帯 4.2.1 温度、鋼材温度 の場内湿度が外気湿度を下回っている。これは場内温 図-10および表-6に示すように、外気の1日の温 度が外気温度よりも高いためであると考えられる。 度変化は、1/23と1/24を除き、概ね日の出前の6~7 また、施工時間帯中の1/24の10:30頃と1/25の11:30 時頃に最低温度となり、日の出以降は、日射の影響を 頃に、場内湿度が急上昇し、結露環境の目安となる「鋼 受け、急速に温度が上昇し、概ね正午前後に最高温度 材温度-露点」が一時的にマイナスとなっているのは、 となり、日没前の14 ~ 15時頃から温度が低下すると 溶剤濃度計測のため、一時的に送風機の稼働を停止し いったサイクルを繰り返している。 たためである。 また、場内の1日の温度変化は、外気温度と連動す 4.2.3 結露 る傾向が見られるが、その変化の程度は外気温度より 結露環境の目安となる「鋼材温度-露点」がマイナ も緩やかであり、変動幅は外気温度よりも小さい。例 えば、日没前から日の出前の温度が低下する時間帯に おいては、場内温度の方が外気温度よりも温度の低下 幅が小さいため、場内温度は外気温度よりも高めに推 移する傾向がある。 一方、施工時間帯の場内温度も、外気温度と同様に、 日射の影響を受けるため、上昇するはずであるが、施 工時間帯には送風機で場内温度よりも温度の低い外気 を取り入れているため、場内温度は、さほど上昇でき 寒地土木研究所月報 №742 2015年3月 写真-5 上フランジの結氷状況 9 スとなっていたのは、一時的に送風機を停止した1/24 上がり外観については、一部の塗料で若干の「は と1/25を除くと、調査時間帯である1/23の9:00頃と け目」や「たれ」が見られたが、所定の膜厚は確 1/26の10:00 ~ 11:00頃であり、実際に結露・結氷も生 保されており、防食性には問題ないと考えられる。 じていた。 また、乾燥硬化性については、すべての塗料にお 1/23については、深夜から朝方にかけての降雪に加 いて、問題は認められなかった。 えて、外気温度も0~-1℃付近と、年間の気温が最 (2)結露への施工対策として、送風機による換気の有 も低くなる時期としては、比較的高い温度で推移して 効性を確認するための施工試験を行った。その結 おり、外気、場内ともに、湿度は90%を超える高湿度 果、-5℃を下回るような極めて低い温度の場合 状態であった。そのため、調査を開始する前から上フ や送風機を用いても場内湿度が85%以上となるよ ランジに結露・結氷が生じていた。 うな外気が高湿度の場合には、注意が必要である また、1/26については、調査開始時点の場内温度は が、試験場内の空体積に対応した送風能力を持つ -9℃で、鋼材温度は-11℃と今回の施工試験におい 送風機の使用により、相対的に湿度の低い外気を て、最も低い温度であることに加え、調査時間帯は送 取り込むことで、結露の発生を抑えることが可能 風機を停止していたため、急激に場内湿度が上昇し、 であった。 写真-5に示すように、極めて短時間で上フランジに 結氷が生じた。このように、-5℃を下回るような極 参考文献 めて低い温度の場合、飽和水蒸気量が極端に少なくな るため、作業員の呼気等に含まれる水蒸気により、急 激に場内湿度が上昇し、極めて短時間で結露環境とな り、結露・結氷を生じる場合があるので、注意が必要 1)鋼道路橋防食便覧、公益社団法人日本道路協会、 平成26年3月 2)林田宏ほか:寒冷地用塗料の耐久性、施工性、施 である。 工対策に関する検討、第58回(平成26年度)北海道 上記の1/23と1/26以外では、施工期間中、結露・結 開発技術研究発表会、2015年2月 氷の発生は認められず、特に施工時間帯においては、 3)気象庁ホームページ 送風機で相対的に湿度の低い外気を取り入れることに 4)林田宏ほか:寒冷地用塗料施工時の結露対策に関 より、塗装制限湿度である85%以下の状態を保つこと する検討、第35回鉄構塗装討論会予稿集、pp.55- ができ、 「鋼材温度-露点」は結露環境にない状態を 66、2012年10月 示すプラスの値を保持することができた。 以上のことから、-5℃を下回るような極めて低い 温度の場合や送風機を用いても場内湿度が85%以上と なるような外気が高湿度の場合に注意する必要はある が、実施工においても、送風機を用いることにより、塗 膜性能や施工に影響を及ぼすような結露の発生を抑え ることが可能となり、低温下における結露対策として 送風機が有効であることを確認できた。 5.まとめ 模擬橋梁を用いた施工試験を通して、寒冷地用塗料 の施工性、施工対策を明らかにするための検討を行っ た。その結果、以下のことが明らかとなった。 (1)氷点下および気温が比較的高い温度域において、 施工試験を行った。その結果、作業性については、 一定時間をすぎると、作業性がやや低下した塗料 が見られたが、はけ塗り作業が困難となるような 著しい作業性の低下は見られなかった。また、仕 10 寒地土木研究所月報 №742 2015年3月 林田 宏* HAYASHIDA Hiroshi 寒地土木研究所 寒地保全技術研究グループ 耐寒材料チーム 主任研究員 寒地土木研究所月報 №742 2015年3月 冨山 禎仁** TOMIYAMA Tomohiro つくば中央研究所 材料地盤研究グループ 新材料チーム 主任研究員 石田 博文*** ISHIDA Hirohumi 特定非営利活動法人 鋼構造物塗膜処理等研究会 理事 11
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