常磁性効果を含む超伝導体における渦の電子状態の研究 数理物理学講座 41416014 鎌田 直 第二種超伝導体における磁場の効果としては主に二種類が知られており、一つには軌道対破 壊効果というものがある。超伝導状態を局所的に破壊して磁束を取り込み、そして磁束が侵入 した点から超伝導性を回復させるために反磁性電流が流れる現象である。もう一つは常磁性効 果であり、電子の持つ磁気モーメントと直接結合することによって化学ポテンシャルがゼーマ ンシフトし、その結果としてフェルミ面が分裂する現象である。 近年、中性原子における超流動状態の実験的研究において、量子渦が直接的に確認されてい る。それらは常磁性効果のスピン成分への分布比を自由にコントロールすることが可能で、常 磁性成分をもった BCS 超流動状態が実験できる。そして、それらは常磁性効果をもつ超伝導と の類似性があることも知られており、常磁性効果が渦糸に及ぼす影響を理論的に調べることが 近年においてとても重要なことになっている。 よって今回の研究目的としては、常磁性効果のある場合における磁束渦糸構造とそれに関連 する物理量(対ポテンシャル , 粒子密度 , ゼーマンシフトによる磁化 など)の温度依存性を調 べる。具体的には、渦芯内とバルクにおける磁化分布の温度依存性の違いに着目し、その振る 舞いを局所状態密度 (L-DOS) をもちいて明らかにする。それに加え、渦糸芯における密度低下 についても重ねて研究する。主に研究手段としては、数値計算を使い、そして基本方程式とし ては磁束渦糸による影響により空間的変化があるために、ここでは Bogoliubov-de Gennes 理 論をつかって解く。具体的には、Bogoliubov-de Gennes 方程式とセルフコンシステントの条件 式を繰り返し解いていくことで、波動関数 u(r), v(r) とエネルギー固有値を求め、非一様な超 伝導相の電子状態 (対ポテンシャル , 粒子密度 , 磁化 など) を決定する。
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