2015 年度多摩 26 市の予算案について 伊藤久雄(認定NPO法人まちぽっと) 1.普通会計決算の状況 (1) 東京都市町村普通会計決算の概要 2013 年度の東京都普通会計決算の概要(2014 年 9 月公表)によれば、東京都としての 総括は下記のとおりであった。 ○ 平成25年度の東京都市町村(26市5町8村)の決算規模は、前年度に比べて歳入 は0.8%の増、歳出は0.3%の増となり、歳入は2年ぶり、歳出は3年ぶりの増加 となった。 ○ 決算収支では、実質収支が19.8%増の481億11百万円となり、昭和53年度 以降36年連続して全団体黒字となった。 ○ 財政構造の弾力性を示す経常収支比率は、0.7ポイント減の90.9%となった。 ○ 将来にわたる財政負担は、債務負担行為翌年度以降支出予定額が2.4%増加したも のの、積立金現在高が4.1%増加し、地方債現在高も0.7%減少したことから、前 年度に比べ0.8%減少し、1兆27億67百万円となった(表1) 。 ○ 市町村の平成25年度の財政状況は、地方税が2年ぶりに前年度に比べ増加したもの の、経常収支比率は依然として高い水準にあり、財政構造が硬直化した状況が続いてい る。 ○ 今後、歳入面では、景気回復の影響により、地方税の増収等が期待される一方で、法 人住民税の一部国税化や法人実効税率の引き下げの動きなどによる影響が懸念されてい る。また、歳出面でも、扶助費の増加や老朽化した公共施設の更新などに伴う負担増は 避けられない情勢であるため、引き続き、行財政改革に取り組むことにより、一層効率 的な財政運営を実現することが求められている。 表1 将来にわたる財政負担の状況 区 分 2013 年度 地方債現在高 A 888,660 債務負担行為翌年度 389,701 以降支出予定額 B 積立金現在高 C 275,595 将来にわたる財政負 1,002,767 担A + B - C 対標準財政規模比 123.5 2012 年度 894,883 1 単位:百万円、率 増(△)減額 増(△)減率 △ 6,222 △ 0.7 380,566 9,135 2.4 264,770 10,825 4.1 1,010,679 △ 7,912 △ 0.8 125.1 ― ― (2) 将来にわたる財政負担の状況にみる特徴 招来にわたる財政負担とは、表1にあるように地方債現在高(A)と債務負担行為翌年度 以降支出予定額(B)を合計した数値(借金の合計)から積立金現在高(C)という貯金を 差し引いたものをいう。2013 年度の市町村(島しょをふくむ)の合計は、対標準財政規模 比でみると 2013 年度 123.5 ポイントであり、2012 年度からみると若干ではあるが改善さ れている。123.5 ポイントとは、借金の合計が貯金の 1.235 倍あるということである。 *標準財政規模=(基準財政収入額 - 各種譲与税 - 交通安全対策特別交付金)× 100 ÷ 75 + 各種譲与税 + 交通安全対策特別交付金 + 普通交付税 ところで、この将来にわたる財政負担を多摩地区市町村ごとにみたのが表2(別紙)で ある。 ⇒表2 多摩市町村の将来にわたる財政負担 将来にわたる財政負担が標準財政規模の 2 倍を超えるのは八王子市、昭島市、稲城市の 3 市である。この 3 市は、八王子市は地方債現在高、債務負担額ともに多いこと、昭島市は 地方債現在高が多く、稲城市は債務負担行為額が多いことなどの特徴がある。 逆に標準財政規模より少ないのは武蔵野市、府中市、調布市、町田市、小平市、国立市、 福生市、多摩市、羽村市の 9 市になる。なおこの 9 市のうち、財政力指数が1を超え、普 通地方税交付の不交付団体であるのは武蔵野市、府中市、調布市、多摩市の 4 市である。 その他の 5 市は債務負担額が比較的少ないことが将来の財政負担が少ない要因であると考 えられる。不交付団体で標準財政規模を上回るのは、立川市、三鷹市である。 2.普通地方税交付金と法人住民税一部法人化問題 (1)普通地方税交付金 2014 年度の東京都内市町村の交付団体は、39 団体(26 市 13 町村)のうち 33 団体(20 市 13 町村)で、前年度と変わらなかった(表3のとおり)。交付団体・不交付団体数は 2011 年度以降変わっていない。 表3 交付団体・不交付団体の推移 年度 交付団体 2009 年度 23団体(11市12町村) 2010 年度 31団体(19市12町村) 2011 年度 33団体(20市13町村) 2012 年度 33団体(20市13町村) 2013 年度 33団体(20市13町村) 2014 年度 33団体(20市13町村) 2 不交付団体 16団体(15市1町) 8団体( 7市1町) 6団体( 6市) 6団体( 6市) 6団体( 6市) 6団体( 6市) 表4 交付・不交付団体名 八王子市、青梅市、昭島市、町田市、小金井市、小平市、日野市、東村山 市、国分寺市、国立市、福生市、狛江市、東大和市、清瀬市、東久留米市、 交付団体 武蔵村山市、稲城市、羽村市、あきる野市、西東京市、瑞穂町、日の出町、 (33 団体) 檜原村、奥多摩町、大島町、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島 村、八丈町、青ヶ島村、小笠原村 不交付団体 立川市、武蔵野市、三鷹市、府中市、調布市、多摩市 (6団体) (2) 法人住民税一部法人化問題 不交付大体である 6 市は、法人住民税が一部国税化された問題を抱えている。それぞれ の市は 2015 年度予算案において、一部国税化の影響を懸念しているものの、2015 年度は経 済動向による企業収益の見方が異なっている。 ○ 武蔵野市 税制改正により、個人市民税、法人市民税とも減となる影響があるものの、個人市民 税は、転入等の人口増による納税義務者数の増により、増額を見込む。法人市民税は、 景気の影響を踏まえ、増を見込む。 ○ 立川市 法人市民税は、交付税原資化による法人税割の税率引き下げの影響があるものの、消 費や投資の増加を中心とした民需主導の経済成長により、企業収益は上向くと予想され ることから微増とした。 ○ 三鷹市 法人市民税が一部業績回復を反映して増となるなど 、リーマンショックの影響を受け る前の平成 20 年度 決算の水準を上回るまでに回復した。(中略)法人税率引き下げに よる法人市民税への影響も懸念されるなど、先行きが不透明な側面もあることから、依 然として、予断を許さない財政状況にある。 ○ 府中市 (府中市は 3 月 2 日現在、2015 年度予算案に関する情報はホームページに公表されて いない)。 ○ 調布市(市長記者会見) 歳入では、根幹である市税において、法人市民税は税制改正による減を見込む一方で、 個人市民税と固定資産税は経済情勢から増が見込まれることから、前年度と比較して 7 億 9 千万円余、1.8 パーセントの増を見込み、総体で 437 億 7 千万円余を見込んでいる。 ○ 多摩市 本市の歳入の大きな柱である市税については、個人市民税や軽自動車税が微増となるもの の、一部国税化による法人市民税の減などにより、減少する見通し。今後の税収見通しにつ 3 いては、少子化・高齢化の進行に伴う税収の影響や国の税制改正で決定された法人税の実効 税率の引き下げなどの影響が想定されている。 2015 年度は、法人市民税は税制改正による一部国税化の影響などにより、△14.3%、320,835 千円の減となっている。 3.2015 年度予算案 (1) 各市の予算案について 各市の一般会計予算案は以下のとおりである。「主な事業」は東京新聞を基本にしたが、 一部都政新報で補強した。 ○ 八王子市 <一般会計> 1946 億円(前年度当初比 2.4%増) <主な事業> ・中小企業の人材確保支援 560 万円 ・待機児童ゼロに向けた保育所などの施設整備 11 億 5063 万円 ・こども科学館リニューアルの設計と改修工事 2750 万円 ・JR八王子駅北口の歩行者用デッキ延伸による回遊化の基本設計 ○ 立川市 <一般会計> 730 億円(前年度当初比 1.0%増) <主な事業> ・「たちかわ交流大使」任命(山下洋輔さん) ・小中学校へのタブレットPC導入 1 億 1978 億円 ・廃校を利用した「たちかわ創造舎」創設 ・西国立駅前交通広場などの基本設計 ○ 120 万円 1 億 3308 億円 1126 億円 武蔵野市 <一般会計> 628 億円(前年度当初比 4.3%増) <主な事業> ・中島飛行機無彩製作所関連資料調査 196 万円 ・三鷹駅北口街づくりビジョン(仮称)の策定 ・保育の充実 ○ 2 億 5128 万円 三鷹市 4 190 万円 2500 万円 <一般会計> 654 億円(前年度当初比 1.4%減) <主な事業> ・中仙川改修工事(中原地区の水害対策) ・学校体育館の耐震補強工事 ・保育園の定員拡充 ○ 2441 万円 2 億 3069 万円 9712 万円 青梅市 <一般会計> 491 億円(前年度当初比 2.3%増) <主な事業> ・「市生物多様性地域戦略」策定(環境基本計画の重点取組み) ・「まちづくり会社」の設立、運営支援 ・梅の里再生事業 100 万円 2079 万円 ・保育園を運営する社会福祉法人への施設費助成 6 億 993 万円 ・自転車等駐車場の管理運営および電子マネー決済の導入 ○ 府中市 <一般会計> 928 億円(前年度当初比 5.9%増) <主な事業> ・小中学校の非構造部財落下防止工事 ・公園の危険木の¥伐採等 12 億 6390 万円 5000 万円 ・子ども発達支援センター相談体制強化など ・ウオーキングラリー運営費 435 万円 400 万円 ・新庁舎建設基本設計・実施設計など ○ 9524 万円 昭島市 <一般会計> 430 億円(前年度当初比 0.3%増) <主な事業> ・健康ポイント事業開始 ・避難所運営マニュアル作成 ・東中神駅自由通路等整備 309 万円 500 万円 10 億 7760 万円 ・(仮称)教育福祉総合センター整備事業 ・土曜日等学習支援事業 ○ 60 万円 503 万円 調布市 <一般会計> 849 億円(前年度当初比 5.2%増) 5 5776 万円 4863 万円 <主な事業> ・待機児童対策(保育園の定員 700 人拡大) 11 億 4000 万円 ・鉄道敷地の整備(京王線地下化にともなう地上部整備) ・食物アレルギー対策(小学校給食室改修) 6 億 6400 万円 5 億 8641 万円 <東京五輪関連> ・味の素スタジアム周辺道路の無電中化など ○ 1280 万円 町田市 <一般会計> 1428 億円(前年度当初比 2.1%増) <主な事業> ・文化芸術ホール(町田駅周辺)基本設計策定 ・町田地区子どもセンター整備費 490 万円 ・子ども・子育て支援新制度 4 億 6764 万円 135 億 3561 万円 ・防災行政無線デジタル化など災害対策事業 ・多摩都市モノレール延伸促進事業 3 億 2237 億円 5122 万円 <東京五輪関連> ・キャンプ地誘致事業 ○ 402 万円 小金井市 <一般会計> 373 億円(前年度当初比 6.2%増) <主な事業> ・福祉会館建設事業(設計費用) ・可燃ごみ共同処理事業 4822 万円 3 億 7520 万円(うち 3 億円は施設周辺の整備費) ・待機児童解消対策(定員 228 人増) ○ 21 億 1166 万円 小平市 <一般会計> 601 億円(前年度当初比 1.6%増) <主な事業> ・私立保育園の新設と移行 2 億 9352 万円 ・市民総合体育館の指定管理者導入 1 億 5973 万円 ・避難所へのマンホールトイレの整備 1 億 772 万円 ・果樹栽培農家へ防薬シャッター設置補助 ・市内中小企業者支援 ○ 203 万円 日野市 <一般会計> 596 億円(前年度当初比 7.9%増) 6 715 万円 <主な事業> ・平日放課後後教室事業「ひのっち」の一部を夏休みにも実施(スーパーひのっち) 328 万円 ・多摩平の森A街区の公共・公益施設整備 ・障害者生活・就労支援センター開設 ・新可燃ごみ処理施設周辺環境整備 ○ 1059 万円 4505 万円 1 億 2428 万円 東村山市 <一般会計> 529 億円(前年度当初比 5.6%増) <主な事業> ・東村山駅周辺の都市基盤整備 7 億 8021 億円 ・栄町地区認証保育園の認可化 6213 万円 ・特別支援学級の開設準備 ・空き家調査 4636 万円 329 万円 ・シティプロモーション方針の策定 ○ 314 万円 国分寺市 <一般会計> 402 億円(前年度当初比 6.1%増) <主な事業> ・まちの魅力発信事業 4217 万円 ・国分寺駅北口地区再開発 2 億 9000 万円 ・国分寺消防署移転用地取得 ・可燃ごみ共同処理事業 ○ 4 億 9049 万円 3 億 7520 万円((うち 3 億円は施設周辺の整備費) 国立市 <一般会計> 299 億円(前年度当初比 4.9%増) <主な事業> ・「子ども医療費助成制度」の拡充 ・さくら通り改修事業 ・街路灯のLED化 964 万円 2 億 6130 万円 6136 万円 ・国立駅南第 1 自転車駐車場建て替え ・福祉総合相談窓口の機能強化 ○ 7 億 8122 万円 916 万円 福生市 <一般会計> 227 億円(前年度当初比 3.0%増) <主な事業> 7 ・病児保育事業スタート 887 万円 ・東福生駅自転車駐車場設置工事 ・生活困窮者自立支援 1159 万円 ・学校ICT推進計画策定 ○ 1979 万円 500 万円 狛江市 <一般会計> 261 億円(前年度当初比 3.2%増) <主な事業> ・市役所駐車場民営化・公用車整理(カーシェアリング) ・中学校給食開始 6 億 7182 万円 ・プレーパーク常設化 ○ 941 万円 6628 万円 東大和市 <一般会計> 304 億円(前年度当初時 7.5%増) <主な事業> ・新学校給食センター建設着手 ・公園の長寿命化 11 億 6100 万円 1183 万円 ・街路灯のLED化 1185 万円 ・中学生の広島・平和祈念式典派遣など平和事業の充実 ○ 271 万円 清瀬市 <一般会計> 285 億円(前年度当初比 3.1%増) <主な事業> ・介護予防教室を拡充(カラオケを利用した悩トレ・元気塾など) ・各種がん検診無料化を 60 歳以上に拡充 ・認可保育園の定員増加 ○ 1 億 2094 万円 東久留米市 <一般会計> 390 億円(前年度当初比 1.3%増) <主な事業> ・子供土曜塾の拡充 ○ 390 万円 ・公共施設のありかた検討 1030 万円 ・上の原地区への道路整備 5 億 7252 万円 武蔵村山市 <一般会計> 264 億円(前年度当初比 3.2%減) 8 2537 万円 2105 万円 <主な事業> ・子どもの予防接種スケジュール管理(スマートフォンなど) ・中学校の学習支援(塾講師派遣) 358 万円 ・中学校の運動部支援(専門指導者派遣) ・中学校武道場整備 ○ 119 万円 572 万円 1 億 4871 万円 ・歴史民俗資料館分館建設事業 8371 万円 ・放課後子ども総合プラン事業 2908 万円 多摩市 <一般会計> 536 億円(前年度当初比 7.6%増) <主な事業> ・小中学校校舎建て替え、改修工事 32 億 5726 万円 ・小規模保育事業所の運営費、建設費助成 ・聖蹟桜ヶ丘駅周辺地域の活性化 ○ 8010 万円 6516 万円 稲城市 <一般会計> 336 億円(前年度当初比 7.1%減) <主な事業> ・放課後子ども教室全面実施 ・認可保育所の充実 9870 万円 21 億 400 万円 ・地域包括ケアシステム(認知症施策の推進) ・市下水道総合地震対策計画の策定 ○ 1400 万円 997 万円 羽村市 <一般会計> 218 億円(前年度当初比 4.8%増) <主な事業> ・市庁舎屋上に太陽光発電装置設置 ・羽村堰下橋耐震補強等工事 8906 万円 1 億 4142 万円 ・学校図書館総合管理システム試験導入 ・防災行政無線機器デジタル化 ○ 419 万円 1 億 392 万円 あきる野市 <一般会計> 325 億円(前年度当初比 6.8%増) <主な事業> ・体験・研修施設整備(旧戸倉小学校校舎改修) ・学校給食センター用地買収 7 億 8614 万円 9 2 億 5800 万円 ・JR秋川駅北口「あきる野ルピア」に「子育て広場」新設 ○ 1400 万円 西東京市 <一般会計> 762 億円(前年度当初比 9.3%増) <主な事業> ・子どもの虐待防止と取組み充実 ・(仮称)第十中学校整備事業 ・下野谷遺跡の保存・活用事業 1026 万円 36 億 4053 万円 11 億 4918 万円 ・(仮称)生活支援コーディネーターの配置 (2) ① 2837 万円 各市の予算案にみる特徴 予算規模 前年度比でマイナスとした市は、三鷹市(▽1.4%)、武蔵村山市(▽3.2%)、稲城市 (▽7.1%)の 3 市のみである。最もマイナス幅の大きい稲城市は、東京新聞によれば「新 設小学校の建設事業が終了し、市債や国庫支出金が減額になった」ためとしている。 前年度比プラスの市のうち、5%以上プラスとしているところは府中市(5.9%)、調布 市(5.2%)、小金井市(6.2%)、日野市(7.9%)、国分寺市(6.1%)、東大和市(7.5%)、 多摩市(7.6%)、あきる野市(6.8%)、西東京市(9.3%)などとなっている。 最もプラス幅の大きい西東京市は、(仮称)第 10 中学校整備事業(用地買収費、地盤調 査・基本設計委託料など)36 億 4053 万円と、下野谷遺跡の保存・活用事業(用地買収費、 シンポジウムの開催など)11 億 4918 万円が大きく、そのために起債が 99 億円(前年度 比 53 億円の増)にのぼっている(うち臨時財政対策債 23 億 3800 万円)。 ② ホームページでの公開状況 簡単な事業内容は前記のとおりであるが、詳しくは各市の「予算案の概要および主要 施策の概要」などをみることが必要である。しかし多摩地域の自治体は予算案発表の時 点でホームページに公開するところはまだ多くはない。2 月 28 日の時点で、ホームペー ジから予算案をみることができる市は以下のとおり 15 市(ただし、東久留米市の予算案 発表は 2 月 28 日だったので 3 月 2 日) で、ようやく半数を超える程度にとどまっている。 八王子市、武蔵野市、三鷹市、昭島市、町田市、小金井市、小平市、日野市、東村山 市、国分寺市、国立市、清瀬市、東久留米市、多摩市、西東京市 (3) ① 個別政策 子ども・子育て支援 10 待機児童対策など、子ども・子育て支援制度について、八王子市と町田市の予算案を みてみよう。 ■ 八王子市 八王子市は、待機児童の解消及び安全な保育環境を確保するため、民間保育所が行 う施設整備に対して補助する。新年度は、待機児童の更なる解消を図るため、新たに 事業所内保育施設の施設整備に対して補助する。 1 民間保育所施設整備促進(定員増 196(うち 135 人は 3 歳未満児定員) 11 億 10,38 万円 2 事業所内保育施設整備促進(定員増 11 人、すべて 3 歳児未満定員) 4024 万円 この結果、八王子市の保育定員は以下のようになる予定である。 保育定員の状況 2014 年度 2015 年度 2016 年度 2017 年度 計 定員増数(4 月 1 日時点) ― 349(216)※ 197(125) 10(21) 556 (362 定員数見込(4 月 1 日時点) 10,726 11,075 11,272 11,282 ― (4,194) (4,410) (4,535) (4,556) 待機児童数(4 月 1 日時点) 231(227) ― ― ― ― ( )は 3 歳未満児定員の内数 ※ 27 年度定員増(349 人)の内訳 26 年度民間保育所施設整備による増 311 人、小規模保育施設整備による増 18 人、定員変更等による増 20 人 ■ 町田市 町田市は、子ども・子育て支援新制度として 135 億 3,561 万円を予算化している。 <主な事業費> ・施設型給付費 1,231,542 千円 ・民間等保育所委託料 9,374,450 千円 ・学童保育クラブ管理運営委託料 969,504 千円 <主な特定財源> ・施設型給付費負担金(都) 548,445 千円 ・児童保育費負担金(国) 1,945,304 千円 ・児童保育費負担金(都) 972,652 千円 また待機児童解消対策事業として、保育サービスの多様化と待機児童の早期解消に 取り組むために、保育所等の整備を進める。2015 年度は、① 20 年間期間限定認可保 育所を含む民間保育所の整備支援、② 認定こども園の整備支援などにより、計 164 人 の定員増を図るとして、463,798 千円を予算化している。 <主な事業内容> ・20 年間期間限定認可保育所(新築型)への整備費補助 11 定員増 100 人(2016 年 4 月開園予定) ・既存保育所への増改築整備費補助 定員増 31 人(2016 年度中および 2017 年 4 月) ・20 年間期間限定認可保育所への賃借料補助 ・幼保連携型認定こども園への整備費補助(保育所部分) 定員増33人(2016年4月 開所予定) ② 生活困窮者支援 2014 年度の生活困窮者自立支援モデル事業を行ったのは国分寺市、国立市、狛江市、 東大和市、清瀬市の 5 市であった。その中から、国分寺市と国立市の予算案は以下のと おりである。 ■ 国分寺市 国分寺市は、生活保護受給の前段階にある「生活困窮者」の早期自立を図るため、 個別に支援計画を策定し、この計画に基づき支援を行う。また、貧困の連鎖を断ち切 るため、子どもの学習支援事業を実施する。 予算額は 2668 万円となっている。財源は、国 1816 万円、一般財源 852 万円である。 ■ 国立市 国立市は、福祉総合相談窓口事業(生活困窮者自立促進支援事業)として 9,162 千 円を予算化している。主な内容は以下のとおり。 ・福祉総合相談窓口嘱託員 1人 2,922 千円 ・生活困窮者自立促進支援事業委託料 5,844 千円 ただし、現段階では事業説明はホームページに掲載されていないので、上記の金額 しか分からない。 ③ 生活支援サービス この課題は、これまで地域福祉コーディネーターを配置してきた立川市と西東京市に ついて、新たに介護保険制度の改正により配置する生活支援コーディネーター(介護保 険会計)の配置状況と、相互の関連をみておきたい。 ■ 立川市 ・ 地域福祉コーディネーターは、これまで地域包括支援センター6 圏域のうち 3 圏域 に配置されてきたが、2015 年度には未配置圏域にも配置し、全福祉圏域への配置 により、地域のネットワークを推進して地域の課題解決を進める、としている。 なお、この事業の予算額は 46,593 千円で福祉総務課が主管課となる。 ・ 新たに配置する生活支援コーディネーターは、介護保険事業会計の地域包括支援 センター運営事業委託料にふくまれ、福祉相談事業委託料 170,604 千円とともに、 生活支援コーディネーター委託料 7,800 千円が予算化されている(高齢福祉課)。 ただし、どこに配置するかは予算概要では明確ではない。 12 ・ 地域福祉コーディネーターと生活支援コーディネーターとは、立川市の場合には 社会福祉協議会に委託されると思われるが、主管課が異なっていることもあり、 相互の関連についても現段階では明確ではない。 ■ 西東京市 ・ 西東京市の地域福祉コーディネーターは、2010 年度から中部圏域(田無・保谷・ 泉・谷戸第二・本町小学校の通学区域)で他の圏域に先行して、試行的に配置さ れた。2012 年度からは、北東部圏域(保谷第一小・碧山小・栄小・東小・住吉小 学校の通学区域)に、さらに 2013 年度からは西部圏域(谷戸小・中原小・芝久保 小・上向台小・けやき小の通学区域)及び南部圏域(保谷第二小・東伏見小・向 台小・柳沢小の通学区域)にも配置され、計 4 名体制となっている。この体制は 2015 年度も変わらない。 ・ 新たに配置される生活支援コーディネーターは介護保険特別会計に予算化される が、介護予防と合わせて 28,376 千円の予算であり、人数や具体的配置などは現段 階では分からない。地域福祉コーディネーターとの関係も立川市と同様である。 ⇒ 資料:表 11 各団体別決算収支 13
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